無窮なるガーズ   作:おさぴら

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12.鉄の扉

「二人とも消えてやっと静かになったか…」

 

 

 

ガーズは取調室に一人取り残されていた。

正直なところを言えば、このまま処刑されても何も問題がなかった。

というよりは絶対に殺されない自信があった。

 

 

 

「ウチキも余計なことしやがる…」

 

 

 

ガーズがウチキの言葉通りに動いてしまう事には心当たりがあった。

奴隷契約の事だ。

しかし何故そのことを覚えているのだろうか。

その他の事は愚か、契約を結んだウチキの事すら忘れていたというのに。

難しいことを考えるのが苦手なガーズは、すぐにそのことを頭の隅に追いやった。

 

 

 

「厄介だな…あいつの言葉通りに動かされたんじゃたまったもんじゃない、しかし契約を破棄するにはウチキと接触しなければならない」

 

 

 

思考をめぐらせると再び大きな問題に直面する。

そして同様に頭の隅へ。

それを数回繰り返したのちにある一つの問題に取り掛かることを決めた。

 

 

 

「何はともあれここから出ることから始めるか」

 

 

 

だんだんと体の痺れも取れてきた。

そろそろひと暴れしてやりたい気分だった。

ためしにそこにあるドアでもぶち破ってみようか。

扉の前で拳を固める。

息をスウッっとすって一瞬止まる。

 

 

 

「ガーズパーンチッ!!」

 

 

 

鈍い金属音とともにドアが吹き飛ぶ。

ガーズは打ち付けた右の拳を軽く振り、ポケットへと忍ばせた。

 

 

 

「っち、やっぱり全部盗られているか」

 

 

 

ポケットに手を入れたまま、ガーズは廊下へと進む。

廊下へ出た途端にガーズは違和感を覚えた。

先程うち飛ばした扉は何処へ行ったのか?

いくら広い廊下とはいえ、衝撃音が聞こえないのはおかしい。

何よりもこの違和感を感じさせる雰囲気は何かから発せられているような感じだ。

そしてその違和感をガーズは知っている。

知っているが思い出せない。

この違和感が決して良いものではないことだけは覚えている。

 

 

 

「なんだかわからねェがここしか道は無いみたいだし、行くしかないか…」

 

 

 

言い表せない不安を抱えながら足を進める。

しかしその不安が発言するとはガーズは夢にも思っていなかった。

 

 

 

「ドアが…浮いている」

 

 

 

ガーズの拳の跡が残っている扉が宙で静止していた。

すぐそばの独房から人の気配がしている。

中の人物は女の声でしゃべりかけてきた。

 

 

 

「室内で物を投げてはいけないと教わらなかったのか?」

 

 

 

暗くてよく見えないが、長い銀色の髪がちらついた。

 

 

 

「随分と長生きする男だな、ガーズ氏?」

 

 

 

ガーズのような男に"氏"をつける奴はただの一人しかいない。

 

 

 

「どうした?私の名前を忘れたか、相変わらず記憶力が…」

 

「いや、お前の名前は覚えている、声も顔もな」

 

「それは光栄だ、それでこんな刑務所で何をしているんだ?」

 

「それはこっちのセリフだぜ…キリンよぉ」

 

 

 

檻の隙間からはギラついた二つの目がガーズを見据えていた。

 

 

 

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