無窮なるガーズ   作:おさぴら

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14.一難去って…

「このサイコロはなかなか便利じゃないか」

 

「ぐっ…」

 

 

 

毒で倒れているウチキの上にガチコウが腰かけている。

まるで尻の下にいるウチキなど感知していないかのように、サイコロだけに興味を向ける。

ガーズの家の床でウチキは悔しさに顔をゆがませていた。

 

 

 

「転移魔法が失われてから長い時間が経っているが、まさかこんなところで本物の転移を目の当たりにするとわね」

 

「くっ…黒の民であるのに転移を知らないとは…冗談も対外に…してほしいですねっ…」

 

 

 

黒の民がワープを駆使して他の色の領域を侵略していた。

ならば黒の民であるガチコウも当然転移については知っているはずだ。

それをまるで知らなかったかのような言いぐさがウチキには気にくわなかった。

 

 

 

「なかなか根性あるよね、ウチキってさ。毒が回ってるのによくしゃべるよ本当に」

 

「誉められても…嬉しくないですよ…」

 

「勘違いしないでほしいな、別に誉めているわけじゃないんだ。ああそれともう1つ勘違いしていることがあるよ」

 

「勘違い…?」

 

「僕はね黒の民じゃないんだよ、黒の連中に雇われてるだけなんだよ」

 

「では…あなたは一体…?」

 

「ふーん、詳しい事情も知らないで僕の側についていたなんて、ウチキって案外リスキーな行動するんだね」

 

 

 

決してウチキの質問には答えない。

言葉ではウチキに反応しているが、相変わらずウチキに座っている姿勢は崩そうとはしない。

ようやくウチキの方へ顔だけ向けて話しかける。

 

 

 

「まぁ僕も、君が本当はガーズの肩を持つ奴だってこと、見抜けないでいたからお相子かな?」

 

「あなたの側に…つく前から…私はガーズの味方でしたよ…!」

 

「随分とガーズに執心のようだね?あんな男をかばったところで何にもなりゃしないのに…それとも惚れているのか?」

 

「さっきも言いましたが…私は冗談があまり好きじゃありません…あんな外道男に惚れるなんてことは…」

 

 

 

自分で訊いておきながら、ガチコウは全く反応を示さなかった。

返事の代わりにウチキの横っ腹を足で蹴りつけ、そのまま足で転がす。

ウチキは小さなうめき声を上げ、そのまま床に突っ伏してしまった。

 

 

 

「ふーむ、このサイコロでここに転移してきたのはイイが、これもう1回振ったらどこに転移するんだろうか?」

 

 

 

答えのない問いを独り言のようにつぶやく。

ウチキは静かだった。

 

 

 

「ま、振ってみれば分かるでしょ!そーれ!」

 

 

 

ガチコウは手にしたサイコロを床に投げ、その行方を目で追った。

サイコロは幾度か跳ね、ちょうど床の凹みのあるところで動きを止め、再び白い光を放った。

ガーズの部屋全体が眩い光から解放されると、そこにガチコウの姿は無かった。

ウチキは体の毒と脇腹の痛みにより上体を起こすことができずにいた。

頭を少しだけ上げ、部屋の様子を確認すると違和感に気付く。

 

 

 

「サイコロが…転移していない…?」

 

 

 

振出ダイスはサイコロを振った者とサイコロを特定の位置に転移させる道具。

つまり、ガチコウが転移したならばサイコロも同様に転移するはずだ。

恐らくガチコウも1度振った後、もう1度振ってここに戻ってくる算段だったであろう。

しかし、現実にはサイコロはガーズの部屋に取り残され、ガチコウは転移した。

何はともあれ脅威であったガチコウがこの場から去ったことに安心するウチキ。

 

しかし、新たな脅威が迫っていることにウチキはまだ気づけずにいた。

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