「くっそイライラするな!!」
「れぺん…」
「俺様は嘘をつかれることと、疑われることが大っ嫌いなんだよ!!」
ガーズ達は家から逃げ出し、黄組の領域から外れたところを歩いていた。
身に覚えのない疑いをかけられ逃亡生活をやむなく送ることとなってしまった。
「疑われたままでいるのは気分が悪いな、しかしどうやって疑いを解けばいいか…」
ガーズはあらゆる思考をめぐらせ1つの結果にたどり着いた。
「そうか、分かったぞ!黒組だと疑われているのなら、黒組になってしまえばいい!!」
「ぽぴる!?」
「黒組であれば黒組であるかの疑いではなく、黒組であるという事実となる!俺様やっぱり天才だな!!」
「ぴーろー…」
「そうと決まれば早速黒組の奴らに仲間にしてもらうぞ!」
「ぷー」
「えーっとここから黒組のところに行くには、青組を通っていくのが最短みたいだな」
「ぽー」
「ってわけでウチキ、俺様をひとまず青組の領域まで運べ」
そういってガーズはどこからともなく引き車のようなものを持ち出した。
「りりぷ!?」
「奴隷なんだから当たり前だろう?ほらぼさっとするな!日が沈むまでに着かなかったら晩飯抜きな」
「るぴー…」
ウチキは言われるがまま車を引きトボトボ進み始めた。
外はまだ日中の暑さが残っており、汗がにじみだす。
その一方でガーズは快適な車の中で鼾をかきながら寝ていた。
夜になってもガーズ達が青組のもとへとたどり着くことは無かった。
女性一人だけで車を引くなど到底無理な話だった。
ガーズは気持ちよさそうに寝続けている。
ウチキはガーズを起こすわけにもいかなかった、睡眠を妨害したら何をされるかたまったものではない。
ひたすら車を引き続け、ようやくガーズ達は青組の境界線あたりまで来ることができた。
「れぱ…」
ようやく休めるところまでこれたウチキは車を止め、車に体をあずけるようにして休んだ。
夜空は月が近くで見えるほど澄んでいた。
上へ向けていた視界の端に奇妙なものが映った。
それを注視すると、何かが電燈にぶら下がっているようだった。
気になったウチキは車を離れ、それに近づいた。
だんだんと近づくにつれて、それが人の形をしていることが分かった。むしろ人じゃないか。
そう思っていると、不意にそれがじゃべりかけてきた。
「そこの女史!ここから先は進入禁止だ!そこの標識をよく見たまえ!」
「ぴぴら!?」
当然声をかけられたウチキは驚きのあまり飛び上がった。
よくみると青組への入り口付近には進入禁止の標識が立っていた。
しかし、その標識は少し曲がっており、立っているというよりも刺さっているといった方がよい。
「よし、それでいい!ルールを守ることは良いことだ!」
「ぽんぽ…?」
「むっ!女史よ、さっきから何を訴えようとしているのだ?はっきり言ったら良いではないか!」
「らぱぴ」
「うむ、分からん!だが私の言葉は理解してくれているようだな」
「ぺる!」
「そうか、そうか!時に女史よ、女史のバディはどこにいる?こんな夜中に一人で歩いているとは感心しないな。女性の一人歩きは危険だぞ!」
「りんぴ」
「私か?私はいいのだ!夜警中だからな!」
「ぴる?」
「情けない話だが、今青組は黒組の侵略に脅かされている。今日のところは追い払ったが、いつまたやってくるかも分からない。そこで私が境界付近を見張っているのだ!」
「ぴぽぴれ?」
「一人で大丈夫かって?愚問だな!私を誰だと思っている!トゥ!」
ぶら下がっていた影が夜空を舞い、ウチキの背後へと降り立つ。
「私は青組の風紀委員!キリンだ!」
両手を天に伸ばし、満面の笑みを浮かべる。
銀髪が着地の反動で舞い上がり、白い歯が暗闇に光る。
めくれた上着から青い下着がちっらと見えた。
「毎日安泰安心安全安閑な日を送れるように努めるのが私の使命だ!」
「ぺ…」
「どうだい!女史も風紀委員に入ってみないか?志のあるものは誰だって大歓迎だ!」
「ぺぽろ…」
「見たところ女史は白組のようだな!噂は聞いているぞ!白組の連中は秩序やルール、伝統を重んじる素晴らしい組だと!」
「ぱぴ!?」
「その胸の白い六芒星!どこからどう見ても白組ではないか!」
「…」
ウチキは変な人だと初めから警戒していたが、今の発言でさらに警戒心を強めた。
ウチキが所属する白組は常にその姿を隠して行動している。
どこの組も白組の存在を知ってはいるが、実際に白の民に会ったことは無い。
つまりその姿、服装を知る者はいない…はずだった、キリンを除いて。
白組の服装は統一されていないが唯一の共通点が、胸の六芒星だった。
このことを知っているのは白組だけ、ならばこのキリンは一体どうして…。
「あれれ?そんなに警戒しなくてもいいではないか女史よ!」
「ぽんぴる…」
「白組の服装を知っている事がそんなに怪しいかい?」
「ろぴ…!」
「そういえば、先ほどの質問が途中であったな。どうしてここに一人でいるんだい?」
「…」
「それとも…あの後ろの方に誰かいて、先に一人で様子を見に来たとか…」
「!!」
「今の青組の状況下で青組にやってくるってことは…もしや白組に見せかけた黒組の偵察者か?」
「ぴ…ぴるる!」
「違うのか?じゃぁあの車は誰の車だ?女史の車ではないのか?」
「ぷりぷり!」
「そうか、だったら!」
「ぽんり!?」
キリンは足元にあったマンホールの蓋を持ち上げた。
「不法駐車車両は処分しないとな!」
キリンがガーズが寝ている車に向かってマンホールを投げた。
刹那、爆音が響き渡り、砂埃の向こうで車がぺちゃんこに潰れてしまっていた。
「ぱーぷ!!」
あわてて車のもとに駆け寄るが、車は押しつぶされていて、中で人が生きているとは思えなかった。
ガーズの姿はどこにもなかった。