無窮なるガーズ   作:おさぴら

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7.鳥

ガーズが監視室の扉の前にたどり着くと、部屋の中から聞きなれた声が聞こえた。

 

 

「この声はウチキか!?」

 

 

カギのかかっていない扉を壊す勢いで開ける。

中は薄暗く、壁一面のたくさんのモニターだけが青暗く光っていた。

モニターの前の椅子に誰か座ってはいるが、それ以外の気配は無かった。

その人影はウチキよりも一回り小さいものだった。

 

 

「いま女の声がしたが、お前何か知らないか?」

 

 

椅子が周り、小柄な人物はガーズと向かい合った。

緑にも、黒にも見える少し大きめのコートを着ているが、薄暗くてはっきりとはしない。

 

 

「君がこの部屋に来たのは人探しじゃないだろ?監視室の<操師>を倒しに来たんじゃないの?ガーズ君」

 

「俺のこと…俺の目的を知っているってことは、お前が特異体質の監視員で間違いないみたいだな」

 

「あったりー、ボッケとの会話を全部ここで聞かせてもらってたよ」

 

「盗み聞きとはいい性格しているな、お前とは仲良くなれそうだ」

 

「君と仲良くなんてしたくはないね、それにこれは仕事だから仕方なくやっているだけなの」

 

 

この監視員が刑務所のすべての事を把握しているというのは本当らしかった。

 

 

「あとね、さっきのウチキちゃんの声は僕が真似したんだ、うまいでしょ?」

 

「ウチキの真似だと?」

 

 

真似にしては質が高すぎていた、それこそ声をコピーしたかのように。

 

 

「けっこう音真似には自信があるんだ、君の声だってできるよ」

 

「俺様の声真似だと?」

 

「ぐはははっ!俺様はガーズ様だ!食い物と金目の物出しやがれ!」

 

 

女のウチキと男のガーズ、その両方を完全にコピーしていた。

 

 

「お前はいったいなんなんだ?」

 

「僕は監視員のバイトをしている鵞烏だよ、ガ・チ・コ・ウ、覚えてくれた?」

 

「変な名前だな」

 

 

ガーズの言葉を気にも留めずガチコウは話を進めていった。

今は監視員のバイトをやっているので、逃げ出されたら困るといい、独房に戻ってくれるようにガーズに頼んできた。

もちろんガーズは受け入れず、ガチコウを倒すことを宣言して挑みかかろうとした。

 

 

「君に勝ち目は無いから、怪我する前に戻ってくれないかな?」

 

「問答無用だー!」

 

「聞く耳持たずって感じか…」

 

 

ガーズが鉄くずを振りかぶり、一瞬でその一太刀がガチコウに浴びせられたように見えた。

実際にはガーズの手には鉄くずは無く、鉄くずは宙を舞って部屋の入口の方へと転がっていった。

 

 

「っち!」

 

「結構いい動きするじゃん」

 

 

早すぎて何が起こったのか分からなかった。

 

 

「ハチドリはその羽を1秒間に80回以上も羽ばたかせる」

 

「ハチドリ…なんだそりゃ?急にどうした?」

 

「かつて存在していた鳥の名前だよ」

 

「トリだかハチドリだかしらねぇが、お前が只者ではないのは間違いないな」

 

「ご名答、僕は特異体質もちの<操師>だよ、でも何の特異体質なのかはヒミツ」

 

 

ガチコウが部屋の明るいところまで歩み出ると、その姿が明らかになった。

よく見ればガチコウの頭と体は逆の方向を向いていた。

ガチコウは鳥の特異体質を持っている。

オウムや九官鳥のように音を真似、ハチドリのように素早く動く、紫外線を認識でき、フクロウのように首が360度以上回る。

鳥類の性質を余すことなくその身に携える、それがガチコウの<操師>としての能力だった。

ガーズはそんなことを知る由もなく、無謀にも戦いを挑み続けていた。

 

 

「肉弾戦がダメなら…これでどうだ!!」

 

 

ガーズはポケットに手を突っ込み発明品を取り出そうとした。

 

 

(ビックリアイテムがねぇ!?)

 

「そうそう、君が持っていた、あの怪しげなガラクタ達は所員の人達が持ってっちゃったみたいだよ」

 

 

ガーズの疑問に答える形でガチコウがせせら笑った。

 

 

「しゃあねぇ!こうなったら素手でぼこぼこにしてやるしかねえな!」

 

「おっと、僕に素手で触れるのは…」

 

 

ガーズの拳がガチコウの顎を的確にとらえ、そのまま腕を振りぬく。

ガチコウは大きく後ろにのけ反り、床に倒れた。

 

 

「ぐははは!トリだか何だかしらねーが、所詮このガーズ様の敵ではないのだ!」

 

「どーれ、それでは物色タイムを始めますかな…ぁ?」

 

 

ガーズがガチコウのくすんだ緑色のコートに手をかけたとき、力が急に入らなくなりその場に突っ伏した。

 

 

「畜生!体が動かねェ!おい!てめぇ何しやがった!?」

 

 

しかし、その呼びかけは意識を手放したガチコウに届くことは決してなかった。

 

 

「くそが!もう…意識がぁ!」

 

 

次第にガーズの意識も薄れ始め、しばらくたたないうちに同じように意識を失った。

監視室で男女が床に倒れ、ようやく所内が静かになった。

 

 

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