Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんにちわ、尊とクロノたちに脳内CVをつけようとして女性陣がほとんど思い浮かばなかった作者です。
ちなみに現在こんな感じです

月崎尊:岡本信彦
サ ラ:早見沙織
クロノ:中村悠一
マール:
ルッカ:
エイラ:
ロ ボ:杉田智和
カエル:緑川光
魔 王:子安武人
ダルトン:大塚芳忠

それはさておき、プチラヴォス戦は今回で終わり、後半にシリアスがあります。
後半は自分でもどうしてこうなったかわかりませんが、プロットにかなり影響しそうです。(震え声

どうにかやってみようと努力しますが、一先ず今は本編第28話をご覧ください。

なお、プチラヴォス戦にBGM『ボス・バトル1』を推奨します。
ヤクラなどの通常ボスの時に流れるあれです。


第28話「貴方は……何者なのですか?」

 ……そうか、そういうことか。

 どうして雲が出てきたときの空気が海底神殿を彷彿させ、奴の気配に恐怖したのか、ようやく理解できた。

 あの日――サラの運命を変えた日に初めて遭遇した、俺が元の世界に帰るために倒さなければならない存在。

 

 ラヴォス。

 

 星を喰らい、自らの糧として成長する超生命体。

 

 

「あれがその一部だというのなら、これまでの嫌な感じや怖気も納得できる」

 

 

 何せ海底神殿で俺は奴を一目見た瞬間に、自分が死ぬ姿を幻視したくらいだ。

 あの本体と比べたらその子供であるプチラヴォスなどまさに赤子同然の差があるが、体に刻み付けられた恐怖は奴の影をちらつかせる。

 

 

「尊さん、サラさん。あれを知ってるんですか?」

 

「ああ……あれこそサラ様の国を、世界を破壊しつくした化身の幼生体だ」

 

 

 子供とはいえ、そこにいるのは世界一つを破壊しつくした化け物。その力がフロニャルドに向けて放たれればサラの世界の二の舞になるのではと危惧し、シンクたちは息を呑んだ。

 

 

『アァ……足リヌ……。我ガ体ヲ維持スルニハ魔力ガ足リヌ……。 ――ソノ娘ヲヨコセ。ソレサエ取リ込メバ、我ハ確実ニ本体ト同ジ姿ヲ得ルニ至レルノダ!』

 

 

 プチラヴォスから魔物と同じ刃を持った触手が現れ、サラを捕らえようとこちらに差し向ける。

 この状況でサラが狙われているのなら、俺がやるべきことは一つだ。

 

 

「シンク、姫様、乗れ! 全速でこの場から離脱する!」

 

 

 当初の予定通り、一先ず二人を乗せて砦まで撤退だ。触手がどこまで伸びるかわからないし、手あたり次第攻撃をされて避難した人たちにまで攻撃が及べばもちろんマズい。だが奴の言葉が確かで、サラを取り込まれて第2のラヴォスにでもなられたら、周りの被害云々より前にこの世界の終わりだ。比喩でもなんでもなく、文字通り星が死ぬ。

 二人でも狭く感じていたベースジャバーはさらに倍の人数が乗ったことで十分過剰と言えるほどの重量がかかっているが、ありったけの輝力を推力に回して無理やり万全の時と同じ状態に持ち込もうとする。

 しかしいくら推力を上げようと重量による加速の低下はやはり無視できるものではなく、後ろから迫る触手は徐々にその距離を縮めていた。

 

 

「このぉ!」

 

 

 シンクが剣となったパラディオンを振るい斬撃を飛ばす。

 いくつかの触手はそれで破壊されたが、あとからあとから際限なく湧いてくる。

 

 

「くそ! 砲門が後ろに向けられれば!」

 

 

 原作通りに再現できるのはいいが、次から改良の余地ありだな!

 

 

『墜チヨ!』

 

 

 プチラヴォスから黒い紋章砲が放たれ、まっすぐにベースジャバーに向かってくる。

 フロニャルドで育った個体だから紋章術も使えるってか! ふざけやがって!

 

 

「ディフェンダー!」

 

 

 巨大な盾が展開され、シンクが防御を試みる。

 直撃コースの紋章砲はうまく防げたようだが、受け止めたシンクから苦悶の声が上がり盾もヒビが入っているのかビシビシと亀裂が走る音が聞こえる。くそったれのバ火力め!

 

 

「一気に加速させる! うまく受け流してくれ!」

 

「わ、わかりました……!」

 

「『加速』!」

 

 

 精神コマンドで一気に加速しながら徐々に敵の火線上から逃れるように機体を動かす。それに合わせてシンクも盾を傾けることで砲撃を反らし、ベースジャバーはついに離脱に成功した。

 しかも『加速』をかけたことで触手からも距離を取ることに成功し、気持ち的に少し余裕が出てきた。

 このまま『加速』を連発して砦まで後退してもいいのだが、奴を倒しに行くときにMPがなかったり輝力の使い過ぎで体力が切れたりでもしていたら、いくらUG細胞改の恩恵があってもまずい。

 せめて三人を安全な場所で降すことができれば何とかなるんだが、そんな都合の良い方法は……。

 

 

「姫様ぁー!」「勇者様ぁー!」

 

 

 横から聞き覚えのある声が二つ上がったかと思うと、空を飛ぶセルクルに乗ったエクレールとリコッタがこちらに向かってきていた。

 

 

「ご無事ですか! 姫様!」

 

「ただいま到着でありま――「でかしたおまえらぁぁぁぁぁぁ!」――ひゃわぁ!?」

 

 

 俺の大声にリコッタが驚いているが、それはそれとしてなんという行幸!

 急いでベースジャバーを寄せ、セルクルに隣接させる。

 

 

「エクレール! 事情はあとで話すから大至急この三人をグラナ砦まで送ってくれ!」

 

「え!? まさか尊さん、一人であれと戦うつもりで――うわっ!?」

 

 

 俺の指示がどういうことか察したシンクがそんなことを聞くが、俺は有無を言わさずシンクの首根っこをつかんでセルクルの上に乗せる。俺のしたことに驚いたのか、心配そうにシンクに目をやっていたミルヒオーレ姫もこの隙にシンクの上に降ろし、最後にサラを抱き上げて少ない空いているスペースへ移す。

 

 

「ま、待ってくださいミコトさん! 私も戦えます!」

 

「申し訳ありませんが、奴の狙いはサラ様です。あなたを守りながら戦うには俺はまだ実力不足ですし、取り込まれでもしたらどうなるかあなたも想像できるはずです」

 

「け、けど……!」

 

 

 卑怯な言い方だと自分でも思うが、こうでもしないと彼女はこのままついてきそうなのだ。

 まだ何か言いたそうなサラから視線を外し、セルクルの手綱を握るエクレールと起き上がったシンクに話しかける。

 

 

「シンク、エクレール。必ず二人を砦まで送り届けてくれ。特にサラ様があれに取り込まれてしまえば、脅しでもなんでもなく本当に世界が終わりかねない。いいか、これは本当に大げさに言ってるわけではないぞ!」

 

「わ、わかりました!」

 

「ミコトさん!」

 

 

 最後まで心配そうな声を上げるサラに向き直り、俺は笑みを浮かべる。

 

 

「安心してください、サラ様。この月崎 尊、必ずやあれを滅ぼし、生きてあなたの元に戻ってきます」

 

「……信じて、いいんですか?」

 

「この身の全てを賭けて、約束しましょう」

 

 

 僅かに流れる沈黙。

 一度目を伏せ、サラはゆっくりと口を開く

 

 

「――気を付けて、くださいね」

 

 

 声色は先ほどとあまり変わっていないが、そう言ってくれたサラに俺は敬礼で答え、ベースジャバーを180度回頭させてサテライトエッジをハルバードで召喚する。

 

 

「……ふぅ。改めて思い返すと、かなり恥ずかしいセリフを連発したな。俺」

 

 

 ミドルエーテルを一本飲み干しながら小さく自嘲し、大きく深呼吸をして意識を切り替える。

 目の前には刃の触手が迫っており、その奥には変わらずいるプチラヴォス。

 

 

「――行くぞウニ野郎! 殻すら残してやらねぇからな!!」

 

 

 宣言とともにベースジャバーの紋章砲と『裂空一文字』を同時に放ち、触手を迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 ミルヒの愛騎である飛翔種セルクルのハーランに乗せられたサラは、ずっと尊が向かった方角を見つめていた。

 彼の言った通り、万が一自分がアレに囚われてしまえば、この温かな世界が自分の国と同じ末路を辿ることは容易に想像できる。

 だから尊は自分を逃がし、死を運ぶ存在を滅ぼすべく立ち向かっていった。

 今自分ができることは、彼の無事を祈ることだけだった。

 

 

「サラさん。さっき尊さんが言っていた世界が終わるって、本当ですか?」

 

「……ええ。あれは命あるものに破滅をもたらす、死の存在です」

 

 

 シンクの問いをサラは肯定し、故国の滅亡を思い返す。

 ラヴォスから放たれた光がジールを砕き、大地に降り注いでは世界を滅ぼしたあの光景を。

 繰り返させるなどもっての他なのは百も承知だが、それでも単身で挑みに行った彼の身を案じずにはいられなかった。

 

 

「ミコトさん……」

 

 

 つぶやきは風に消え、しばらくして一行は無事にレオがいるグラナ砦にたどり着くのだった。

 

 

 

 

 

 

「……やはり、行かれるか」

 

 

 禍太刀が落ちた場所へ向かっていたダルキアンとユキカゼだが、空から攻めるそれに気づいて動きを止めていた。

 

 

「御館様、加勢に向かわなくて本当によろしいのですか?」

 

 

 納得できないと思いながらユキカゼが尋ねると、ダルキアンは視線を空に据えたまま優しく答える。

 

 

「心配無用にござるよ、ユキカゼ。 ミコト殿は、あの程度の魔物には絶対に負けぬでござる」

 

「あの程度って……あれは昔御館様に教えていただいた星喰いという魔物では? ミコト殿を随分と信頼されているようですが、この前お会いしたのが初めてでございますよね?」

 

「うむ。ミコト殿とサラ殿からすると、この前に拙者と会ったのが初めてでござるよ」

 

「?」

 

 

 ダルキアンの言い方に首をかしげるユキカゼだが、轟いた轟音に思考が中断された。

 

 

 

 

 

 

 『集中』と『加速』を連発しベースジャバーの軌道を右へ左へ、上へ下へと忙しなく操作し、時には速度に緩急をつけて触手とのタイミングをずらす。

 尊が知る本来のプチラヴォスと違い、この個体はわかっているだけで触手の刃と紋章砲を使用してくる。彼はこれをフロニャルド個体特有のものとし、攻撃手段に関してはクロノ世界の個体とは別物であると決めつけた。

 しかし攻撃はこれだけでなく、彼が知っている本来の個体と同じ攻撃手段も普通に使用されることがこの短時間で分かった。

 

 

「また乱れ吹雪かよ! 状態異常の対策してない上に一人だから食らうとまずいんだよ!」

 

 

 プチラヴォスの口から放たれる攻撃にぼやきながらベースジャバーに回避行動をさせ、最後のミドルエーテルを飲み干してプチラヴォスの頭部にチャージが溜まったブラスターを構える。

 

 

「『勇気』!」

 

 

 銃口を弱点である頭部に向けて必ず攻撃を命中させ、かつダメージを3倍に押し上げる精神コマンド『勇気』を使ったうえでトリガーを容赦なく引く。

 エネルギーの塊が寸分違わず狙った場所に直撃し、轟音とともにプチラヴォスから悲鳴が上がる。

 プチラヴォスからしたら何故ピンポイントに弱点である頭部を狙ってくるのか理解できなかったが、これは単純に尊がプチラヴォスがどういう存在で、どう攻撃すれば安全に倒せるかを知り尽くしているからだ。

 

 

『グゥゥゥ……! 邪魔ヲスルナ! 貴様ノ相手ヲシテイル暇ハナイノダ!』

 

「邪魔するに決まってるだろうが! お前のような存在は一匹たりとも生かしておく理由がない! ましてや、サラをお前如きに吸収されてたまるか!」

 

 

 ツインソードを構え、迫るプチラヴォスニードルを『裂空十文字』で迎撃。

 空の抜け道を確保し、『勇気』に含まれた『加速』を使って地上からくる針の雨を避ける。ベースジャバーの機動力は彼にとって大きな武器となっているので、まだこの機動力を削がれるわけにはいかない尊は慎重に攻撃を凌ぐ。

 彼にとってうれしい誤算だったのは相手のプチラヴォスが今の姿になって間もないため攻撃や防御がワンパターンな上、ラヴォスの吐息やスプレットボムといった魔法系の攻撃をしてこないというアドバンテージがあった。

 スプレットボムを使用されれば攻撃の余波でベースジャバーから転落、もしくはベースジャバーそのものが消滅する可能性もあり、ラヴォスの吐息をもらえばスリープ状態となって戦いの最中に眠ってしまうという絶体絶命な展開もあり得た。

 それを考えれば尊にとっての脅威は混乱してしまう乱れ吹雪か全体に高威力のダメージを与えるプチラヴォスニードル、そして刃の触手と紋章砲くらいで、あとは反撃してくる殻に注意さえすれば――ゲーム上とはいえ――プチラヴォスの倒し方を知り尽くしている彼には大きな障害に足りえない。

 

 

『何故我ガ進化ヲ阻ム! 何故我ヲ拒ム!? 何故我ガ貴様如キニ遅レヲトル!?』

 

 

 理解できないとばかりにプチラヴォスは叫び、やたらめったに攻撃を仕掛ける。

 

 

「まずお前たちの進化は他人の良いとこ取りだ! 自分で成した進化じゃない!」

 

 

 迫る乱れ吹雪を躱し、ニードルを凌ぎ尊は前に進む。

 彼我の距離が100メートルを切ったところでプチラヴォスは触手の防壁を形成し、これ以上の接近を防ごうとする。

 

 

「しかもこれ以上進化の情報が得られないと分かれば用済みとばかりに星を殺す! そんな自分勝手な奴を誰が受け入れる! 『熱血』! てぇッ!!」

 

 

 攻撃力を強化した紋章砲で防壁を破壊。プチラヴォスまで目と鼻の先まで接近する。

 

 

「『勇気』! 『集中』!  ――そしてお前の最大の敗因はなぁ!」

 

 

 最後の『勇気』に『集中』を加えてザンバーを展開し、上段に構える。

 

 

「――サラを泣かせたことだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

ゾンッッッ!!!

 

 

 気合一閃。

 『勇気』によって元々の3倍の威力に挙げられた一撃は『加速』の効果で上がった速度のまま振り抜かれさらにダメージが増加。

 『直撃』の効果で紋章による防御もままならず真っ二つにされた頭部は殻から自壊を始め、ところどころから光が漏れる。

 

 

『シ…ンカ……。本体ト……オナ、ジ…………ソンザ――――』

 

 

カッ!!

 

 その言葉を最後にプチラヴォスは粉々になり、今までその身に蓄えられた輝力が空に昇って弾け暗雲を払い、元の綺麗な空を広げた。

 

 

「――くっはぁ……!」

 

 

 緊張の糸が切れドッと大の字で仰向けに倒れ、尊は張り詰めた空気を思いっきり吐き出す。

 深呼吸で心と体を落ち着け、気怠そうに空を眺める。

 

 

「……とりあえず、最悪の事態は回避できたか。最も、なんであれがこの世界にいたかは分からず終いだったがな」

 

 

 あのプチラヴォスは最初こそ禍太刀として土地神の子を魔物に変えていたが、サラの魔力を吸収することで本体の子――プチラヴォスとしての姿を作り出した。

 つまり禍太刀そのものがラヴォスの一部である可能性が高く、他にも存在する可能性が捨てられなくなってしまった。

 

 

「……あっちのラヴォスを潰したら元の世界に帰るつもりだったけど、またこっちに戻って調べてみるか」

 

 

 少なくとも原因を突き止めなければ、心置きなく元の世界には帰れない。

 そう心に誓って尊は動きたくない体を無理やり動かし、再びベースジャバーを展開してグラナ砦へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

「……本当に勝ってしまったでござる」

 

「言ったでござろう? ミコト殿なら負けはしないと」

 

 

 無事に戦いが終わり呆気にとられるユキカゼにダルキアンは満足そうに笑う。

 今頃は尊もグラナ砦に向かっているであろうと考え、自分たちも向かうべくそれぞれのセルクルの手綱を握り直す。

 

 

「では、姫様たちの出迎えに行くでござるよ」

 

「はい!」

 

 

 ――あと数ヵ月、といったところでござるかな?

 

 

 愛騎ムラクモを走らせながら、ダルキアンはその時にある彼らとの再会を今から心待ちにした。

 

 

 

 

 

 

 魔物の出現がたまたま放送されたこともあり、今回の戦は巨大な魔物の出現による負傷者が出たため中止という形で幕を閉じた。

 幸いにして死者や行方不明者は出ておらず、シンクもミルヒオーレ姫も無事なことから結果として最悪な終わり方は回避されたといっていい。

 魔物が出現した場所に近く、直接戦闘をしたというレオ閣下やミルヒオーレ姫の安否を両国国民の誰もが気にしたが、レオ閣下の代表放送によりその不安も解消された。

 放送でレオ閣下は戦を中止せざるを得なかったことについての謝罪をし、まだまだ領主として未熟な自分を両国国民に支えて欲しいと願い、誰もが歓声を持ってそれに応えた。

 そしてすっかり日も落ちた現在。グラナ砦にほど近い場所にて、今回の戦の埋め合わせも兼ねてミルヒオーレ姫の臨時ライブが開催されることとなり、出店で賑わう人たちを横目に俺とサラはある場所へと向かっていた。

 

 

「――お待たせしました」

 

「すまない、疲れているところを呼び出してしまって。どうしても、確認したいことがあってね」

 

 

 ミルヒオーレ姫がいる楽屋の裏手にやってくると、そこには俺たちを呼び出したロラン騎士団長と先にきて話をしていたシンクとエクレールがいた。

 

 

「勇者殿とエクレールから話を聞いたが、お二人はあの棘のついた魔物について何が知っているそうだね。詳しく教えてもらえないかな?」

 

 

 予想していた通りの質問が投げかけられ、俺はサラがいることを踏まえて言葉を選ぶ。

 

 

「あれはサラ様の国と世界を滅ぼした魔物の幼生体です。生まれたばかりでまだ力がないことが幸いしましたが、あれが成長すれば一匹でこの世界を焼き滅ぼしていたでしょう」

 

「一匹で国だけでなく世界を滅ぼしただって?」

 

 

 スケールの大きすぎる被害に驚くロランさんだが、隣にいたサラも肯定したことで納得する。

 

 

「奴はサラ様を吸収することであれ以上に強くなろうとしていました。だから俺はエクレールにサラ様を連れて行ってもらい、あれの撃破に向かいました。後はまあ、五体満足な俺を見てもらえればわかるかと」

 

 

 最も手足がもげようがUG細胞改のおかげで一分もたたずに元通りになるのだがな。

 

 

「……なるほど。ではあれがどこから来たかは、わかるかい?」

 

「流石にそこまでは。むしろ俺が知りたいですね」

 

 

 そもそもあのプチラヴォスが言っていた本体の個体がクロノの世界にいる個体と同一だと断定もできないのだ。

 その辺の調査もクロノ世界のラヴォスを潰してから調べるとしよう。そう考えるとシンクの送還が終わってからサラと一緒にあっちの世界へ戻る必要があるな。

 

 

「――わかった。話をしてくれてありがとう。私はこれから打ち合わせがあるので失礼するが、みんなはこの後のライブを楽しんでくれ。では」

 

 

 そう言ってロランさんは爽やかな笑みとともに立ち去る。このライブの警備に騎士団も駆り出されているようだし、打ち合わせってそっちのことか?

 

 

「そういえばエクレール。シンクを先に行かせるためにトルネイダーから落ちたって聞いたが、大丈夫か?」

 

「平気です。サラ殿のおかげで、すっかりよくなりました」

 

「僕も尊さんに怪我を治してもらいましたけど、魔法ってすごいですね」

 

「なに、俺の魔法なんかサラ様のものと比べたらショボイって」

 

 

 正直、プチラヴォスを倒したからレベル上がってるかなと思ったらまったく変わってなかったし、新しい魔法も習得していない。

 どうやらレベルや魔法に関してはあの世界で上げるしかないようだ。

 まあ、自己進化で新しいスキルを身につけられたことを考えれば、そう悲観することでもないんだが。

 

 

「それじゃ、僕とエクレは露店でご飯食べてきますね」

 

「……ん? それってつまり……」

 

 

 俗にいうデートではと思いエクレールの方を見てみると、彼女は顔を赤くしするなりシンクの手を取ってさっさと行ってしまった。しかもシンクはそんな彼女の様子に気づいていないらしく、引っ張られることに抗議の声を上げるだけだった。

 

 

「……エクレールも大変だな」

 

「そうですね……。あの、ミコトさん」

 

 

 サラは俺の前に来ると、いきなり頭を下げた。

 

 

「ありがとうございます。一度ならず二度も助けていただいて」

 

 

 二度も? ……ああ、海底神殿の時も含めてか。

 

 

「いえ、当然のことをしただけですから」

 

「……その当然というのは、私がジールの王女だからですか?」

 

「……えっ」

 

 

 突然サラの雰囲気が変わり、反応が遅れる。

 頭を上げたサラはどこか悔しそうな表情をしており、見方を変えれば泣きそうな子供にも見えた。

 

 

 

 

 

 

「ミコトさんは命をかけてまで私を救ってくれているのに、私は足を引っ張るばかりで何も返せていません。それが……嫌なんです…………」

 

 

 海底神殿で死を覚悟した際に現れ、救い出してくれた時のことと今回のことがサラの頭に浮かぶ。

 いずれも尊という存在がなければ命を落としていた可能性があり、今回に限ってはこの世界を滅ぼす鍵にもなりかけた。

 

 

「魔物に取り込まれたとき…私は怖くて震えることしかできませんでした……。助けていただいた後にミコトさんの力になりたいと思ってあの戦いに志願しても、貴方の言葉に何も返せず見送ることしかできなかった……。助けてもらってばかりの私は、どうしたら貴方に報いることができますか?」

 

 

 助けてもらってばかりで何も返せず、どうすれば報いることができるのかわからないまま葛藤する自分。

 そもそもだ――――

 

 

「どうしてミコトさんは、ここまで私を助けようとしてくれるんですか?」

 

 

 馴れ初めは傷だらけの彼を治療したことからだ。

 次に会ってみれば仮面をつけてジールにおり、クロノが再び古代に戻ることも知っていて、さらに海底神殿が崩壊することも知っていた。

 

 

「貴方は……何者なのですか?」

 

 

 全てがそこに集約されている。

 サラは、そう思わずにはいられなかった。




第28話、いかがでしたでしょうか?

あと2話ほどでDOGDAYS1期が終了し、クロノ世界に戻る予定となっています。
DOGDAYS'もやる予定ですが、導入はかなり先となりますので姫様やレオ閣下、そして2期より参戦のクー様をお町の方はしばらくお待ちください。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。


しかしこのシリアス……どうしましょう。(滝汗

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