Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんにちわ、艦これの秋イベでどうにかツェッペリンをお迎えで来た作者です。

さて、今回からストックが増えたらできるだけ連日解放していこうかと思います。
ちなみに現在(12/6日現在)のストックは3本です。
無くなるまでに新しいのを書いていくので連日解放がいつまで続くかわかりませんが、どうか生暖かく見守ってください。

それでは本編第33話、どうぞご覧ください。


第33話「巨人のツメ攻略 前編」

 目を覚ましてまず目に入ったのが顔に手を当ててあたふたするサラの姿だった。

 何故自分が俺と寝ていたかわからず混乱していたが、説明してやると恥ずかしそうにシュンとなった。

 

 

「本当にすみません……。酔っていたとはいえ、大変ご迷惑をおかけしたようで……」

 

「いや、それはもういいって。お互い何もなかったわけだし」

 

「それは、そうですけど……」

 

 

 思い返して羞恥心がぶり返したのか、顔を赤くしてだんだんと語尾が小さくなっていく。うん、こんな仕草を昨日やられてたら100%間違いなく俺は理性がぶっ飛んでとてもここでは表現できないことをやっていただろう。

 

 

「とにかくだ、この話はもう忘れよう。さっさと朝食を取って港で船を借りて、そのまま巨人のツメに向かおう」

 

「……はい」

 

 

 どうにか心の中で整理をつけたのか、少し落ち着いた表情で返事をしてくれた。よし、あとは戦いまくって昨日の出来事を忘れるだけだ。

 ざっと部屋を見渡し、忘れ物がないことを確認して先に部屋を後にする。

 

 

「……ミコトさんが相手なら、何かされてもよかったんですけど」

 

 

 最後にサラが何かぼそっと言っていたようだが、うまく聞き取ることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 港の組合に船を貸してもらえないか交渉し持ち主が亡くなったことで扱いに困っていたという船を1隻売ってもらい、簡単な船のレクチャーを受けて出港してから数時間。俺たちは滞りなく巨人のツメにたどり着くことができた。

 しかし今まで誰もこの洞窟へ立ち入ろうとしなかったらしいが、なるほどこれは現地入りしてみたら納得だわ。

 

 

「洞窟の奥からいろんな咆哮が絶えず響いてるな……」

 

 

 しかもひと際大きな叫びが轟くと他の叫びが一瞬にして止み、しばらくしてからまた騒ぎ出す。

 一番でかい声は間違いなくルストティラノだろう。最深部にいるはずなのになんでここまで声が聞こえるんだよ……。

 しかしあれを倒さないと虹色の貝殻は手に入らず、俺の目論見も達成されることはない。ならばどうにかして殺るしかない。

 

 

「――それじゃあ、俺とガイナーたちが乗り込むから、サラはここで待機していてくれ」

 

「そのことについてなのですが、ミコトさん。私も連れて行ってくれませんか?」

 

 

 予想外の発言に一瞬戸惑うが、冷静にここの危険さを説く。

 

 

「ここから先はかなり危険な魔物がひしめいている。下手をすれば命も落としかねないんだが」

 

「私の使う魔法を知るミコトさんなら、その有用性をよく理解しているのではありませんか?」

 

「む……」

 

 

 確かに彼女の魔法による援護は大いに魅力的だ。特に回復魔法の援護があるなら安心して前の敵に集中もできる。それにここの敵は魔法がよく効くからダメージ効率も戦力的に申し分ない。

 何より体力が多くて厄介なエイシトサウルスの防御力を下げるサンダガを持っているのは大きい。俺もサンダーを使えるが、サラの使う魔法に比べたら威力は雲泥の差だ。

 ……だがそれでも、やはりサラを戦場に立たせるというのはあまり気が進まないな。

 

 

「……どうしてもついて来るか?」

 

「はい。それにグラナ砦の時、私は何もできずにミコトさんを見送るだけでした。何も出来ずにいるのは、もう嫌なんです」

 

 

 なるほど、フロニャルドでも力になれなかった自分が嫌だからこそ、ここで俺のために動きたいということか。

 

 

「……了解した。ただし生き残るのが最優先だ。進行が難しいと思ったらすぐさま引き返すぞ。先頭は俺、真中にサラ、殿はガイナーたちで行く」

 

「はい。よろしくお願いしますね」

 

「――行くぞ」

 

 

 それを合図に俺たちは洞窟へと足を踏み入れる。入って間もなく原作と同様、地面にトマの書いたメモが落ちていた。内容も変わらず落とし穴はわざと落ちないと先に進めないというヒントのものだ。

 メモをそのままにし先へ進むと、不意に開けた空間へと出る。原始の時代にラヴォスが落ちたことで地中に埋まったティラン城の一部、その玉座の間だ。

 

 

「すごい……。洞窟の中にこんな場所があるなんて……」

 

「我々も初めは驚かされました。まさか地下にこのような空間があるとは思いもよりませんでしたので」

 

「こんな場所がここだけということはないだろう。まだ何かあるはずだ。 油断せずに行くぞ」

 

 

 玉座の間を通り過ぎて岩肌の通路に出ると、こちらの気配を察したのかエイシトニクスが4体とエイシトサウルスが姿を現した。

 予想してはいたが、やはりエイシトサウルスは抜きん出てでかいな。

 

 

「よし、蹴散らすぞ! サラはまずサンダガを頼む! ガイナーたちは俺と一緒にサラが撃ち漏らした敵を追撃する!」

 

「わかりました!」「「「承知!」」」

 

 

 サテライトエッジをハルバード形態で呼び出し、経験値が2倍になる『努力』を使用する。このダンジョンで最もHPが低いエイシトニクスはサンダガで全滅する可能性が高いが、逆に最も高いエイシトサウルスはまだまだ余裕があるだろう。

 ただ電撃を受けてしまえばこいつは防御力が低下して叩きやすくなる。

 

 

「行きます! 『サンダガ』!」

 

 

 サラの手から雷撃が迸り、恐竜たちに降り注ぐ。その威力にエイシトニクスのほとんどが断末魔の叫びを上げ、エイシトサウルスも感電して動きが鈍くなる。

 俺はサテライトエッジを握りしめると迷うことなくエイシトサウルスへ突っ込み、最小限の動きを意識しつつ土手っ腹を刃で切り裂き、振り抜いた勢いで一回転してそのまま脳天に叩き付ける!

 流石にこれには耐えきれなかったのか、エイシトサウルスは苦しそうな叫びをあげるとあからさまに動きが鈍くなり、とどめにエイシトニクスを一掃したガイナーたちの一斉攻撃を受けると今まで倒してきた魔物同様に霧となって消滅した。

 割とスムーズに処理できたようにも思えるが、やはり全体に攻撃できかつ防御力を下げたサラのサンダガが大きな要因だろう。

 

 

「サラ、大丈夫か?」

 

「はい。皆さんは?」

 

「ご覧の通り、全員無傷だ。サンダガの戦果が大きかったな」

 

「あのような強力な魔法は魔王しか扱えぬと思っておりましたが、いやはやサラ様も劣らぬ力の持ち主ですな」

 

 

 魔王という単語が出て思わずドキッとなるが何のことかわからないのかサラは頭にハテナを浮かべているようだった。

 ところで、久しぶりのこの世界の戦闘に加えてそれなりの敵を倒したがレベルの方は……おお、とりあえず1だけ上がったか!

 やはりフロニャルドより経験値の効率はいいな。魔法や精神コマンドは変わらずだが、このペースならそれも時間の問題だろう。しかもここにはイワンというドラクエで言うならメタルスライムやはぐれメタルのような経験値をわんさかくれる敵がいる。それを仕留めれば魔法を習得するもの早くなるだろう。

 

 

「よし、先に進むぞ。まだ序盤も序盤だろうからな」

 

 

 俺の声を合図にして、俺たちは再び探索を開始した。

 

 

 

 

 

 

 探索一日目が終了し、俺たちは休息を取るため地上へ上がりシェルターを展開していた。初めて使うシェルターだが内装はシェルターの名にふさわしくしっかりしており、それなりに広い3人分の部屋が存在していた。しかもシャワー室付き。

 ガイナーたちはどこかで調達していた自前のシェルターを使って休んでおり、このシェルターは俺とサラが使っていた。

 そして今、俺は自分の部屋に備え付けられたベッドの上でおおよそのダンジョンの進捗具合と自身のステータスについて確認をしていた。

 進捗については洞窟内が奥に進むにつれて足場の悪いところが多くなり、トマのメモにあった落とし穴の場所にたどり着いたものの、予想以上に疲弊したサラの様子から落とし穴だけ起動させて撤退せざるを得なくなった。また戦闘では頭上から攻撃してくるティランカイトが非常に厄介だった。電気を吸収することを忘れてサラにサンダガを撃たせてしまい、反撃のウイングブロウを俺がかばって一身に受けてしまったため一時混乱状態に陥ってしまった。ガイナーたちの手刀で正気に戻れたが、一歩間違えればサラを襲っていたかもしれないと思うと気が気でない。

 しかし予想以上に戦闘をこなしたのでレベルも相応に上がり、魔法もついに全体攻撃ができるアイスガとケアルより強力な回復魔法のケアルガを習得した。サラがファイガを使えるのでマールたちのように反作用ボム2を使えるように訓練するのもありだな。しかもまだイワンと遭遇していないので、うまく行けばまだまだ伸びる余地がある。

 

 

「伸びると言えば、あいつらも凄まじいよな」

 

 

 北の廃墟でも見事な連携を繰り広げたデナドロ三人集のあいつらだ。一発の威力は弱いと言わざるを得ないが、身軽さと攻撃の速さだけなら間違いなく俺なんて足元にも及ばないだろう。しかもいつの間にかフロニャルドで見た裂空一文字のようなかまいたちを全員が体得していた。

 ただのフリーランサーではないことはわかっていたが、ここにきてさらに認識を改める必要がありそうだ。というか三人だったらレオ閣下とタメを張れるかもしれない。少なくともジェノワーズよりは上だと断言できるほどだからな。

 とりあえず明日は落とし穴の先に行きたいところだが、今日の流れを見る限りサラの調子次第としか言いようがないな。……俺が全体魔法を多用すれば少しは楽になるか? まあいずれにせよ、明日にならないとわからないか。

 

 

「……今の調子は大丈夫なんだろうか」

 

 

 動き回ることに慣れないこともありかなり疲労していたので無理が祟ってないか今更ながら不安になってきた。

 わずかに逡巡し、やはり一度会っておこうと腰を上げる。

 シェルターの構造は階段を下りると小さなホールを中心に3つの部屋に分かれており、俺が使っているのは階段を下りて正面の部屋、サラは階段を下りて左の部屋を使っている。

 

 

「サラ、少しいいか?」

 

 

 ノックをして声をかけるが、扉の向こうからは返事がなかった。不審に思ってもう一度ノックし声をかけるが、反応は変わらず。疲れて寝ているのか?

 

 

「……入るぞ」

 

 

 一言断って扉を開くと、そこには誰もおらずベッドの上には畳まれた服が置いてあった。もしやと思いシャワー室に目をやると、使用中のランプが点灯していた。

 

 

「何だ、シャワーだったか。てっきり寝ていたのかと……」

 

 

 ……待て、確かこのシェルターに脱衣所なんてものはなく、シャワーは入ってすぐ使えるようになっている。つまり、この扉の向こうでは――――。

 

 

「あら? そこに誰か――」「すまんッッ!!」

 

 

 シャワー室の扉が開き肌色の何かが見えた瞬間、俺の体は脊髄反射の如く部屋を飛び出し階段を駆け上がり外へ出る!

 

 

「む!? 御館様! 何事ですか!?」

 

「うおおおおおおおおッ!!」

 

 

 鍛錬をしていたガイナーたちの脇を通り過ぎ、服を着たまま雄叫びと共に海へ向かってダイブ。

 顔の火照りが一気に引いて行くのを感じながら海面に浮かび、体を波に委ねる。

 

 

「……なんかハチ蜜を取りに行って以来、やたらとラブコメチックな展開が多いような……」

 

 

 昨日の宿のことといいさっきの展開といい………………………………さっき見えたのって位置的にむn

 

 

「煩悩退散煩悩退散! 明鏡止水煩悩退散!! 心頭滅却煩悩退散!!! ぬああああああああ!!」

 

 

 頭に浮かんだことを忘れるべく俺は夜の海でやったことのないバタフライや全力クロール、そして意味のない奇行に走るのだった。

 

 

「……御館様は不能なのだろうか?」

 

「純粋なだけではないのか?」

 

「いや、人間の男は気になる異性と共にいると理性を保てなくと聞く。御館様はサラ様を思い自らの野生を鎮めようとしているのではないか?」

 

「なるほど……。しかし、それならば襲ってしまえばいっそ楽になるのではないのか?」

 

「待て、人間の男は気になる異性との一線を超えるときこそ女性との雰囲気を重要視すると聞いたことがある」

 

「つまり御館様はサラ様を思い一線を越える前に襲いかけた自分を鎮めようとしているのだな」

 

「流石御館様。気配りを大事にされておられる」

 

 

 ガイナーたちの間でそんな会話がされているなど露知らず、俺は体力がなくなるまで海で暴れた。

 

 

 翌日

 

 

「ミコトさん、顔色が悪いようですけど、大丈夫ですか?」

 

「……ああ、大丈夫だ」

 

 

 眼の下にこさえた隈を心配されながら俺たちは探索の二日目に突入するのだった。

 

 

 

 

 

 

 移動に慣れたのか、サラは昨日と比べて軽い足取りで奥へと進んでいた。また敵の少なさもあり尊の予想より早く一行は落とし穴の地点にたどり着いた。

 まずガイナーたちが先に降下し深さを確かめ、尊がサラを抱き上げ飛び降りる。着地する直前でブーストアップを使い体を強化し、衝撃を最小限にとどめる。

 フロニャルドで得た紋章術者というスキルを使って輝力を生成してベースジャバーを作ってもよかったが、MPの節約を考慮してそれはなしにした。

 

 

「これで、戻るにはガイナーたちが見つけた別の道へ出るか、ここを上るしか脱出経路はないな」

 

「ご安心を。我らが必ず外へお連れします」

 

 

 堂々としたもの言いに頼もしいと感じながらさらに奥へと進む。

 開けた空間に出たと思えば現れたのは無数のエイシトニクスにティランカイト、そして巨体が目立つフォシルエイプにエイシトサウルスたちだ。

 恐竜たちは自分たちと異なる生物を敵と認識し、一斉に尊たちの方へと殺到する。

 

 

「サラ!」

 

「はい! 『ファイガ』!」

 

「『アイスガ』!」

 

 

 サラが一番近い群れに爆熱の魔法『ファイガ』を放ち、尊がすこし奥の群れに向かって習得したばかりの『アイスガ』を放つ。『サンダガ』ならばエイシトサウルスの防御力を下げれたのだが、電気を吸収しウイングブロウで反撃してくるティランカイトが混ざっているのでリスク回避のために封印せざるを得なかった。

 ガイナーたちは混乱した敵の中に突入し、動きの素早いエイシトニクスとティランカイトを中心に討伐する。また尊もサテライトエッジのブラスターモードでひと際群がっている地点を薙ぎ払い、ボウモードに切り替えて宙を舞うティランカイトを狙い撃ちする。その間サラは前線で戦っているガイナーたちにプロテクトを使用し、突破してきた個体には『ファイガ』や『アイスガ』を見舞う。

 そんな戦い方を続けているといつの間にか数えるのも億劫だった恐竜たちは姿を消し、後には息を切らす尊とサラ、そして息一つ乱していないガイナーたちが残った。

 

 

「こ、ここだけで昨日倒した奴全部と同じくらいいたな」

 

「そう、ですね。ですが、こんなにいるのはそうそうないのでは?」

 

「申し上げにくいのですがサラ様。まだ数か所、ここと同じほどの魔物がひしめく空間がございます」

 

「最低でも2か所。しかしそのうちの一つにここから抜け出す道がございます」

 

「……ここから抜け出すには、あと一回はここと同じ戦い方をする必要があると言うことか」

 

 

 少しうんざりとした表情で尊はその事実を受け止め、ため息をこぼす。フロニャルドの戦で感じた爽快感が懐かしい。

 腹をくくって進むとすぐに同じような空間に抜け、また自分とサラの魔法で大部分を削ってからガイナーたちによる残敵掃討の戦法を敢行する。

 ここの戦いで唯一の救いと言えば、先ほどの空間と比べ天井が低いせいかティランカイトがいなかったので最も有効的な『サンダガ』の魔法が使えたことだろうか。

 防御力が落ちた恐竜たちは次々と討たれ、尊たちの糧となった。またガイナーたちが言っていた抜け道も同じ空間にあったため、尊はサラの疲労からこれ以上は無理と判断し脱出を選択。巨人のツメ攻略二日目はこうして幕を閉じるのだった。


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