Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんばんわ、レコーダーに録画したEXVSFBのプレイ動画(ソロアッガイでボスラッシュ制覇)をPCに移そうとしたらうまくいかず四苦八苦している作者です。

さて、今回からDOG DAYS'編となります。
この章ではシリアスを除いて基本的にやりたい放題やっていくつもりです。
そのためこの章だけで何話行くのか作者にも全く予想がつきません。下手をすればこの章で大台の本編第100話に到達する可能性も……まあ、そうなったらその時ということで。

それでは早速本編第70話、どうぞご覧ください。


DOG DAYS'編
第70話「約束の夏」


 (いくさ)渦巻く大陸、フロニャルド。

 大陸の南方に位置するビスコッティ共和国とその隣国、ガレット獅子団領ではこの春、魔物を巡ってのトラブルが巻き起こった。

 しかしその問題も異世界から召喚されたビスコッティの勇者と、偶然にも異世界からフロニャルドに流れ着いた者の手によって事なきを得ることができた。

 その後勇者は送還により元の世界へ、流浪人も一緒に流れ着いた女性とともに自分たちがきた世界へと帰還した。

 あの出来事から3ヶ月。季節は巡って夏となり、この日は勇者がフロニャルドへ戻ってくる日。

 そして図らずも、流浪人たちが仲間を連れ、再びこの地へやってくるのだった。

 

 

 

 

 

『さぁさぁ! 空は晴天、本日も絶好の戦日和です! 主役の到着はまだですが、ビスコッティとガレットの戦いは既に始まっております!』

 

『現在こちらには、戦の解説としてビッグゲストをお招きしております!』

 

『そうなんです! ガレットからは騎士団長バナード将軍と、レオ様のお側役のビオレさん!』

 

『そしてビスコッティからは同じく騎士団長のロラン団長と、隠密部隊頭領のダルキアン卿!』

 

 

 メインステージ上で二人の司会者、フランボワーズ・シャルレーとパーシー・ガウディがマイクに向かって叫ぶ。

 二人の熱に呼応するように会場の客席からは歓声が上がり、中継先の兵士たちも武器を掲げ大いに楽しんでいるのをアピールする。

 今回の戦は『お帰り勇者様、歓迎記念戦興業』と銘が打たれており、春先にフロニャルドの危機に立ち向かった勇者が再びやってくるということで、戦の参加者のみならず中継を見ている国民たちもその雄姿を記憶に刻むべく登場の瞬間を待ち望んでいた。

 

 

「本日の主役、ビスコッティの勇者殿は、もうすぐこちらに到着するそうです」

 

「我らが姫様と親衛隊長も一緒にござる」

 

「こちらもレオ様が間もなく到着されますよー」

 

「無論、ガウル殿下もご一緒にです」

 

『戦線の皆さん! お聞きになった通りです! 両国主力が到着すれば、戦場は大変なことになります!』

 

『なので今のうちにポイントをしっかり稼いで行きましょう! その活躍がそのまま勝利に反映されますよ!』

 

 

――うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 

 メインステージからの檄に戦場から鬨の声が上がり、戦いはより一層激しさを増した。

 戦場の映像をステージ上の大型スクリーンに流しつつ、フランボワーズがもう一つの話題を持ち出す。

 

 

『さて、勇者様と言えばもう一つ。春の戦でガレット側の戦士として参加し、魔物騒動の時は勇者殿とともに戦った異世界の戦士がいましたね』

 

『はい。私も勇者殿と親衛隊長を相手に立ち回る姿を間近で拝見していましたが、あの人は今どうしているでしょう。解説の皆さん、何かご存知ではありませんか?』

 

 

 パーシーに訊ねられた解説陣だが、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべるだけだった。

 

 

「実は我々も、あの二人がどうなったかわかっていないのです。レオ閣下には調査のため早ければ一月ほどで戻るとお伝えしていたようですが、こうして音沙汰がない以上はまだ戻っておられないようです」

 

「ビスコッティでも同じでござる。ですが、我らは必ず戻ってくると信じているでござるよ」

 

『そうですか。では、その話題の人物、戦士ミコトが当時どのような戦いをしていたのか、VTRで振り返ってみましょう!』

 

 

 戦場を映すスクリーンの上にもう一つ映像が展開され、ビスコッティの勇者と親衛隊長を圧倒する男の映像が映し出された。

 勇者の宝剣と同じく複数の形態に変形する武器。輝力とはまた違う魔法という力。それらをいかんなく発揮して戦う月崎尊の姿がそこにあった。

 

 

「……ダルキアン卿。ミコト殿はまたこの世界に来ると思うかい?」

 

 

 映像を眺めながらロランは隣の席の人物に問う。話を振られた彼女は小さく笑みを浮かべ、楽しそうに答える。

 

 

「可能性は高いでござろう。3ヶ月前も勇者殿が召喚されたときに現れたと聞く。もしかすれば今回も」

 

「なるほど……だとすると、とても楽しみだ」

 

 

 ダルキアンの答えにロランも笑みを浮かべ、当時のことと重ねながらその光景を思い浮かべる。

 現れた尊たちに勇者であるシンクと、彼のことを気に入っていたガレットの王子ガウルとその親衛隊ジェノワーズが喜んで迎え、待たせすぎたことに文句を言うべくレオが宝剣片手に突撃をかます。

 そんな光景が容易に想像でき、ロランは本当に楽しみにしつつ笑みを深めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 真っ先にフロニャルドの大地を踏んだ尊は全員が無事に移動できたのを確認すると、すぐに現在地が何処なのか記憶と照らし合わせる。

 

 

「ここは……召喚台の入り口か」

 

 

 ゲートを抜けて降り立った場所は、最後にこの世界を去ったのと同じビスコッティ共和国内の召喚台に通じる道の前だった。

 3ヶ月前。ビスコッティ共和国の勇者として日本の少年シンク・イズミがこのフロニャルドに召喚され、勇者の名に恥じぬ戦いぶりを発揮して隣国ガレット獅子団領との戦いで連敗を喫していたビスコッティに勝利をもたらした。その勇者のデビュー戦に図らずもラヴォスの脅威から逃れてきた尊とサラが闖入することになり、敵と間違われてガレット兵に追い回されたりしたが、それも二人にはいい思い出だ。

 さて、初めてやってくる世界に驚きは付き物である。現代から荒廃した未来に移動した時のクロノたち然り、特地から日本に向かった時のテュカたち然り。そして今回も、彼らはその例から漏れることはなかった。

 

 

「みてみてクロノ! 島がジールみたいに浮いてる!」

 

「太陽は出てるけど、空は紫がかっているのね。地球や特地の大気と違って青より紫が出やすいのかしら?」

 

「森、たくさん! エイラ、わくわくする!」

 

「何かしら? 精霊のようなそうでないような、不思議な性質の精霊みたいなのがいるわ」

 

「ニホンも興味深かったけど、この世界もなかなか……」

 

 

 今まで見たことのない光景にはしゃぐ面々に尊とサラが苦笑を浮かべていると、離れた場所から花火が上がった。

 ドンッドンッと響く音にクロノたちが何事かと目を向ける中、思い当たる節がある二人が口を開く。

 

 

「あそこは……確かファルネットだったか?」

 

「戦みたいですね。ガレットとビスコッティが戦っているのかもしれません」

 

「い、戦? 大丈夫なんですか?」

 

 

 不穏なワードにクロノが反応するが、すぐに尊が解説を挟む。

 

 

「大丈夫だ。この世界で言う戦はいわゆるスポーツイベントで、守護力と呼ばれるこの世界特有の力で守られている限り死傷者はまず出ない」

 

「それってぇ、私が思いっきり暴れても大丈夫ってことぉ?」

 

 

 ロゥリィが期待を込めた眼差しで尋ね、尊は過去の戦を思い返す。

 

 ――守護力の利いている地帯であればレオ閣下やダルキアン卿の一撃でも一般兵が無事だったから……たぶん大丈夫か? けど、ロゥリィのパワーもトンデモだからなぁ……。

 

 

「戦うことになったとしても、とりあえずは念のため全力の5割くらいに留めてくれ。守護力があるとはいえ、亜神の力は文字通り桁違いだからな」

 

 

 尊の脳裏にはイタリカで無双するロゥリィの姿が浮かんでいた。小柄な体に似合わない圧倒的な亜神としての戦闘力は、大の大人の体を容易に分断させるほどの力があった。守護力があるから大丈夫だと思いたいが、念には念を入れておきたいところである。

 

 

「よし、早速向かうぞ。あそこなら高い確率で知り合いがいるはずだ」

 

「向かうのはいいが、この人数であそこまでは少し時間がかかりそうだぞ。お前の輝力武装とやらも限度があるはずだが」

 

「いや、輝力武装はもともとこの世界特有の力だから他の世界と比べて使用の制約が非常に緩くなるし、ゴールドピアスの恩恵もあるから大丈夫だ。それにせっかくだからその辺のテストも兼ねて大人数が乗っても安全なものにしてっと……」

 

 

 右手に紋章を宿すと今まで以上に巨大な紋章が展開され、現れたのは屋根こそないが特地で自衛隊が使用していた高機動車によく似た車だった。

 輝力武装の特徴はイメージが明確なほど確かな形と力を得るというもの。特地でしょっちゅう自衛隊の高機動車を目の当たりにしたり、ルッカやロボと一緒に整備現場を見学したおかげでかなり細部まで再現ができていた。そうでなくとも車の基本的な原理はよく知っているので、それさえ分かっていれば輝力武装による車の再現は容易だったと言えよう。

 そんな見慣れた乗り物が出てきてまずレレイが乗り込み、つられるようにロゥリィとテュカ、そしてクロノたちが乗り込む。車を作った尊は運転席に座り、シートベルトを装着してハンドルを握る。隣の助手席にはサラが乗り込み、同じようにシートベルトを着用した。

 

 

「ミコト、運転できるのか?」

 

「車なんて基本はみんな一緒だ。アクセルを踏めば前に進むし、ブレーキを踏めば停まる。進行方向に沿ってハンドルを切ればちゃんと曲がるし、しかもベースジャバーと同じく輝力を燃料にしているから環境にも優しい」

 

 

 魔王の言葉にそう返してギアをニュートラルに入れたまま軽くアクセルを踏む。――どんなエンジンかは知らないが――ボンネットの中から唸るような音が上がり、仕様に問題ないことを確認する。

 

 

「発進するぞ。特地の道を行くのと同じ感じになるから、振動に注意してくれ」

 

 

 それだけ警告し、尊作輝力製高機動車は『お帰り勇者様、歓迎記念戦興業』が行われている戦場ファルネットへと進路を取った。

 

 

 

 

 

 

 ファルネットでの戦況は目まぐるしく変化していた。

 まず最初の変化はガレット側から主力部隊のひとつ、ガウル率いるジェノワーズが現れたことで徐々にガレット有利に傾きつつあった。しかしビスコッティ側からもついに今回の主役である勇者、シンク・イズミや親衛隊長エクレールといった主力が到着と同時にジェノワーズを撃破したことで勝負は振り出しの互角へ。

 そのタイミングでガレット軍の総大将、レオンミシェリがガレットの勇者としてシンクの従姉にして師匠でライバルの高槻七海を投入。彼女は日本から来たシンクとその幼馴染レベッカ・アンダーソンと違いロンドンに住んでいたため、ガレットの勇者召喚でこのフロニャルドにやってきて正式にガレットの勇者として参戦した。

 両軍切り札が出そろい、シンクはエクレール、ユキカゼらとともに歯車エリアの敵兵を撃破しながら進軍。ガレット側もレオ自らの出撃と参戦したばかりとはいえ勇者として恥じぬ戦いぶりを見せる七海の活躍もあり、戦況は五分五分のまま二人の勇者を引き合わす。

 

 

「行くよシンク! 真剣勝負!」

 

「望むところ!」

 

「「レディ、ゴーッ!!」」

 

 

 棒状の神剣パラディオンと、同じく棒状の神剣エクスマキナが正面からぶつかり合う。神剣同士の戦い故か、凄まじい衝撃波があたりに吹き荒ぶ。

 "けものだま"となった兵士たちが木の葉の如く宙を舞い、四方八方へと吹き飛ばされていく。救護班が慌てて回収に向かうが、やはり勇者対決は見ておきたいのか視線はチラチラと二人の元へ向けられていた。

 レオもまた滝エリアに乱立する丸太の足場に愛騎ドーマに騎乗したまま辿り着くと、勇者たちの戦いに満足そうに頷く。

 

 

「ふむ。やはり勇者対決ともなれば、大いに盛り上がりそうじゃな」

 

「ですがあちらばかり盛り上がられては、拙者たちの立つ瀬がないでござる」

 

「そういうわけで、レオ様。お相手願います」

 

「よかろう。二人まとめて、相手をしてやろう!」

 

 

 エクレールとユキカゼに向かって紋章を顕現させながら堂々と宣言し、ドーマに装備させていた戦斧と盾を手に迎え撃つ。

 

 ――ミコト、サラ殿。お主らはいつ戻ってくるのじゃ。せっかく勇者とその友人らも来ておるのに、お主らがおらねばどうにもしっくり来ぬわ。

 

 この場にいない恩人たちの姿を思い浮かべながら二人の攻撃を凌ぎ、すぐさま広範囲紋章術で応戦する。並の兵ならこれだけで"けものだま"の山を作っているが、流石ビスコッティ騎士団切っての軽装戦士コンビ。身軽さを生かして範囲外へ離脱し、丸太の足場で身動きがとりづらい点を利用し遠距離攻撃でその場に釘付けにする。

 

 

「ユキカゼ式忍術! 『閃華双烈風』!!」

 

 

 ユキカゼが両手に構えた輝力の大型手裏剣を放ち、レオを挟むように襲撃する。

 両手に持った武器と盾でそれらを受け止め、雄たけびとともに力技でかき消す。硝子が砕けるように二つの手裏剣は消滅したが、盾には浅くない亀裂が走った。そんな絶好の場所を見逃すわけもなく、別方向から迫っていたエクレールが亀裂に向かって短剣を突き立てる。拮抗したのもほんの僅か。先に盾が限界を迎えて砕け散り、衝撃でレオのガードが緩くなる。

 

 

「ユキ!」

 

「承知でござる!」

 

 

 絶好の好機と見たのか、エクレールの呼びかけに答えるようにレオの背後の虚空からユキカゼが姿を現し、エクレールと挟撃するように小太刀を構える。

 

 

「レオ様! 御覚悟を!」

 

「ふっ、ヌルい!」

 

 

 勝ちをほぼ確信したエクレールが短刀を構えて足場を蹴る。だがレオは不敵に笑い、短刀を伸ばしたエクレールの腕を難なく掴むとそのまま後ろに向かって振りかぶる。その先には挟撃しようとしていたユキカゼの姿が。

 

 

「「うわああああああ!?」」

 

 

 ユキカゼは叩き付けられたエクレールもろとも後方へと弾き飛ばされ、水切りをする石のように水面を跳ねる。その途中でどうにか体勢を整え近くの桟橋に着地するが、その過程はレオに大技の準備をさせるのに十分すぎる時間を与えてしまった。

 

 

「ふははは! 覚悟はいいか!」

 

 

 輝力のオーラと紋章術による炎を滾らせ、レオは全力で戦斧を振るう。

 

 

「『獅子王烈火爆炎斬』!!」

 

 

 放たれた炎が鳥の形を成して空を舞い、行く手を阻む足場をものともせず破壊しながらエクレールたちの元へ着弾する。

 爆炎が立ち上り誰もが二人の様子を気にする中、煙の中から何かが飛び出す。

 

 

「ふぅー、危機一髪にござるよ」

 

 

 エクレールを抱えたユキカゼから安堵が漏れる。あの一撃を真っ向から受けていては間違いなくただでは済まなかっただろう。

 しかし、『天下無双』の異名を持つレオの一撃は躱したと思わせてはくれなかった。

 

ビキィッ! ビリィッ!

 

 

「うわっ!?」

 

「おおっ!?」

 

 

 再び丸太の足場に戻ってきた二人だが、構えた瞬間に武器が砕けたり身につけた衣服が破れるなどのダメージが遅れてやってきた。

 

 

「はっはっは! その程度で我が一撃を完全に逃れたと思うたか!?」

 

『機動性重視の隠密衣装は防御力が低いため、攻撃を喰らうと大変危険なのです!』

 

「あははー、そうなのでござるよ」

 

「ユキ。一度引いて、装備を整えよう。二人がかりとはいえ、武器がなければレオ様とは戦えない」

 

「了解でござる」

 

 

 エクレールの提案にユキカゼも同調し、二人はレオを残してビスコッティ側の補給地点へと撤退する。

 

 

「さて、ワシはどうするか……」

 

 

 相手がいなくなったことで自分も補給に戻ろうかと考えたところで、フランボワーズの実況が耳に届く。

 

 

『たった今入った情報です! 戦場の範囲外から自走する馬車籠が乱入し、フィールドを駆け巡っているそうです!』

 

「なに?」

 

 

 近くの映像に目を向けると、確かに凄まじい速度で戦場を駆ける迷彩柄の車が中央フィールドに向かって爆走していた。

 どこのバカだと思い目を凝らすと、レオは運転席らしき場所に見知った顔を見つけるのだった。




本編第70話、いかがでしたでしょうか?

尊たちと犬日々メンバーが会合するのは次回となります。
ですが現在、プロットの調整を行っているため次回投稿がいつになるか未定となっております。
早めに投稿できるよう努力しますが、場つなぎ(?)でMLOWを更新、またはオリジナル作品の試験的な投稿をするかもしれません。
どれが投稿されるかわかりませんが、今後も本作をよろしくお願いします。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。

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