Jumper -世界のゲートを開く者-   作:明石明

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どうもこんばんわ、スランプやらイベントやらで投稿が遅くなった作者です。

さて、今回はついにフロニャルドの面々と合流します。
今回は顔合わせが主な展開となっておりますが、次回から戦に入ろうと考えています。
また、一部に独自解釈がありますのでご了承ください。

それはさておき早速本編第71話、どうぞご覧ください。


第71話「再会と出会い」

「み、ミコトさん! これ本当に大丈夫なんですか!?」

 

戦場(いくさば)に紛れ込んだ時点で大丈夫じゃない! だから行けるところまでとことん突っ走る!」

 

 

 クロノの切羽詰まった声が耳に届く中、運転席でハンドルを握る尊が可能な限りアクセルを踏み込みつつ答える。

 現在彼らは、戦真っただ中のフィールドを高機動車で疾走していた。その光景に見たことのない乗り物に一般兵たちが驚き、骨のある騎士たちが敵側の新兵器かと勘繰って矢を番えたりセルクルで可能な限り並走しながら剣を振るう。

 なぜこうなってしまったのか、理由はごく単純なことだ。ファルネットのガレット陣営を目指して高機動車を走らせていたのだが、間違えてあろうことか戦場の中に踊り出てしまったからだ。引き返そうにも直ぐに一般兵や騎士たちに囲まれつつあり、数ヶ月前のデジャヴが頭を過ぎったこともあって尊は包囲網が完成する前に突破を慣行。どうにか囲まれる前に飛び出せたのはよかったが、進行方向は戦場の中心部に向かっていた。さらに引き返そうにも障害物や兵士たちが邪魔でUターンができず、結局そのまま中心部に向かって激走することとなってしまったのだ。

 右へ左へ揺られながら、ロゥリィがふてくされた様子で声を張り上げる。

 

 

「ねぇ! そこらへんのキャットピープルとかワーウルフと戦っちゃダメなのぉ!?」

 

「それは本当に最悪の場合だ! 今はまだ――「ミコト、何か来る」――は?」

 

 

 レレイの言葉に振り返ってみれば、何やら見たことのある金髪の少年と活発そうな少女が紋章砲を撃ち合いながら迫っており、その流れ弾がこちらにも向かっていた。それも見た感じかなりの威力を持った一撃が。

 

 ――あ、これあかん奴や。

 

ズガァン!

 

 

「ぬぉおおお!?」「うわあああ!?」「きゃあああ!?」

 

 

 紋章砲が直撃し車が宙を舞う。車内が阿鼻叫喚となる中、尊は咄嗟に車を消滅させて全員を宙に投げ出させる。窮屈な車内から身体が投げ出されたのを感じて荒事に慣れているメンバーは自力で着地体制を整え、そうでないレレイとテュカを魔王とロゥリィが助け、尊は隣にいたサラを引き寄せつつ精神コマンドの『集中』とブーストアップを使って体制を整え着地に成功する。

 

 

「――みんな、無事か!?」

 

「ど、どうにか」

 

「びっくりしたー」

 

「あれ!? 尊さんにサラさん!?」

 

 

 ブーストアップの副作用に頭を抑えながら周りの無事を確認していると、今度は驚きの声が聞こえそちらの方に目を向ける。

 案の定、ビスコッティの勇者シンクが先ほどまで戦っていた少女と一緒にこちらへ向かってきていた。

 

 

「よぉシンク、久しぶりの再会にキッツい紋章砲の流れ弾をありがとう。生きた心地がしなかったぜ」

 

「え、えーっと、ごめんなさい?」

 

 

 苦笑いを浮かべ謝罪するシンクに笑みを返し、状況を確認しようと口を開く。

 

 

「シンク、この戦ってやっぱりガレットとビスコッティの――ッ!?」

 

 

 突如、背筋にぞくっと悪寒が走る。思わず振り返ったその先には、力強く駆けるセルクルに跨りながらも手にした武器に輝力を解放している――――『天下無双』の姿が。

 

 

「遅いわ戯けがぁぁぁぁっ!」

 

「うおおおおおお!?」

 

 

ガキィインッ!!

 

 レオが尊に掛けたのは普通に再会を喜ぶものではなく、遅すぎる再来に対する文句であった。しかもグランヴェールによるキツイ一撃付き。

 咄嗟にサテライトエッジをシールドにして受け止めるが、とてつもない衝撃が腕を伝わり足元を陥没させる。

 それでもどうにかブーストアップを再度使用することで力を加え拮抗させることに成功する。レベルが上がったことで基礎ステータスも上がっているおかげか、拮抗させるまでにそれほど時間はかからなかった。

 しかし肉体強化をしてなおいっぱいいっぱいな尊とは対照的に、己の純粋な力のみでぎりぎりと力比べをしながらレオは涼しい笑みを浮かべる。

 

 

「ほう、力をつけてきてはいるようだな。これでねじ伏せられたら何をしてきたのかと怒鳴り倒しておったわ」

 

「色々ありましたんでね……っ! 遅くなったことは弁明の使用もありませんが、もう少し力を抜いてもらえればうれしかったです……っ!」

 

「フン。 まあ、このくらいで許してやろう。遅れたとはいえ、確かに約束を果たしたのだからな」

 

 

 力を抜いて闘気を収め、レオはドーマから降りるとグランヴェールを突き立て、尊に手を差し出す。

 

 

「よくぞ戻ってきてくれた。ガレット獅子団領領主として、ワシはお主らを歓迎する」

 

 

 余裕が出来た尊も笑みを浮かべ、サテライトエッジを収納するとその手を取って握手する。

 

 

「感謝します、閣下」

 

 

 

 

 

 

 尊たちが乱入したことと、ちょうど昼休みの時間が迫っていたこともあって戦は中断となり、一団はレオに案内される形でビスコッティ本陣にやってきた。

 レオ同様、この世界を去って以来の会合となるミルヒオーレの他。シンクの地球からガレットの勇者として召喚され、先ほどまで彼と戦っていた従姉の高槻七海と、幼馴染のレベッカ・アンダーソンと顔合わせとなった。

 

 

「お久しぶりです、ミコトさん、サラさん。春の戦では、本当にお世話になりました」

 

「こちらこそ。お元気そうで何よりです」

 

「あれからどうですか? ダルキアン卿やユキカゼが加わったことで、ビスコッティも勝率が上がったんじゃないですか?」

 

「ええ! おかげさまで!」

 

 

 再会を喜び合いながら軽く挨拶を交わしたところで、双方のつなぎ役となる尊が紹介を取り持つことにした。

 

 

「紹介します。俺とサラの仲間たちと、別の世界で知り合った三人です。 みんな。こちらはビスコッティ共和国の領主、ミルヒオーレ姫だ」

 

「初めまして。ご紹介に預かりました、ミルヒオーレ・フィリアンノ・ビスコッティと申します」

 

「こんな少女が領主とは……。同じ姫としてはどんな感想だ、マール」

 

「いやぁ……スゴイとしか言えないよ」

 

 

 カエルの言葉に同じく一国の姫であるマールは、尊敬の念を込めた眼差しをミルヒに向ける。そういえばマールもお姫様だったなとクロノやルッカが零す中、今度はシンクから質問が上がった。

 

 

「尊さん。さっき別の世界で知り合った三人って言ってましたけど、どういうことですか?」

 

「そのままの意味だな。こっちの三人は、俺たちが流れ着いた特地って呼ばれる別の世界で知り合った三人なんだ。 実はその世界、異世界につながる門が開いて起こった事件が切っ掛けで、魔法とかドラゴンがいる世界に自衛隊が駐屯している」

 

「「「自衛隊!?」」」

 

 

 流石に予想外な世界観に、シンクを含めた地球出身の三人は驚愕する。その様子を見て内心でニヤニヤしながら、尊はクロノたちより先に三人の紹介をする。

 

 

「杖を持っているのが魔導師のレレイ・ラ・レレーナ。耳が長いのがエルフのテュカ・ルナ・マルソー、ハルバードを持っているのが亜神ロゥリィ・マーキュリーだ」

 

「あ、亜神? ていうか、エルフ!? 本当ですか!?」

 

「ええ、本当よ。触ってみる?」

 

「わっ! わっ! すごい! 小説とかゲームだけの存在じゃないんだ!」

 

「そういえばベッキー、ファンタジー小説とかRPG好きだったね」

 

「あ、すいませんテュカさん。写真撮らせてもらっていいですか?」

 

 

 レベッカの反応を見て参考人招致の時のように耳をピコピコ動かして見せるテュカ。それをみて大はしゃぎする三人の反応に少し満足したうえで、尊は個人的に本命のロゥリィについて説明する。

 

 

「ロゥリィは亜神って紹介したけど、ぶっちゃけてしまえば彼女は神様だ」

 

「神様って、土地神様と同じようなものですか?」

 

「えっと…少し違うと思います。どちらかと言えば、ユキカゼさんが彼女に近い存在かと。けどそれ以上に、積み重ねた年月は彼女より圧倒的に上だと思います」

 

 

 サラが以前フロニャルドを訪れた時に得た知識と照らし合わせてミルヒの問いに答える。

 フロニャルドにおいて土地神とは大きく分けて二種類あり、一つは精霊に近い半透明の生き物だ。彼らの生息する場所は基本的に自然の恵みが豊かで、かつ守護力に満ち溢れているため人にとっても安心して生活できる場所となっている。

 もう一つはユキカゼのようにはっきりとした姿を持った土地神で、有体に言えば精霊に近い土地神よりも上位に位置する土地神となる。また余談となるが、春の戦で禍太刀によって魔物となってしまっていた子狐もこれにあたる。

 

 

「なに? ということはこの者……いや、この方はダルキアンより長く生きておられるということか?」

 

「気になるのぉ?」

 

「……教えていただけるか?」

 

 

 レオの言葉に不敵な笑みを浮かべるロゥリィ。失礼だと思いつつも好奇心が勝ったのか、控えめに尋ねる彼女にロゥリィは参考人招致の時を思い出しながら実に楽しそうに答える。

 

 

「961歳よぉ」

 

 

 その言葉に、場の空気が二つに分かれた。既に知っているためやはり桁違いだという感想を抱いたクロノ組と、予想以上の年齢に凍り付いたフロニャルド組。尊とサラの予想ではシンクたちがもっと慌てるかと思ったが、次元が違い過ぎて言葉もなかった。

 

 

「ず、ずいぶんと……お、お若く見えますね」

 

「ふふ、ありがとぉ」

 

 

 必死に頭を捻りだした言葉がそれなのだろう、ミルヒが苦笑いを浮かべそう述べる。ロゥリィ自身もこういった反応には慣れているのか、笑みを浮かべてその言葉を受け取る。その横でシンクたちがひそひそと「不老不死?」と相談し合っていたが、間違いではないと尊たちは胸中で答える。

 

 ――テュカが165歳でロゥリィと似たようなものだと知ったら……いや、あまり変わらないか?

 

 見た目が高校生か大学生程でありながら165歳という年齢とはいえ、如何せんロゥリィのインパクトが強すぎる。何よりレベッカはファンタジー小説を好んで読んでおり、エルフと言えば不老長命の種族という固定観念が定着しているので「やっぱりエルフなんだ」と改めて認識するにとどまるかもしれない。そこまで思ったところで尊が思考を打ち切ると、レオから一つの提案が上がった。

 

 

「そうじゃ。お主らも今回の戦に参加せぬか?」

 

「いいんですか? これって一応、国同士の戦いのはずじゃ」

 

「ガレット、ビスコッティのどちらにも属さない特殊勢力として混ぜ込んでしまえば問題なかろう。ミルヒはどうじゃ?」

 

「私も賛成です。皆さんにもフロニャルドの戦を楽しんでもらえるいい機会だと思いますし」

 

 

 ルッカの懸念も両国領主の公認によって解消され、参加してみたいと思っていた面々は誰もがやる気に満ちた表情を浮かべる。特にロゥリィはその言葉を待っていたと言わんばかりの満面の笑みだ。

 

 

「ほら、尊さんたちも参加するみたいだし、ベッキーもやろうよ!」

 

「そうそう! 絶対楽しいって!」

 

「わ、私はいいよ。見てるだけで楽しいし」

 

「「えぇ~~~~」」

 

 

 消極的なレベッカにシンクと七海が同じ顔で残念そうな声を上げる。その様子を眺めたマールがふと視界に入ったレレイを見て訊ねる。

 

 

「レレイはどうするの? レベッカさんと一緒にここで観戦する?」

 

「いや、私も参加する」

 

「「「えっ?」」」

 

 

 予想外な答えに質問したマールのほかにクロノとレベッカが反応する。声を出さずとも同じく気になったメンバーが何故と言いたげな視線を送ると、レレイはその目に好奇心という炎を宿して語る。

 

 

「ミコトが輝力武装というものは、もともとこの世界特有のものだと言っていた。勇者として別のニホンからきた少年が使っていたところを見るに、私にも使えると推測する。試せる機会が目の前にあるのなら、積極的に関わるべき」

 

「ほお、なかなかの探求心じゃな。発明王といい勝負かもしれん」

 

「発明王?」

 

 

 発明という単語に反応するルッカ。それを見てシンクはこの場にいない小さな友人について教える。

 

 

「ビスコッティにリコッタって子がいるんですけど、いろんな発明を作った凄い子なんです」

 

「具体的にハどのヨウナ発明をされたのデスカ?」

 

「大陸全体で放送用のフロニャ周波を増幅させる機械が普及してるんだが、それを当時5歳のリコッタが発明した」

 

「5歳!?」

 

 

 尊の説明に流石の自分もそこまでではないという意味が篭った驚きをルッカが露わにする。他にも彼女のことを知る尊やサラ、シンクにミルヒやレオを除いた全員が驚愕を隠せずにいた。千年近く生きてきたロゥリィもそこまでの才女に会ったことがないのか、クロノたち同様衝撃を隠せない様子だ。

 

 

「……会ってみたい。是非」

 

「私もだわ。自衛隊に会ってからまだ未熟だと思ってたけど、改めて実感したわ」

 

 

 ――三人寄れば文殊の知恵というが、ガチ天才が3人揃ってしまえば本当にどうなるんだろうか。

 

 以前からこの三人が出会えばどうなるのだろうかと夢想していた尊だが、彼の直感はトンデモないものを発明しそうだと囁いていた。

 科学を魔法に取り入れるという閃きと応用に長けるレレイ。

 魔法的な要素のフロニャ力の術式を機械に組み込めるリコッタ。

 そして機械の扱いにおいては他の追随を許さないルッカ。

 この三人で作り上げる発明は間違いなく三世界を驚かす代物になるだろうと思っていると、不意に太陽が何かに遮られる。

 それに続き、空から女の子の声が響く。

 

 

「おーい! ミルヒ姉! レオ姉!」

 

 

 全員が上を見ると手綱のついた大きな鳥に跨り手を振っているリスのような少女と、苦笑いを浮かべながら手綱を握る青年がいた。

 見知らぬ人物の登場に誰もが呆気にとられる中、名指しを受けたミルヒとレオが驚きながら答える。

 

 

「クーベルにキャラウェイではないか!」

 

「お二人ともどうされたんですかー!?」

 

「頼みがあるのじゃー! この戦にウチも、パスティヤージュも参戦させて欲しいのじゃー!」

 

「パスティヤージュって、確か……」

 

「はい。ビスコッティ、ガレットとは隣国にあたる国です。そして、あの英雄王が召喚された国でもあります」

 

 

 二国と隣接するように存在するパスティヤージュ公国。この国はサラが述べたように、かつて大陸に平穏をもたらした英雄王発祥の地とされる国だ。今上空にいるクーベル・エッシェンバッハ・パスティヤージュは名前で分かるようにパスティヤージュの第一公女にして領主見習いであり、その英雄王の血を引く子孫でもある。領主としてはミルヒよりも幼いが、彼女同様、優秀な家臣の助けもあって安定して国を治めている。

 

 ――でも、どうして今になって参戦を?

 

 疑問を浮かべるサラの答えは、クーベルの口から出てきた。

 

 

「でもって、うちはその子を――レベッカをいただきに来たのじゃ!」

 

「「「……へ?」」」

 

「「「……はい?」」」

 

「「「……えええぇぇぇ――――――っ!?」」」




第71話、いかがでしたでしょうか?

次回から戦パートに入り、異世界混同チームがフロニャルドの陣営に喧嘩を売ります。
誰が誰と戦うのか、どうかご期待下さい。

それでは、今回はこのあたりで。
また次回の投稿でお会いしましょう。




追記

・その1
今月に入ってから艦これアーケードを始めてみました。
毎回2時間以上待ってのプレイですが、それなりに楽しくやってます。
しかし戦艦レシピで重巡どころか軽巡すら出ないとは……。少ない資材ぶっこんで建造結果が駆逐艦だった時のがっかり感は凄まじいです。
早く榛名をお迎えしたい……。

・その2
グラブルのSSを書き始めました。
現在2話目を書いていますが、5話くらい溜まったら新規投稿していこうと思います。
え? そんな暇あるならほかの作品を書けって?
そ、それはネタが浮かんだら……。

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