さて、今回はジェノワーズ、エクレ、リコに戦いを挑む三人集、カエル、レレイの話となります。
しかしこの戦パートからとっとと抜け出したいという気持ちが筆に表れているのか、後半に移るにつれ雑く感じられます。
四苦八苦しながらの執筆ですが、とりあえず本編第76話、どうぞご覧ください。
レベッカが飛翔系勇者としてパスティヤージュ陣営に参戦する少し前。ジェノワーズとエクレール、リコッタの共闘グループは新たに現れた陣営から足止めを食らっただけでなく、予想以上の劣勢を強いられていた。
必死に引き離して体勢を立て直そうとするジェノワーズを猛追し攻勢にでることすら許さないデナドロ三人集。ビスコッティ騎士団親衛隊長のエクレールを稽古でもつけるかのように抑え込むカエル。そして意外にも――リコッタが相手とはいえ――自らが使う魔法とここに来て新たに学んだ輝力を駆使して善戦するレレイ。
嘗めてかかったつもりはない彼女たちだが、これは明らかに想定以上の苦戦だった。
「やめてー! こないでー!」
「なんなんあの三人組! なんでウチらばっか狙うん!?」
「同じ三人組だから?」
飛来する斬撃や詰められた瞬間ほぼ同時に飛んでくる多方向からの斬撃に晒されるジェノワーズだが、ここまでいずれも持ち前の連携力と神がかった反応でどうにか回避している。その様子からなかなか骨があるとみているのか、彼女たちを襲撃する三人はさらにギアを上げる。
「さすが御館様と轡を並べたという者たちだ。未だに有効打を与えられん」
「マシュー、オルティー。イタミ殿に見せていただいたアレで一点突破を図るのはどうだ?」
「ほう、アレか。確かに、実戦で試すにはちょうど良い機会だな」
「ならば狙うは前衛の虎の少女だな!」
狙いをジョーヌに定めた三人は重なるように一列に並び、まず先頭のガイナーが一気に踏み込むと同時に真っ向から切りかかる。
「! やばっ!」
切り込みの速さから直感的に回避が間に合わないと感じとっさに手持ちの武器でそれを防いだジョーヌだが、その瞬間ガイナーの後ろからマシューが飛び出しかまいたちを放つ。
「二段構え!?」
「させない!」
輝力で強化した短剣でノワールが割って入りかまいたちを受け止める。しかしそこへ『燕』を水平に構えていたオルティーがガイナーの肩を足場にして最後の一撃を放たんとジョーヌに狙いを定める。
「秘剣――」
「やらせません!」
タッチの差で後方から放たれたベールの紋章術が三人集に襲い掛かり、ガイナーたちは連携が失敗したと悟るや否やすぐに紋章術の範囲外まで後退する。
「ぬぅ、踏み台にはされなかったがジェットストリームアタックを破られるとは」
「速さが足りなかったか。我らもまだ未熟だな」
「しかしコツは掴んだ。もう少し鍛錬を重ねれば確実に仕留められるようになるだろう」
「うむ。一先ず彼女らに一人一撃で掛かるぞ!」
「「応っ!」」
「嘘でしょ!?」
「来んな! もう来んでええからな!」
「鬼! 悪魔!」
ジェノワーズが心の底から交戦を拒否するが、三人集は得物を構え直しそれぞれでターゲットを絞る。そんな攻撃をなんだかんだ文句を垂れながらも火事場の底力でどうにか凌いでいるあたり、彼女たちも潜在能力は高いだろう。
そこから少し離れた場所では何度も双剣を振うエクレールがいたが、彼女を相手にしているカエルは涼しい顔でグランドリオンを操りすべてをいなす。
「筋も早さも悪くない。その若さで親衛隊長というのも、まあ納得できる…が、技量もまだ甘く純粋な力が足りん。この世界では輝力というものの補助が大きいようだが、それに頼ってばかりでは肝心な時に押し返されるぞ」
「は、はい!」
「よし。――さっきも言ったが筋がいい。腕力が弱いから鍔迫り合いになったとき押し切られることが多いかもしれないが、受け流す技術を磨けばそれも補える。そして受け流して相手の体勢を崩せば今度は自分にとって好機になる。これくらいは理解できるな?」
「はい」
「では輝力に頼らずできるだけ受け流すことを意識して俺の攻撃を捌いてみせろ。 いくぞ!」
完全に稽古をつける側とつけられる側になった二人。エクレールは純粋にカエルの剣技が参考になるものが多く自然と学ぶことに力が入り、カエルから見ても彼女は将来有望な騎士になると感じられつい教えることに熱が入っていった。
そんな二人からさらに離れた場所では近接戦闘が目立つ二組と打って変わり、派手な光弾と音が響く射撃戦が繰り広げられていた。
大きな威力はないが相手をのけぞらせることくらいはできる魔法と、開始前に覚えた――その割にはレオやミルヒからみても非常に精度が高い――紋章砲を伊丹が見ていたアニメから参考して自前の杖で収束させリリカルめいた砲撃と弾幕を形成するレレイ。相対するは自らが作成した武器と発明品で同じく弾幕を形成することで対抗するリコッタ。
カラフルな輝力が飛び交うため一見花火の打ち合いのようにも見えるが、伊丹がいれば無限の剣製か王の財宝のみたいだとのコメントがもらえるだろう。
「当てるであります!」
「迎え撃つ……!」
マントに隠していた複数の砲台を展開し、手にした二丁の銃に輝力を送り込みどこぞのガンダムのようにフルバーストするリコッタ。これに対しレレイは杖の先端に輝力を集中させることで威力を限界まで高め、真っ向から迎撃する。二人の中間点あたりで衝突した輝力は大爆発を起こし、大量の粉塵を巻き上げて両者の視界を奪う。
「――――っ!」
視界が遮られる直前に見た相手の位置を推定し、レレイは研究中の魔法を展開すると自身が行える最速で射出する。
キュパァン!
「ひゃわ!?」
砂埃の向こうから何かが飛び出すと同時に強い光と音が鳴り、リコッタは思わず体を硬直させる。声が上がったことで位置を特定したレレイはさらなる追撃として輝力のスフィアを形成すると一点に向けて斉射した。
しかしリコッタも伊達に場数をこなしていない。直ぐにその場から移動することで現在地を悟らせないようにしつつ再び銃を構え、威力任せに砂埃を払う。視界が良好になり、リコッタは興奮気味に尋ねる。
「すごいであります! さっきの光と音は何でありますか!?」
「研究中の爆轟の魔法。でも速度もなく本当に音と光が一瞬だけ展開されるだけ」
「なるほど、そんな技術があるとは……! やっぱり世界は広いであります!」
「こちらにしてもこの輝力という力は興味深い。戦が終わったらいろいろ教えてほしい」
「任せるでありますよ! しかしながら、今は敵同士。ここは勝たせてもらうであります!」
ジャカッと銃を構えて臨戦態勢に入ったリコッタを見てレレイも杖を構える。
ズドゴオォォンッ!!
「はうあ!?」
「何事!?」
突如、凄まじい衝撃と轟音がフィールドを穿った。その場にいた全員が思わず顔を向けると、発信源から二つの影が飛び出した。
「そらそらそらそらそらぁ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」
「「「レオ様!?」」」「「「ロゥリィ殿!?」
まるで誇り高き血統の一族と闇の帝王の対決のようなセリフを発しながら中央フィールドで戦っていたはずのロゥリィとレオが互いの戦斧を叩きつけるように振るい、一進一退の激しい攻防を繰り広げていた。
予想外の介入に思わず攻撃を止めてしまった三人集。これを千載一遇の好機と本能で悟ったジェノワーズはすぐさまその場から離脱。ガイナーたちの攻撃範囲外にまで後退することに成功した。
「エクレ! リコ! 下がるなら今のうちだよ!」
「うちらは先に行かせてもらうで! こいつらとはまともにやりたないからな!」
「二人とも急いで急いで!」
脱兎という言葉が似合うほどの速さでジェノワーズがガレット陣営へと撤退していき、エクレールとリコッタも災害のように暴れまわるロゥリィたちを見て「確かに」とわずかながら冷や汗を流す。
「仕方ない。カエル殿、ここは失礼させていただきます」
「いや、俺も楽しかった。また機会があればいろいろ教えてやる」
「ありがとうございます。 リコ!」
「はいであります! ではレレイ様、自分は失礼させてもらうであります」
「レレイでいい。それよりさっきの話、ルッカも交えて是非お願いしたい」
「了解であります!」
自分たちが乗ってきたセルクルに乗ってエクレールたちも後退をはじめ、残ったカエルたちはレオたちの闘争に巻き込まれない場所まで移動して次の行動を決める。
「我らはこのままガレット側に進攻し、ジェノワーズの追撃にあたろうかと思います」
「私はテュカたちに合流しようかと思う。あそこが一番無難そうだから」
「ならば俺が護衛につこう。それに中央フィールドには
「承知しました。では、ご武運を」
完全撃破しか眼中にない三人集は撤退したジェノワーズにとどめを刺すべくガレット陣営を目指し、残された二人は別のフィールドの仲間と合流すべく移動を開始した。
――極悪な台風が通った後のような惨事の道を
本編第76話、いかがでしたでしょうか。
三人集はジェノワーズに対抗意識を燃やし、カエルは若手を育てる教官になり、レレイはルッカを交えての技術交流を提案しました。
これがどう転ぶかは今後の展開にご期待ください。(特に最後
それでは、今回はこのあたりで。
おそらくこれが今年最後の投稿になると思いますが、来年もよろしくお願いします。
では、また次回の投稿でお会いしましょう。