Red & Infinity
今代の赤龍帝、兵藤一誠は″禍の団″というテロリスト組織に所属している。SSS級はぐれ悪魔の肩書きと共に。
▼
彼は元を辿れば、魔王サーゼクスの実妹にしてグレモリー家次期当主であるリアスの眷属だった。極めれば神すらも倒せるという神滅具、″赤龍帝の籠手″をその身に宿した彼は力を危険視した堕天使に殺されたところをリアスに拾われた。一誠にとってはまさしく恩人であり、その恩に報いる為には命をも差し出そうと密かに決意する程だった。
温厚な大和撫子の″女王″、姫島朱乃。
皆の妹分的存在である″戦車″、塔城小猫。
金髪イケメンの″騎士″、木場祐斗。
元シスターの″僧侶″、アーシア・アルジェント。
想い人でもある″王″、リアス・グレモリー。
リアスが立ち上げたオカルト研究部の部室で彼らは笑い合って過ごしてきた。一誠がスケベな発言をして、小猫が殴り、他のメンバーは微笑ましく眺めている。何よりも大切な時間であったが、それも長くは続かなかった。ある日、リアスの婚約者であるライザー・フェニックスが部室に現れたのだ。
彼の目的は婚約者であるリアスと共に結婚式場を下見することであり、そのために彼女を誘いに来たのだという。しかし自由恋愛を望むリアスは婚約を拒否した。その場に居合わせたグレイフィアにレーティングゲームの勝敗による決着を提案され両名共に承諾、リアスとライザーによる婚約破談を賭けたゲームが行われた。
結果は、リアスの敗北。
サーゼクスは一誠とライザーの一騎討ちによる婚約破談を目論んでいたのだが一誠の敗北により失敗してしまい、婚約は成立してしまった。かくして晴れてリアスと一緒になることに成功したライザーだが、彼は一誠を恐れた。一騎討ちこそ勝利できたものの、それは一誠がまだ神器に目覚めてから日が浅かったからだ。一誠が力をつけた場合のことは考えたくもなかった。そこでライザーは一計を案じた。
一誠をはぐれ悪魔に仕立てようとしたのだ。
名門貴族であるフェニックス家は政府上層部とも面識がある。そのコネを利用してライザーは両親や上層部に一誠の殺害を訴えた。そして彼らも敗北した一誠に価値無しと判断した。加えて、彼はサーゼクスの手元にある。魔王派と対立する上層部にしてみれば自分達に牙を剥きかねない恐怖の対象でしかなかった。老人達もフェニックス家の計画に賛同した。
こうして兵藤一誠を殺害し、″赤龍帝の籠手″を抜き取るという醜悪極まりない計画が産み出された。
上層部はサーゼクスに一誠の殺害を提案した。許可するのならばリアスに再度チャンスを与えるようフェニックス家に申し出ると強迫した。婚約破棄の可能性という飴を見せられた彼は悩んだ末に力無き赤龍帝よりも貴族達に重きを置いた。リアスの未来という大義名分の下に兵藤一誠を見捨ててしまった。そしてサーゼクスが頷くや否や、上層部の老人達は一誠に腕利きの上級悪魔達を向かわせた。表向きは捕縛であるがその実態は殺害である。
一誠は傷付きながらも逃走に成功したが、その代償としてSSS級はぐれ悪魔のレッテルを貼られてしまった。
そして、血塗れで倒れていたところにオーフィスが現れたのだ。
▼Red & Infinity▼
″禍の団″は次元の狭間の片隅に結界を展開し、そこに基地を構えている。元々は古の三大勢力戦争時に悪魔陣営が建築した前線基地である。終戦後に放置されていたそれを丸ごと転移させたのだ。前線基地と銘打っているだけあって基地として機能するのに必要不可欠な指令室・倉庫・兵舎などが揃っており、見つかりにくい場所にあるという点からも中々に重宝されている。
その一室である会議室に″禍の団″の各派閥の代表が集結していた。無論、派閥代表なだけあって全員が一定以上の実力を持つ。
その中でもずば抜けて他よりも抜きん出ている二人、白龍皇と英雄の青年達はその人物を注意深く観察していた。組織の長として玉座に座るオーフィスの隣には茶髪の青年が立っている。
見覚えがある顔だが、それもその筈。
彼は数少ないSSS級はぐれ悪魔にして今代の赤龍帝なのだから。
グレモリー家の眷属が何用あってこの場に顔を見せたのか。やはりオーフィスが秘密裏に勧誘したのだろうか。それを見極めるまでは不用意に動けない。強者が先の先まで掴もうとする中で旧魔王派の代表であるシャルバが訊ねる。
「オーフィス。赤龍帝がいる理由は?」
それに対してのオーフィスの返答は普段通り抑揚の無い淡々とした声である。視線こそ隣に立つ一誠に向けているが、それでいて全体を悠然と眺めていた。
「……我、赤龍帝を勧誘した。赤龍帝は了承した。だから連れてきた」
質問をしたシャルバのみならず全員が驚きに染まる中、一誠は遠い目をしていた。その視線の先には仲間達との楽しかった思い出を浮かべていた。
もうあの頃には戻れない。
「復讐をしてやる。俺を捨てた奴ら全員に、腐りきった冥界の悪魔共に」
戻るつもりなどない。
「──絶対に復讐してやる」
その呟きは微かにだがしっかりと強者達に聞こえた。無限は何も言わず、白龍皇と英雄は愉快そうに笑みを深めた。
果たして彼はどのような道を歩むのか。それはまだ誰にも分からないのである。