はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(サブタイトルについてコメントを受けたので前書きコソコソ噂話)

オーフィス可愛い(お察しのように一部サブタイトルは特撮作品のそれやキャッチコピーをリスペクトさせてもらっていますが、その中でも特に意識して引用している作品はアギトです。理由はあります)


悪魔を欲する男

 リアス・グレモリーの公開処刑。冥界政府からの突然の発表は、第二次連合戦争の勃発を意味している。あの赤龍帝への二度目の挑戦に対して、神々は第一次と同様に不介入を決めた。

 

 そもそもが話、過去の蛮行により聖書の勢力は他神話からのヘイトを集めている。救援を寄越す義理が無いばかりか、あわよくば兵藤一誠との共倒れを狙われるのも当然である。とはいえ、いずれの勢力も準備は怠らない。確実に引き起こされるであろう神話の戦いの模倣。あらゆる神仏が手を組むという前代未聞の事態に備えているのだ。赤龍帝を討伐するために。

 

 既に四大神話と並び称されている北欧・須弥山・ギリシャ・日本の首脳陣は会談を済ませており、有事の際には協力する旨の密約を交わしている。三大勢力が滅ぼされた前提で話している時点で、第二次連合戦争を彼らがどのように捉えているのかが垣間見えた。″禍の団″と手を切りはしたが、三大勢力への憎悪は根深いのだ。

 

 誰もが世界崩壊の予兆に戦々恐々としているが、全ての元凶たるリゼヴィムだけはルーマニアの居城で満足そうに笑っていた。

 

「聖杯鬼つええ! このままクソッタレな三大勢力を全員ぶっ殺していこうぜ!」

 

 右手の中の聖杯を弄ぶ彼に、クロウ・クルワッハが呆れた顔で言う。

 

「随分と楽しそうだな」

「だって、これから始まる戦争は先の三つ巴の大戦とは比較にならない規模なんだぜ!? 今じゃ誰も彼もが仲良しごっこの平和ごっこして、戦争はいけませんとか御託を並べてるがな。結局のところ俺達は戦わなければ分かり合えないんだよ! そういう風に三大勢力は定められてるんだからな!!」

 

 創成期を知る大悪魔にとって、三大勢力の現状は生温い。根本的に、天使と悪魔と堕天使は互いに殺し殺される宿命を背負った存在だ。それを休戦するばかりか同盟まで結ぶのは三大勢力である由縁を自ら捨てるのと同義だとリゼヴィムは嘆く。

 

 故にリゼヴィムからすれば彼らは三大勢力の名を騙る醜悪な偽物でしかなく、滅ぼそうと画策するのも、手を組まなければ勢力を維持できないほどに衰退してしまった元同胞達へのせめてもの情けのつもりである。種の絶滅を回避しようと足掻くのは結構だが、誇りを忘れるべきではなかった。

 

 堕落の象徴が″悪魔の駒″だ。

 

「見た目はただのチェスの駒だけどよ。適当に拉致した異種族に埋め込んでやるだけで、あら不思議! 悪魔に転生させるんだってよ! うひゃひゃひゃひゃひゃ♪︎ ……バッカじゃねーの?」

 

 かつてのコネを駆使して入手したそれを退屈そうに眺めるリゼヴィムだったが、ふんと鼻を鳴らして床に放り捨てた。

 

「チェスの特性を取り入れた少数精鋭の制度? 軍団を持つ代わりに少数の下僕悪魔に力を与える? 各駒の属性に合わせた能力を持つ? 通常は一人につき駒一つだが潜在能力値の高い者は複数の駒を消費する? こんなもん作ったところで勢力再建できるわけないだろ」

 

 早急に数を増やさねばならないのに個々の眷属所有数を制限し、優先すべきは駒を模した性能を実装するよりも数そのものであり、挙げ句の果てに優秀な人材を転生させようと思えば駒の複数消費を要求される。

 

 平和な時代における繋ぎならともかく、三つ巴の大戦や内乱で疲弊した悪魔勢力の建て直しには致命的に向いていない欠陥品だ。

 

「イッセーきゅんのせいで潰されたけど、アグレアスの資源だって無尽蔵じゃないんだ。効率を重視するなら″兵士″の駒を大量生産するだけでよかった。そうして転生させた連中に二十四時間ぶっ通しで子作りさせまくれば勢力なんざあっという間に回復するってばよ」

「数だけを揃えても、そのようにして増やした連中が一端の戦力に育つとは思えんが」

「奴隷と割り切って最低限の教育だけに絞るのもいいし、才能によっては高等教育を受けられるように手配してもいい。大切なのは飴と鞭と洗脳さ☆」

 

 前々から構想を練っていたのか、順調に再建の道を歩んだ場合の悪魔を語るリゼヴィム。転生技術の実用化という絶大なアドバンテージを潰したのは悪魔自身だ。

 

「今のは例え話だけど、悪魔ってのは契約と交渉で有利に事を運んでこそ一人前だ。誘拐なんかの力任せの方法でしか目的を果たせないようなら、それはもう悪魔を名乗るべきじゃない……なんてな! うひゃひゃひゃひゃ♪︎」

「……兵藤一誠に執着する理由が分かった」

 

 お前は憧れているんだ、とクロウ・クルワッハはふと思い付いたように言った。

 

「利益と損失を重視し、策略と暴力の両方に長け、必要とあれば代償や犠牲も躊躇しない。保身に明け暮れる醜悪な現代悪魔とは対極に位置するその刹那的な生き様は誰よりも悪魔らしい。お前は兵藤一誠に魅せられてしまったのではないか? そして、だからこそ彼を殺したいと願うのだろう?」

「どうして、そう思った?」

「失策を犯しているのは悪魔だけではない。天界や堕天使も大なり小なり不手際をやらかしている。それなのに悪魔ばかりを批判したのは、基準とすべき明確な比較対象がお前の中に存在しているからだ。兵藤一誠がそれに似ているとすれば説明がつく」

「俺ちゃんってそんなに分かりやすい?」

 

 わざとらしく肩を落とすも、リゼヴィムはその言葉に納得した。リゼヴィムにとって最愛の存在が実母たるリリスであるなら、尊敬するのは絶大な力で冥界狭しと暴れ回った初代ルシファー、つまり実の父親だけである。ついぞ越えられなかった父親に一誠が似ているからこそ、彼は一誠の殺害を決意したのだ。世界を滅亡に追い込んだとしても。

 

 ──悪であれ魔であれ。ママンの遺言に当てはまっていた悪魔はパパン一人だった。けれどもパパンは神と相討ちになって戦死した。目的を見失ってからは廃人同然の生活を送ってきたが……遂にママンとの約束を果たせそうだ。

 

 徹頭徹尾、リゼヴィムという男は悪意を糧として生きている。己が悪意を世界中に見せつけるために生きている。

 

 ただし、狂気の奥底に隠した理由を真に知る者は彼の他にいない。

 今はもう。

 

▼悪魔を欲する男▼

 

 かつて自宅だった空き家に、一誠は久し振りに足を踏み入れていた。シーグヴァイラ曰く、既に両親の死は事故として処理され、思い出の全ては父方の親戚に引き取られているらしい。

 

「……思ったより綺麗だ。これなら一夜の宿の役割ぐらいは果たしてくれそうだ」

 

 管理人が手入れをしてくれているのだろう、自室だった部屋の床には埃一つ落ちていない。ベッドが置いてあった空間に寝転ぶと、赤黒い鱗と翡翠の宝玉が生え揃った左手を眺める。急激なパワーアップの代償であるドラゴン化は全身に及んでおり、今なら十字架を掴むどころか聖水の風呂に浸かることも可能だろう。

 

「ビックリだろ? あの頃は代償を払わないとレイナーレやライザーにも勝てなかったんだぜ? ドライグにもよく怒鳴られたもんだ。歴代最弱の宿主だってな」

『当初の相棒は下級悪魔にも劣る魔力に身体能力しか有していなかったからな。格闘や剣術、策謀のセンスすらも欠けているとなれば仕方あるまい。宿ったときはこんなスケベなだけが取り柄の小僧が俺の宿主かと絶望させられたぞ?』

「それが今じゃ世界中のあらゆる神々に恐れられる最強最悪のはぐれ悪魔だからな。以前の俺に言ったら大笑いされちまうぜ」

 

 普段とは打って変わって、オカルト研究部に所属していた頃のような砕けた口調で話す一誠。

 

『俺とて同じだ。相棒が歴代最強の実力者に上り詰めると言っても信じないだろう。ましてやオーフィスと添い遂げるばかりか子供まで孕ませる宿主など荒唐無稽の一言で片付けるだろうさ』

「……妻のために命を捨てると言ったら、それもまた馬鹿馬鹿しいと笑うかな?」

『さあな。しかしドラゴンは絶大な力を持つが故に誇りを重視する生き物だ。相棒にとっての誇りが妻であるなら俺は背を押すだけさ。あのときも今も』

『もっと単純に考えていいと思うよー!』

 

 会話に割り込むように年若い少女──エルシャの声が宝玉から響いた。

 

『愛する女性を救いたい、大切な家族を守りたい。大層な理想を並べなくたって、力を振るう理由なんかそれでオーケーなんだよ! 力があるからって世界を救わないといけない義務なんてないからね! それに言ってたじゃん? 俺がお前を殴る理由はそれだけで充分だ、って! だからきっと難しいことは分からなくても大丈夫! 奥さんを無事に助けることだけ考えてれば!』

「相変わらずフリーダムな先輩だ。けれども俺の目的は最初から決まってる」

 

 かつてフェニックスに挑んだ少年は、最後の最後で敗北した。愛していた紅髪の少女を彼は救えなかった。上層部に見捨てられ、信じていた魔王に切り捨てられ、はぐれ悪魔に身を窶す羽目になった。

 

 赤龍帝として悪名を轟かせても、オーフィスを嫁に娶っても、トラウマを完全に消し去ることはできていない。

 

「復讐をしてやる。俺を捨てた奴ら全員に、腐りきった冥界の悪魔共に、リアス・グレモリーに」

 

 だから、これが最後の機会だ。

 

「──絶対に救出(復讐)してやる」

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