はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(経緯&順序が異なるとはいえ″龍神化″を発動できるのだから必然的に……)


原初なる晦冥龍

『お、蘇生の条件が気になるってか? いいでしょ教えてしんぜよう! うひゃひゃひゃ♪︎』

 

 ふと″幽世の聖杯″について気になった俺は通信術式を開き、疑問を投げ掛けた。やがてリゼヴィム特有の相手を苛立たせる口調の声が返ってきた。

 

『聖杯は確かに強力無比な性能──それこそ神滅具の中でも上位に数えられるけどな、別に無条件でホイホイ復活可能って代物でもねーのよ。代償を求められるわけじゃないが、対象が条件を満たしてないと駄目なんだな』

「……その条件とは?」

 

 ようやく発見した標的から視線を外さないように注意を払いつつ、俺は再び質問した。

 

『大前提として魂が残ってること。これはあの世だろうが現世をさ迷っていようが同様だ。イッセーきゅんへの嫌がらせ目的に…レイナーレだっけ? 元カノの堕天使を甦らせようとして失敗しちまってさ。それでマリウスきゅんと一緒に家畜共で実験を繰り返して判明したんだ。やっぱ滅びの魔力ってのは強いねー! うひゃひゃひゃ♪︎』

「まだ条件があるのか」

 

 あの野郎の口振りから、事前にクリアすべき項目は一つではないらしい。

 

『そしてこれが一番大事な点なんだけど、未練が残ってないといけない!』

 

 俺はその言葉を聞いて、そういう理由があるのかと納得した。今代の白龍皇は手駒にされる過程で不本意な死と屈辱を経験したと耳にしている。

 

「目の前で仲間を嬲り殺しにしたらしいな? それは成仏できずとも当然だろう」

『だって確実に支配下に置かないと後々の計画に支障をきたすかもしれなかったんだもん。″魔王化″に至れそうなのはクソ孫ぐらいだったし。ちょっと孫の友達を拷問凌辱漬けにするだけで一つの勢力をそのまま丸ごと自由自在に操れるようになるってんなら最高じゃん! うひゃひゃひゃひゃ♪︎』

「大した悪魔だ、貴様は」

 

 俺自身は皮肉を投げたつもりだったが、術式の向こう側からは大層嬉しそうな笑い声が響いた。それから少しして飲み物が注がれる音──どうせワインを片手に観戦しているのだろう。

 

『で、それを訊ねるってことはよ。イッセーきゅんは()()()()()()なのか? 滅びの魔力を使った時点で察しはついてるけど』

 

 直前まで上機嫌そのものだった声音が真面目なトーンに切り替わった。

 

「まず間違いない。あまりにも魂の形が歪なのは補食した相手を心身共に取り込んでいるからだ。滅びを纏ったというのもグレモリーを喰らったのだと踏んでいる。それにあの有り様だからな。大方、″龍神化″を発動した影響で一気に限界が訪れたのだろう。それで拉致したグレモリーを衝動的に補食してしまい発狂したといったところか」

『あー、やっぱりか。あのクソ孫め、俺に隠してやがったな。そんな悪い孫はぶち殺してやる……ってもう喰われたんだっけか! うひゃひゃひゃひゃ♪︎』

 

 相も変わらず、リゼヴィムのテンションはよく分からん。それには触れず、俺は本題に入る。あの胸糞悪い声音に耳を汚されるのを承知で通信を飛ばしたのは単に質問したいからだけではない。

 

「怪我の功名とはいえ、もう聖杯は使えんぞ。兵隊を生んだところで餌にしかならんし、そもそも魂を喰われたのではどうしようもあるまい」

 

 そしてもう一点、どうしても確認しなければならない点がある。

 

「殺しても構わないか?」

 

 見苦しいものを嫌う性格であるが故に、俺の言葉には自然と強い怒気が込められていた。

 リゼヴィムは、マジかよ、と口を尖らせた。

 

『できれば生け捕りにしてほしいんだけど。貴重な実験台になりそうだし』

「承知した。ただし、これで俺と貴様の取引は完了扱いにさせてもらう。兵藤一誠の引き渡しが済み次第、俺は事前の取引に従って自由の身となる。貴様がどのような末路を辿ろうが知らん」

『……オッケー! 俺も悪魔の端くれだ。契約を反故にするような真似はしないとパパンに誓うぜ!』

 

 通信が途絶えたのを確認して、俺は舌打ちする。実に白々しい男だ。どうにかして戦力を手元に留めておこうと画策するつもりではないか。

 いっそのことクロウ・クルワッハ達も誘って反旗を翻してやってもいいが、そのためにはまず目の前の怪物を降さねばなるまい。

 

 俺は役目を終えた通信術式を消すと、ドラゴンに成り下がった兵藤一誠を注意深く観察する。

 

 純黒である点を除けば、全体的なフォルムは″赤龍帝の鎧″に酷似している。ただし色以外の相違点としては全身に散りばめられた無数の宝玉と、背から生えた一対の巨大な腕が挙げられる。紅蓮の光を灯すだけの前者とは異なり、オーラで形成されたと思しき剛腕は明確な脅威である。接近戦では分が悪いと見るべきだろう。

 

 そして何より警戒すべきなのは、兵藤一誠の人格が安定していない点である。

 

 絶えず自分だけで会話を重ねる姿からはかつての知性など微塵も感じられず、一人称と口調が激しく入れ替わりながら紡がれる言葉には脈絡の欠片も無く、かと思えばオーフィスを救いたいという覚悟だけは一致している。

 恐らくリアス・グレモリーのみならず吸血鬼共やヴァーリチームの魂を喰らったことで人格や精神面も取り込んでしまった影響だろうが、先の読めない相手というのは戦い辛くて仕方ない。

 いっそ″龍神化″で挑んでくれた方がまだマシだったと溜め息を溢しながらも、俺は自分の流儀に則って名乗りを上げる。

 

「我が名はアポプス。太陽の対極に在りし──」 

 

 その瞬間、挨拶と言わんばかりに魔力弾の一斉掃射が俺の視界を埋め尽くした。

 

 華麗さには欠けるが相手の隙を見逃さない洞察力は評価したい。惜しむらくは無限も滅びも纏わない魔力では俺の闇を突破できないことだ。俺を侮っているのか、はたまた使い方を忘れたのか。どちらにせよ、第二次連合戦争で世界に見せつけた実力を発揮してくれなければ、こんな辺境の地にまでわざわざ足を運んだ甲斐がない。

 俺は右手に闇の塊を凝縮させると、銃の真似をして解き放った。これで倒されるようなら所詮それまでだと鼻を鳴らしながら。

 

 ……ふむ、非礼を詫びよう。少しばかり手抜きが過ぎたらしい。

 

 兵藤一誠は平然と片手で受け止め、そのまま何事も無かったかのように握り潰した。一応、俺も聖杯の恩恵により相応のパワーアップを果たしているのだがな。

 

「……あ、敵? そりゃ殺さないと駄目っスね。()が滅ぼしてあげるにゃー」

 

 意見が纏まると同時に、宝玉の煌めきが一段と強さを増す。次に剛腕を象っていた背のオーラが胎動を開始し、蝙蝠を彷彿とさせる巨大な六対十二枚の翼へと姿を変えていく。

 臨戦態勢に移ったのだと確信した。

 戦闘バカのグレンデルであれば喜び勇んで突撃するだろうが、生憎と俺はそのような脳筋ではない。警戒を最大限に引き上げながら彼の一挙手一投足を見逃すまいと身構え、

 

 直後、眼前に兵藤一誠の拳が飛び込んできた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost──』

 

 地面に穿たれた龍の足跡と大きく揺らめく翼が、俺達の間に横たわっていた少なくない距離を今の一瞬で詰めたのだと教えている。反射的に後ろに飛び退いたのと鼻先を爪が掠めたのは同時だ。

 着地を取りつつ、追撃に備える。

 しかし本能的に動いているからだろう、兵藤一誠の立ち回りに以前のような洗練された動きは欠けており、追撃に移るまでに若干のタイムラグが生じていた。もしくは意見こそ一致したが意思までは統一されてないのか。

 ロケット染みた直線的な突撃を避けるのは、本来であれば容易い。

 だが、″倍加″による際限無き身体能力の上昇がこの怪物の歪さを強引に解消してくる。

 

「面倒だな」

 

 呆れながら攻撃を両腕でガードし、勢いそのままに地面に叩きつける。弱くはないが強くもない。理性と共に実力も失ったのでは笑い話にもならない。とはいえ、これで自由が手に入るなら安い取引だ。

 俺は土砂まみれの兵藤一誠を冷めた眼で見下ろしながら、四肢をへし折ろうと脚を振り上げる。

 その直前、土砂の中から聞き慣れた、しかしこの場では聞こえない筈の声音が響いた。

 

『──Divide』

 

▼原初なる晦冥龍▼

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