はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(愛よ照らせ)


D×D

「……お前、マイハニー(ヴァレリー)を生きたまま身体に埋め込んだのか!?」

「見りゃ分かるだろ寝てる間にご自慢の邪眼が腐っちまったのかよ! うひゃひゃひゃひゃ♪︎ 本当に間抜けな吸血鬼共には感謝してるぜ! こんなに素晴らしい力を持ってるのに混血児って理由だけで迫害してやがった! 手を組む対価にヴァレリーを指名したら大喜びで渡してくれたんだぜ!? これだから価値の分からないクソゴミは嫌い(好き)なんだよ!」

『……外道が』

「お前がそれを言うのかよ! 虐殺を繰り返してきた最強最悪のテロリスト! どんな建前を並べたところで俺達は同じ穴の狢なんだよ! うひゃひゃひゃひゃ♪︎」

 

 積年の劣等感を吐き出すように、再構築されていく″堕天龍の鎧″の中でリゼヴィムは嘲笑する。長らく望んでいた完全無欠を手に入れたのだ。

 

「……けどなあ、これじゃ足りねえんだよ」

 

 しかしリゼヴィムは満たされない。

 

「悪魔と取引した代償を払う時間だぜ! お前らの命と力の全部を寄越せや吸血鬼共! 一人はみんなの為に、みんなは一人の為にってなあ!!」

『させるものか──神理崩壊(ロンギヌス・ブレイク)!』

邪眼王の紋章(ロイヤルパニッシュメント)!!」

「そんなチンケな技が効くかってんだよ!!」

 

 一誠とバロール。世界有数の強者である二人が同時に仕掛けた猛攻は、リゼヴィムから放たれた魔力の暴風雨に打ち消される。

 

 ″幽世の聖杯″が起動し、願望を満たせるだけの魔力と命をルーマニア中の吸血鬼達から回収する。

 

「栄華を求め! 理想に溺れ! 俺の提案に踊らされるまま現実も現状も見ようとしない! その癖して混血児の小娘に頼らなければ世界征服の野望に向かって歩むことすら不可能ときた! 補給品に改造する為の甘言とも知らずにな! 聖杯頼りのカス共には相応しい末路だ! ハハハハハハハハアハaハaha!! 俺は切り札を惜しまない! 早くも強化形態のお披露目といこうじゃねえか我が兄弟!」

『……愚かな。″禁手″のみならず″覇龍″にまで手を出したか!』

「どうしたよ? わざわざドラゴンの矜持に則って究極の演出を用意したんだぜ? だからイッセーきゅんもさ、もっと笑って、もっと強くなって、もっと俺を笑顔にさせてくれよ!!」

 

 またも変異を遂げる。リゼヴィムにとって完全無欠は単なる中間フォームに過ぎない。究極の力を目指して聖杯は躍動する。誰よりも強く誰よりも悪魔らしく。そうして完成した新たなる姿が濡羽色(純黒)を纏う兵藤一誠に瓜二つであり、しかし全身を孫と同じ白銀に染められたのは最大の皮肉だろう。

 

「お前は誰も救えない。あのときも、そして今も」

 

我、目覚めるは

黎明の理を闇に染める真魔王なり

無限の希望と刹那の夢を抱いて魔道を往く

我、究極たる明星の王位に至りて

汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう

 

『″白銀の極魔龍(ダウンフォール・オーバーブレイク)″──汝、我が究極の魔道を見届けよ』

 

 ″覇龍″は発動者に代償を求める。一誠は永劫に等しい寿命の半分を削られ、ヴァーリは莫大な魔力を支払うことで維持に宛がった。リゼヴィムはその両方を吸血鬼から奪うことで発動した。

 

『全力で戦いたまえよ。後付けではあるが、こいつは今までの研究と人体実験の集大成だ。アンチモンスターで得た理論にグレンデル達の戦闘記録を付加することで完成した。ここに至るまでに血の海で平泳ぎできる量の死体の山を築く羽目になっちまったけどな。ああ、ヴリトラを宿した転生悪魔のガキだけは生き残ったか。しかしガブリエルも報われない恋をしたもんだ』

『……実験台にされたのか。第二次の戦場で姿を見ないわけだ』

『あのガキに惚れてたみたいでな。ウチで保護してると告げたら疑いもせずにホイホイ着いてきやがったのさ』

 

 消息を絶ってまで想い人の捜索に心を砕いていたガブリエルだったが、彼女の辿った末路は悲惨だ。最終的には遂に再会を果たせぬままバンダースナッチとジャバウォックの材料に堕とされたのだから。

 

『お前達もそうなるんだよ。赤龍帝、邪眼王』

『ほざけ。オーフィスは絶対に取り戻す』

「……Are you ready(死ぬ準備はいいか)?」

 

 『偉そうに』とリゼヴィムは嘲笑する。

 

『究極の力を獲得した俺に勝てるつもりかよ! 仮に聖書の神が復活したとしても今の俺には勝てないだろうぜ! 大体な、俺達の戦いは終わんねえんだよ! この世界は戦いを求めているんだよ。この世界で生き残るってことは誰もが誰かを殺し続けることなんだ。いいか! 生きとし生ける全ての命が悪魔なんだよ! オーフィスもヴァレリーも荒廃した世界を平穏無事に生きていくには汝の隣人を殺すしかないのさ! 愛する者に生きていく咎を背負わせる覚悟が、愛する者を残して死んでいくお前達にあるってのかよ!!』

 

 ──Are you ready(死ぬ覚悟はいいか)?

 

『「できてるよ」』

 

 

 レプリカの邪龍軍団を倒したティアマットは、宙から降り注ぐ醜悪極まりない魔力と宣言に顔を歪めた。そして同じく相手を降したレイヴェルやゼノヴィアと合流する。

 

「意外に強いじゃないか。助太刀してやろうかと考えていたが」

「……お兄様が手を抜いてくださったので」

「イリナも似たようなものさ」

 

 リゼヴィムの相手は一誠とバロールに任せて、三人はシーグヴァイラの援護に向かった。彼女はフリードの死体で製造された合成獣との激戦を繰り広げている。

 

『無敵は素敵ってな! 空も海も山も時も超えてシーグヴァイラたんに会いに来たんだぜ! 俺の墓の前で泣いて喜んでくれよ! それとお供え物は外したてのブラで頼むぜ☆』

「黙りなさい、この偽者が! そこでパンツを求めない奴にフリードを名乗る資格なんて無いのよ!」

「「「いや、その理屈はおかしい」」」

 

 シリアスなのかギャグなのか不明瞭な戦いに、端で眺めていた三人は思わずツッコミを入れた。本人達は真剣なのだが。

 

「調子が狂うな。まあいい、援護するぞ」

「燃やしてあげますわ。元同僚の偽者さん」

「神……はいないが断罪してくれる!」

『ここに来てまさかのモテ期到来! 四人で囲んでリンチするとは特撮ヒーローですかそれともフレッシュでスイートでハートキャッチなんですかあ!? そんな設定いらねえんだよクソプリティ共が!!』

「再生怪人がよく喋る! 本物のフリードはもっと強かったわ!」

『フルボッコしといて吠えるなや! 正義を騙れば悪事を働いてもいいって暗黙の了解なんざ見飽きてんだよ!』

 

 生前の面影を微塵も残さない異形の獣は、怒涛の波状攻撃を的確に切り裂いていく。手元に召喚したのは白と黒の混じり合った刃を持つ一振の禍々しい片手剣だ。

 

『アーサーから奪ったコールブランド! 部品にジークの持ってたグラム!! 繋ぎにクソ悪魔のクソイケメンの聖魔剣をミックスした! かつてのエクスカリバーをも上回るこのスペシャルな剣の名は魔聖帝王剣カリバーン!! 俺呼んで、悪魔絶対ぶち殺しソードってな! 無論勿論ながらオミットされた一部機能を除いて全部使えるウルトラスーパーデラックス状態なんザマス! 俺って最強!』

「……そんな紛い物の剣で!」

『最強無敵! アメイジングにモデルチェンジしたこの俺をヨロシクお願いしまーす!!』

 

 振り下ろされた底無しの悪意を、ティアマットが受け止める。

 

「ドラゴンである私には効かんらしいな」

『この、クソッタレが──なんちゃって! 龍王対策もするに決まってんだろ! 出でよアスカロン! 我が祈りに答えて教会から強奪されたまえ!!』

 

 アスカロン。龍退治で知られる聖ジョージが用いていた聖剣である。リチャード・ジョンソンが発刊した書籍の中では、本来は幼少期の彼を誘拐した魔女カリブの所有物だったとされているが、現在では正確な歴史や伝承は失われている。

 

『この際、そんなもんはどうだっていい。大切なのはこの剣が龍殺しの属性を持つってことだ! ドラゴンであるお前には致命的だろ! ほらほら最初の威勢はどうした最強の龍王さんよお!』

「厄介な……!」

 

 それでも対抗策の全てを失ったわけではない。

 

「悪魔もドラゴンも斬る。それなら同じ聖剣であるデュランダルはどうだろうな?」

『げえっゼノヴィア!』

「関羽を見たような顔をするな。僅かな時間ではあったが廃教会では共闘した仲だろう? ところで廃教会で思い出したが、異形と化した八重垣は人間から悪魔へと改造されていた。だからデュランダルの一撃で消滅したわけだが──果たして今のお前がどちらにカテゴリされているのか試してやろうか?」

 

 聖剣特有の悪寒を覚え、思わず後退るフリード。魔聖帝王剣カリバーンは誰でも扱えるように調整と改造をされている。アスカロンも同様だ。しかし聖杯による祝福を受けていないデュランダルは別である。正統な担い手であるゼノヴィアをして異空間への封印措置を施さなければならない暴君の一太刀は今のフリードにとって致命傷になりかねない。

 

「嫌悪感を隠せないということは、やはり悪魔に改造されているようだな」

『……なーんちゃって! こんなハッタリに引っ掛かるなんざ詰めが甘いぜ?』

「ダウトだ。本物はもっと嘘が上手いし挑発のレパートリーも豊富だったぞ。そもそも、あの自分勝手なクソボケ変態神父が現世に未練を残して死ぬわけがない。フリードを騙るにしてはあまりにも勉強不足だったな。いい加減に正体を見せろ」

『……ハハハハハハハハアハアハアハ! 高品質な死体()をもらったから少しばかり遊んでやろうかと思ったけれど、バレたら仕方ないですわねん! 私の紫炎で全員纏めて燃え燃えにしてやりますわ!』

 

 化けの皮を剥がされ、降臨したのは憎悪と妄想に囚われた悪霊だ。それが生前はヴァルブルガという名のはぐれ魔法使いであったことをシーグヴァイラ達は知らないし知る必要も無い。

 

 正体を暴かれたフリ◼️◼️ルガは、全身から紫の焔を滾らせた。自分の腕を斬り、その血と脂を媒介にすることでカリバーンとアスカロンも嘲笑の炎に包まれる。

 

『さあ、″紫炎祭主の磔台″よ! この戦場を燃え燃えに燃えさせちゃって!』

「フェニックスを相手に炎など愚かですわね! 不死鳥と讃えられた本家本元の業火! その身に受けて望み通りに燃え尽きなさいな!!」

「待ちなさい、レイヴェル!」

 

 目論見を見抜いたシーグヴァイラが制止するも僅かに遅く、ヴァルブルガは口角を吊り上げるとカリバーンから聖なる輝きを放った。コールブランドに由来する魔を滅する光がレイヴェルの視界を焼く。あたかも紫炎を武器にすると思わせておいての不意打ちだ。彼女だけでなく至近距離で目眩ましを受けてしまった他の三人も思わず動きを止める。

 

「……ッ!!」

『まずは一匹! 地獄で愛しのライザーお兄ちゃんに再会させてあげる! 寂しくないわよ? お仲間も纏めて放り込んであげるからねん!!』

「レイヴェル……逃げてっ!!」

『遅いってのよ! あんたは守れない! 部下も家族も恋人も! そして大事なお友達もねえ!!』

 

 カリバーンが振り下ろされる。回避も援護も致命的に間に合わない。そうしてレイヴェルはおろかシーグヴァイラ達も戦死し、極上の死体を手に入れたヴァルブルガはそのままリゼヴィムの加勢へと向かう、

 

 その予定だった。

 

「──なにやってんだ、お前」

 

 凶刃とせめぎ合うのは、この場において存在しない筈の光の剣。

 

「悪いな、遅刻しちまったわ」

「……どうして、フリードが?」

「そこら辺を歩いてた閻魔大王を拉致して頼んで現世の様子を見せてもらったら、なんと俺のパチモンに大苦戦してるじゃあーりませんか。仕方ないから閻魔大王を脅して数分間だけ現世に帰還したってわけだ。代償は無間払いのローンだけどな」

「あなたって、本当に最低の屑ね」

「ごめんちゃい♡」

「よろしい!」

 

 「私もいるんすよ!?」と猛抗議するリントだが、とても二人の間に割って入れるような雰囲気ではなく早々に諦めた。哀愁の漂う肩をレイヴェルとゼノヴィアが優しく叩く。彼に振り回される姿が自分達と重なったらしい。

 

『邪魔しないでくれるかしらん? もう少しで燃え燃えにできたのに。これだから空気の読めない男なんて大嫌いなのよねん』

「お前に現世は似合わねえさ。俺と妹と、そこの彼氏いる領主と愉快な仲間達で新しい居場所に案内してやるよ。地獄も住めば都なんだぜ?」

『……そう、彼氏がいるなんて羨ましいわね。私なんて好きになった人がすぐに燃えて消えちゃうってのに』

「不燃ゴミでも漁ってろよ。お似合いだ」

 

 フリードは本家本元御本人の挑発を披露する。

 

「閻魔大王曰く、戦果によっては減刑も考慮する。赤い龍曰く、俺の行動が間接的に世界を救う。そんなことは悪いがどうでもいい。どんだけ取り繕おうが誤魔化そうが、俺がお前を殺す理由は一つだけで充分なんだよ。あーあ、こりゃどこぞのロリコン上司の熱血癖が移っちまったか。俺のキャラじゃないんすけど、まあいいや」

 

 彼は神父、少年神父。デビルな壁をぶった斬り、ニヒルな彼は嘲笑う。

 

「俺のシーグヴァイラを泣かせてんじゃねえよ」

 

▼D×D▼

 

 死ぬ覚悟はできている。愛の為に愛を捨てる覚悟も彼らは既に抱いている。

 

『手を貸せ、古の王バロールよ』

「かの二天龍と轡を並べられるとはね。復活はしてみるものだ!」

 

 戦いは激化の一途を辿る。雨霰のように乱射される魔力の弾幕を前に、リゼヴィムは歓喜の笑みを深めた。

 

『甘い……甘いんだよ! そうやって猛攻を浴びせることで俺に″神器無効化″を使わせようって算段だろうがそうはいかねえ! 確かに″幽世の聖杯″も能力範囲から逃れられない以上、迂闊に無効化しようもんならヴァレリーちゃんは解放されちまう! しかし今の俺には究極の再生能力があるんだ! 仮にミンチにされようが何度でも復活するのさ!!』

『ならば貴様が死を懇願するまで何度でも破滅を与えるのみだ。貴様の弱点は既に看破している』

 

 バロールは、「弱点があるのか」と驚愕した様子で口走った。それはリゼヴィムの強大さを指したものではなく、瞬時に見破ってみせた一誠の観察力に対して向けられたものだ。

 

『憤怒で頭が沸騰しちまったか!? 究極の力に弱点なんてあるわけないだろ! そうさ、俺は遂に真なる魔王へと至ったのさ! 誰にも負けねえ誰にも文句を言わせねえ! ママンやパパンを泣かせることもねえ! 俺は……俺はもう血族の中の混血児(出来損ない)ではない……! 俺は存在する……唯一絶対の大魔王ルシファーとして!!』

 

 徹頭徹尾、リゼヴィムという男は悪意を糧にして生きている。己が悪意を世界中に見せつける為に生きている。驚くべきことに、狂気の奥底に隠していた真の理由は劣等感の裏返しだった。ヴァーリやヴァレリーに執着し執拗なまでに痛めつけたのは、自分と同じ存在を見下すことで内に宿した劣等感を払拭する為である。兵藤一誠を越えようとするのも似たような理由だ。

 

『なあ、兵藤一誠。俺はお前に感謝してるんだ。あのクソッタレの悪魔共を俺に代わってお仕置きしてくれたもんな。実力主義を名乗るだけの純血主義を掲げるような連中なんざ惨殺されて当然だ。お前がやらなくても俺が殺しただろう。俺がやらなくても押し寄せる新たな時代の波を乗り越えられなかっただろう。天界も堕天使もそうだが結局は滅びるべきゴミだったのさ。三大勢力がいなくとも世界は回るのだから』

『間抜けめ。我らの目的は復讐だった。貴様への慈悲ではない』

『それでも俺は救われた。どこかの誰かも世界中の修羅神魔仏も救われた。だから礼を言わせてくれ。滅ぼしてくれてありがとう。そして礼を受け取ってくれ……全力で殺してあげよう!!』

 

 リゼヴィムは残存魔力の全てを解放した。後々のことも考慮すれば完全な愚策だが、待ち望んだ戦いを前にしてそんなことは気にもしない。それが吸血鬼達の生命と力だけでなく怨念までも回収してしまった結果の暴走であることも、その影響で正常な判断力を喪失していることも。

 

 絶好の機会は、しかし最悪のタイミングだ。

 

『……っ!?』

「おい、どうした赤龍帝! まさか見えない攻撃でも受けたのか!?」

『気にするな、バロール。そんなことより貴様は自分の妻を救出することに専念しろ』

「そうは言うけど、いきなり吐血されたら心配の一つもするに決まってるだろ! それに鱗の隙間から闇みたいなものまで漏れてるし!」

 

 ″二天龍の鎧″は限界を越えていた。発狂時に補食した魂や肉を代価に辛うじて維持しているが、それも遅かれ早かれ底を尽きる。命を蝕む″龍神化″だけでは最期の目的を果たせなくなる。

 

『──それでも、守りたい者がいるんだ!!』

『テロリストの分際で偉そうに! 犠牲者達に地獄で詫びてくるんだな!!』

 

 互いに正面から放った左の拳が衝突し、次いで莫大な余波が戦場一帯を駆け巡る。

 

『あの光……なんの光!?』

「戦場で余所見をするんじゃねえよバーカ! 地獄の水は辛いぜ! 光の剣で我慢しな!!」

 

 ヴァルブルガとの戦闘にも終止符が打たれたのだが、そんなことは二人にとってどうでもいい。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!』

『悪足掻きを!! どれだけ自己強化を重ねようが聖杯の再生能力を突破することなんざできやしねえんだよ!! 忘れたのか? 俺は究極なんだ!!』

『……お前こそ忘れたのかよ。我ら()の、赤龍帝の能力は″倍加″だけじゃないだろう」

『ああ、″透過″か!? 確かにあらゆる防御をすり抜けるって謳い文句だが、それすらも対策する為に俺は再生能力を選択したんだよ!!』

「足りねえよ、ボケ」

 

 鎧が崩れ落ちていく。意識が失われていく。それでも一誠は最後の矢を放った。宿主であるヴァレリーもろとも″幽世の聖杯″を取り込んだと聞いた瞬間、博打に等しい策を思い付いたのだ。達成条件はそれからリゼヴィムの意識を逸らすことと彼に触れることだった。そして後者が満たされた今、一誠は勝利を確信する。

 

「──赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!!」

『──Transfer!!!!!』

 

 ″譲渡″される″倍加″が、″白銀の極魔龍″の根幹を支える聖杯に干渉する。高めるのは吸血鬼達から集めた大量の魔力を管理するシステム部分。処理の追い付かなくなったそれらは異常を来たし、崩壊していく鎧を繋ぎ止められるだけの器をリゼヴィムは持たない。本来その役割を担う筈の再生能力もシステムの瓦解に巻き込まれてしまったのだから。

 

『……まだだ! 俺の夢は終わらねえ!!」

「いや、これでチェックメイトだ」

 

我に宿りし紅蓮の天龍よ、覇の夢幻から醒めよ

我と契りし漆黒の龍神よ、永遠の后と成り啼け

濡羽色の無限の女神よ

赫赫たる刹那の帝王よ

際涯を超越する我らが()()()誓いを見届けよ

汝、燦爛のごとく我らが燚にて紊れ舞え

 

『──Infinity!!!!!』

 

 舞い降りたのは、無限だ。この長い歴史と広い世界の中で一誠にのみ与えられた唯一無二の加護だ。神仏をも上回るその火力に抗う術を、リゼヴィムは既に奪われた後である。生き残るには″神器無効化″を発動するしかない。

 

「安心しろ。この黒い繭もそこから派生される技も結局は″赤龍帝の籠手″を介している。だから簡単に無効化されちまうわけだが、お前はその代償として頼みの綱の″幽世の聖杯″を失うんだよ」

「……待て、分かっているのか!? 俺を殺せばヴァレリーちゃんも一緒に死ぬんだぞ!」

「仮にそうなったら″悪魔の駒″で蘇生させる。どこかの彼氏いなかった領主に頼んでな。つまり地獄に行くのはお前だけだ。さて、長々と説明ばかりってのもつまらないし早速だけど試そうか。俺は何度でもお前に破滅を与えるが果たしてお前は何度目で死を懇願するだろうな?」

『InfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinityInfinity──Ωver B∞st!!!!!』

 

 ──Are you ready(死ぬ覚悟はいいか)?

 

「できてるよ」

 

 濡羽色で形成された巨大な刃を一目見て、リゼヴィムは自分の死を直感した。

 

「くッ……そオオオオオアッ!!」

 

 究極の選択だ。再生能力を全開にしていなければ兵藤一誠には対抗できない。しかし″神器無効化″を発動しなければ死ぬ。そして″幽世の聖杯″を欠いた素の能力では歯が立たない。

 

「──″神器無効化″!!」

 

 リゼヴィムは絶叫した。解放されたことで宙に投げ出されるヴァレリーは無視して、迫り来る凶刃に全力をぶつけることで打ち消す。

 

マイハニー(ヴァレリー)!!」

「……バロール?」

「よかった、よかったよお……っ!」

「わわっ!? そんなに抱き締めなくても……」

 

 邪眼の王は救出を果たした。次は赤い龍の帝王が妻と娘を救う番だ。その為には目の前の悪意を断ち斬らなくてはならない。

 

「まだだ! 俺にはママンから与えられた神滅具があるんだ! これがある限り、イッセーきゅんは逆立ちしても俺に勝てない! その″龍神化″も無限の力は獲得できても無限の活動時間までは得られないんだよな!? だったら時間切れまで粘れば俺の勝ちになるって作戦よ! うひゃひゃひゃひゃ♪︎」

 

 嘲笑するリゼヴィムだが、

 

「ボケが。聞こえなかったか? その目論みは足りねえんだよ。神器に頼らずともお前をこのまま殴り殺す程度のことはできちまうんだ。なんたって俺は無限に侵されてるんだからな」

「……!!」

 

 形勢不利と見て転移術式を描こうとするも、その手は宙に縫い付けられたまま動かない。ヴァレリーを抱えるバロールの瞳が怪しく瞬いている。

 

邪眼王の紋章(ロイヤルパニッシュメント)。狙った獲物を逃さないからこそ俺は最強無敵の王様なのさ」

「この……忌々しい亡霊が!」

 

 逃走も抵抗も封じられた。それでも最期の悪足掻きを図るリゼヴィム。同じ混血児である孫にできた芸当が自分にできないわけがない。

 

「……こうなりゃ″魔王化″だ。そこのアガレスやフェニックスの小娘を操ってお前にぶつけてやるよ! 仲間同士で殺し合え!!」

 

 だが、その直前に″絶霧″を裂くようにして放たれた聖なる不意打ちが彼を貫く。

 

「俺のシーグヴァイラに触るなよ」

 

 血飛沫と共に自分の胸から飛び出たそれがカリバーンの刃であることに気付き、表情を歪めるリゼヴィム。霞む視線で振り向いた先には満面の笑みを浮かべるフリードがいた。翼を持たない彼は空を飛べないのだが、その欠点は蝙蝠の翼を拡げたシーグヴァイラに背後から抱き締められることで解決している。

 

「悪魔は聖剣が苦手だってな。その筆頭格であるコールブランドをグラムと聖魔剣で超絶強化したんだから、悪魔には相当なダメージだよな?」

「……ちょっと、地味に私にもダメージが跳ねてきてるんだけど。落とすぞ」

「ごめんちゃい♡」

「よろしい」

 

 「やれよ!」とフリードは叫んだ。

 

「こんだけお膳立てしてやったんだ! さっさとトドメを刺しやがれ!」

「任された」

 

 カリバーンは誰でも扱えるように調整と改造をされている。それは一誠も例外ではない。

 

「くたばれ、クソ野郎」

 

 刃を鷲掴みにし、そのまま勢いに任せて振り上げる。ドラゴンである一誠には通用せずとも悪魔であるリゼヴィムには致命傷だ。ましてや頭を両断されてはどうしようもない。リゼヴィムは自分の敗北を突きつけられる。

 

 悪であれ魔であれ。形は違えど母の呪い(願い)は達成することができた。ならば最期の瞬間まで貫いてみせよう。世界でたった一人の兄弟に憎悪を振り撒いてから逝こう。

 

「やるじゃないか! しかし忘れるな! 俺を倒しても世界はお前を逃がさない! 悪は滅ぼされる運命にあるのさ! うひゃひゃひゃひゃ♪︎」

「遺言はそれでいいか?」

「ああ……地獄で暴れる準備はできてるよ」

「そうか。じゃあな、リゼヴィム」

「さよなら、我が兄弟(兵藤一誠)

 

 一刀両断されるリゼヴィム。堕ちていく躯を越えて、黒い龍は檻の前へと舞い降りる。

 

「ただいま、オーフィス」

「……おかえり、一誠」

 

 悪意と全機能を喪失した檻を難なく破壊し、オーフィスはリリスを連れて一誠の下へと駆け寄った。そして離されていた時間を惜しむように互いを強く抱き締める。

 

「俺の隣にいてくれ」

 

 異形と化したその瞳で一誠は願う。異端と化したその手で一誠は祈る。決して叶わない理想なのだと知りながらも一誠は呟く。

 

「ずっと、ずっと一緒にいよう」

 

 死が二人を分かつまで。

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