fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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女心って書くの難しい。

今回はシャル目線のものを書いてみました。


十六話 outcast

「うーん、やっぱり跡になったか。」

 

鏡の前に立ち、俺は自分の顔を見る。左目の下にくっきりと傷跡が出来てしまっていた。傷跡は男の勲章と言われるが、ここまで目立つとどっかのヤがつく人達みたいじゃないか。

 

「え~、でも傷跡残していた方がカッコいいよ」

 

髪をといでいるシャルは俺の顔を見て言う。vaultシアターにあった日本の映画を思い出したらしく、俳優の名前を挙げる。だが、シャルよ。それは、仁侠物のやつじゃないか。つーか、なんでそんな映画がvaultにあるんだよ。

 

「そうか?まあ俺はそう思えないんだけど」

 

「そう?まあいいじゃない。・・・・そろそろ時間よ」

 

「ん、ああそんな時間か」

 

pip-boyのデジタル時計を見ると、8時を過ぎていた。俺は地下室に行って適当な武器と弾薬をpip-boyに納めて外に出た。

 

「ブライアン、仕事だぞ!」

 

「はーい!」

 

子供らしい元気な声が二階から聞こえ、上を見げると「銃と弾丸」や「ニコラ・テスラ」、「伏せろ!」、「中国軍特殊作戦:訓練マニュアル」を抱えたブライアンが階段を降りようとしていた。

 

「うわ、昔のユウキみたい」

 

「おい、俺はあんなに本は抱えてないよ」

 

vaultにあった米陸軍の教本も読み漁っていたな。まあ、殆んどが電子書籍に成っていたりしたから、読むのに目が悪くなりそうだったが。

 

「ブライアン、そこにある弾薬箱を持っていくぞ。シャルはここに居てくれ。」

 

「え、私は行かなくていいの?」

 

「軍曹に会いたくないんでしょ」

 

そう言うと、シャルはテヘッ♪と言う感じに頭を掻く。手伝ってくれって言っても用事もないのに「用事がある」と行って逃げてたから最初から期待していない。はぁ~・・・。

 

「昼御飯は持っていくから」

 

「うん、頼んだ」

 

「行ってきます、シャル姉!」

 

俺とブライアンは店に行くべく玄関の扉を開けた。この頃、ブライアンはシャルを「お姉ちゃん」と呼ぶようになった。まあ、良いんだけど、俺にも「お兄ちゃん」と呼びそうになったので、「師匠」か「店長」と呼ぶように言い付けた。だって、血も繋がらないのに兄貴と呼ばれるのは何かこそばゆい。

 

「お兄・・・いえ、師匠。今日は客来る?」

 

「う~ん、どうだかな。お前は後ろの作業台で10mmピストルを解体してるんだぞ」

 

「うん、でも・・・」

 

「どうした?」

 

言葉を濁すブライアンに訪ねる。

 

「怖い人来ないよね」

 

「まあ、来ないよ。接客するのは俺だし」

 

重そうに持つブライアンから10mm弾の弾薬箱を取って俺が持ち、店の前に到着した。頑丈に施錠された扉の鍵を開けて、店内に入る。

 

「司令官殿、お帰りなさいませ!」

 

米陸軍の塗装を施されたRL3軍曹はまるで基地にやって来た将軍を迎える兵士のように俺を迎え入れた。

 

「泥棒は来なかったか?」

 

「いえ!何もありません!サー!」

 

俺は軍曹からの報告を聞くと、持っていた弾薬箱を店の奥にあるスチール製の棚に置く。カウンターの下の棚に使用頻度の高い弾薬と「緊急事態」に対応できるよう、10mmピストルを置いておく。

 

壁には中華アサルトライフルの他に米陸軍採用のアサルトライフルやこの世界にはないM4A1。解体して改造を施そうとしていたミニガンを作業台の上に置く。あたかも生前脳内で描いていた俺の武器庫である。

 

こんな理想の空間見ていると・・・・

 

 

「くっく・・・クハハハハハ!!」

 

「し、司令官!!?」

 

「うわ、師匠が壊れた!?」

 

ま、ともあれ店は準備万端である。一度店を出てから扉のプレートを“closed”から“open”に変えて店内に戻った。すると、一時間に5人位が訪れ始めた。

 

「この銃を修理して貰いたい」

 

「はい、アサルトライフルですね。修理は明日に成ります。費用はこの位ですね。ここにサインを」

 

「この銃は買えるのか?」

 

「ええ、損傷も少ないので250キャップです」

 

「うちの孫の銃を買いたいのですが」

 

「分かりました。32口径と10mm、どれがよろしいのでしょうか」

 

「これを売りたい!」

 

「中華アサルトライフルですね・・・・マガジンのバネが切れてますし、照準が壊れてしまっています。機構にはゴミが詰まってますし、ボルトリリースレバーが壊れています。マガジンレバーも折れてる。見る限りセレクターも折れてますね。これは100キャップ位ですね」

 

てな感じに客に懇切丁寧に話を進める。生前ファーストフード店でバイトをしていたためか、接客はお手のもの。

 

 

「師匠、すごい客ですね」

 

「まあ、Threedogのお陰かな」

 

その後、メガトン付近で展開している傭兵が訪れるなどカウンターにあるキャップを納めたレジは満杯になった。

 

「ブライアン、そこの空弾薬箱を開けてくれ。そこにキャップを入れる」

 

足元にはキャップを納めた弾薬箱やスチール箱が置かれた。もう、ウハウハである。

 

「はい、いらっしゃいませ」

 

「失礼するわよ」

 

聞こえたのは、女性の声だった。振り向くと濃緑色に塗られたコンバットアーマーに身を包んだ金髪の傭兵だった。

 

「私はライリー。DCでライリー・レンジャーって言う傭兵部隊を率いているわ」

 

「ユウキ・ゴメスです。見た通り武器屋ですが、どのような用件で?」

 

ライリー・レンジャーは生前の記憶を辿るまでもなく、メガトンに来てからもよく耳にする名前である。極悪なタロンカンパニーと対照的に良心のある傭兵部隊の一つ。その名前はかなりの知名度で知られていて、仕事の達成率も高い。限られた高い能力のある人間を雇用する部隊でもある。その彼らが来たと言うことは、俺が売る武器が彼らに使われると言うことだ。

 

「ええ、ちょっと武器を購入しようと思って。何かいいのあるかしら」

 

俺はそう言われ、脳内でリストを出す。それはこの世界に出ている武器の他にも、MODで使われた武器や既存のアサルトライフルを改造するパーツも含まれている。

 

「趣向は何がいいですかね?」

 

「アサルトライフルかショットガン・・・その二つ位ね」

 

俺はリストを絞る。残ったのはアサルトライフルとショットガンの二つのジャンル。そしてここから使用頻度と精密さ、そして戦場での整備等を考えた結果、こう至った。

 

「じゃあ、これは如何ですかね?」

 

テーブルに出したのはアサルトライフルとコンバットショットガンであった。しかし、普通の銃ではない。アサルトライフルの場合、銃身が交換され、20mmマウントレイルが装着されたR.I.S.タイプ。更に銃床もコンパクトな伸縮ストックに変えられている。これ等は軽量なアルミを使用したタイプで木製のストックよりも大幅な軽量化が計られている。ショットガンはドラムマガジンからバナナ型のマガジンに変えられて、木製のストックからアルミ製の折り畳みストックに変えた。両者共に照準には緑の蛍光が付いており、狙いが付けやすいのが特徴である。

 

それを見せると、ライリーは目を見開いた。

 

「これは・・・さすがthreedogが宣伝するだけあるわね」

 

これは誉め言葉だと思いたい。すると、ライリーは新しく交換されたストックやマガジンを確認する。

 

「ここには何かつけられるの?」

 

「ここには照準をぶれさせないようなハンドグリップやフラッシュライトを装着可能です。これがいい例ですね・・・っと!」

 

近くに置いてあった木箱から生前のアメリカ軍が使用していたM4A1を取り出す。それにはACOGサイトとハンドグリップなどが取り付けられ、弾さえ入れれば撃つことが可能だ。だが、肝心の弾の入ったマガジンは装填されていなかった。

 

「へぇ・・・グリップは買えるかしら?このスコープは?」

 

「まだこの銃は試作品のようなもんなんですよ。このアサルトライフルもここにレイルを取り付けてないし」

 

「これ、試作品なの?」

 

おっと、口を滑らせた。試作品と言うのは語弊がある。実地経験がない見たいじゃないか。実際、試験運転はもう済ませてあるし、乱暴にしても平気だ。故意で壊そうと思えば壊せるが、そうそう出来るものじゃない。改造銃第30号位だが、実戦には十分耐えられる。だが、照準の所にレイルを取り付けるのに手間取っているのは事実であるが、今から渡すのは照準の所にレイルを取り付けていないタイプである。疑念を払拭するため、彼女に言うと、なんとか分かって貰えたようだ。

 

「・・・そう言うことね。じゃあ、その二つは買うわ。幾らぐらいなの?」

 

「それがですね。ここまで魔改造すると、値段がどれくらいか分からなくなっていましてね」

 

正直言うと製作だけでざっと、二百キャップ以上つぎ込んでいる。アサルトライフルが完璧な状態で販売されれば300キャップは行くだろう。だが、カスタマイズしたタイプが500キャップなら俺だったら買わない。その費用は幾つかの失敗を経ているため、それなりの開発費と思えばいいだろう。だから、買うとなるとまた話は別である。

 

「じゃあ、無償で渡す代わりに使用した感想と改善点を教えて貰えませんか」

 

「つまりモニターにするってこと?」

 

開発者の俺が使用して、改善点が分かればそれでいい。だが、激戦地で戦う彼らのような人による指摘で今まで銃と言う武器は進化を重ねてきた。こんな、荒廃した世界でさえ、武器の改造は行われているのも現実だ。

「ええ、実戦には使えると確信していますが、後の感想を聞かせてくれれば新たな武器を製作可能です。それにそいつは折り紙付きの代物です。」

 

耐久テストも行ったところ、改造後の弾詰まりや銃身の歪みは元のアサルトライフルと比べて低い。木製のハンドガードによって熱がこもり、壊れる原因にも成っていた事もあって、カスタマイズしたお陰か壊れにくくなっている。ライリーは少し考えると、腕組みを辞めて言う。

 

「いいわよ。その代わり満足できない武器ならthreedogに悪評を言うから覚悟していてね」

 

「うぅ・・・善処しましょう」

 

一応、特殊な弾薬も欲しがっていたため、5.56mm徹甲弾を300発とホローポイント300発を10%割引して売った。ライリーはお買い得商品を買ってご機嫌な主婦のように鼻歌を唄いながら、店を後にした。

 

だが、これで製品化が出来る。

 

客足が途絶え始めると、俺はブライアンに言って一度扉に掛けた札を“closed”させ、足元にあるキャップを満杯にした箱を隠し部屋に持っていくよう指示した。pip-boyの時計を見ると、12時になっていたため、ブライアンにシャルから昼食を持ってくるよう言った。

 

「ふぅ・・・・。さてと、ブライアンがいない間に軍曹改造計画を進めるか」

 

「司令官殿、有り難き幸せ!」

 

そう、軍曹は軍用に設計されため、ある程度は汎用性がある。例えば、収納能力を上げるために弾薬を減らしたり、収納能力を下げて追加装甲を施す事も可能だ。ひとまず、作業台に載せられたミニガンを床に下ろして設計図を広げる。それはMr.ガッツィーの設計図で兵装の交換の際、重宝する。改造案としてはこんな感じである。

 

①案:火炎放射器からミサイルランチャーに換装。拠点攻撃に特化したタイプ。

 

②案:レーザーガトリングを装着して分隊支援として運用する。

 

③案:弾帯やポーチなどを装甲の外装に装着。収納能力の倍増。

 

④案:キャタピラを履かせて、収納能力及び武装の増加。

 

ボツ案:医療用の蛸足を増やし、医療用ソフトを導入。しかし、これだと医者(シャル)要らず

 

因みにやるなら④がお勧め。そして腕をガトリング二つでミサイルランチャー二つにしてガ●タンクにしてみたり。え?原型を留めてねぇだって?仕方がない。これが男のロマン!大艦巨砲主義だ!

 

 

ギィー・・・・

 

 

扉の音がして、俺は振り返った。多分、ブライアンがシャルに頼まれてvault-tecの弁当箱に何か詰めたのだろうと見る。だが、そこにはブライアンの姿はない。黒と赤を基調としたパワーアーマーの兵士がそこにいた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「えっと、どういうこと?」

 

私はやっとの事で出来た医療用のバックをテーブルに置いて言った。最近、ユウキの怪我が多いし、医者としての仕事が多い。そんなときにしっかりとした医療器具を持っていないと、十分に処置が出来ない。だから、モイラやメガトン診療所からメスやピンセット、モルヒネや抗生物質、スティムパックを用意した。だけど、せっかく作った医療バックをテーブルから落としそうになった。

 

「だから、黒と赤のパワーアーマーを着た男の人達と一緒にメガトンの外に出たんだってば!」

 

黒と赤のパワーアーマーと言えば、ウェイストランド全域で見掛けるB.O.S.アウトキャストだろう。以前、ユウキが核爆弾の解体した時に立会人として外で核弾頭に搭載されていた制御チップを確認した。だけど、彼らはユウキに何をしようとしているんだろう。

 

もしかしたら、ユウキの持つ技術を使って何かをしようとしているのだろうか。でも、なんでそれをしたのか分からない。

 

「ブライアン、店を見ててくれる?一人で出来なかったら酒場にいるウェインかモイラの店にいるジムに頼んで」

 

「お姉ちゃんは?」

 

ブライアンは不安そうな声を出して、私の顔を見る。私は膝を床についてブライアンを抱き締めた。

 

「大丈夫、ユウキを見つけたら直ぐに帰ってくるから」

 

もし、私がこの子の元へ帰らなかったらどうなるのだろう。ウェインやジムが店を続けてくれるだろうか。ブライアンはユウキから色々な事は教わっている。ここら辺のスカベンジャーよりも銃の扱いは良いはずだ。だけど、ブライアンを私のように辛い思いをさせたくない。

 

ブライアンの頬にキスをすると、家にあったロッカーからコンバットアーマーを取り出して着込む。ユウキからは顔を晒さないように、女だと分からないようにしろと言われた。いつも、ユウキが居たからvaultスーツだけど、一人で行動するときは女だと悟られないような装備にしなければならない。

 

コンバットアーマーを着こみ、ロッカーのハンガーに広げていたバンダナで口と鼻を覆う。ゴーグルをして、濃緑色のコンバットヘルメットを被る。これで顔は分からない。最後に、背嚢に一日分の食糧と弾薬を詰めて準備は出来た。

 

「ユウキ、待ってて」

 

私は呟いて、愛用しているTBレーザーライフルを手にとって家のドアを開けた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「なあ、あとどれくらいなの?」

 

「もうすぐだ」

 

「だから、時間は?」

 

「少しは黙って歩け。ウェイストランド人!」

 

とパワーアーマーを来た後ろの兵士がどやし立てる。おい、こっちは客人だぜ!もう少し、礼儀ってもんがあるだろうに。

 

だが、彼らに俺への礼儀は無用と思っている限りこの待遇は続くだろう。B.O.Sは元々閉鎖的な社会であり、D.C.都市部で活動するエルダー・リオンズ率いる部隊の中でもごく少数だが差別的な態度を取る者もいる。それはテクノロジーや兵器の優位性からか、各兵士の傲慢な態度を引き出しているのだろう。B.O.Sアウトキャストも例外ではなく、リオンズ率いる部隊よりもそれは強い。人命よりテクノロジー確保に動いたアウトキャストの方がカリフォルニアの本部の意に沿ったものだろうが、人としては失格ではないだろうか。

 

だが、その俺は彼らアウトキャストに付いていっている。彼らの下働きはしないのだが、一応「キャップは払う」と言っているのでついてきてしまった。まあ、ブライアンもシャルも軍曹も居るから大丈夫だとは思うが。

 

「で、俺は何を修理すればいいんだ?」

 

「光学機器を幾つか。それと、ミサイルランチャーを量産したい」

 

「ミサイルランチャーをですか?・・・・出来ない事は無いけど。只の誘導性能のない発射筒になるけど、それでよろしければ」

 

「な、なんだと・・・!」

 

俺の言ったことに反応したのか、いきなり俺の肩を掴んできた。

 

俺、何かやった?

 

「いや、だから!大戦後には殆んどのミサイルランチャーは誘導装置が故障して、ウェイストランドじゃロケットランチャーとして運用されています。だから、ミサイルと同じ筒を量産して、推進剤に点火できるようにすれば簡単に生産が可能です」

 

「そうか・・・・、スクライブの野郎!ふざけやがって!」

 

パワーアーマーの兵士は憤ったように悪態をつき、また歩き始める。

 

キャピタル・ウェイストランドには米陸軍が使用していたミサイルランチャーが多く使われている。その殆んど、いや全てと言ってもいい。ミサイルを誘導するコンピューターが壊れているのだ。戦場ではロケットランチャーとして使われる事が多い。本来なら、地対空及び地対地ミサイルとして運用が可能な米軍が誇る汎用ミサイルランチャーだったが、唯一の欠点として搭載される誘導コンピューターが壊れやすかった。アンカレッジでも、専ら誘導コンピューターが故障して使い物にならないとして一般将兵が抗議したことがあるくらいだ。その後も改良型が出回るがD.C.には、改良型は出回っていない。

 

もしかしたら、パワーアーマーの兵士はスクライブに嘘の情報を握らされているのかも知れない。

 

「おい、ジェンスキー。もうすぐフェアファクスだ。声を潜めろ」

 

フェアファクス廃墟と呼ばれるビルの残骸はメガトンの目と鼻の先にある廃墟である。近くには米陸軍の基地があるものの、基地はアウトキャストの本部となり、フェアファクス廃墟はレイダーが屯している超危険地帯だ。日中はレイダーとアウトキャストの戦闘で夜は互いに牽制し合っている。

 

無駄な戦闘は無意味と判断したアウトキャストの分隊長は声を潜めるよう指示し、他の兵士はそれに従った。俺は何があるか分からないため、持っていたM4A1の弾倉を確認する。アサルトライフルを持って行こうとしたが、目の前にあったM4A1を何故か持っていきたくなり、日帰りの装備でアウトキャストの分隊に付いていっている訳だが、メガトンの方向を見てあのごみの山のような集落に帰りたいと思った。僅かしかいないものの、「住めば都」と言うようにメガトンにも多少の愛着はあった。

 

 

分隊は無事何も攻撃を受けることなく、ファークス廃墟を抜けてアウトキャストの司令部であるインディペンデンス砦が見えてきた。正直言って、エルダー・リオンズから“独立”したアウトキャストにはお似合いの施設だろう。

 

「キャスディン護民官、彼を連れてきました。」

 

「ご苦労だった。分隊は1300時より休憩に入れ。」

 

パワーアーマーを着た兵士達は護民官に敬礼すると、基地の中へ入っていく。一人残された俺はキャスディン護民官と対峙する。

 

「君がメガトンで武器屋をしているユウキ・ゴメスかい?」

 

「ええ、そちらはB.O.Sアウトキャストのキャスディン護民官殿でよろしいかったでしょうか?」

 

俺は何時もの敬語口調で話すと、キャスディン護民官は驚いた。

 

「ほー、君は他と比べてまともなのだな」

 

いくら堪忍袋のでかい俺でも見下した言い方はかなり腹が立つ。

 

「アウトキャストは十分に統率が取れていますね。流石はキャスディン護民官。ただでさえ、兵力の少ないのに無茶をするものです」

 

明らかにキャスディン護民官は痛いところを付かれたに違いない。ヘルメットで顔色は分からないが、いらだっているのは明白だ。

 

「なぜそれを?」

 

「ただでさえ大陸を横断した猛者ばかりで、全ての戦力を投入できれば都市部を制圧可能なのに、アウトキャストが離反してからB.O.Sは崩壊寸前。補給も送られず、現地調達の兵器と現地で志願した兵士達を投入するまでに至っている。元はと言えば、エルダー・リオンズと袖を別ってしまったことが原因では?」

 

「補給はリオンズが方針を変えた事に始まる。元々、我々はテクノロジーを保全することが任務だった。それなのに、奴は野蛮なウェイストランド人を守る方が必要だと言った。バカな奴だ。司令部からの補給が途絶えるに決まっているだろう」

 

「まあ、そうでしょうね。でも、貴殿方が居なくならなければ、D.C.都市部は制圧でき、三つ巴の戦いに戦力を投入せずに済んだのでは?」

 

「それはそうだが・・・」

 

「一時的に住民の味方をすれば兵力を現地兵から補うことは可能です。それに、大陸横断して補給品を届けられるでしょうか?戦略的に人員や物資の補給が難しいこの地でウェイストランドの救済と言えば人員はある程度集まるし、傭兵を戦力にすることも可能です。人道的な意味合いも持ちますが、政治的な意味合いも兼ねていたらどうです?」

 

実際、エルダー・リオンズが只の人道的な行いの為に司令部からの補給を蹴ったとは到底思えない。大陸を横断してのテクノロジーの回収は意義があるように思えるが、補給がそう簡単に出来る訳がなかった。補給の脆弱さを鑑みても、ウェイストランドを救済する方がメリットが大きい。人員は集まるし、ウェイストランド人の受けはいいだろう。それに比べて、元々の大義の為にテクノロジーの回収を行うアウトキャストの受けは悪い。

 

「ディフェンダーでさえ、大義を棄てたと子供のように騒いでいるのに、君はそう言う観点から物を見るとは侮れんな」

 

キャスディン護民官は苛立っていたような言動から一変して感心したようである。、護民官は俺についてくるよう言った。

 

「他の隊員にも君が来ている事は言っておいた。地下の研究所に案内しよう」

 

キャスディンはヘルメットを脱ぐと、基地内の扉を開けて進む。キャスディンは50過ぎのおっさんであった。エルダー・リオンズも60過ぎの高齢者だ。それにタメを張れるにはそのぐらいの年齢じゃないと無理だろう。

 

基地内を進み、地下の階段を降りると、赤いローブのような服を着た科学者が何かの研究に熱中している。

 

Brotherfood of steelは幾つかの階級があり、イニシエイト(訓練生)やナイト(戦闘兵士)、スクライブ(科学者)、パラディン(戦闘指揮官)、エルダー(将軍)がある。元々、青いローブを着るのはスクライブだったが、アウトキャストになったスクライブは赤色のローブを着ていた。アウトキャストの階級もリオンズ傘下の部隊と別けるために、階級名を変えていることもあるが、長年言っていた階級をそう易々と変えることはできなかった。研究所の上に作られた連絡橋を歩き、武器開発室と書かれた部屋に入る。

 

「護民官!どういうことですか!私はウェイストランド人が欲しいなんて言ってません!」

 

出てきたのは黒髪で肩まで掛かる長い髪。そして眼鏡を掛けた女性がいた。そんな、インテリ系であるにもかかわらず、手には姿に合わないミサイルランチャーが抱えられていた。

 

「私は言った筈だぞ。一週間進展がなければ、技術をもつウェイストランド人を連れてくるって。それなのに、どういう事だ?ミサイルが真っ直ぐ飛ばないミサイルランチャー・・・・いや、ミスランチャーか。そんなの作って何をしろと言うんだ?」

 

「あれは誘導装置を復活させようとしたら、なんか下に落ち始めたんです」

 

「私は戦いに使えるミサイルランチャーを量産しろと命令した。断じて、使えない物を作れと命令した訳じゃない。」

 

「わ、分かってますけど・・・・」

 

「分かるなら、彼と共にミサイルランチャーを量産できるように考えろ。劣化版でも構わん。何でもいいから作れ!」

 

部下を叱る上司のようにキャスディン護民官は顔を真っ赤にして研究所を出ていく。俺はそれを遠目で見守るが、怒鳴られた本人は溜め息を吐く。

 

「・・・・はぁ~。で、そこのウェイストランド人!名前は!」

 

「ユウキ・ゴメスです」

 

「へえ・・・Threedogが言っているほど、強いようには見えないけど。むしろ弱く見えるわね」

 

こいつ、初対面でいきなり俺を貶すとか舐めてんの?こいつ?最初のキャスディンといいコイツといい・・・・ウェイストランド人を舐めてんな。

 

「よく言われます」

 

「じゃあ、ゴメス。これが何だか分かる?」

 

いきなり名字を呼び捨てされてイラッと来たが、そこは押し殺して、指を指した物を見る。それはアメリカ軍が使用していたレーザーライフルだ。

 

「AER9型レーザーライフル、米軍が使用していた傑作光線小銃だ。旧式だが、構造も簡素で整備も楽。新型のAER11はレンズの耐久性が悪く、旧式を多く使っていたな。確か、アンカレッジ戦線の時に特殊部隊が多く使用していた。俺としちゃ、実弾の方が好きだけど」

 

「よく知っているわね」

 

あっさりと答える俺に驚いたようで彼女は眼鏡を指で上げ下げする。

 

「じゃあ、このミサイルランチャー・・・。生産するならどうするのよ」

 

「俺なら誘導装置は諦めて・・・」

 

「アンタ、バカァ?それじゃあ、ミサイルランチャーの意味ないじゃない!」

 

「殆んどのミサイルとして運用されてないけどな」

 

どっかのドイツ生まれの大卒中学生を思い出すが、それは置いておこう。

 

「待て待て、どっちにしろオリジナルのミサイルランチャーなんてすぐ誘導コンピューター壊れるんだし。だったら、最初から搭載しなければいい。その方が低コスト。」

 

「・・・・どうすんのよ」

 

俺は咳払いをして説明する。

 

「ゴホン!・・・まず装填やこのでかい図体。こんなのは戦場では邪魔その物。パワーアーマーを着ればそんなでもないかもしれないが、一般歩兵が携行するには大きすぎる。・・・そこでだ!こう考えた」

 

近くにある黒板に簡素な図面っぽいものを書いていく。

 

「只の筒で構わない。まず、アルミニウム製の筒を用意して簡易的な発射機構を作る。とにかく簡素化でトリガー部分は残しておくが、グリップは折り畳みにする。で、ここから発射するわけだが」

 

「これじゃバックブラストはどうするのよ。閉めたまま?」

 

バックブラストと言うのは、俗にいう噴射炎である。中東でテロリストが使用するRPG-7が良い例でロケットを発射すると、燃焼材が燃えて後ろから出てくる。しかもある程度それを逃がす長さの物がないと、使用者自身の身体に掛かる。

 

「心配ない。これは使用するときに伸縮して30cm大きくなる」

 

「伸縮するの?!それなら・・・」

 

「多分、再装填とか出来ない。筒の耐久性の問題で一発ポッキリで終わりだと思う。」

 

因みにこれはとある武器をイメージしている。今でもアメリカ軍が使用していた対戦車ロケット「M72LAW」だ。MGSPWに出てくる筈だ。1950年代に開発されたLAWはベトナム戦争に使用されて敵の装甲車や援兵壕を破壊するのに使われた。現在でも、一部の装甲車両に対して使用でき、未だに第一線で使用されている。

 

「一回しか撃てないのね・・・。でもこれなら量産は可能よ。設計図は出来るかしら?」

 

「一から書くのは初めてだが、出来るだけやってみよう」

 

でも、待てよ。それって俺がやるんだよな。この女はやんないのか?

 

「私は無理よ。専門は光学機器専門なのよ。ミサイルランチャーの設計なんて無理に決まっているじゃない!」

 

「じゃあ、何で護民官から命令受けてんだよ!」

 

「それは・・・誰も居ないわけだし」

 

アウトキャストに来たのは、殆んどが兵士などで科学者が少ない。その中でミサイルなどの推進剤を燃やす兵器を得意とする人間が居ないため、彼女に命令が回ってきたのだと言う。

 

「だって仕方がないじゃない。しかも、キャスディンのジジィは私にミサイルランチャーを量産しろって言うのよ!レーザーライフルやピストルならともかく!あの残り少ない髪をレーザーで根こそぎ剥いでやりたいわ!」

 

と彼女は愚痴を溢し、基地に残っていたインスタントコーヒーを作って飲んでいる。

 

「あなたにもあげるわ。まあ、カルフォルニアのよりは不味いけど」

 

「どうも」

 

マグカップに注がれたインスタントコーヒーを飲む。物凄い苦味が口に広がり、苦さのあまりむせそうになる。

 

「慣れてないとそうなるわね。・・・でも、あなたvaultに居たんでしょ?合成コーヒーとかなかったわけ?」

 

「あったけど、ここまで苦いのは無理。俺はミルクと砂糖を入れてたから」

 

「へぇ~、私はいつもブラックよ」

 

と眼鏡をかける彼女はマグカップに注がれたコーヒーを飲む。そう言えば、名前聞いていなかったな。

 

「あのさ、名前は・・・」

 

「クロエで良いわ。でも、あなた喧嘩でもしたの?」

 

「誰とだよ?」

 

「決まっているじゃない。相方の・・・いや、嫁の・・」

 

「よ、嫁って!」

 

いやいや、まあそうなりたいってのはあるけど!今はその幼馴染みって言うか!親友以上恋人未満という関係なのか!?

 

「・・ププ!顔真っ赤にしちゃって!可愛い!」

 

とクロエは歳相応にはしゃぎ、俺を指差して笑う。見た目からして俺と同じぐらいである。

 

「う、五月蝿い。喧嘩はしてないよ。護民官の部下が俺を呼びにメガトンの店まで来たんだよ」

 

「何で彼女はこなかったの?」

 

「彼女って・・・・、まあ声掛けなかったし」

 

そう言うと、クロエは驚いたように目を見開いた。

 

「あなた、彼女に声も掛けずに出てったの?心配してんじゃない?」

 

「いや、大丈夫じゃないか。完全重装備のB.O.S.の兵士に囲まれて行ったんだから」

 

「バカね、あの兵士達に連れ去られたって思うわよ。それでなくても、私達アウトキャストはここの人達から嫌われているんだから。」

 

「そうだよな~・・・。一回戻るべきかな」

 

「戻るべきね。まあ、これで婚約解消なら笑い話になるけど」

 

「だから婚約って・・・まあ、そうだよな~」

 

婚約はともかくとして、喧嘩別れもあり得る。些細な事で喧嘩して別れることなんて友情関係や・・・恋人関係も崩れることもある筈だ。ウェイストランドでだって例外ではない。それなら、急いで帰る必要があるだろう。

 

「俺は帰っても大丈夫なのか?」

 

「良いわよ、明後日にディフェンダークラスの兵士を送るから。貴方は早く帰らないと帰る家が無いわよ」

 

その通りである。

 

だが、なぜ彼女は俺に優しいのだろうか。しかも、そこまでウェイストランド人を毛嫌いしていないのか?

 

「バカね、私達の組織は実力主義よ。私達よりも技術や知識がある人間には誰であろうと敬意を抱かなければならないわ。例え、荒野で生きる野蛮な人間であってもね」

 

 

「ふ~ん、そういうものか」

 

「そう、護民官だって最初はあなたが本当に信用できるか、知識を持っているか疑り深かったのよ」

 

部外者を招き入れる事はそれなりに危険を伴う。だから、疑り深くてもそう大したことじゃない。俺はB.O.S.が実力主義であったことに少し驚きつつも、マグカップにあるコーヒーを口に含めた。

 

「ほら、早く行かないと彼女奪われるわよ」

 

俺はマグカップに注がれた苦すぎるコーヒーを飲み干して研究所を出ようとする。しかし、部屋を出ようとするとき、とある機械に目が行ってしまった。

 

「おいおい、何でこんなところに!!」

 

俺は叫んだ。

 

リンゴのマークが付いた音楽機器に日本製の黒光りする携帯ゲーム機・・・・。それは生前俺が使っていたウォークマンに携帯ゲーム機であった。近くには俺がいつも使っていたバックパックがあり、中に入っていた電子機器は机の上に並べられていて、今にもスクライブが来て解体しそうな勢いだ。

 

「クロエ!あれは何処で見つけた?」

 

「ん、あれ?この前倉庫の奥で見つけたの。余り見掛けないテクノロジーよ。軍事用じゃないから、あんまりスクライブは手を出してないわ・・・。見てみる?」

 

「もちろん」

 

自分の持ち物である。出来ることなら、持って帰りたい。だが、自分の物だと主張しても200年も前の物品だ。確実に無理な話だが。

 

「なあ、これさ俺に・・・」

 

「ダメ!」

 

「そこをなんとか!」

 

断固としてウンと言わないクロエ。俺は何とか彼女を頷かせようと、交渉する。

 

「頼む!軍事用じゃないから良いじゃないか!」

 

「軍事転用できるテクノロジーかも知れないでしょ!ダメよ!」

 

睨みあう俺とクロエ。まるで目からレーザーが出て、目と鼻の先で火花が散っているように睨みあった。だが、それを止めたのは多くの足音だった。金属が擦り合う音が通路に響き渡り、俺とクロエは睨み合うのを辞めた。

 

「どうしたの?」

 

「フェアファクスでレイダーの奴ら一大攻勢に出やがった。戦闘要員は急いで外に上がれとの命令だ!」

 

パワーアーマーの男は武器庫からミサイルランチャーをひっつかみ、ミサイルを入れた弾薬箱を抱えて連絡橋を走り抜ける。俺はそれを他人事のようにみる。だって他人事だし。

 

「クロエはここにいろよ。どうやら、どっかのキャラバンも巻き込まれたらしい。傭兵が一人トライビームレーザーで応戦している。長くは持たないだろう。」

 

え、今の兵士は一体何て言った?

 

「傭兵?」

 

俺の問いかけが聞こえたのか、パワーアーマーを着た男はレーザーライフルのマイクロ・フージョン・セルを幾つか取り出しながら答えた。

 

「ああ、顔を隠しているが・・・俺の勘じゃあ、ありゃ女だな」

 

「なんで分かるの?」

 

とクロエも疑問に思い声をかけた。

 

「雰囲気と言い、走り方は女っぽい。射撃の腕は良いが、押しが悪い。さっさと行かないと、分隊長に怒られる」

 

一瞬俺はシャルの顔を思い浮かべる。俺はこの前、一人で行動するときは女には見えないような格好をしろと注意しておいた。出来るなら顔も隠しておけば言いとも。それにシャルの使っていたのはトライビームレーザーライフルだ。かなり希少だが、性能はピカイチ。それに傭兵があれを使いこなせるとは思えん。

 

兵士はさっさと荷物をまとめて武器を持って立ち去った。すると武器庫にいるのは俺とクロエの二人になった。

 

俺は部屋の隅に置いていたM4を拾い上げ、機構のチェックを行い、装着していたACOGサイトの調整を行った。

 

「え、ゴメス。どこ行くつもり?」

 

突然の俺の行動にクロエは驚いた。

 

「今から俺も加勢する」

 

「え!・・だったら今のうちに逃げ・・」

 

「襲われているのは俺の親友だ!」

 

シャルとはずっと一緒にいた幼馴染みだ。親友でもあるし、ここまで生きてこられたのだって彼女のお陰だ。それに、俺としては一歩先に進みたい気持ちはあった。

 

すると、クロエはバカにしたような笑みを浮かべると、武器庫から5.56mmの弾薬と308口径のライフル弾。そしてスナイパーライフルを取り出してきた。

 

「これも必要よ。市街戦ではスナイパーライフルは頼りになるもの。」

 

後で返してね、とクロエは付け足す。俺は感謝の言葉を言い残し、渡されたスナイパーライフルを背中に掛けて走る。

 

「頼むから間に合ってくれよ・・・!」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

20分前・・・

 

「いや~・・助かった。傭兵の数が少ないから、探していた所だったんだ。本当に助かった」

 

キャラバンの責任者である少し痩せた黒人の商人は私に言う。私の後ろと前には荷物を満載したパック・バラモンが4頭いる。そしてそれを守るかのように私を含めた4人ほどの傭兵が周囲を警戒する。とはいえ、ここらではアント位しか姿を現さない。レイダーやスーパーミュータントはもっと北の方にいるためここら一帯は安全地帯なんだけど。

 

「いえ、こちらも仕事を探していたところだ」

 

妙な言葉遣いと少し高い声に若干の違和感を覚えた商人であったが、薮蛇に噛まれることを恐れて言及はしない。顔はバンダナで口を覆い、ゴーグルで目を隠しているため、不審に思われるかも知れないが、女だと分かれば何をされるか分からない・・・というのがユウキの考えなんだけども、傭兵の中にもレーザーアーマーにコンバットショットガンを携えた女の傭兵もいる。そこまで、隠さなくてもいいんじゃないかと思ってしまう。

 

「なあ、エイザ。カンタベリーコモンズに寄ったら・・・」

 

「嫌よ、あなたは下手なんだもの。クリスの方がよっぽど上手よ」

 

「キース、女の扱いをもっと知っとけ」

 

何やら下世話な話が聞こえる限り、その女の傭兵は開放的なんだろう。身体の事に関しては・・・。

 

私はそういった経験がないからよく分からない。だけど、vault schoolで又聞きした事はある。OOは下手で××は上手いだとかどうとか・・・。私も“運命の人”に会えばそう言うことをしたくなるのかな?

 

立ち止まり、少し考えてしまう。

 

私は異性の顔を思い浮かべると、ふとユウキの顔を思いだしてしまった。

 

えっと、そのなんだろう?それはユウキはいつも一緒にいるし、もう家族みたいなものだけど・・・あれ?そう言えば、この前、一緒のベットで抱きついて寝ちゃったよね?

 

私の顔はまるで火炎放射器で焼かれたように熱くなり、胸の奥が締め付けられるように痛む。

 

「おい、どうした?置いてくぞ」

 

我に帰ると、目の前にはメタルアーマーを着た傭兵が心配そうに私を見ていた。

 

「だ、大丈夫だ!も、問題ない!」

 

「噛み噛みで問題ないなら・・まあいいんだけどね」

 

「!」

 

私は口を押さえるが、もう言ったことは変えられない。ため息をつくと、トボトボとパック・バラモンの横を歩く。

 

赤い肌に頭が2つあるバラモン。元々、牛であったのだが、放射能の影響なのか頭が2つ生えている。人間でも、一卵性の双子で身体がくっついている症例もある。だけど、バラモンの場合はちょっと違う。生まれてくるすべてに頭が2つある。しかも、解剖すると、二体分の胃や内蔵があり、放射能を除去する牛乳まで出してくれる。糞には濃縮された放射能の塊があって、ユウキはそれを兵器にも出来ると冗談半分で言っていた。けれども、放射能を武器とするものは沢山ある。ユウキじゃなくても他の誰かが作ることもあり得るかもしれない。

 

医学的に放射能で変異することはあり得ないのだ。だけど、元にそうなっている。これから、色々な所に行ってお父さんを探さなければならないけど、色んなコミュニティーを巡って、科学者がいるに違いない。その時、何か聞けるかも知れなかった。

 

「ふぅ~・・・まったく、アウトキャストの野郎共は金払いはいいんだが、態度が酷いもんだ」

 

「本当、あの自称エリートでしょ?レイダーよりか幾らかましだけど、頭がイカれてるわ」

 

この大規模なキャラバンは全てアウトキャストの司令部へ行くらしい。全てがそうではないらしいけど、パックバラモンの荷物には戦前のコンピューターや米陸軍の刻印がされた部品があった。人手の少ないアウトキャストは商人を雇ってテクノロジーの回収に当たっているようだ。

 

「ん、あれは?」

 

キースと呼ばれる傭兵が指差す先には黒と赤の塗装を施したパワーアーマーを着た二人の兵士だった。持つ武器はレーザーやミサイルランチャーで、彼らに襲われれば、ひとたまりもない。だが、彼らは商人の商売相手。味方であれば、とても頼りになる兵士達だ。

 

「アウトキャストだね。レイダーの様子はどうだい?」

 

「ああ、フェアファクスの掃討が完了した。街に入っても大丈夫だぞ」

 

「ええ!レイダー共を片付けたんですかい?よかった。これなら、最短距離で基地の方へ行くことが出来ますよ」

 

商人によると、フェアファクスにレイダーが潜伏しており、数は一個中隊にも上るらしい。だけど、アウトキャストは手をこまねいているらしく、掃討することが出来なかった。理由としては人員の補給がないためらしい。

 

「これなら良いものが作れそうだ」

 

「そうでしょう。旧衛星施設から持ってきた代物です。キャスディン護民官に言っておいてください」

 

「ああ、そうだな。行っておこう。そのまま遠回りせずに真っ直ぐ行け」

 

アウトキャストの兵士を通りすぎようとした時、一瞬だけだが、首の所から血が流れているように見えた。乾ききっていて、塗装で隠れていそうに見えるが、日光の反射でそこに何かが流れていた痕が見えたのだ。そう、不審に見ると、彼らのレーザーライフルも整備されているようには見えない。そして、彼らの対応も少し変だった。

 

「アラン、少しあの兵士すこし変じゃないか」

 

私は多少なりとも男のように喋る。商人の名前はアランと呼ばれるここら辺では名前が通る商人だ。私はそう言うと、心配しすぎと言わんばかりの笑顔で私を見る。

 

「アウトキャストなんてのはそんなもんさ。見ず知らずの君を見つけて幸運だったようだ。君は医術が出来るから、これからも宜しく頼むよ」

 

私はその台詞で言葉を詰まらせてしまう。そもそも、私は傭兵に成るつもりはない。父を捜すのに傭兵になるなんて考えたことはない。多分、お父さんは反対するだろうし、ユウキもウンとは言わないだろう。彼らと一緒にいるのだってユウキを探すために、護衛の仕事を引き受けたのだし・・・・。

 

「・・・・本当にレイダーを殺したんだな。見ろよあれ」

 

クリスと呼ばれる傭兵が言う先にはレイダーと思われる死体が倒れていた。無駄に露出が多い継ぎ接ぎのアーマーにトゲトゲの肩パッドが付いていた。そして、どっかの消防署跡から拾ってきたに違いないマスクを着けていた。死体は二つあり、十字路の真ん中に転がっている。

 

「ったく、こいつらのせいでえらい目にあったんだ」

 

クリスは履いていた革靴で死体の頭をこづく。私は周囲を警戒するが、不審なものは見あたらない。周囲には動かなくなった核エンジンを搭載した車が横倒しになっていた。

 

「この通りからまっすぐ行けば下り道に出る。そこの死体をどかしてくれ。クリス」

 

「はいはいっと」

 

傭兵は面倒臭いと言わんばかりの表情でレイダーの腕を掴み挙げて引きずろうとする。だが、その身体を持ち上げたその時だった。

 

パキンッ!

 

まるで金属製の物が外れるような音だった。それは身体から離れたと同時に地面に転がる。それは破片手榴弾。ピンを抜いた状態で死体に隠され、安全レバーが外れるのを待っていたのだ。

 

「グレネード・・・・っ!!」

 

叫ぶと同時に手榴弾は起爆し、叫んだクリスは爆風によって吹き飛ばされる。すると、今まで隠れていたのか、様々な武器を持ったレイダー達が襲いかかってきた。ある物は破壊された建物の窓枠からライフルでこちらを狙い、バットを持ったレイダーはこちらに突撃してきた。

 

「罠よ!来た道を引き返して」

 

エイザの叫び声を聞いて、私は後ろに下がろうとするが、パワーアーマーを着た兵士二人がこちらに銃を向けていた。彼らはアウトキャストの兵士ではなく、兵士から奪ったパワーアーマーを着たレイダーだった。

 

私は一瞬死を覚悟するが、カチ!っという音のみが響く。

 

「クソ、何で撃てねぇんだよ!畜生!」

 

しめた!

 

私はガンベルトにくっつけていたプラズマグレネードの起爆ボタンを押すと、パワーアーマーを着たレイダーめがけて投げつける。爆発する前に私は小道に走り、爆発する瞬間を見ずに遮蔽物に身を隠す。

 

「畜生!なんでこんな事に・・・・がは!」

 

悪態をついていた商人のアランは飛んできた308口径弾が胸に直撃し、うめき声を出しながら地面に倒れた。私はパックバラモンの影に隠れる傭兵を呼び、レーザーの引き金を絞り、レイダーを灰にした。

 

 

「こっちだ!早く!」

 

私は叫び、レーザーライフルを撃つ。すると、銃火から逃れた二人の傭兵が走り込んできた。

 

「くそ!アランが殺られた。誰が給料払うんだよ!」

 

「キース、叫ばないで。この道沿いを行けば外に出られるわ。キースが先導して。」

 

「ああ、・・・さっきはありがとな新人」

 

私の肩をたたくキースは持っていたアサルトライフルのマガジンを交換すると、通路を歩く。私は後衛に付き、後ろから迫るレイダーを撃っていく。

 

「この建物に籠城するぞ!」

 

キースは扉に入ろうとするが、正気の沙汰とは思えないとばかりにエイザは彼を罵倒した。

 

「バカ!ここに残ったら殺されるわよ」

 

「囲まれてんだぞ!こうするほか・・・」

 

とキースは言おうとするが、男の目の前にある扉が勢いよく開く。そこにはバラモンの頭蓋骨で作ったヘルメットを装着したレイダーで手には銃剣が付けられた中華アサルトライフルがあった。

 

「jesus!」

 

誰に祈っても結果は変わらなかった。レイダーは銃剣を男の喉仏に突き刺した。近くにいたエイザは素早く、コンバットショットガンの引き金を引いて、レイダーの頭を吹き飛ばした。

 

「キース!!」

 

銃剣を刺されたキースは首から吹き出す血を止めようと両手で押さえている。私は建物の中が安全なことを確認すると、急いで彼を中に入れた。

 

「キースを助けて!!」

 

彼女は私に懇願する。私はモルパインを彼の太股に刺し、痛みを和らげると、持ってきていたスティムパックを首筋に打ち込む。若干出血は止まり、追加でスティムパックを刺した。二本も打ったお陰で傷口は辛うじてくっついたものの、大量に出血したお陰で顔は青白く、唇は紫色だった。

 

一応、応急処置はしたものの、レイダーがすぐに来るだろう。その前に以上に気付いたアウトキャストの兵士達が来なければ殺されることは目に見えていた。

 

そう思ったら、案の定数人の足音が近づいていた。

 

「ここは私が封じ込めるから、上から奴等を減らして!」

 

エイザは近くにあったガスコンロを移動させて扉に置く。そして、冷蔵庫や棚をひっくり返す。私はレーザーライフルのセルを交換して、二階に飛び出した。上はレイダーのオブジェと思われる首のない遺体が放置されていた。

 

「あ、これを使えば!」

 

近くに置いてあったグレネードボックスをひっくり返し、破片手榴弾を拾い上げる。そして扉近くの小道にピンを抜いて投げ込んだ。手榴弾は爆発すると、金属片を撒き散らしてレイダーを殺傷する。

 

窓縁から銃を出さないように外を狙い、近づいてくるレイダーを撃つ。幾分かレーザーライフルより精度は悪いが、それでも威力や精度は高い。レーザー光線はレイダーの頭と胸に直撃し、絶命させた。

すると、反撃か32口径弾が窓縁や壁に命中する。私は銃撃から逃れるためにタンスを倒して貫通する銃弾から身を守った。

 

「野郎共!この中から一人も生きて返すな!」

 

「ヒーハー!」

 

危険な薬を服用しすぎた彼らの狂暴さは理性を感じさせないような怖さを秘めていた。残りの手榴弾を投げてレイダーを吹き飛ばすと、マガジンポーチの中が空だったことに気が付いた。

 

「もっと、持ってくればよかった・・・」

 

ホルスターから10mmピストルを抜くと、レイダーに対して銃撃を加える。銃の反動は私の狙いを外させるのには十分なほどの反動で、レイダーの銃撃を合間にピストルを撃つだけだった。

 

「アウトキャストは・・・!」

 

窓の外から見るが、遠くから来る援軍は見えない。もしかして、見棄てられたのかもしれない。

 

「く、来るな!止めて!」

 

下で叫び声を聞いて、私は階段に銃を向ける。すると、大きな足音と共に、ナイフを持ったレイダーが狂気を孕んだ目で近づいてきた。

 

「殺人タイムだ!」

 

「来ないで!」

 

引き金を絞り、レイダーの頭に10mm弾で貫通した穴が開く。さらに近づいてくるレイダーを撃つが、何発か撃ったあとでスライドが後ろに引かれた。

 

え!なに?これ!

 

一瞬だけ頭が真っ白になる。スライドが引ききって弾が出ないのは簡単な事だった。

 

弾切れだ。

 

私はポーチから新しい弾倉を取り出そうとするが、レイダーによって阻まれる。右手を捕まれ、左手で腰に着けていたコンバットナイフを引き抜いてレイダーの胸に突き刺した。刺されたレイダーは力なく倒れるが、すぐに後ろのレイダーが迫り来る。

 

「は、放して!」

 

コンバットナイフを奪われ、腕と身体を押さえられる。レイダーは私に馬乗りになって私の手を押さえつけた。

 

「へへっ、やっぱり女だったか!こりゃ、楽しめそうだ!」

 

ヘルメットを脱がされ、口と鼻を覆う布を剥がされ、ゴーグルも奪われた。手足を動かしても全くレイダーは動かない。

 

「暴れるんじゃねぇ!!」

 

痺れを切らしたのか、レイダーは私の頬に平手を打つと、履いていたズボンのベルトを緩ませる。

 

「こんな上物生まれてはじめてだぜ。安心しろ、貴様を可愛がってやるよ」

 

悪魔のような笑みを浮かべるレイダーを見て、私は叫んだ。だが、そんなことをしても状況は好転しない。

 

「嫌だ!放して!こんなところで!」

 

何回か戦闘も経験し、死ぬ恐怖も幾らか克服できる。だけど、私はそれよりも恐ろしい事になると想像した。一線を越えれば、もう二度とユウキやブライアン・・・そしてお父さんに会うことは出来ない。

 

身体の震えが止まらず、自然と涙が溢れ落ちる。こんなに怖くて泣いたことなど今までない。そしてこんなにまでも孤独なことなんて今までになかった。

 

こんなことしたくない!!

 

そう思っても、レイダーは止めることを知らなかった。

 

「ここんところ、汚ねぇのしかヤってねからな。・・・安心しろよ、俺が可愛がってやるからよ、へッへ・・・」

 

汚い笑みを浮かべ、私は逃げようともがく。だが、レイダーは乱暴にコンバットアーマーのプレートを剥ぎ取り、着ていた野戦服を破る。

 

イヤだ!

 

誰か・・・!

 

顔を思い浮かべ、私は思いっきり大声で叫び声を上げる。

 

「ユウキ!助けて!!」

 

 

「はっ!貴様の彼氏なんて忘れろ!俺様がな・・・」

 

レイダーは声を出そうとするが、風を切る音と共にレイダーの男の頭に穴が開き、壁に血潮が掛かる。

 

私は一瞬の出来事過ぎて私は目の前に起こることが事実と認識するまでに時間が必要だった。だが、私に前のめりに倒れるレイダーを横に倒して、レイダーを倒した人物を見ると、それは現実だとわかった。

 

黒のvaultアーマーを着た黒髪の青年・・・私の大切な人。

 

 

 

「ユウキ・・・」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

間一髪の所だった。レイダーの死体が多くあるこの建物を見つけ、一階にはレイプされそうになっている女を助けるために、M4A1にサイレンサーを取り付けて、女の身ぐるみを剥がそうとしているレイダー三人をヘッドショットで始末した。女以外にも首に怪我を負った傭兵らしき男がいたが、女を助けるためにレイダーと一戦交えたらしく、腹にナイフが刺さり絶命したレイダーと共に息絶えていた。

 

二階でもシャルとおぼしき人物の声が聞こえたので、こうしてここに来たわけだが、コンバットアーマーのプレートを剥がされ、野戦服を脱がされたシャルがいた。

 

なぜメガトンに居なかったと問いたかったが、今それを聞いたとこで何になるだろうか。pip-boyからブッチからもらった革ジャンを羽織らせて声を掛ける。

 

「大丈夫だ。さあ、帰ろう」

 

すると、極度の緊張と恐怖が途切れたためか、シャルは涙を流して俺に抱きついてくる。俺は背中を擦り、子供をあやすかのように背中を撫でる。何やっているんだろうか俺は。ジェームズとの約束を忘れたのか?おれはあの人から彼女を頼まれた。しっかりと、守ってやらなくちゃならないのに・・・。

 

「ごめんなさい・・・わたし・・・」

 

「いや、俺こそごめん。絶対離さないから」

 

小柄な体躯のシャルの背中を抱き寄せて、いつも以上に強く抱き締める。シャルは痛いかもしれないが、俺と同じぐらいシャルは両腕で強く抱き締めてくる。

 

どのぐらい経ったんだろうか。俺は時計を見ていないから分からない。だが、シャルが落ち着いたのは確実だった。シャルは俺の耳元に顔を近づけているため、鼻息が耳に掛かり、心なしか心拍数が高まった。

 

「ユウキ・・・」

 

シャルは呟くように俺の名を呼ぶと、俺と顔を見合わせた。頬は少しだけ紅く、肌は透き通るように真っ白だ。目には何か決心したように映り、俺は疑問に思う。

 

「ユウキ、私ね・・・」

 

続ける言葉は分かっている。彼女は目を閉じて、口を少しだけ付き出すように俺に顔を向ける。そう、これは・・・・

 

俺はそれに呼応して、顔を近付ける。

 

長い事待った。生前の事も含めれば彼女いない歴は36年弱。等々、やっとのことで好きな人と結ばれる。あと数cmで唇と唇が重なりそうになる。

 

 

とうとう・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お熱いね・・・お二人さん♡」

 

え?!

 

「「うわわわ!!!!」」

 

慌てて身体を引く俺達。声といい身体の動かし方といい、息もピッタリだ。それはどうでもいいが、声の主の方を見ると、先程助けた女傭兵ではないか。

 

「あんたが女ということは分かっていたけど、は~・・・嫉妬するような顔をしているわね。しかも、戦前のラブストーリー見たいに純愛物ね・・・。いいわ~、こういうの青春っていうのかしら?」

 

「誰、この人?」

 

「アウトキャストと契約している商人が雇っていた傭兵の・・・」

 

「エイザよ。こんな可愛い子がいるんだから、ちゃんと囲っとかないとダメでしょ!ちゃんと、放浪しないで家を守らないと!」

 

ポニーテールにした茶髪の髪があり、アングロサクソン系の顔立ちの野性的な女性である。

 

「え、ええ」

 

エイザの言うことも一理あるのは事実。だが、かなりオバサン臭い・・・。

 

「何か失礼なことを思わなかった?」

 

「なんでウェイストランドの女性って勘が鋭いの!?それって超能力!!」

 

「さぁ、けれど準備はいい?否定しないってことはそれなりのお仕置きが待ってるけど?」

 

これは不味い。この人は・・・・ドSだ!!

 

俺はシャルの目をみて助けを乞う。しかし、答えは・・・。

 

(南無~・・・)

 

祈るな!おい!

 

「さあ、行くわよ!!!」

 

「ちょ!おい、それは!わああああ!!!」

 

 

アウトキャストの部隊が町を掃討するまで、叫び声は町中に響き渡った。それはアウトキャストやレイダーでさえも震えるような叫びだったという。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「はい、あーんして」

 

「あーん・・・」

 

言っておくが、新婚生活における相手にスプーンで一口挙げると言うリア充なことをしているわけではない。

 

戦前に製造された綿棒に軟膏を塗り、それを口の中の傷に塗っているのだ。エイザのお仕置きが余りにもキツかったのだ。内容は・・・今は伏せておこう。

 

「それにしても、ここの設備は凄いわね。流石は元アメリカ軍基地よね」

 

シャルはスツールに腰かけて言った。俺達が居るところはアウトキャスト司令部「インディペンデンス砦」の地下にある武器庫兼武器研究所である。フェアファクス廃墟の一件の後、アウトキャストはレイダーの居場所である地下鉄や建物を戦前に残されていた軍用爆薬によって破壊。前哨基地を設置して、交易などを中心に発展させるようにするらしい。一方、輸送キャラバンの荷物は一応、エイザの所有となった。護民官やナイトなどはまるで獲物を狙う肉食動物のような目付きではあったが、これ以上アウトキャストのイメージを落とすことはなかった。商品売買には、一応武器商人である俺も参加し、エイザのアドバイザーとなった。彼女は恩を返すと、俺に幾つかの制御チップなどをくれた。それをpip-boyに装着して、意気揚々と俺は先程使ったM4A1の整備に取り掛かった。

 

「へぇ~、こんな銃見たこと無いわね。どこで拾ったの?」

 

スクライブローブを着たクロエが俺の持っているM4A1を指差して訊いてきた。勿論、MODで入手したとは言えない。

 

「確か、旧米軍基地の倉庫に眠っていたな。全部、俺の所にあるけど・・・高いぞ」

 

「ナイトの報告によると、性能は良いらしいと聞いたけど。いいな~・・・」

 

「(batter 75%)そうだな、これとあの機械で交換はどうだ?」

 

あの機械とは元々、俺が持っていたウォークマンやスマホなどの機械の事である。俺はあれをここに来るとき持ってきてしまった。余り記憶には無いが、画面に吸い込まれそうになって、咄嗟にバックを掴んだのだ。(一話目参照)

 

なぜ、それが今ここにあるのか分からない。だけど、俺の物であったのは覚えている。アウトキャストが持っていても有効活用するとは到底思えない。

 

「良いわよ。あの死んだ商人は面白い物を見つけたもの。そのぐらいどうってこと無いわ」

 

後日、聞いた話によると、シャルを雇用した商人はとある軍事基地を漁っていた。アウトキャストに売り込むためであったが、その掘り出し物がとんでもなく凄かった。機能する核弾頭の制御チップや暗号化アルゴリズム解析装置、ミサイルランチャーに取り付けられる誘導装置など多くの物品がパックバラモンに入っていたのだ。それを見つけたナイトやパラディン、そしてスクライブは半狂乱であった。そのため、軍用でない物はお呼びではないのだ。

 

「それにしても、その機械に固執する理由って何?」

 

「そうだな、・・・・人間が運命の出会いをするように、機械と人間が運命の出会いをするのと同じなのさ。」

 

「何それ?」

 

意味が分からないとばかりにジェスチャーをするクロエ。まあ、知らない方が良いだろう。

 

「まあ、いいわ。・・・・ここにリア充をいさせる場所なんて無いんだからさっさと行きなさい!」

 

「はいはい、クロエも早く彼氏・・・いや夫でも作るべきだよ」

 

「煩いわね、腰抜け武器商人!」

 

クロエがミサイルランチャーを持ってきて俺に発射する前に退散しよう。俺はシャルを連れて、インディペンデンス砦の地下通路を通って地上に出た。外は夕暮れ時で空にはオレンジに染まっている。

 

「ふぅ~・・・ユウキ、ブライアンが待っているし帰りましょう」

 

「ああ、早く帰ってウォークマンの充電しないと」

 

「何それ?」

 

「帰ってから説明するよ。家に帰ったら早速、核分裂バッテリーを取り付けて魔改造を・・・」

 

俺は脳内で設計図を書く。それは、オーバースペックなウォークマンやゲーム機なのだが、今日の夜にでも改造を施したい。多分、長年放置されて、バッテリーも死んでいる筈であろう。中に入っているデータも早く聞いてみたいのだ。

 

「え?でもやる時間はあるのかしら?」

 

唐突にシャルは俺に訊いてきた。

 

「どう言うこと?」

 

俺はシャルに聞き返す。

 

「だって、私が出ていく前も山のように客が来ていたわ。そうしたら、店の中は修理すべき武器だらけかも・・・・」

 

「な、何!!」

 

俺がアウトキャストと一緒に行く前も多くの客が来ていたが、修理も三、四件・・・。しかし、俺が行った後に修理依頼がとんでもなく多かったら、大変だ。武器修理はウェイストランド人にとって早く済ませねばならない物である。自分自身を守るために必要な物であるのだから、託される側も早めに修理して返さねばならない。

 

「メガトンに帰ったら徹夜だよ。シャル、急いで帰るぞ!」

 

「うん!」

 

俺とシャルは夕焼けの荒野を走る。しかし、十分後突っ走った後に着ていたvaultアーマーが重くて立ち止まり、その時おそってきたレイダーを返り討ちにしたのは後日話すことにしよう。

 

 

 

 

 

 




アウトキャストとの出会い。果たして主人公はどうするのか?



小説本文のご感想・アドバイスあれば宜しくお願いします。


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