fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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正直、この話が一番悩んだかもしれない・・・。

予定とは違ってかなり急展開・・・・かも?


二十話 休息

「ねぇ、お兄・・・師匠」

 

「いいよ、もう・・・・お兄さんだろうが、兄ちゃんでもいいよ」

 

だぼだぼのつなぎを着たブライアンは“師匠”と呼ぶが、俺はどうでもよかった。たかが、名称が変わった位でどうともしない。こんな事態と比べたら・・・・。

 

「へぇ~・・・、こんな武器をカスタマイズするのなんてお前ぐらいなものだ。ここら辺では滅多にお目にかかれない代物だな」

 

傭兵が使用するレザーアーマーに弾帯を追加した姿は歴戦の傭兵と言われても遜色無い。いや、その通りなのだろう。MODで追加したMG3機関銃を撫でる彼女の姿はまるで犬をあやすブリーダーのようにすら思える。彼女がそれを使えば、目の前に死体の山が築き上げられることは必然だ。

 

「そう言えば、店長・・・あの人の名前は?」

 

「え、彼女か?彼女の名前は・・・・・・」

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「自己紹介がまだだったな、私はアリシア。ニューヨークで傭兵をしていた」

 

ジェファーソン記念館の事務室にあったいくつかのランタンに火が灯り、それを囲うようにして寝袋が引かれた。ホットプレートと核分裂バッテリーを改造した湯沸し器でお湯を沸かし、リベットシティで入手したインスタントコーヒーを淹れる。戦前に米軍が支給していたコーヒーだったらしく、アメリカ軍のマークが刻印されている。それをマグカップに注ぎ、シャルとアリシアに渡した。

 

「俺はユウキ。Vaultでオフィサーをしていた。」

 

「私はシャルロット。同じく医者をしていたわ」

 

俺達は軽く自己紹介をすると、沈黙が部屋を支配する。それは当然であるだろう。何故なら、目の前にはリベットシティで指名手配となり、俺を攻撃した張本人がいるのだから。一応、助けて貰ったと言えど、昨日の事を簡単に忘れることは出来なかった。

 

「はぁ・・・・。あんたはなんでスーパーミュータントに捕まっていたんだ?そして、なんで俺を攻撃した?」

 

沈黙を破り俺は声を掛ける。すると、アリシアは頭をポリポリと掻いた。

 

「私は武器商人の傭兵でキャラバンを護衛してリベットシティに行こうとしていた。その時、ミュータント共に襲われて私は拘束。他は殺された。やつらにされる前にあんたたちが助けに来たようだが・・・それは感謝してもし足りないな」

 

「ならなんで恩人を気絶させた?」

 

「あれは正直言って想定外だった。あの医務室が想像以上に立派だったし、あんたの装備だって此処等ではお目にかかれないが?」

 

「つまり、装備が豊かで技術力を持った集団に捕まったと?」

 

俺はふと、悪の秘密結社を思い浮かべるが、アリシアは首を横に振る。

 

「違うと言えば違う・・・。何て言うか、錯乱状態と言えば分かるか?意識を失う前にスーパーミュータントが私をミュータントにさせようとしていたんでな。てっきり、スーパーミュータントを製造する奴等じゃないのかと・・・」

 

とアリシアは俯く。普通の思考ならスーパーミュータントが悪の組織の手先であるなんて世迷い事を言う輩は頭が可笑しいと思うが、錯乱状態ならそう思うのかもしれない。

 

「・・・・まあ、仕方ないよな。だけど、あの格闘技か?あれは戦前の軍隊格闘か?」

 

俺は柔道技を使用したが、簡単に打ちのめされてしまった。軍隊格闘などそう言った高尚な技術はなく、あっても警察で使われる逮捕術しか習得していない。だが、それも錆びがこびりついたものであることは間違いない。

 

「ニューヨークに住んでいる軍隊格闘を秀でる老人から教えて貰った。」

彼女はニューヨークの旧セントラルパークに作られた村で生まれたらしく、そこで育ったとのこと。戦前はそこに米陸軍の臨時司令部が置かれていたことから、軍事物資が大量に保管され、放置された軍用車両がバリケードの役に立ったという。そこには、元アメリカ陸軍の兵士であったグールもいたため、他の集落と比べて強い勢力であったらしい。

 

 

「それにしても良い銃を使っているじゃないか。これはアサルトライフルを改造した奴か?」

 

アリシアは俺の横に立て掛けていたアサルトライフルを指差し、「触っても良いか?」と聞き、俺は了承した。俺のはこの世界にはないピカティニーレールをアサルトライフルに取り付けた。傭兵と言う職業なら、興味がわかない筈がない。さっきの戦闘で壊れてしまったアサルトライフルに替わって、予備に持っていたアサルトライフルを渡すと、色々いじくり回す。

 

「良く整備されているし、この部分は何かをつけるのか?」

 

「えっと、ここにはですね・・・・」

 

武器を売り買いする上で必要なのはコミュニケーションだと思う。武器を使用する彼女とその武器をカスタマイズして販売する武器商人たる俺にとって、これほど有意義な時間はない。

 

レールにハンドグリップやライト、レーザーサイトを取り付ける事を説明すると、驚いたようで銃を分解し、中を見始めた。

 

「銃身も熱が放出出来るようになっているし、コイツは200年前に設計したデザイナーに見せるべきだな。戦前に作られていれば、革命が起こっただろうに」

 

戦前でも、生前の俺の世界でさえ、アサルトライフルの排熱機構は十分ではない。アメリカ正式採用のM4A1では、マガジン一個分を連射すると銃身が熱くなる。それは暴発の危険性もあり、精度低下にすら繋がるのだ。一方、目の前にあるアサルトライフルも同じ悩みを抱えていた。レールを付ける以前は木製のハンドガードを取り付けていたが、これも熱を排出するには不十分だった。寧ろ、前者よりも排熱は酷い。スカベンジャーや傭兵などの多くは壊れたアサルトライフルを持ってくるものの、殆んどが銃身が歪んだ品で武器商人達の頭を悩ませている要因になっている。レールを装着したお陰か、銃身を空冷によって冷やすことになり、木製のハンドガードと違って排熱がしやすくなった。

 

さらに、オプションパーツ拡充が出来るようになったため、様々な製品が生産出来、市場も広がるだろう。唯一、欠点なのが、現在のような荒廃した世の中で利益は戦前と比べても少ないことだろう。だが、利益が出ることは明らかであり、やってみる価値は十分にあるのである。

 

なら、ピットも掌握しないとな。

 

ピットとはDLCにある奴隷商人とレイダーが支配する工業地帯跡の事だ。元々、ピッツバーグという戦前では製鉄所と兵器関係の製造を行っていた地域だ。しかし、大戦争によって大半が瓦礫の山となり、唯一の水源である川は数百年に渡る浄化活動が必要なほど放射能に酷く汚染されていた。主人公はレイダー側か奴隷解放運動側のどちらかに身を委ね、ミュータントウィルスの抗体を奪おうとする。どちらかに身を委ねて勝った場合、主人公は未だに稼働する銃弾製造を可能にするプラントの利用権を得る。バグ技で無限に弾薬を取得することも可能であるが、現実ではそれ以外の事も出来るだろうと踏んだ。元々、兵器を生産する設備もあることから、兵器生産プラントも稼働するかもしれない。もし、そうなればウェイストランドの一大軍事産業が誕生することになるだろう。そうすると、食糧生産を行う場所と交易ルートの開拓、バラモンなど輸送キャラバンの購入をしなくてはならない。

 

「どうした?考え事か?」

 

「キャピタル・ウェイストランドでコルト社並の銃器産業を作ろうとね。」

 

「ほぅ・・・・」

 

アリシアは腕組みをして、頭を上下する。

 

アメリカ軍の主力小銃を作っている、アメリカを代表する大軍需企業の一つだったコルト社であるが、勿論そこまでデカイ会社が出来ることは難しい。しかし、目標がデカければ、それだけ充実した道程になることは事実だ。

 

すると、アリシアはまるで頭の上に豆電球が灯るように閃いたような顔をして、俺に話し掛けた。

 

「私をまだ信用していないのはわかる。だが、私の頼みを聞いてもらえないか?」

 

「何?」

 

「メガトンの工房を見させてくれ」

 

当然ながら答えはNOである。早々、あの工房を見せることは出来ないし、業務上の守秘義務と言うか・・・理由がありすぎて見せるわけにはいかないのだ。しかし、俺が首を振ると隣にいたアリシアは俺に肩を擦り寄せる。

 

「そんな言わないでくれよ。良いじゃないか、他の武器商人に情報を漏らすとでも?」

 

「その可能性も無いとは言えないだろ?」

 

「ユウキ、私はニューヨークから来た傭兵だよ?ユウキとライバルの武器商人と通じている筈がないじゃないか」

 

そもそも、ニューヨークから来たと言うのも少し怪しい。本当にそうなのだろうか?

 

俺は様々な可能性を視野に入れても、彼女を工房の中に入れてメリットがあるか考える。全くもって、メリットは無いに等しく、デメリットが大きい。工房を見るだけなら、大したことはない。だが、新型カスタムの設計図や生前の武器をイメージして設計したライフルもあるため、出来ることなら入れさせたくはない。

 

「ほう、メリットがないからだな。ならば、私の体でどうだ?」

 

シャルにギリギリ聞こえないような甘い囁き。おれは反射的にアリシアの顔を見てしまうと、彼女は扇情溢れる笑みで俺を見つめる。彼女はラテン系で色黒で美人だ。ウェイストランドでは指折りの女性であることは間違いない。彼女は自分の身体で代金を支払って工房を見ようと言うのである。

 

「何を言っている?!そんなこと・・・・」

 

「シャルちゃんとは余り上手くいっていないのだろう。多分、まだヤっていないと見える」

 

「な!?」

 

俺はアリシアの指摘に驚き、ふとシャルの顔を見る。コクンコクンと頭を振り、意識が朦朧としていた。数時間前まで緑色のミュータントと戦闘していたのだから疲れるのは当然だろう。アリシアは立ち上がり、シャルを座った状態から、近くのロールマットに寝かせた。小動物のようなシャルはかけられた寝袋にくるまり、静かに寝息を立てる。

 

「好きではあるものの、進展がないな。キスはしたのか?」

 

「し、したようで。してなかったり・・・」

 

「へたれだな。」

 

「いや、キスはしようとしたんです。その時は丁度あんたみたいな傭兵が来ちゃって」

 

俺は頭を抱える。そう言えば、シャルがアウトキャストに拉致されて、シャルがレイダーに犯される所を助けた。その時、自然と頭がシャルに傾いたんだっけか。あのあと、不発に終わってうやむやだったよな。

 

「そうだな~、私は女との付き合い方を教えよう。それとも、今この場で叫んだら、君はどうなると思う?」

 

「・・・恐喝じゃないですか」

 

「ん?どちらにしても私に節だらな事を考えるのが彼女に対しての背信行為だと思うのだが?」

 

だが、男にそれを求めることは酷である。例え、一生付き添うと決めた伴侶を隣にしていても、目の前に現れる美女に釘付けになる男は多い。女性から反感を買ってしまうのは仕方がないのだが、残念ながら「男」という手前、そう言うものなのだから質が悪い。

 

「男にそれを言うのは酷ですよ」

 

「さっきの提案なら君にもメリットがあるはずだが?それにここら辺にいれば、やがてリベットシティ市議会から懸賞金が掛けられる。メガトンまで同行しようじゃないか」

 

「三人で行くんですか?シャルといちゃいちゃできない」

 

「待て、そもそもチキンな君にそんな大胆なことができるのか?」

 

「さっきから心を抉るようなこと言って!」

 

へたれと言われて傷つかない人間はいない。そして臆病と言われてしまえば、曲がりなりの男の尊厳とかプライドとかが傷つくわけでして。何にせよ、俺は目から涙を浮かばせまいと必死に堪える。何せ、曲がりなりにも、美女からチキンやへたれと言われたのだ。いつもより三割り増しに傷が付くに決まっている。

 

「“曲がりなり”って・・・・・美女と言われるのは嬉しいが、曲がりなりとは一体?」

 

「お、俺の心の中(文章)を覗くな!ただでさえ、ギャグパートを作ろうと必死になっているのに!」

 

最早、自分自身でさえ言っている意味が分からない。アリシアと俺の会話はその喧噪で起きてくるシャルによって中断することになったが、アリシアがメガトンまで同行することが決まってしまった。既に、“私に色目を使った”という強力なカードが切られているのだから、俺はどうしようもない。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

俺は一連の事を話し終え、店のカウンター下においてあった稼働状態の冷蔵庫から冷えたヌカコーラを一本取り出して栓を抜く。

 

「大変でしたね。」

 

「まったくだ。・・・・ところでシャルの奴は?」

 

「モイラさんの所言って原稿作成してます」

 

シャルはリベットシティの歴史についてフィールドワークを行っていた。リベットシティの市議会から歴史を聞いて、また前部甲板に一人で住む壮年の医者の所へ行って歴史を聞いてきたりもした。シャルはそう言う仕事に関してしっかりとレポートを書くため、報告書が二万文字以上となった。流石と言うべきか、そのレポートを受け取ったモイラはどれが重要で本に載せるべきか、本人から聞きながら原稿作成に精を注いでいるそうだ。そのため、モイラのクレーターサイド雑貨店は臨時休業となり、買い付けに来た客が俺の武器店に顔を出す。

 

「このアサルトライフルコンバージョンキット、幾らだ?」

 

「300キャップだ」

 

「・・・・う~ん、高いな」

 

「あんたが筋金入りの傭兵なら分かるかも知れないが、このカスタマイズを見てくれ」

 

傭兵風の男に見せたのは、ジェファーソン記念館で使っていたライフルの姉妹銃で、ハンドグリップとフラッシュライト、ドットサイトが設置されていた。それを見た男は目を丸くする。

 

「おお、こいつは!」

 

「戦前の部品やジャンク品を溶かして作ったカスタマイズ品です。もっと大規模な製造拠点があれば、コストも落とせるんですけどね」

 

本体価格とコンバーションキット、そしてオプションパーツも加えると700キャップ。これだけで一般的なウェイストランド人の二年分の年収に匹敵する。男は値段を見ると、少し考えてしまったが、サイト上部に20mmマウントレールと照準器だけ付けるだけでも使い方が変わってくることを説明し、照準器を付けるのに100キャップも掛からないことを説明すると男は照準器を買い求めた。やはりライフル2挺分+αの金額では買うのを諦めてしまうのだろう。その後、男に徹甲弾などの弾薬を勧め、150キャップ分を売ることが出来た。しかし、設計した物はどうしても売ることが出来ない。

 

「コストを落とさないと、作るのにも金が掛かるしなぁ」

 

新しい製品を作るには、生産ラインを作らなければならず、収益が約束されていなければ無駄になってしまう。生産ラインを確立せずに作ったとしても、全てが手作りにならざる負えない。そうなると、手間や時間が掛かりすぎる。全ての製造を機械にすれば良いのだが、やはり製造拠点は限られるし、現存した設備は希である。

 

「噂には西海岸は東海岸と違って荒廃していないと聞くな」

 

と、飾られたAKを構えたアリシアは思い出したように呟いた。向こうには戦前のアメリカのような国家である新カリフォルニア共和国があり、NCR兵器工廠や民間企業のガンランナーなどがある。その他にも、ガンスミスが多くあり、機会があれば行きたいものだ。それらの軍需企業とは雲泥の差があるものの、彼らのような設備があればどんなにいいものか。

 

「NCRか、向こうは強大だからな。ここら辺の国家なんてデイブ共和国か?」

 

「冗談だろ?・・・ここらの一大勢力はやはりB.O.S.か?」

 

俺は冗談交じりで人口が20に満たない国家を挙げたが、アリシアは怪訝そうな顔でT45-dパワーアーマーヘルメットを触りながら訊いてきた。B.O.S.は国家と言うよりも、武装結社である。元は米軍から離脱した将兵達の結社で、西海岸を端した武装組織であるものの、NCRの数に圧倒されつつある。ここでは、現地徴用の兵員補給もあるために、兵員はある程度補給できるが、装備の方は老朽化したパワーアーマーを使用していた。

 

「だろうけど、その次に厄介なのがスーパーミュータント。その次がタロンカンパニーかな」

D.C.都市部で三つ巴の戦いに身を投じている三つの勢力。しかし、タロンは資金源であるアリステア・テンペニーを失い、勢力を失いつつある。そうなると、B.O.S.とミュータントの一騎打ちになるわけだが、そこで武器弾薬、装備品、兵員が欠乏しつつある状況を打開せねばB.O.S.に勝ち目はない。

 

アリシアと俺は世間話を幾つか話した後、pip-boyのアラームが鳴り、会話を中断する。Pip-boyの時計を見ると、18:00となっていた。閉店の時刻である。ブライアンに金庫と武器庫の鍵締めを頼み、RL-3軍曹に警備を頼む。

 

「司令官殿お任せ下さい!・・・・ブライアン二等兵!早く片づけんか!」

 

「ぐ、軍曹!そんな無茶な!」

 

「軍曹殿と呼べ!新兵!」

まるで軍のブートキャンプを想起させる光景に笑みが溢れる。RL-3軍曹を彼と一緒にさせて正解だったのかも知れない。慌てた様子で片付けるブライアンを尻目に、レッグホルスターに10mmピストルを差し込み、アリシアと共に店の外に出た。

 

「ユウキ、これからどうするのだ?」

 

アリシアはポケットから取り出し、しゃくしゃになった煙草のパッケージの中にあるしおれた煙草をつまむと口にくわえる。戦前に製造された煙草の数は200年経った今でも相当数瓦礫の中に埋まっている。戦前の人々に愛煙家がたくさんいたことに関係する。生前の1950年代では老若男女の殆どが吸っていたぐらいだ。たまに西海岸から輸入されたNCR民間企業の煙草が周りに回ってくることがある。だが、それは戦前の煙草よりも味が劣るらしい。アリシアはポケットからライターを取り出して、しおれた煙草に火を付けて紫煙を思いっきり吸い込む。生憎、俺は煙草のにおいが生前から駄目なので、それを見つめる。

 

「ユウキも吸うか?」

 

「いいや、俺は吸わない主義だ」

俺は断り、今日どうするか考えた。既に日は暮れて、数少ない戦前の電灯が灯り始める。治安悪化を心配して保安官が設置させた物だが、暗がりでは市民以外の入植者の犯罪は絶えない。尤も、メガトンの定住権を持つ“市民”に対しての犯罪は少ないが、入植者同士での犯罪が絶えない。日に一人か二人は死人が出るし、男女関わらず強姦される事件も起こる。目の前の美人もやられかねないが、彼女なら逆に精気を吸って、犯人を腹上死させるんじゃなかろうか。

 

「なんか失礼な事考えてない?」

 

「いいや、それより何かあてあるの?」

 

「あるだろう?これさ」

 

アリシアはグラスを傾けて飲むまねをする。そのジェスチャーなら一つしかない。酒である。

 

「この時間からか。ウェインとビルが酒場にいるかな?」

 

「誰だい、そのふたりは?」

 

「ブライアンを助けたときにいた元タロンの傭兵さ。悪人じゃないよ。いいやつらさ、合えば分かる。」

 

そういえば、帰ってきてからあんまり会っていなかった。近況報告も兼ねて奴らとも酒を飲みたいな。

 

「シャルも呼ぶか。」

 

すると、ブライアンは片付けが終わったのか外に出てきた。

 

「ブライアン、先に家に帰ってて。皆で酒場行ってくる。少し遅くなるかもしれないけど、昨日作ったご飯の残りがあるだろ?」

 

「うん、大丈夫だと思う・・・・・」

 

ブライアンは視線を落とし、肩をも落とす。そういえば、昨日はアリシアも交えての夕食だったが、リベットシティに行っていたがために一緒に食事をとることがなかった。俺達がいない間、彼はいつもウェインやビルと一緒に夕食を食べていたのかもしれない。もしかしたら、一人で食べていたのか。

 

「・・・いや、やっぱりブライアンも来い。酒場だけど、ヌカ・コーラでも飲んでようか」

 

「いいのか?」

 

アリシアは訊くが、俺はブライアンにシャルを呼ぶように雑貨店に行かせた。

 

「なにが?一応、俺は奴の保護者みたいなものさ。只でさえ、最近は一緒にいることが無かったんだ。少し位家族サービスしたって良いだろう?」

 

“家族サービス”血の繋がらない俺達が家族とは片腹が痛くなるかも知れない。最近は全く一緒に居られなかった。それに・・・・・

 

「“罪滅ぼしのため・・・”なんて考えているんじゃないだろうな?」

 

ふと、アリシアは俺が考えていた事をさらりと口に出す。俺は慌てるものの、アリシアはいつになく厳しい目線を向ける。

 

「何をしたんだ?あの子の親を殺したのか?」

 

「そんなことはしてない。ただ救おうとして救えなかっただけだ」

 

アリシアにはグレイディッチで起こったことを話していない。話すメリットがないので話していなかったが、俺が彼の両親を殺したから養っていると勘違いされたくはない。アリシアに要約しつつ、全容を述べる。すると、悪人を見る目から奇人を見るような目へと変わっていく。

 

「・・・・ハハハ!そんな理由だったのか?」

 

「じゃあ、言うけど。ゴーストタウンに子供を置き去りには・・・」

 

「出来るね」

 

殆んど即答だった。

 

「Vaultの人間は本当にお人好しだ。・・・いいか、その時の明日の食事がどうなるか分からないのに、食いぶちを増やすなんて正気の沙汰とは思えない。大体、大人だからどうとか馬鹿げてる。自分の子供ならまだしも、父親は会いもしない赤の他人だろう」

 

「いいや、会ったよ」

 

俺は否定する。ポケットから取り出したのは、ウェイストランド中に転がっている5.56mmの空薬莢だ。

 

「ブライアンの話では自分を囮にしたらしい。家には空薬莢の山がそこらじゅうにあった。周囲にはジャイアントアントが5匹もいた。だけど、死に逝く最後まで諦めなかった。その身が燃やされようとも我が子を守ろうとしたんだ。そんな光景を見て、ブライアンを残して去ることは出来なかった。」

 

どんなに荒廃した世界で生きようとも、人としての生き方がある。お人好しと呼ばれても構わないが、良心無くして人類の復興などあり得ない。

 

俺の独白を聞いたアリシアは一瞬だけ幸せそうな笑みを浮かべるが、すぐに俺の後ろから首に腕を引っかけて体重を掛けた。

 

「重っ、肩痛いって!」

 

「女の子に重いと言うのは失礼だろう。ほら、酒場行くぞ」

 

その姿はまるで部下に絡む壮年の上司のようだった。俺は嫌々ながら首に掛けられた重みに耐えつつ、酒場へ至る酒場に移動する。だけど、俺はこの時、満面の笑みを浮かべるアリシアをしっかりと見ることは叶わなかった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

「で、線路の所でレイダーと遭遇したんだけど、追いかけていたモールラットが地雷を踏んでレイダーに体当たりしたんだ」

 

「かなりの量の地雷だろうな。・・・レイダーって何しでかすか分かったもんじゃないな。地下鉄で爆発物使うとか正気の沙汰とは思えねぇ」

 

場所が変わって、モリアティーが経営する酒場の一角には6人の男女が酒を飲んでいた。内二人は元タロンの傭兵、ビルとウェイン。黒いコンバットアーマーを着ているが、社章のマークは消されていた。いつも持っていたレーザーライフルやアサルトライフルは近くにあるラックに置いてある。そして、加えて俺とシャル。俺の場合はコンバットブーツにカーゴパンツ、Tシャツとラフな格好だ。その代わり、10mmサブマシンガンを腰に吊るしてあるため丸腰ではない。シャルは先程から暑いと言って、Vaultジャンプスーツの上を腰に巻いて、豊かな胸が強調されるタンクトップ姿となっていた。見ないように堪えながら、ウィスキーのストレートを喉に流し込んだ。そして新参者が二人。ブライアンとアリシアである。ブライアンの場合はコップに注がれたヌカ・コーラを飲みながら、ゴッブ特製バラモンスープを食べている。その他にも、軽食類や食べたことない料理が並んでいる。一方、アリシアもシャルと似通った服装だった。俺と同じようなコンバットブーツを履き、カーゴパンツの裾は折られて綺麗な脹ら脛が見え隠れする。そして、上半身はタンクトップ。ウェイストランドの女性ってタンクトップ好きなのかと思ってしまう。

 

「なあ、ユウキちょっと良い?」

 

すると、ウェインは俺のコップにビールを流し込み、味がおかしくて途中で飲むのをやめる。

「な、なんだよ」

 

互いに余り酔ってはいないが、場酔いはしている。ウィスキーとビールの混合物を飲みながら、ウェインの話を聞く。

 

「いっつも会う度に美人を連れてくる。少しは分けて」

 

「は?」

 

「“は?”じゃないよ!あれか?それってハーレムって奴だろう!所謂、主人公補正って奴に決まってる!」

 

「何の話をしているんだ?!」

 

ちなみに俺はハーレムなんてものを作った覚えはない。そして複数人の女性を侍らせはしない。

 

「自覚は無いにしても、お前の回りには美女ばかりよってくるんじゃないだろうな?」

 

そう言えばと、俺は思い出す。シャルを筆頭にアマタ、アウトキャストのクロエにG.N.R.ビルプラザに駐屯していたリディア。彼女達はウェイストランドでも指折りの美人・美少女だろう。

 

・・・ん?モイラはだと?マッドサイエンティストを入れるわけないじゃないか。

 

自覚は無かったものの、考えてみれば美人は多いことに気が付いた。

 

「テメエ、コラ!表出ろ!」

 

「俺は悪くない。なんなら、アリシアを誘えば良いだろ」

 

「なぜ私の名前が出るのか?」

 

若干飽きれ顔のアリシア。軽く取っ組み合いの俺達を皆は笑いながら見る。久々に皆で酒を飲み、飯を食ったのは楽しかった。

 

「それにしてもゴッブの作った料理美味しい」

 

「そうだよな、何処かのホテルの料理みたいだ」

 

「噂によると、ゴッブのいたアンダーワールドにステーツマンホテルの5つ星レストランで働いていた元料理人のグールがいて、ゴッブは弟子入りしたって話だが」

 

「「「何それ、すごい」」」

 

そんな料理人スキルがあるのか。なら、こんなうらぶれた酒場で持て余すよりも、料理店でも経営すれば確実に儲かるだろうに。

 

「お金が貯まった暁にはゴッブのレストランがメガトンの一等地に開かれるらしい」

 

「「「スゲー」」」

 

「だから、出資者募集中だそうだ」

 

「提携はモリアティーで決まりだな」

 

「だな」

 

そんなたわいもない話をして酒を飲み、親睦を深めた。Vaultではセキュリティー・オフィサーの中で浮いた存在だったし、親しい人間は少ない。生前だって友人はいて、ファミレスや友人の家でゲームをしたものだ。だが、それにはアルコールが無かった。

 

アルコールは人を酔わせる効果があり、いつも皮を被っているけど、それを脱ぐような効果がある。ハイテンションになったりするし、変なスイッチが入ったりする。この面子ではばか騒ぎは無かったものの、非常に楽しい一時を過ごした。

 

「んじゃ、俺達は帰るわ。じゃあな、ブライアン」

 

髪型では何処かのレイダーにしか見えないビルはブライアンに手を振り、酔い潰れたウェインを運び出す。リバースする様子は無いが千鳥足だ。ビルは俺達がいない間もブライアンの面倒を見ていたらしく、端から見れば兄弟に見えなくもない。ブライアンは元気良く手を振って別れを告げる。俺はもう一人酔い潰れた人物の肩を掴み運ぶ。その人物はシャルであった。

 

「ん~・・・、ユウキ~♪」

 

何と言うか、シャルはお酒が弱かった。俺はザルと言うか、足取りが重いだけで頭はクリアである。シャルは酔い潰れたとはいかないまでも、一人では立てないのは確実だ。猫のようにじゃれつく彼女は無意識に胸を押し付け、俺の心臓が爆発しそうになる。

 

「シャルは酒が弱かったのか」

 

「危ない男なら直ぐにシャルちゃんは鴨にされていたね」

 

横にいたアリシアは苦笑を交えつつ、俺の代わりにブライアンの手を握る。ブライアンは若干頬を赤くしていたが、見なかったことにした。

 

「全くだ。シャル、帰るぞ」

 

「ふぇぇ~、ユウキぃ~。」

 

お酒を飲み、上気した彼女の顔は心身に悪い。何と言うか、本能に抗えないとでも言えるのか。

 

「ほぉ~、女を酔わせて手込めにするのか。中々、悪だね」

 

「いや、断じて違うからな!俺は・・」

 

「嘘つくなよぉ~。ユウキは私に興味がにゃいの~」

 

すると、会話を聞いていたのか。シャルは俺の胸に人差し指をグリグリと押し付ける。勿論、興味がないとは言わないよ!?だけど、酔ってる女の子を手込めにするなんてなぁ

 

男としてはちょっとね。

 

「ほら、バカップル。さっさと帰ろう」

 

「バカップル言うな!?」

 

「えへ、カップルだってぇ」

 

シャルは何を聞き違えたのか知らないが、カップルと聞こえたようだ。俺は小さく溜め息を溢してしまう。アリシアはまるで俺の家に帰ろうとしている。まあ、部屋を貸したけどさ。もう少し、借りていると言うことを考えて欲しい。・・・・俺がしっかりとした商人なら「賃貸料」として請求するのだろうが、俺は研究肌が強い。請求してもいいんだけど・・・。

 

家に帰ると、さっさとブライアンを風呂に入れてシャルをクイーンサイズのベットの方へ寝かせた。俺もさっさとシャワーを浴びて、アルコールの回った身体を落ち着かせる。シャワーの温度を少しだけ下げて頭を冷やし、シャワーから上がった後は「伏せろ!」と言う題名のスキルブックを読む。目の前を何人か横切ったが、ブライアンやシャルだろうと本に没頭した。

 

 

幾らか時間が経ったのだろう。ふと、視線を本から外に目を向けるとこちらを見るアリシアと目があった。

 

「ん?何を見ているんだ?」

 

。シャワーから出たばかりなのか、カーゴパンツに白いTシャツで首にタオルを掛けているアリシアの姿だった。髪はしっとりと濡れ、赤みを帯びた肌は色黒の肌も相まって、色気を醸し出す。

 

「ん~・・・、賃貸料を請求するけどいいよね?」

 

「いいとも、幾らだ?何なら身体で払おうか?」

 

とアリシアは自分の胸を撫で回す。一瞬だけ見惚れてしまったが、直ぐに視線を反らす。

 

「ん~♪・・・そう言う一途な所は結構好きだぞ」

 

「って、何でこんな近くぅ!」

 

鼻息まで掛かるような距離で彼女はずいっと顔を近づける。俺は驚いて近くにあるソファーに転けて座る。すると、頬を赤らめながらアリシアは俺の太股に乗り、俺の首に腕を絡ませた。すると自然にアリシアの胸が身体に当たり、顔が火照るのを感じた。

 

「初心はいいね。可愛くて♪苛めたくなるじゃないか」

 

身体をぴったりとくっ付け、互いの体温が伝わり合う。互いにシャワーを浴びたばかりだから体は火照っている。布越しに伝わる温もりを感じて俺の心臓はロックを奏でているようだ。俺は全神経を集中させて「あるもの」が起動しないよう、心の中で素数を数える。

 

「そんなことより、賃貸料は違うのにしてくれよ!」

 

「何だ、してほしくないのか?」

 

「して欲しいとは口が裂けても言えん。」

 

「なら、武器商人の護衛はどうだ?勿論、二人のことを守ろう」

 

アリシアは傭兵である。俺が助ける前も武器商人の護衛も務めていた。これまでのことを考えても実績がある。次の目的地まで来て貰えるのは有難い。

 

「確か、ここから西へ向かうのだろう?なら、レイダーの一大拠点があるエバーグリーンミルズに近いな」

 

目的地とメガトンの道程にはレイダーが多数いるエバーグリーンミルズと呼ばれる元住宅地工事現場があり、レイダーの拠点がある。そこを男女二人で行くなんて危険過ぎた。かなりの戦闘スキルのある彼女がいれば大丈夫だろう。

 

「どうだ?それならお前の童貞を奪わずに、賃貸料を払えるな」

 

「まあ、そうだけど。キャップなら・・・!」

 

言い終わらない内に口がアリシアの口で塞がる。俺は訳が分からず思考が停止する。アリシアは好機と見たのか、舌を絡ませ相手の口の中を蹂躙する。唾液が混ざりあい、体液を交換する。こんな卑猥なキスは子供には見せてはならない。嬉しいことにブライアンは自室で寝ている。

 

「・・・はぁ!」

 

一分だろうか、どの程度の時間が過ぎたのか分からない。恍惚とした表情を浮かべ、濃厚なキスをした口からはよだれが垂れていた。アリシアは拭うこともせず、俺の首筋に舌を這わせて、やがて耳にまで到達する。甘噛みをすると、僅かながら耳に通じる神経が快感を流し込んだ。

 

「ん!」

 

「可愛い・・・。でも、私が奪うのは面白くない。」

 

首筋から顔を出すアリシアの顔は何処か寂しげだった。彼女の細い指が頬を撫で、俺の顔を見つめた。

 

「私が食べたら、シャルに申し訳ないな。」

 

「何でさ。アリシアは・・・」

 

「ここで私がお前を奪ったら、シャルに怒られる」

 

既に怒られるようなことをしているだろ?と思ったが口にするのを止めた。嬉しいのか悲しいのか分からなかったが、アリシアは口許を拭うとソファーから立ち上がる。未だに、心臓がビートを奏でているが、アリシアは続けた。

 

「シャルがお前を好きだってこと分かってるだろ?何で愛してやらんのだ?」

 

「俺だって好きさ。だけど・・・・」

 

と視線を下に落として考える。生前だってこんな事はなかったさ!そう、俺は生前童貞でしたし、今もそうだよ!奪われそうになったが・・・。どうすればいいのか・・・。

 

すると、アリシアは呆れたように溜め息を吐くと、俺に歩み寄ると人差し指を親指で押さえて放った。それは所謂デコピンというもの、しかもそれはちょうど眉間に放ったのだ。

 

「痛ってぇ!」

 

「まったく、お前と言う男は!・・・少しは男、いや獣になったらどうだ?」

 

女性が言うのもどうかと思う。そんなこと言えばデコピンの効力射が待っているので言わないが。

 

「獣?」

 

「そうだ。情事に言葉がいると思うか?いいやいらない。黙って抱き締めて“愛している”と耳元で呟いて、押し倒せばいいんだ」

 

回りくどい事するな。と言い、アリシアはテーブルに置いてあったウィスキーのショットグラスにウィスキーを注ぐ。

 

「それだけでいいのか?」

 

「良いに決まっているだろう?好きな男に女として扱って貰いたいのが女と言うものさ。」

 

「アリシアは?」

 

「私か?私は自分に主導権あった方がいい。」

 

ガクッ!と俺の頭の中でSEが流れる。

 

アリシアは頭を掻くと、くいっとショットグラスに注がれたウィスキーを飲み込んだ。

 

「明日どうなったのか、報告な」

 

「ど、何処の運動部のなじりだよ!それ!」

 

所謂あれだ。運動部の先輩に彼女とヤった報告をしろと言い寄ってくるパワハラな先輩とそっくりだ。さっきのエロい雰囲気は何処へ行ったのか。ほら駆け足!と何処かの軍曹の掛け声のように俺は二階へと追いやられた。

 

「いいか、命令だ。男になるまで帰ってくるな!」

 

何だか良く分かんない・・・。なんか変なのと知り合っちゃったと俺は少し後悔した。寝る場所も一つしかないため、俺は速いペースで動く心臓を「落ち着け」と念じつつ、扉を開いた。

 

その部屋は最初、俺の部屋として使うことになっていた。パソコンは勿論の事、本やライフル、パワーアーマーのロッカーもあるためそこは俺が使っていた。しかし、ブライアンやアリシアが来たお陰もあってか、シャルと同じベットで寝ることになった。何回か同じベットで寝たことがある。だけどさ・・・・、

 

ベットには服を脱ぎ散らかしたシャルの姿があった。シャワーに行ったのか知らないが、今の姿は灰色の下着だけであり、ベットに大の字になって寝ている。ベットの隅に腰かけて彼女に背中を向ける。身体を捻ってみると、シャルの可愛い寝顔が見える。

 

「全く、こんな可愛い奴を襲えるわけないだろ」

 

シャルの頭を撫でると、ダークブラウンの滑らかな髪が手の上でさらりと落ちていく。撫で終えると、腰に付けていた10mmサブマシンガンをスツールに置き、武器を片付ける。ふと、背後で気配がしてスツールに手を伸ばそうとする。だが、それは胸という夢の詰まったものによって手を止めた。

 

「ユウキ~・・・」

 

「しゃ、シャル?!」

 

例えるなら、死んでいた筈の仲間がゾンビとなって現れた生存者の心境だろうか。それでも、背中に感じる柔らかい感じや女性特有の甘い香りはないだろう。

 

「ユウキ、さっき私に何しようとしたの?」

 

「え、何のことかな?」

 

「むぅ~!!」

 

怒ったのか、俺の首に回していた腕を絞め始める。

 

「ギ、ギブギブギブ!」

 

「答えてよ~!知ってるんだから!私に何かいやらしいことしようとしたでしょ!」

 

酔いは抜けているらしいシャルは、力加減もせずに首を絞める。酔っていなければ力加減をするに決まっている。呼吸は苦しくなるものの、血を止めるほどではない。暫くしてからか、シャルは絞めるのを止めた。だが、シャルはボソリと小さく呟いた。

 

「え、何?」

 

「なんで・・・何でしてくれないの?」

 

シャルの意外な発言に俺は驚いてしまう。って事はして欲しいって事なのか?

 

「Vaultを出てからだよ。いつ死ぬかも分からないこんな世界に放り出されて、いつもユウキの事を思ってた。お父さんを見つけられるかどうかも分からない、途中で死んじゃうかもしれない。いつも、怖くて折れそうになってもユウキが助けてくれた。」

 

「シャル・・・」

 

俺は呟き、後ろから抱き着いていた姿勢から顔を向き合わせる。シャルの顔は紅くなっていた。

 

「だから、好きな人と結ばれずに死ぬのは嫌。本当の気持ちを伝えないのは嫌。ユウキ、・・・・私はユウキの事が好き」

 

シャルは真っ赤な顔をして、直ぐに自分の顔を見せまいと抱き着いた。緊張なのか、身体が微かに震えている。俺は背中に手を回してそれに答えた。

 

「俺は・・・・俺は前世じゃ、日本人でさ。ゲームをこよなく愛する高校生だったんだ。」

 

「えっ?」

 

「よく、海外のゲームを学校から帰ったときによくやったんだ。転生しても、今でも覚えている。ゲームを起動させようとしたら、いきなり赤ん坊になってた。何の夢かと思ったよ。だって、俺はそのゲームをやろうとしていたのはこの世界をやろうとしていたんだ。いきなり、目の前にジョナサンが現れたときビックリしたさ。」

 

「じゃあ、ここはゲームの中だってこと?私は・・・」

 

「いいや、俺はここを現実だと思っているし、シャルの事も本物だと思ってるさ。ちゃんとした人間だ。銃を撃てば血が出るし、つねったら痛いだろ?」

 

俺は少し、シャルの身体から身を話して顔を会わせて話す。

 

「俺はこの世界の人間に生まれ変わって、沢山の人に会った。父さんやジェームズおじさん、アマタやブライアン。皆は生きていて、毎度この世界はゲームではない事を思い知らされた。そしてシャル、君だ。俺は何でVaultに残らず、君についていったか分かるかい?俺は君を護りたかった。命に変えても君を護りたかった。シャーロット、君の事が好きだ」

 

その言葉に一切の揺らぎはない。

 

シャルは嬉し泣きなのか、目からポロポロと涙を流し、手で涙を拭き取ろうとする。

 

その手を止めて、俺の指で涙を拭き取り、頬を撫でる。ゆっくりと顔を近付けて互いの唇を合わせ・・・

 

 

 

そして、俺はシャルを押し倒した

 

 




次の話はthreedogのラジオ放送をお聞き頂けるかと。


それともう一つ!

R18のfallout3を書いてみようかと思います。スキルアップを目指してやってみようかな。多分、駄作に終わるかもしれない。興味があったら見ていただけると光栄です。ともあれ、まだ、投稿する段階には至っていませんがww

作者は感想をいただけると、最大で一日4000文字を書く事があります。なんでもいいので書いていただけると励みになります(^O^)

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