fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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大変お待たせいたしました。

最後の投稿から・・・・半年も経っている(驚愕)

公務員試験や一般企業に加えて、卒業論文など二月になるまで色々あり、今の今まで執筆の時間を割けず、申し訳ございません。

ちょいちょい時間を取って執筆をしていましたが、やっと完成。既に後日談まで執筆しています。

三月中には最終話を上げようかと考えてます。あともう少しのお付き合いですが、よろしくお願い致します。。


四十七話 ラストバトルⅢ

 

 

 

 

『民主主義に敗北なし、共産主義はまやかしだ!!』

 

 

 

強固に強化され、要塞化されたジェファーソン記念館のエントランス前には15m強の鋼鉄の巨人、リバティープライムが鎮座していた。所々、塗装が剥げ、レーザーによる焦げ跡やプラズマによる装甲の焼けただれた部分を見ればプライムが戦場を突き進んだことが分かるはずだ。

 

 

スクライヴの進軍プログラムによって歩行し、ここまで来たプライムであったが、そこで何をするかという任務内容までは入力されていない。それをしたいものの、数億もあるバグや計算ミスなどを修正していたスクライヴはそこまで手が回らなかったのだ。誤射を避けるために自衛と歩兵の誘導攻撃のみに限定した、敵対するすべてを破壊するプログラムや照準装置など様々な分野においてスクライヴの技術が結集し、ある程度完成した兵器として運用されるに至った。Dr.リーの支援もあったため、プライムは動いた。もしも、エンクレイヴが浄化プロジェクトに関心を示さず、それらを襲おうとしなかった場合、プライムは未だに国防総省の秘密地下研究所の奥で埃を被っていたかもしれない。

 

 

 

すると塹壕に入っていたエンクレイヴ兵は携えていたレーザーライフルを発砲する。レーザーはプライムの肩に命中するが、目立つ損傷は与えられない。攻撃されたことを察知したプライムはカメラのライトを赤く染め、高出力のレーザーを発射。兵士の上半身を炭にした。

 

 

その光景をみた周囲の兵士は反撃しようと銃を構えるが、守備隊の指揮官らしき男は声を張り上げる。

 

 

「撃つな!奴は自衛モードなのかもしれない!撃てば向こうは容赦なく殺しにかかるぞ!」

 

 

市街地で戦闘を目の当たりにしていたエンクレイヴ大統領派の指揮官はリバティー・プライムが戦闘中眼前にある装甲車を破壊しようとしてこなかったり、攻撃できる隙があったにも関わらず攻撃しなかったこともあって、自衛行動と歩兵による誘導が必要ではないかと踏んでいたのだ。

 

 

彼の予想は当たっていた。

 

 

「第一分隊は後衛だ。第二分隊は慎重に進んであのデカブツに接触してみろ。出来ることなら鹵獲するんだ」

 

 

指揮官の命令に嫌々ながらも兵士達はゆっくりと塹壕から這い出してプライムへと近づく。至近距離にあってもプライムは攻撃してこないため、エンクレイヴの兵士は安どのため息を吐いて近づいていった。

 

 

 

ジェファーソン記念館には俺が防備を固めていた時と違い、監視塔が増設され、コンクリートによるトーチカや塹壕に設置された固定式レーザーガトリング。ジェファーソン記念館もコンクリートとエンクレイヴ軍が多く使用する防護壁が配置され、防備は固い。だが、先ほどの戦いで兵員の殆どを失い、ここにいるのは最低限の人員のみである。大統領派のエンクレイヴ兵は恐怖の色を隠せなかった。

 

 

その様子を見てから、周囲に展開するBOSの兵士を呼んで説明を始める。

 

 

 

「よし、これから部隊を二手に分かれる。一つはこの橋を渡って直接攻撃するルート。もう一つは先行して海岸から泳いで向こうへ行くルートだ。そのルートには50名ほど借りる」

 

 

 

俺が指さす先には、エンクレイヴの装甲車やヘリが破壊されたまま放置されており、殆どが川べりに沿って隅に置かれていた。修復不可能なまでに破壊された兵器群は鉄として溶かして、新しく作ることが可能であるが、キャピタル周辺の治安向上のため部隊を展開している。そのため輸送ヘリはそちらに割かれ、レイヴンロックに持っていくことが出来なかった。邪魔であったそれらは兵士たちの遮蔽物とするのは頼りないので川べりに沿って放置された。それらは奴らの視界から我々を隠すに丁度良い。そこにBOSの部隊を隠し、一斉に攻撃を仕掛ける。強化装甲に身を包んだ兵士の突撃はかなりの見物だろう。

 

 

「俺の合図で一斉に攻撃に入る。再編した第一中隊はこっち。第二中隊は君が指揮を」

 

 

 

「了解」

 

 

生き残った部隊を中隊として再編成し、大雑把な分け方だが、兵に川を泳ぐよう言い、川を泳いでばれない様、ジェファーソン記念館の目の前のスクラップに隠れた。何名か老朽化の激しいパワーアーマーのために泳ぐことが出来ず、第二中隊と共に橋から攻撃を仕掛けることになったが、ほとんどが川を渡り切り、エントランスを正面に突入する準備が完了した。

 

 

最新鋭のエンクレイヴが作ったパワーアーマーは水に使っても駆動できた。破壊された装甲車の陰に身を隠し、エントランスに陣取る敵へ視線を送る。まだこちらには気づいていない。

 

 

「準備は出来ているか?」

 

 

俺はリバティー・プライムに接近しようとする大統領派の兵士を見つつ、瓦礫に身を寄せたレーザー照準装置を構えるナイトに呼びかける。

 

 

「ええ、いつでも行けます」

 

 

「総員、突撃準備。合図があるまで勝手に行くなよ」

 

 

ヘリの残骸や撃破されて放置される装甲車の陰に隠れるBOSの隊員は今か今かと突撃の合図を待つ。かなり人数が少なくなってしまったが、リバティー・プライムの支援攻撃があれば突破は不可能ではない。突撃準備に命令によって兵士達の何人かはスレッジハンマーやヒートランスを構える。

 

 

「中々、すごい作戦ね」

 

 

「二百年前もハイテク兵器に囲まれても突撃はしたんだ。パワーアーマーでやるんだから、記録映像は撮ってほしいもんだ」

 

負傷しつつも、前線に出たいと言っていたサラ・リオンズは俺の提案する作戦に対して驚きつつもその作戦を了承した。

 

 

突撃という戦術は状況を打破するのに最適な攻撃方法の一つであり、最適な支援攻撃を行いつつ実行する浸透突撃などは効果を発揮する。2070年代にも塹壕戦や銃剣突撃が行われており、前世の世界でもハイテク兵器に囲まれながらも、イラク戦争においてはイギリス軍が銃剣突撃を実施した例があるほどだ。生身の歩兵に対して行われる攻撃は分隊以下の人数で行われるため、パワーアーマーが中隊規模で突撃することは稀だった。

 

サラは遮蔽物となる装甲車のところで突撃支援を行う部隊の指揮を執ることになり、前線近くではあるものの、敵の目の前よりはましなはずだ。

 

「おれ・・・大丈夫だよな。指揮できるだろうか」

 

 

「大丈夫よ、心配しすぎ」

 

 

俺が指揮することに嫌悪感を抱く者も多い。加えて言えば俺を殴って蹴っていた隊員もいるだろう。それに関しては多少恨みがあるがここで私情は持ち込まない。エルダーによって冤罪を証明したが、まだ疑っている者も多い。だが軍隊という上下関係の厳しい組織において命令は絶対である。俺のことを幾ばくか信じる何名かのパラディンとナイトによって不平不満は抑えられているはずだ。

 

 

「よし、リバティー・プライムを暴れさせパニック状態になったら突撃する。お前はここから敵をターゲッティングして支援しろ・・・・やれ」

 

 

ナイトの持つレーザー照準器が照射され、大統領派の兵士のいる櫓に当たる。

 

 

『歩兵の支援要請を受諾。共産主義者の監視塔を攻撃』

 

 

高出力レーザーは櫓に命中し、備蓄してあったミサイルに引火し爆発した。大統領派の兵士達は突然の攻撃に驚き、指揮官が止めるにも関わらずリバティー・プライムに攻撃を始めた。その瞬間にBOSの兵士達は動こうとするものの、それを制した。

 

 

「全部隊、まだだ!敵の損耗してからだ。合図を待て!」

 

 

塹壕のエンクレイヴ兵士はリバティー・プライムによって踏み潰され始める。味方の陣地を攻撃したリバティー・プライムに対してエンクレイヴの兵士は攻撃を再開し、指揮官がそれを制止しようとするがそれでは収まらない。そして別に動いていたスナイパーに指示を出す。

 

 

「owl2-2、指揮官をやれ!」

 

 

(了解、始末する)

 

 

離れた所で偽装効果の高い偽装ネットを被っていたBOSのパワーアーマー兵は伏せ

撃ち(プローン)の状態で改造したガウスライフルで大統領派の指揮官を狙っていた。射撃中止を命令しようとしていた指揮官は命令とともに電磁力で加速した徹甲弾によってヘルメットを貫通し、その生涯を終える。いきなり指揮官がしたことによって大統領派の防衛部隊は瓦解した。

 

 

 

「今だ!突撃ぃ!前ぇ!!」

 

 

 

 

「「「「Ahhhhhhhhhhhhhh!!!!!!!!」」」」

 

 

 

鬨の声を上げ、空気が震え上がる。50名近くの兵士が上げる雄叫びはその空間のエンクレイヴ兵に対して恐怖を与えた。

 

 

突撃に雄叫びは己を奮い立たせるだけではない。それは声による制圧。相手を恐怖させ、戦う気を失わせる古来から存在する武器である。

 

BOS兵は鋼鉄の剣の御旗を旗印に突撃を敢行した。旧式のパワーアーマーと侮り、プラズマライフルの射撃の的だと豪語していた隊員やBOS兵士を動く野蛮人と評する者も存在した。だが、戦いという古代から行われていた争いに野蛮さは必然的に存在する。野蛮さを取り除けば、人間という生物は成り立たない。

 

BOSの喊声は戦場を震え上がらせ、新兵を委縮させる。吶喊する彼らの息吹は彼らを恐怖へ叩き込む。怒涛の様に土石流の様に押し寄せる彼らを前にしていたエンクレイヴの兵士達は震え、涙が止まらない。

 

「来るぞ!」

 

彼らの敵はそれだけではなかった。巨大な二足歩行兵器。リバティー・プライムは敵を逃がさない。放たれた高出力レーザーはエンクレイヴの遮蔽壁を貫通し、兵士ごと溶かしていく。恐慌状態となった兵士は塹壕から這い出せば、リバティー・プライムのレーザーと支援攻撃をするBOSの兵士たちによって射殺される。

 

突撃するBOSに対抗する術を持たない彼らは蹂躙されるしかない。

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!」

 

応戦とばかりにプラズマライフルを発射する兵士は一人を撃ち殺すと、近づいてきたBOSの兵士三人に取り囲まれ、側頭部にハンマーを打ち付けられる。ヘルメット内のHUDが割れ、兵士の顔に突き刺さると同時に、BOSの兵士が持っていたヒートランスが胸に突き刺さった。熱されたランスは簡単に装甲を溶かし、生身の体を串刺しにした。叫び声を聞こえず、死んだか確認することもできないため、何度も突き刺しては死亡確認をしていく。

 

「来るなぁ!来るなぁ!」

 

俺の目の前の兵士は手持ちのレーザーピストルを発射し、すぐ顔の横を通過していき、腰だめの状態で俺はプラズマライフルを発砲する。プラズマ弾は兵士の右ひざに命中し、高温を発するプラズマが装甲を溶かし、足を燃やしていく。

 

「足がぁ~!俺の!足、あしがぁぁぁ!」

 

 

その兵士のスピーカーがオンになっているのか、兵士の絶叫が周囲を響かせるが、彼に情けを掛けるわけにはいかない。彼の持っているライフルを蹴飛ばした。あとは周辺の後詰め兵が何とかしてくれる。

 

 

「そのまま内部まで突入する!第一中隊はついてこい!第二中隊は周辺警戒を行え!サラ君はエンクレイヴ議会派との交渉でここに待機だ」

 

記念館の入口の陣地は死屍累々の惨状だった。金属の装甲で覆われたパワーアーマー兵の急所は大部分が関節だった。BOSの火器では装甲面の破壊は困難なため、関節にリッパーや斧で破壊し、四肢が切断され無残なエンクレイヴ兵の死体が残る。戦闘は掃討戦に移行しており、武器を持ち降伏しない兵士へは数の暴力で圧倒していく。投降した者は幾人か殴られるが、命を奪うことはしなかった。命令によって指揮下にいるBOSの部下を呼び寄せ、記念館のエントランスに到着する。

 

 

「工兵!扉を吹き飛ばせ!」

 

「了解!」

 

工兵はパワーアーマーに増設したバックパックからC4プラスティック爆薬を取り出して扉に仕掛ける。電気信管を指して遮蔽物に隠れると、工兵は俺へ合図を送る。

 

 

「よし!やれ!」

 

「点火ぁ!」

 

 

起爆スイッチを起動すると同時に電気信管によって起爆剤が起爆。扉は粉砕され、中のエンクレイヴ兵が急いで築いたと思しきバリケードが木っ端みじんに吹き飛んだ。

 

 

「突入する。行くぞ!」

 

エンクレイヴ大統領派の兵士の死体や補給品の残骸から回収した弾薬を拾い上げ、補給した兵士達はエントランスへと突入する。

 

「鋼鉄の兄弟のために!!」

 

「Uraaaaaaaa!!!!」

 

雄叫びとともに突撃するBOSの兵士達はバリケードの瓦礫をものともせず突破し、爆風によって吹き飛ばされていた兵士達を蹂躙する。

 

「大統領のために!」

 

「野蛮人共だ。殺せ!」

 

ただ殺されることを良しとしないエンクレイヴ大統領派の兵士達は吶喊するBOS兵を迎撃する。我先にと突入するBOS兵士は出力を上げたレーザータレットによって吹き飛ばされた。装甲を貫通し、くぐもった悲鳴を上げながら倒れていく兵士。プラズマグレネードをとっさにバリケードを構築するエンクレイヴ兵へ投げた。プラズマが全方位に解き放たれ、一瞬にして強固な装甲を持つエンクレイヴ兵はプラズマ粘液となっていく。緑色の閃光を周囲に照らしながら、後ろに控えるBOS兵を前進させた。

 

「突破口を開いた!行くぞ!」

 

「そこの五人は下層階へ行け!後は浄化装置を奪還する!」

 

俺についてくる20人弱の兵士は俺の後へと続いていく。浄化水槽と浄化施設の中枢であるジェファーソン像を包み込むドームのある部屋の扉にたどり着いた。入口は二つあるため、兵員を二つに分けると扉にとりついた。

 

「突入準備だ。弾倉確認!」

 

扉の両脇に並び突入の準備し始め、ライフルの弾倉を新しいものへと変えていく。

 

「パラディン・・・爆破突入(ブリーチ)?」

 

「いや、このままクリアリングだ。爆破しても範囲に敵がいるとは考えられない。向こう側の仲間への誤射には十分注意しろ。あと、捕虜になっている者もいるから射撃には注意しろ。向こう側も分かったな」

 

(大丈夫です!いつでもどうぞ)

 

無線のスイッチをオンにしていたので、もう一個の入口にいた兵へも連絡する。手にもつプラズマライフルには新たなフュージョンセルを装填し、太もものプラズマピストルにも新たなエナジーセルが新しいものか確かめる。緊急用のリッパーも胸部の抜きやすい位置に取り付けた。

 

その部屋にはオータム大佐は存在しない。代わりとしているのは誰なのか。もしかすれば、オータム大佐に似た何者かだろう。囚われているシャルも救えるはずだ。

 

 

「突入するぞ・・・・・・3・・・・2・・・・・1!」

 

「突入!」

 

 

BOSの兵士はパワーアシストによって強引に扉を蹴り、プラズマライフルを持つポイントマンが入り、次々と中へと進んでいく。

 

「撃つな!捕虜が居るぞ!」

 

その声を聴いた俺は居てもたっても居られなくなり、すぐに兵士を掻き分けて中へと入った。

 

 

「シャル・・・」

 

そこに居たのは、椅子に縛り付けられた痛ましい姿だった。来ていたエンクレイヴ軍の下士官服は所々が裂け、口元には殴られた裂傷が見える。近くにいた衛生兵は彼女の脈と呼吸、外傷を確認する。

 

「パラディン・・・、口元に殴られた傷がありますが、目立った外傷は見られません。拘束具を外しましょう。」

 

俺はリッパーを胸の鞘から抜き取り、シャルの手首に取り付けられた手錠の鎖を切る。抵抗したらしく手錠した付近は皮が捲れ、痛々しい傷があった。

 

「・・・・クソっ!」

 

俺は悪態を付き、エンクレイヴの兵士が置いていった弾薬ケースを蹴り飛ばした。その憤りを見た衛生兵は俺の肩を叩く。

 

「たぶん大丈夫でしょう。見た目的にはレイプされた形跡もありませんし、一般的に見れば幸運なほうです」

 

衛生兵の言う通り。女の捕虜は大抵レイプされることが多い。寧ろ、そのために生きたままにしておくわけであり、ウェイストランドの女傭兵はそうした危険が伴う。集落においても荒廃したこの地では普通に起こり得ることで、シャルがただ殴られただけなのは奇跡に近い。

 

だが、それを聞いたからと言って俺が怒らなくなる訳ではない。俺が憤りを感じているのは自分自身。彼女を守れずけがをさせたことに非常に腹を立てていたのだ。愛した彼女を守れず、朽ちていく者はウェイストランドに多くいるだろう。だが、それは自分に守る力を持ってない人だ。俺にしてみれば、自前の武器を持ち、エンクレイヴやBOSの力を借りることが出来る。最愛の人を守るすべを持っていたのにこの体たらくだ。

 

 

そんなことを考えていると、シャルの意識が覚醒したらしく、ゆっくりと体を動かし始めた。

 

「・・・・うぅ・・・・ここは・・・」

 

「シャル!無事か!?」

 

「ひっ!」

 

彼女は俺を見るなり、恐怖の滲んだ目線を俺へとむける。そういえば今の俺の装備はエンクレイヴのパワーアーマーであったのだから無理もない。急いでヘルメットを外して彼女に顔を見せた。

 

「シャル、俺だ!ユウキだ!」

 

恐怖の孕んだ視線から次第に驚いたような視線へと変化した。

 

「ゆ・・・・ユウキ・・・?」

 

彼女の瞳は俺を見、手は俺の顔元へ近づけ頬を触る。すると彼女の目からは溢れんばかりの涙が流れ落ちた。

 

「い……生きて……た……」

 

声にならないような泣き声と共に彼女はゴツゴツとしたパワーアーマーに抱きついた。パワーアーマーを彼女の涙で濡らしていく。そのか弱い背中を鋼鉄の手で撫でる。

 

「終わったか……」

 

BOS兵士達から生暖かい目線を向けられるがあまり気にしない。浄化装置に目立つ損傷もなく、エンクレイヴ大統領派の兵士も掃討したことで、ここは安全地帯となった。Dr.リーやBOSのスクライヴを呼んで整備を行い、浄化プロジェクトを完遂しなければならない。幸い、浄化設備に異常があるようには見えない。工兵数名を下層と上層に向かわせ、爆発物がないか調べているが、保管されているもの以外見つかってはいない。

 

 

だが、物事がそんな簡単に物事が運ぶとは思えなかった。この後、議会派がエンクレイヴのすべてを掌握した事によってウェイストランドへ入植を始めることだろう。長年に渡り、ミュータントとの抗争とウェイストランド人の保護を行っていたBOSとは必ずぶつかる。どちらかが倒れるまで戦争が行われるかもしれない。外交によって解決するのが一番望ましいが、懸け橋となるのは、どちらとも交流のある俺やシャルだ。この後は双方が血を流さないように動かしていかなければならない。困難な道は続くだろう。

 

 

「・・・・・ぐすっ・・・・もう大丈夫」

 

赤く目を腫らしたシャルは袖で涙を拭く。その様子を見ていたBOSの隊員はタイミングよく俺に報告を行う。

 

「報告!下層階及び上層、浄化プラント、外周部の残存的勢力は全て掃討完了しました」

 

「よろしい。国防総省に連絡。すぐに技術者チームをよこしてくれ」

 

 

「了解・・・」

 

兵士が敬礼を行い、長距離無線機を使おうとした時だった。館内のスピーカーが突如として通電し、ノイズが館内全域に放送される。

 

 

 

 

 

『・・・・・ははっ!はははははははは!』

 

突如として館内に響く初老の男性の笑い声にそこに居たBOS兵は驚きの声を挙げる。それは誰しも聞いたことのある声だった。

 

「その声は・・・・・」

 

『何を勝ったつもりでいるのだね?まだこれからではないか』

 

その声の主。エンクレイヴの総司令官として君臨していたジョン・ヘンリー・エデンその人だ。

 

 

「狂ったAIめ!」

 

悪態をついた後、浄化装置の上の方から浮遊するロボットが現れる。それはMr.ガッツィーのような蛸の足のような腕を持っているが、球体にはテレビのブラウン管らしき画面が取り付けられていた。

 

『狂っているとは心外だ。私からしてみれば人間の方こそ狂っていると言えるがな』

 

画面に映されたのはエデン大統領の表の顔であるアンドロイドの顔が映し出された。しかし、本体はZAXスーパーコンピューターであり、彼に顔などは存在しない。

 

「下層階にコンピュータールームがある。やつはそこに居るはずだ。」

 

 

ZAXスーパーコンピューターを設置する場所は限られている。あるとすれば、浄化施設制御を行うコンピューターのある電算室だろう。ただ、あの場所にZAXが収まるようなスペースはあるのだろうか。

 

「了解!直ちに」

 

命令したナイトは他の兵士を連れて下の電算室へと走る。その光景をカメラに通して見ていたのかエデンは再度笑い声をあげる。

 

「無駄だ・・・・、君たちに未来はないのだよ」

 

 

「・・・・まさか!」

 

 

はっと思いだした俺は浄化チャンバーへと向かう階段を駆け上がり、浄化槽フィルターの薬品ボックスをのぞき込む。そこには生物汚染(バイオハザード)マークが書かれた金属製のパッケージが装着され既にフィルターに何かの液体が染み付いていた。

 

『これで全てが終わる。地球の全生物を変化させた人類はやっと死に絶え、新しい時代が始まる。新たに作られたFEVによってこの地は浄化され、ここから流れる水によって世界に広がっていくだろう』

 

オータム大佐は大統領派や西海岸の将校を尋問して出てきた情報であったが、生物化学兵器となったFEV改良型が密かに開発されている情報を伝えていた。

 

それはゲームでvault101から出てきた主人公がエデン大統領に渡されるあのウィルスである。ただ、シャルのことだから、無論拒否したのだろう。ゲーム進行的に持たなければ話は進まないのでどうにもならないが、頑なにエデンを拒否続けたために、エデンは自分や崇拝していた兵士を使ってウィルスをばら撒くつもりだ。

 

かつて西海岸で勢力を保っていたエンクレイヴはリチャードソン前大統領によってFEVをばら撒こうとしていた。それは『選ばれし者』によって阻止され、西海岸のエンクレイヴを壊滅させた。ただ、FEVによる世界の浄化はエデンに引き継がれ、「人類の滅亡」という新たな目標を成し遂げようとしていた。

 

補助用の濾過フィルターに入れられ、ウィルスの入った容器は外すことは困難だろう。無理に外しても、容器から漏れ出し、周囲を汚染することにも繋がる。そして取り付けられた装置は既に機械内部でウィルスが広がってしまっているかもしれない。

 

ただ、この施設の原子力発電の融合炉を破壊すれば人類の破壊は防ぐことが出来るだろう。

 

俺は無線の回線を開いた。

 

「全部隊に告ぐ。エンクレイヴの生物兵器が浄化設備に設置されていた。工兵及び必要最低限の人員を除いて速やかに浄化施設から退去せよ。」

 

無線によって周囲にいる全部隊へ通信した後、今すぐにでも退去しなければならない人を思い出し、彼女の近くにいた兵を呼ぶ。

 

「そこのナイト、彼女を連れて外に出ろ!」

 

「いや!待って!ユウキ!」

 

泣き叫ぶシャルを尻目に工兵と広域無線機を背中に背負った兵士を近くへ呼んだ。最後に何か言ってやりたかったが、言う暇もない。多分、彼女と別れの言葉を交わせばそのまま目の前の危機から逃げ出したくなる。

 

彼女の叫び声を聞きながら、彼女の元に走りたくなる気持ちを抑えて歯を食いしばる。周囲を見れば、無線機を借りた無線兵は俺の無線を聞いたのか、顔面蒼白となっていた。

 

「大丈夫だ、君は無線機を置いてそのまま退去しろ」

 

俺と同じか、それより若いイニシエイトの無線兵は頭を下げて扉の元へ走る。恐怖の色を見せながらも近くで命令を待つパラディンはこちらを見て命令を待つ。

 

「下層階に行った兵士が居ただろう。彼の元に行って電算室を確保しろ。破壊はするな。手出し無用と伝えておけ」

 

「了解です・・・・、しかしどうなさるおつもりで?」

 

「これを作ったのはDr.リーだ。国防総省では既にこちらから通信が来るのを待っているはず。もしも、どうにもできなかった場合はこの施設を破壊する」

 

「!?・・・・しかし!」

 

異議をとなえようとするパラディンに対し、俺は首を横に振った。

 

「エンクレイヴのオータム大佐の報告では、今回のウィルスは致死率90%、感染率9割を超えるものだ。しかも、ウィルスは人間以外に対して効果がなく、生命力の強いやつだ。これを少しでも外に出せばどうなるか・・・・・わかるよな」

 

「・・・くっ!」

 

作戦目標であるこの施設を破壊する。BOSの実働部隊の半数を減らしてまで奪還したそれを手放すことはBOSにとってつらい決断だ。それは末端の兵士から指揮官であるエルダーもそうだろう。

 

無線兵からもらった無線を起動させ、国防総省へ呼びかけようとしたが、近くのインターホンから独特な女性の甲高い声が聞こえてきた。

 

(ねぇ、だれか!聞こえてる?浄化施設を奪還したんでしょ、今すぐ応答して)

 

Dr.マジソン・リーの声が響く。手に取っていた旧型の広域無線機のマイクを置いて、インターホンに話しかけた。

 

「Dr.聞こえてる。浄化施設を奪回したが、補助用濾過フィルターの薬品入れにFEVの容器を入れられた。猛毒性のウィルスだ。これを外す術はないか?」

 

(なんですって!・・・少し待ちなさい。今、エンクレイヴの技術者と話をしているわ)

 

確か、今話しているのは国防総省で待機しているDr.リーだが、既にエンクレイヴ議会派は戦闘中にBOS接触しているのだろう。もしかすれば、先の市街地戦闘で介入した部隊はBOSとの交渉を有利にするための行動であったに違いない。

 

「核融合炉をメルトダウンさせ施設全体を消毒すればウィルスが外に出ることは無いはず」

 

(……!いえ、そこまでしなくても、エンクレイヴは安全策としてG.E.C.Kの再構成範囲を広げることでウイルスを殺してしまうようにすることができるようよ)

 

「どうすれば出来る?」

 

(浄化チャンバーのコンソールからシステムにアクセスして。パスワードは“Apocalypse”よ)

 

「それとエデン大統領のサーバーが電算室にいるが、電算室から浄化施設を操作することが出来るのか?」

 

(それはないわね。電算室にあるのは建設当時に建設用のプロテクトロンの管理用に設置したものなの。内部のコンピューターは補助的な電算のみで管理権限は与えていないわ。動かせるとしたら地下の原子炉位だけど。今はエンクレイヴの外部電力で賄われているから使ってない筈)

 

内部の浄化チャンバーに入ると微量の放射線を確認し、短時間であれば居ることは可能なので、エンクレイヴの設置したコンピューターによってG.E.C.Kの操作に取り掛かる。彼女から教わったパスワードを使用し、起動に成功すると、インターホンのスピーカーから何かを話している声が聞こえてきた。近くにいるエンクレイヴの科学者と会話をしているのだろう。

 

その間、俺は無線で地下に居る兵に退去するよう命令を下す。

 

コンピューターには『G.E.C.K分解構成レベル』と銘打たれていて、分解するレベルを調整するらしい。他にもいくつかの数値をいじる項目があったが俺の知識でいじれるような代物ではなかった。

 

「Dr.リー、どうするんだ。分解構成レベルをいじるのか?」

 

(そう、それを・・・・・ちょっとまって・・・・そうこれね!数値をLOWの30からHIGHの90まで増やせばいいわ)

 

画面の選択肢はLOW(30)やMEDIUM(50)、HIGH(90)、OVER(100)と設定されている。さっき言われたHIGHの項目にチェックを入れると、周囲の機械が反応し、警告音を発する。

 

「Dr.今のは?」

 

(チャンバー内に汚染物質かあるいは生物汚染を確認したサインね。あとはマニュアル通りやれば浄化施設は稼働するはずよ!)

 

(ただし、起動時に強力な衝撃波と放射線が発生するわ。パワーアーマーでも耐えられないわ)

 

なら、急いで起動準備させ、秒読み中に脱出すれば問題ない。浄化装置の起動コンソールに触れようとした時、突然警報が鳴り響いた。

 

(ビィー!ビィー!ビィー!……)

 

「一体……」

 

浄化装置のコントロ―ルチャンバーの扉が閉まると、ガイガー・カウンターが放射能の上昇を伝えている。

 

(なんてこと、地下の核融合炉が動いているわ。急いで浄化装置を起動しないと、施設が爆発するわ!)

 

 

 

 

 

「……あぁ、そうか。やっぱりゲーム通りか」

 

 

やはり、この世界はゲームと全く同じだった。多少、差異はあるものの、大きな流れは変えられなかった。

 

自己犠牲……

 

キリスト教圏ではよくある自己犠牲によって他者を救う。俺は主人公と同じく、この放射能に汚染されるチャンバーにて身を投じる。だが、俺は主人公じゃない。本来の役目はシャルであり、俺じゃない。

 

この後、BOSの医務室にて目を覚ます。だが、今回もゲーム通りか。本当ではシャルがこの役目を演じるはずなのだ。もしかすればこの違いによって俺が死に、それをバネにシャルは何かするのかもしれない。

 

死なない保証などなく、起動時の衝撃波と致死量の放射能で即死する可能性があった。

 

死にたくない。

 

まだやらなければならないことはある。

 

だが、いまここで起動しなければ浄化プロジェクトは破壊され、キャピタル・ウェイストランドは人無き世界(ノーマンズランド)になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゲーム通り……人は過ちを繰り返す……』

 

 

いつの間にか内部に入っていたエデンのロボットは俺に画面を向けている。

 

『そうだ。人は何度も過ちを繰り返してきた。裏切りに嫉妬、暴力、殺害、戦争……君達は何度も過ちを繰り返してきたのではないかね。醜いと思わないかね、ゴメス君。それを起動すれば、私が作らせたウイルスは死滅する。だが、人間もやがて……いや、今すぐにでも再び大きな殺し合いを始めるだろうな』

 

『世界は最終戦争には包まれていないかもしれない。だが、生き残った人類は再び殺し合いを続けている。次の世界大戦は石と棍棒かね?』

 

 

『君はどうしてもそれをするつもりなのか?人類は互いに殺し合っている。やがて私でなく、人間の誰かが再びウィルスや核を、それこそ生命が息絶えるまで破壊し続けるだろう。最早、君が止めなくとも誰かがやる』

 

すると、遮断扉が開き、チャンバー内の空気が外へと放出される。

 

『今逃げれば間に合うだろう。愛する人に会いたくないのか?浄化施設は爆発し、ウイルスが飛散するが、エンクレイヴならば化学防護チームがいる。基地内であればウイルス汚染は無いだろう。』

 

エンクレイヴは外で待機している。爆発する前に退避すれば、ヘリに乗って逃げられる。レイヴンロックに逃げ込めば安全であり、キャピタルがウィルスの猛威に晒されていても地下壕で過ごせる。無論、食糧生産の限界や人口の激減などがあるだろう。だが、自分の世代で起こらないかもしれないし、もっと後になることも考えられる。

 

『私が保障しよう。レイヴンロックで君は一生を平穏無事に生きられるはずだ。だから・・・』

 

 

だけど、やはり分かってはいなかった。エデン大統領は機械なのだろう。幾らAIとなり、人を凌駕する統治者となったとしても、人の心を持つことはない。

 

俺は持っているプラズマピストルを目の前の大統領の映像を映しているロボットに向けて放つ。画面が破壊され、コントロールを失ったロボットはジェット推進力で天井と床をバウンドして停止する。

 

 

「・・・・統治者としては優秀かもしれない・・・だけど重要な判断をするのはいつだって人間だ」

 

 

煙を上げて人間のように作業用アームを痙攣させたようにぴくぴくと動く。俺はそれを横目で見つつも、コンソールを見て、よくジェームズが言っていた言葉を思い出す。

 

 

「私はアルファでありオメガ、始まりであり終わりだ。命の水を欲するならば、この泉から、好きなだけ飲むがいい。・・・・・・・黙示録21章6節」

 

コンソールに数字を打ち込む。ENTERを打ち込もうとするが、後ろから声がかかる。

 

『本当にそれでいいのか?貴様はもうここから出られないのだぞ?』

 

「・・・・・・はぁ~、だからお前の計画は失敗するんだよ・・・」

 

『なんだと?』

 

どこから出てきたのか、再び同じ型のロボットが現れる。だが、俺のため息とともに出た呆れた声にエデンは困惑したような声を出す。

 

「俺が逃げると思ったのか?愛する者を盾にすれば多少は効果あったかもしれないけど、彼女と共に生きてキャピタルを犠牲にするか、自分を犠牲にしてここを守るのなら・・・・・答えは分かるはずだがな」

 

俺はそのままenterのボタンを押す。

 

(浄化装置起動中・・・・本格稼働まで残り30秒・・・)

 

聞いてて気持ちの良い女性の音声がチャンバー内に響き渡る。どこか聞き覚えのある女性の声はどこか愛しいアイツの声にそっくりだ。

 

「ああ、これは・・・」

 

シャルのお母さんか。

 

どおりで気持ちが楽になるわけだ。

 

 

『・・・・・私は人間ではないからな。人間の愛というものは理解できん・・・』

 

「そりゃそうだろうさ……」

 

『まさか浄化装置を起動させようとするとは……彼女はいいのかね?』

 

「いいわけないだろう!俺だってまだ死にたくないさ!……だけど俺しかいないだろ……」

 

自己犠牲が尊いとは思わない。好きな人に会えなくなるのは嫌だし、ウェイストランドは過酷だが、それでもまだ楽しいことがあったりする。世捨て人のように死ぬのは嫌だが、浄化装置のために死ぬのは嫌だ。

 

だけど嫌でもやらなければならない。もし、やらなければウェイストランドは死に絶え、親しい者は死んでいく。もし好きな人と共に歩めるとしても、その手が真っ赤な血に染まっている。ウェイストランドよりも彼女を選んだとしても、彼女はこちらを振り向いてはくれない。

 

 

彼女が笑わない世界なんて誰が欲しいのか。

 

 

(残り20秒……)

 

『……そうか……私は機械だ。何を言い繕っても人ではない。』

 

「ああ、あんたは人間じゃない。ただの機械だ。0と1の計算機だ」

 

『そうかもしれん、ただ私の創造主もだがな』

 

「……何だって……今なんて言った」

 

ZAXスーパーコンピューターから遠隔操作しているエデンは、人間の喜びという感情を理解しているか分からない。だが、画面に映された笑顔は笑顔という単語の枠から外れた狂気に満ちた表情だった。

 

『私の創造主は人ではない。元々、この頭脳の大半……コピーはとある惑星から発した……の墜落した宇宙船のコンピューターから解析し組み込まれたものだ。』

 

言わば代理出産。人間という母胎から生まれた存在。だが、人が創りし機械ではない。

 

『……エリア51……私のコピーはそこから生まれた。』

 

『人という存在は激しく愚かだ。何故、宇宙人と呼ばれる種族が地球に墜落するのか。何処からともなくUFOを見たと言い、政府は相手にしないでオカルトして作り話として定着する。……それを誰も彼らからのプレゼントだとは気づかないとは……』

 

 

「……一体何を言っている?」

 

エデンの話す言葉が理解出来ない。人が新規に作ったのではなくコピー品?それもエリア51で生み出された?

 

どっかのオカルト雑誌からの切り抜きなのか。どうしてもそれが事実だとは信じられない。

 

『あの核戦争は誰が起こしたと思う?末期的な食糧難で餓死者が多かった中国。そして、同じく食糧難と新ペストが蔓延していたが、まだ政府機能は維持していたアメリカ。あの年の終わりには米中共同宣言によって戦争は終結する筈だった……。さて問題だ、どこの陣営が最初の核を撃ったと思う?』

 

「……しらない……、どっちが最初だ?」

 

『言っておくが、アメリカでもなければ中国でもないぞ。ロシアでもない。……この地球上どこの誰でもない。』

 

……嘘だろ、それじゃあ核戦争の発端は人類ではないということ?ZAXの謀反?イヤ違う。彼らはそこまで軍事には利用されてない。とするなら……

 

 

(起動まで残り十秒……)

 

『これでお別れだ。ゴメス君……真実にたどり着いてしまった宿命だな。』

 

『今回は失敗したが、彼らが必ず人類を滅ぼす。君は死者の世界で見物しているといい』

 

 

『ハーハッハッハッハ!アメリカよ栄光あれぇ!』

 

エデンの叫び声はチャンバー内に響き渡る。アメリカ復興するための機械は狂い笑う。その声と共に浄化施設は起動した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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かつて、自分を育てるため、人類の明日に背を向けた父。

その父の足跡を追うため、Vault 101を飛び出した2人の旅人がいた。

 

 

荒れた大地と荒んだ心が支配している不毛の地で、多くの人々が悪に屈していく中、二人の旅人は闘い続けた。

父の教えは確実に子へと受け継がれていく。

勇気、愛、仲間。

その気高き心が、旅人達を導いた。

 

 

そして、長い旅の果てに、二人の旅人がたどり着いた答え。

勇気のもつ真の意味、それは犠牲。

己の身を、汚染されたコントロールチャンバーに投じ、

かつて父がそうしたように、人類の明日のために片方の旅人は命を捧げた。

 

 

 

 

選ばれし者として、多くの命を奪うことを、旅人は拒んだ。

人の過ちを許し、絶やすことのないよう、命の水が流れ始める。

全ての人類のために、誰にも奪われることのない美しい水が、不毛の大地を救った。

 

 

Brotherhood of steel

 

Brotherhood of steelはジェファーソン記念館奪還戦において戦闘要員の半数を失った。

リバティー・プライムという超兵器を得たものの、使えなければ無用の長物であった。

エルダー・リオンズはエンクレイヴと交渉の末、不可侵条約を結ぶ。ジェファーソン記念館の浄化施設を本拠地として移動し、要塞化した国防総省を手放した。

エルダー・リオンズ死後、アーサー・マクソンは正式に西部BOSからの独立を宣言。

2280年には、キャピタル・ウェイストランドにおけるスーパーミュータントの撲滅に成功する。エンクレイヴと和親条約を結び、2290年に新アメリカ合衆国憲法発布と議会の設立に向けてBOS母体とする「鋼鉄党」という政治結社を結成する。エンクレイヴの援助によって、軍事力を強化したBOSは連邦へテクノロジーの回収に行く。

 

 

 

 

 

 

メガトン

 

メガトンはエンクレイヴ特別自治区となった。違法薬物と過剰な重火器を没収した後、エンクレイヴの支援によって多くの入植者が救われた。浄化プロジェクトによる清潔な水の提供によって生活環境が改善された。メガトンの目の前の荒れ地は耕され、ポンプで送り込まれる綺麗な水は大地を潤し、穀物を育てていった。

 

ブライアンはモイラに預けられた後、ウェインやビルによって厄介な実験を受けない様、二人が身代わりとして犠牲となった。二人は一時的に禿げたり、ニキビが出来たりしたが、友人のような関係を築きつつ、二人の旅人を待ち続けた。ブライアンは独り立ちした後、メガトンに武器屋を開く。

 

傭兵兄弟のウェインとビルは傭兵家業から足を洗い、メガトンの自警団に所属となった。メガトン特別市と名前を変えた時、自警団はメガトン市警に名前を変え、ルーカス・シムズが総監となり、メガトン周囲の治安維持に努めた。

 

 

リベットシティー

 

自主的にエンクレイヴに編入した。船倉の住居区画を改善し、エンクレイヴの衛星都市として機能する。加えて浄化施設に駐屯するBOSの隊員が来ることによって経済は右肩上がりとなる。

 

武器商人のフラックとシュアプネルは空母の武器工場を経営して「flag&sure」という製造メーカーを設立する。戦前の武器を改良したものを製造した彼らはウェイストランドでも有数の富豪となった。

 

 

Brotherhood of steel out cast

彼らは完全に崩壊した。生き残った隊員はリオンズが寛容な態度で受け入れるものの、殆どはエンクレイヴの攻撃によって玉砕した。辛うじて生き延びた者達はハイテクレイダーとなり、エンクレイヴへのテロ攻撃へと軸を変えた。

 

旅人たちに救助された専門家もといスクライヴ・クロエは顔の半分に火傷を負いながらも、生きながらえることが出来た。彼女は国防総省の病院に収容されていたが、out castの一員であったために疎まれた。回復後、彼女は何処かの組織のリクルーターと接触し、行方を眩ませた。

 

 

 

 

 

デイブ共和国

 

エンクレイヴの支配に入らず、独立国の立ち位置を変えなかった。2280年には大統領のデイブは暗殺され、エンクレイヴに吸収された。

 

 

テンペニータワー

 

エンクレイヴの前哨基地となった。高層ビルの上には巨大なレーダーを設置し、ヘリポートが増設された。キャピタルウェイストランド南西部のもっとも安全な場所となった。テンペニータワーの住民はエンクレイヴ軍へ住居と憩いの場、酒を提供し大いに潤った。

 

 

 

アンダーワールド

 

特別保護区域とされた。歴史的な遺物や貴重な生物を保護するため、許可のあるもの以外入れないようになった。エンクレイヴは大戦後に大部分の歴史を失い、アンダーワールドに住む戦前のグールから大戦の歴史を学ぶ。BOSやウェイストランドで蔑まれていた彼らは、生きる歴史としてエンクレイヴに迎え入れられた。

 

 

Vault101

 

住人はエンクレイヴに吸収された。彼らはかつての故郷に思いを馳せながら、エンクレイヴの住宅地で技術者や労働者・警察官など様々な地位を得た。あるものはエンクレイヴ軍に入隊することになる。

 

 

 

 

 

 

エンクレイヴ

 

大統領の死後、急進派の閣僚を逮捕した。アウグストゥス・オータム大佐率いる議会派と呼ばれる政治結社は政府中枢を掌握。2277年政変と呼ばれる事件によって、大統領独裁を行っていたエンクレイヴの歴史に終止符を打った。

 

議会派は2280年にはBOSと共闘してスーパーミュータントを撲滅。いくつかの知的ミュータント以外を完全にキャピタルから消滅させた。この年にエンクレイヴはアメリカ合衆国の再建国宣言を発表。2290年までに議会を開催し、憲法の発布と政党の結党を許可した。議会は新共和党を設立。過去のアメリカを取り戻さんとする保守派の集まりではあったが、市民議会の設立する新民主党と長年対立を続けることになる。

 

キャピタル・ウェイストランドのD.C.都市部を中心に都市改造を行って、2285年には議事堂を再建。各省庁を移転する計画となる。2290年、新アメリカ合衆国憲法を発布した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Vault 101を飛び出した旅人の、一つの旅が今終わり、歴史に綴られた。

しかし、人類が歩みを止めることはない。

生き残りを賭けた終わりなき闘い。人は……過ちを繰り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前の話でラストと言ったな?

あれは嘘だw


後日談というか、最終話は次です。ラストクエスト(本編)は終了したので、次はBroken Steel (壊れてない)話になります。若干ゼータも混じるかと。

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