fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

6 / 50
五話 pip-boy3000

8年後・・・・・

 

「おめでとう!!」

 

「誕生日おめでとう!」

 

カメラのフラッシュと共に俺は歓声に包まれた。まあ、そんなに人数は居ないのでそんなに大きい歓声とは言えないが。

 

「父さん、まさか僕にもドッキリ仕掛けるなんて」

 

俺の一人称は僕。まあ、15歳位には俺と直そう。セキュリティーの防弾チョッキを着た、父ゴメスは俺の肩に手を置いてニッコリと微笑んだ。

 

「いやな、ジェームズやジョナスがシャルロットと同じようにドッキリにしようとな」

 

「え~、ドッキリにしようと言ったのは私ですよ!オフィサー・ゴメス」

 

近くにいたアマタは訂正する。アマタはまだ幼い顔付きで、まだ少しふっくらしている。彼女は後ろ手で何か隠しているが何だろう?

 

「プレゼントは何だと思う?」

 

シャルの時は駄作のコミック“グロックナック”だったな。この世界の人達は面白いと言うけどどうだかな。その時、グロックナックの修理をアマタと一緒にやったのでよく覚えている。

 

「う~ん、“合衆国陸軍の火炎放射機で出来る30のレシピ”とか?」

 

「はぁ~・・・ユウキは何でそう言うのになっちゃうのかしら?」

 

アマタは眉間を抑え、溜め息をつく。これは前世からの趣味だ。いまさらやめろと言ってもやめられるものではない。すると、アマタは後ろ手から本を出した。それは物品売買のskillを挙げる本「ゴミの街の馬鹿な商人の話」だった。

 

「お父さんの本棚から見つけたのよ。ユウキは数学とか苦手でしょ」

 

「う!」

 

前世からのバリバリの文系である。修理スキルや爆発物スキルは趣味がこうじて高いけど、数学とか科学とかあまり好きではない。苦手である。前世の時の期末では、確実に数学は赤だった。

 

「これ読んで少しは克服できるでしょ」

 

とは言うものの、お金が必要でない生活を送るvault101にはあまり意味のないものになると思うのだが・・・。次にダークブラウンの髪をポニーテイルにしたシャルが後ろ手に何か抱えている。

 

「えっと、シャルのは・・・“銃と弾丸”?」

 

「違う」

 

シャルは短く否定する。何故かシャルはあまり話さない。生まれつきの物かもしれないが、性格故に話すのが得意ではない。

 

出したのは去年アマタが上げた「グロックナック」だった。

 

「これを俺に?でも、アマタからもらったんだろ?」

 

そう言うと、アマタは微笑んだ。

 

「そうだけど、ここにあるのはあの一冊だけだから。独り占めにするのはよくないって」

 

アマタはチラッとシャルを見て、シャルは口を開いた。

 

「本は貸すものじゃなくて、上げるもの。私は全部読んだ。」

 

シャルは短く言って、頬を赤く染め、照れ臭そうにクラッカーを使う。

「ありがとう、シャル」

 

俺はプレゼントを貰い、浮き浮きしながら兄貴からもプレゼントを貰う。

 

「ユウキ、グローブとボール。あとでキャッチボールしようぜ」

 

一つ上の兄貴のフレディ。腹違いの兄貴ではあるものの、血の繋がった兄弟のように接してくれる。最高の兄貴である。

 

「兄さんありがとう」

 

「よせやい、照れる」

 

フレディは鼻を擦りながら、こちらも照れ臭そうにする。

 

「お父さん、継母さんは?」

 

「仕事があるからこれないとさ。まあ、仕方ないか」

 

父は申し訳なさそうに俺の頭を撫でた。俺の実の母は俺の生まれた直後に死んだ。よって、ペッパー・ゴメスが今の母親だ。

 

我が家、ゴメス家は複雑に絡み合った家族だ。まずペッパー・ゴメスとハーマン・ゴメスとの間に子供、フレディ・ゴメスが生まれる。しかし、双方の擦れ違いと相性の悪さが原因で離婚。フレディは母方に引き取られ、父はバツイチの独身男となった。そこで、母の椿が現れた。二人は結婚し俺を産んだ。しかし、出産後、早産のために体調が悪化。帰らぬ人となった。父は悲しみに明け暮れたが、そこに漬け込んだ・・・いや、優しく励ましたのが、別れた女房であるペッパー・ゴメスだ。結局、元鞘と言うべきか。俺の立場はドラマの姑と嫁と似た関係となった。俺の立場は無論後者。まあ、旦那が他所で作った子供なんて好きではないだろうしな。性格の悪さゆえに、家から追い出されることもしょっちゅうあり仕方がないことだろう。

 

フレディ兄さんからグローブと野球ボールを受け取り、上機嫌な俺。そこに監督官が現れた。

 

「おめでとう、ユウキ。今日が何の日か分かるかい?」

 

「10歳の誕生日です」

 

「よろしい!ここvault101では10歳になったら、大人と同じように仕事をして貰う。これで君はvault boyから立派な大人になったんだ。受け取りたまえ。pip-boy3000だ」

 

監督官の手には、このゲームの象徴とも言えるpip-boy3000があった。

俺はそれを受け取り、左腕にはめた。pip-boyが俺の腕に合わせるように保護パットを調節し、神経接続を行った。

 

「痛っ!」

 

「はっはっは!それが大人の痛みと言うものだ。明日には仕事なのだからちゃんと覚えるように!はっはっは!」

 

監督官は上機嫌な感じで近くのスツールに座った。

 

「監督官、なんか上機嫌だね」

 

「ハノン警備長とチェスをして勝ったんだろう。たしか、ウイスキーの配給券だったかな」

 

だから上機嫌なのか。お酒はともかくとしてnuka-colaだったら欲しいな。父は近くのスツールに腰掛け、溜め息をついた。

 

「ごめんな、ユウキ。お父さんが頼りないばっかりに」

 

「いいんだよ。でも、お継母さんに刀を仕舞われたのは悲しかったな」

 

ある意味、母の形見とも言える日本刀をキャビネットに仕舞われてしまったのは結構魂が削がれた。大和魂が・・・。

 

「あれはユウキが遊びに使おうとしたからだろ。普通に怒られるさ」

 

いや、あれは遊んでいたんじゃなくて、刃を研いでいたんですよ。おっさん。

 

「刃を研ぎたいのは分かるが、もう少し大人になってからな」

 

父は俺の頭を撫でて、パーティーを楽しんでこいと尻を叩いた。俺はケーキをカッティングしているパールムおばあちゃんの元へ行った。この前、Mr,ハンディがシャルの誕生日ケーキをぐじゃぐじゃにしたから、今日のカッティングはおばあちゃんが行っている。

 

「ユウキ、さあお食べ」

 

「おばあちゃんありがとう」

 

おばあちゃんにもらったショートケーキを食べて、満腹感に満たされる。

 

「おい、ユウキ美味しいもん食べてんじゃねーか」

 

後ろから来たのはブッチ。典型的なイジメっ子だ。

 

「お、ブッチ。自分の分は食べたのか?」

 

「ああ、お前の分も食べようと思ってな」

 

残りあと一切れ。既に人数分あるので、残ったのは誕生日のゲストである俺に来る。ブッチはケーキを食べたいのではなくて、自分がどれだけ強いかを見せつけたい。力を固持したいというイジメっ子特有の威張り散らしたいだけなのだ。単にケーキが食べたいのかもしれないが・・・。

 

「いいよ、これ以上食べると胃が持たれる。甘いの好きだけど、二切れも食べられないよ」

 

「え。い、いいのか?」

 

ブッチは驚いたようにする。以前にシャルの誕生日パーティーでシャルと殴り合いになったんだっけ。普通に貰うとは考えてなかったようだ。

 

「ブッチ、太るぞ」

 

「う、うるせー!」

 

俺は横腹を小突かれるが、テイラーおばあちゃんは眉間に皺を寄せた。

 

「ブッチ!行儀よく食べなさい!」

 

監督官が怒鳴るよりも、年輩の方が怒った方が伝わりやすい。ブッチは反抗しないで姿勢を正しくして食べた。後で聞いたのだが、ブッチの母親のエレンはアル中で、毎回酔っ払うと、ちょくちょく家出してブッチはテイラーおばあちゃんのお世話になっていたらしい。そのため、おばあちゃんに叱咤されると、反抗できないのだ。俺がケーキを食べ終わり、シャルとアマタからもらった本を開こうとすると、さっきまでパーティーから抜け出していたシャルが俺の服を引っ張った。

 

「ん?何?」

 

「ちょっと・・・来て」

 

パーティーを抜け出せと仰るのか。パーティーの主役が抜け出してもいいのか?と疑問に思うものの、周囲は思い思いのことをしているので抜け出しても大して変わらないだろう。そう言えば、ジョナスと父とジェームズおじさんはどこ行った?

 

「どこ行くんだ?」

 

「秘密」

 

手を引っ張られ、地下深くへと階段を降りる俺達。遂には、子供が入ってはいけない原子炉のあるゾーンへ到達した。

 

「ここ?」

 

「そう」

 

扉を開いて中に入る俺達。そこには、白衣を着たジョナスがいた。

 

「シャルはともかく、ユウキはまだ子供だろう。入っちゃダメだ」

 

ここで俺はスピーチスキルを発動した。

 

「(スピーチ70%)ジョナスは医者の卵でしょ。管轄違いの原子炉で何をしているの?」

 

「(成功)はっはっは。監督官に言われたら、独房行きだな。口が利けないようにここに監禁しないとな?」

 

ジョナスはおふざけ半分でヘラヘラとしながら言った。まあ、ふざけていたのだろう。

 

「ジョナス、早くつれていこう」

 

「そう焦るなって、せっかくのフィアンセなんだから」

 

「え!」

 

俺は驚いて声を上げた。うっしっしと言うかのごとく、ジョナスは笑い、シャルは頬を赤らめて俯く。

 

「ジョークだ!ジョーク!ほら、準備ができたぞ」

 

まだ若い医者の卵と称されているが、とんでもない。言っていることはそこら辺にいるオヤジとそう変わらない。

 

「何か失礼なこと考えてないか?」

 

「気のせいですよ」

 

どうやら読心術にも長けているようだ。注意せねば。

 

俺とシャルはジョナスに連れられて、とある通路に出た。そこは、ガラクタで作った張りぼてがあり、見たところ、射撃練習場っぽい。そして、付近には父とジェームズおじさんも。

 

「父さん、これってまさか・・・」

 

「当たりだ。秘密の射撃場だ。この前、巡回中にジョナスとジェームズがここら辺をうろうろしていてね」

 

父は微笑み、ジェームズとジョナスは困ったような表情だ。

 

「まあ、監督官に見つかったら大変なんだがね。君のお父さんに言い寄られてね。」

 

「まあ、一人より二人だろ。BBガンだってもう一丁あることだし」

 

父は持っていたBBガンを俺に渡してきた。

 

「まだ、プレゼントをあげていなかったな。これがプレゼントだ、」

 

「父さん、ありがとう」

 

前世では父親は赤ん坊の時に他界していたから、父親の暖かみは知らない。だけど、来世ではそれを知ることが出来た。本当にありがとう父さん。

 

「ほら、あれが的だ。撃ってみるといい」

 

父に渡されたBBガンを使い、狙いを定めて引き金を引く。

 

パコン!と的に取り付けられた灰皿の音が部屋に響き渡った。

 

「命中だ。シャルもほら」

 

ジェームズおじさんに言われ、シャルも置いてあったBBガンを使って的に狙いを定めた。

 

パコン!パコン!

 

二連射し、さすがずっとここで射撃の的を撃っていただけのことはある。

 

すると、コンテナの横から巨大なG。ラッドローチが這い出てきた。

 

「お、ユウキ。害虫駆除だ。撃て!」

 

父は叫び、俺は意気揚々とV.A.T.S.を起動する。

 

V.A.T.S. (Vault-Tec Assisted Targeting Systems)

 

核戦争後のサバイバルのために作られた戦闘システム。的確に的の攻撃部位を絞り込み、選択。攻撃できる画期的なものだ。pip-boyの神経接続によって、反射神経や脳の思考速度に影響を与える物でゲーム内では、説明が成されなかった物だ。

 

ラッドローチの一番ダメージの高いところを選び、攻撃する。体が勝手に動くような感覚で引き金を引き、BB弾がラットローチの顔面に直撃した。グシャ!という物がつぶれた音と共にラッドローチは絶命した。

 

「よくやったな、若きラッドローチハンターだ!」

 

言い方帰れば、Gハンターか。殺虫剤とかないのかな?バ●サンとかあれば簡単にやっつけられるんじゃないか?

 

「よし、じゃあ写真撮るから若きハンターを中心に集って」

 

ジョナスはカメラを手に取り、俺達に向ける。俺とシャルが中央に立ち、サイドに父とジェームズが立っている感じだ。

 

「はい、笑って笑って」

 

パシャ!

 

フラッシュと共にこの誕生日の出来事が記録された。

 

 

 

 




アメリカ人の考えは分からない・・・。なんで、Gを巨大化させようとするの?意味が分からない・・・・。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。