fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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書きためをどこで区切るか迷った。

チートは次の話の冒頭に来る予定です。


第二章 Welcome to Wasteland
八話 メガトン


「メガトンヘヨウコソ。」

 

無機質な音声が周囲に響く。ロブコ社製汎用ロボット「プロテクトロン」が油もろくに注してもらってないのか、または、そういう仕様なのか知らないが、耳障りな音を出している。シャルとメガトンの前まで来るとスナイパーがこちらに狙いをつけている。しかし撃つ気配はない。確かストックホルムという名前だったか?

 

「み、水を・・・・」

 

ボロボロの衣服をきた男はシャルに水をせがんできた。

 

「ちょっとまって」

 

シャルは肩掛けバックからvaultと書かれた水のボトルを取り出した。

「おお、ありがとう」

 

確か名前があったはずだが思い出せない。大して重要なのではないのだろう。だが、俺は水乞いにさらに何かあげようとするシャルを引っ張り、メガトンの中へ入った。

 

何故かって?自分に必要な物を上げようとしたからだ。困っている人を助けるのはとても偉いことだ。しかし、このウェイストランドでは違う。明日の飯が食えるかどうか分からないのに、困っている人に清潔な水を渡すなんて言語道断だ。

 

俺はシャルを引っ張ってメガトンの街に入った。

 

「ちょっと待って。この中に確かダンディーアップルが・・」

 

「待てや、明日の飯が食えるかどうか分からないのに人に食べ物を上げるな」

 

「え?」

 

とシャルは驚いたように目を見開いた。可愛いのはさておき、俺は説教をする父親のように口を開いた。

 

「あのなあ、シャル。この世界では水や食べ物は放射能で汚染されて、綺麗な水なんて沢山飲めるものじゃ無いんだぞ」

 

「そう・・なの?」

 

「さっき、水溜まりでガイガーカウンターが作動したよな」

 

ガイガーカウンターとは放射能検知器で、シャルと俺がvaultから出たときに、いきなりシャルが足を滑らせて水溜まりに足を突っ込んだのである。

 

「うん」

 

「あれみたいに放射能で汚染されているんだ。無闇に綺麗な水や食べ物を勝手に上げるんじゃない。わかったね?」

 

「分かった」

 

とシャルは納得したようにコクりと頷いた。

 

「ったく、またvaultか」

 

そこには浅黒のアフリカ系のオッサンがこちらに歩いてくる。この確かメガトンの保安官だ。

 

「俺はルーカス・シムズ。この街の保安官だ。盗みや殺し、問題事を起こすなよ。それにしても、お二人さんはvaultか。vaultの警備はそんな重装備なアーマーを着るのか?」

 

とシムズは俺の着ている強化型セキュリティー・アーマーを指差した。下手なコンディションの低いコンバットアーマーよりも防御力が高い改良型なので、一般的な傭兵と比べれば比較的いい部類に入るのは確かだ。

 

「いいや、これは試作品みたいな物さ。それよりも格安物件はありますか?」

 

俺は前世の記憶を辿り、ある意味“格安物件”な家を求めた。

 

「あると言えばあるが・・・・お前さん、爆発物の取り扱いには慣れているか?」

 

と先程の怠けた態度とは一変して、真剣な表情で此方を見た。

 

「ええ、地雷から弾道ミサイルまで何でもござれですよ」

 

俺はvaultの中で色々な軍事書籍を漁っていた。理系が壊滅的に駄目な俺でも光学兵器なら色々できたし、爆発物の取り扱いにせよ、複雑なビルの爆破解体をするのでなければ、一応の爆破技術は習得している。

 

「そうか、頼みたいことがあるのだが・・・・」

 

シムズは街の中心部にある不発弾の事を話し始めた。

 

 

それから数分後・・・・

 

「えっとだから、この御神体をですね、触らせて貰っても?」

 

「だめ!」

 

と拒否されました。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「いいじゃねえか、ちょっとぐらい。減るもんじゃなし!」

 

俺は文句を言いつつ、カウンターに置かれた生ぬるいヌカ・コーラを煽る。その横でシャルは副食で出されたポテトチップスを頬張っている。

 

「ゴブさん、冷えたヌカ・コーラないの?」

 

「無理だなそりゃ、それよりも酒は飲まないのか?」

 

グールであるゴブと名乗るバーテンダーは汚い布でコップを拭きつつ訊く。

 

グールとは放射能によって変化した元人間の総称だ。肌は爛れ、肉は腐り、まるで戦争前のホラー映画に出てきそうな外見だが、話してみればそこら辺の人と変わらない。変わっていると言えば、殴られても喜ぶドMだと言うことだ。例えば水商売の女性からは・・・・

 

「ちょっと退きなさい!」

 

ドスッ!

 

「・・・へへぇ、すんません」

 

また店長であるモリアーティは・・・・

 

「ゴブ、何度言えば分かるんだ!」

 

バキッ!ドカ!

 

「・・・ヒヒ、すんません」

 

って感じである。D.C.都市部の歴史博物館にあるアンダーワールドと呼ばれる集落から来たらしく、モリアーティからは安い賃金で働かされている。可哀相に見えるが、彼はまだ良い方の部類である。町にはメガトンの市民権を持たない人々が多く居て、今日の飯を食べるために、身を粉にして働く。だが、それも報われずに死ぬのがこの世の中である。本来なら俺とシャルはこの酒場に入ることは出来ない。モリアーティの店には、金のある者しか入れさせない。無論、vaultから出てきた俺達はこの世界の通貨「キャップ」を持っていなかったものの、銃弾を少し渡して商談が成立した。

 

俺の前世の記憶にあるゲームに核戦争から20年後のモスクワの地下鉄を舞台にした物があった。その世界では銃弾が通貨の代わりとなっていたので、もしかしたらと銃弾を見せた。案の定、キャップの代わりに軍用の5.56mmライフル弾を30発程度渡して今日の寝床とコーラを手に入れることができた。

 

 

「まったく、あのカルト集団め。核爆弾を解体しようとしたら、何と“我らの神に触れることは許さない”とかなんとか言いやがって」

 

俺は目の前のゴブに愚痴を溢す。

 

「まあ、あれは仕方がない。チルドレン・アトム教会だってあれに触らなきゃ、人畜無害。それどころか、町の人手不足を補っているんだから良いところだと思うんだけどね」

 

ゴブは綺麗にしたコップをカウンター下の棚に戻した。

 

チルドレン・アトム教会とは核爆弾を崇拝するちょっとした新興宗教の類いだ。なんでも、核戦争で地球は浄化され、原子の力で云々と俺のような知識人(?)の常識はずれな説教を垂れる集団。それでも、教義などはしっかりしていて、彼らの信者で盗みや町の中の無意味な殺しはしないと公言している。

 

まあ、その崇拝対象である核爆弾を弄ろうとする余所者は追い払うのが当然。いきなり外国人がお堂で仏像をペタペタ触っていれば、誰だって追い払いたくなるだろう?

 

「姿の見えなくなる物があればいいんだけど・・・」

 

シャルはそう言いつつ、イグアナの角切りを食べる。以外とジューシーなイグアナ。あとで食べてみよう。ん?姿が見えない・・・

・。そうか!

 

「シャル、ちょっとここで待っていてくれないか?ゴブ、シャルに変な虫が付かないように見張っておいてくれない?」

 

「ああ、いいけど」

 

「どうしたの?」

 

ジャンプスーツを着ているシャルはこっちを見て言った。

 

「いや、良いこと思いついたんだよ」

 

そう言って俺は店から出ていった。

 

扉を開くと、ざらついた空気と焦燥感が込み上げるような風が俺を迎えた。殆んどジャンクと言ってもいいだろうこの「メガトン」。世紀末の代名詞だな。

 

俺が着ている改良型vaultアーマーは前世の日本のSATが使っていそうな重装備の物だ。それがメガトンの道を歩いていたら、目を引くのは当然だ。俺はその目線を無視しつつ、メガトンの雑貨店へと足を運んだ。

 

「いらっしゃい!すごい装備ね。何処から来たの?」

 

迎えてくれたのは、店主のモイラ。ロブコ社のジャンプスーツを着ていて、赤毛の女性である。設定では20歳前半とされていて、ゲーム中ではマッドな部分が発揮された。重傷を負った主人公にニコチャンマークを縫い付け、手術を「パッチワーク」と言う辺り、危険人物と言えるだろう。

 

「そこら辺をぶらりとね、単なる傭兵だよ」

 

俺はそこはvaultと言わない。だって、ここで言えばガイドブックを作らされる羽目になるからだ。

 

ガイドブックとは「ウェイストランド・サバイバルガイド」。所謂、荒廃した世界で生き抜くための手引き書である。これを書くためにレイダーと呼ばれる無法者の残虐集団の集まるスーパーに突撃したり、地雷原と呼ばれる場所に地雷を取りに行ったり、わざわざ放射能が出る所で被爆するなど、命が幾つ有っても足りないのだ。だがこの本は3年経つと、あろうことかアメリカ中西部のモハビ砂漠まで広がっているのだから、モイラの社会貢献の志が天よりも高かったことが証明された。

 

だが、俺はそんなことで命を掛けたくはないのだ。

 

壁に寄りかかる傭兵らしき人物は眉をひそめて俺を見るが、俺は目で挨拶すると、直ぐに目線を逸らす。いや、これは“逃げろ”と言う合図かも・・・・。

 

「そうなの!ちょうどいいわ!貴方に是非やって欲しいものがあるの!ウェイ・・・」

 

「ちょっと欲しいものあるんだけど!!」

 

少し大きめに声を出して遮った。モイラは驚いたのか、目を見開いた。

 

「あのさ、今すぐ欲しいものがあるんだが、この店なら何でも置いているかい?」

 

「そうね、物にもよるわ」

 

一応、こちらを買い物客として見てくれたらしい。直ぐにリストの書かれたクリップボードを取り出した。

 

「ステルスボーイはある?」

 

 

ステルスボーイとは中国軍ステルスアーマーの光学迷彩の対抗策として作られた変調フィールドを発生させる光学迷彩らしい。らしいと言うのは、ゲームでしか使ったことがなく、生まれてこの方使ったことがない。ロブコ社製の“モデル3001個人向けステルス装置”と正式名称としてあるが、では集団用や兵器にもあるのだろうか。

因みになんか連続して使用すると副作用があるらしく、偏執病や妄想癖、果ては統合失調症になるらしい。だが、ゲーム中ではステルスボーイを余り使わない。このゲームのDLCである意味チートでバランスブレイカーな「中国軍ステルスアーマー」がゲットでき、いつでもステルス迷彩が使えるため、最終的にロッカーの中に埃を被ることとなる可哀想なアイテムなのだ。

 

モイラはカウンターの棚から金属製のボックスを取り出して、カウンターに置く。そしてボックスから布でぐるぐる巻きにしたステルスボーイが姿を表した。

 

「いくらで・・・」

 

「ちょっとまって」

 

値段交渉に入ろうとするが、何故だか話を区切った。

 

「売ってくれないの?」

 

「売ることには売るわ。でも、交換条件といきましょう?」

 

ああ、ヤバい選択肢ミスったかな?

 

困ったようにする俺を見て、傭兵はある種の哀れみと同情を送ったのであった。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

さて、メガトン公認(ある種の仲間内の決めごと)酒場に居る俺は先程買ったステルスボーイをテーブルに置いた。向かいにはvault101のジャンプスーツを着たシャル。ちなみにvaultに居たときに着ていた白衣はpip-boy3000に入っている。

 

pip-boy3000とは、vault-tecと提携しているロブコ社が開発したリストバンド型携帯端末の事である。腕の神経に接続し、体調管理等を行い、GPS測定によるマッピング、放射能測定、ラジオ、レコーディング機能すら搭載している。そして目玉機能としては、猫型ロボットが持つような四次元ポケット「亜空間収納スペース」があることだ。

それは、戦前注目されていたもので、四次元ポケットと考えても良いだろう。だが、一応端末の処理機能が落ちないように制限がなされていて、装着者にもよるが、ある一定の重量を越えると、身体機能や端末の処理能力が著しく低下する。とても便利なものなのだが、とてつもなくコストが掛かり、少数しか生産できないものなのだ。そのため、vault-tecは核シェルターに入れる人々を富裕層や上位の中流階級の人々にしか解放しなかった。だが、米中部には空いている核シェルターはある。目標としては生き残る価値のあるものにしか与えない選民思想があるため、貧困層や底辺部に位置する中流階級の多いvaultシェルターにはpip-boyを支給されていない。あったとしても、一台や二台そこらなのだろう。

 

俺はpip-boyからステルスボーイを取り出した後に、ボブに軽食を頼む。街の中心に位置する食堂とは種類が少ないが、酒のつまみになるものは存在する。

 

「でも、なんで2つステルスボーイを買ったの?」

 

シャルは首を傾げる。それには訳があるのだ、訳が。

 

「ああ、それはな一個は爆弾処理。もう一個はウルトラスーパーマーケットに忍び込むためのアイテムさ」

 

「でも、ここに家を作ったとしてもお父さんに会うんだよ?」

シャルはイグアナの角切りをフォークでつつきながら訊いてきた。

 

「[speech95%]それでも拠点は必要だ。ここはちょうどウェイストランドの中央に位置するし、あった方が助かると思う」

 

渋々納得するシャル。イグアナの角切りの皿の横に無線起爆装置が置いてある。それは良く見てみると、アメリカ軍が使用していた核弾頭の起爆装置でった。

 

「なあ・・・・シャル。これは?」

 

「・・・これ?これはおじさんから貰った。」

 

俺はシャルの目線を辿ってその人物を見る。その人物は白のビジネススーツを着て、戦前の帽子を被り、サングラスをした男だった。年は30代だろうか。

 

俺はその人物に見覚えがあった。

 

その人物はアリステア・テンペニーと言うイギリス人に雇われた男で核爆発を誰よりも好む男だ。その名をMr.バーグと言う。彼はメガトンの中心にある核爆弾を起爆させようとする極悪人である。日本語版ではすることの出来ないクエストで彼から起爆装置を受け取って、ここから数十キロ先のテンペニー・タワーで爆発を見物するという物である。殆んどのゲーマーはそのルートを余り選ばないだろう。そう言う俺も一回しかしていない。

 

俺とMr.バーグは目が合ったものの、バーグは会釈をすると酒場から去っていってしまった。

 

「なあ、シャル。何頼まれた?」

 

「これを爆弾に取り付けて欲しい。彼ならすぐ分かるって言ってた」

 

アイツ、そんなことをシャルに頼んだのか。

 

「それと、もしやれたらテンペニー・タワーに部屋を用意してあるって」

 

おいおい、そんなことを言うなよ。極悪人になっちゃいそうじゃないか。

 

俺はそんな邪なことを思いつつ、さらに出されたポテトチップスをかじりつく。

 

殆んどのプレイヤーはメガトンを核爆発させるようなことはしない。PCのMODの多くはメガトンに配置されたりもするので、爆弾を解除する方がデメリットがない。勿論、爆弾を解除したら、アリステア・テンペニーに目を付けられてしまうのも確かだ。

 

俺は軽食のモールラットステーキを食べると席を立った。ん?何か腹の中でピクピク動くような・・・・。気のせいか。

 

「行くの?」

 

リスシチューを食べていたシャルは食べる手を止めて聞いてきた。

 

「ああ、ちょっと用事を思い出してな。ゴブ、変な虫つかないように頼む」

 

「おう」

 

ゴブは返事をする。グールのおっさんだが話せばなかなか良い奴。普通に接すれば割り引きしてくれるからちょっとお人好しなのかもしれない。

 

俺は酒場から出ると、メガトンの中央部に位置する核爆弾に急いだ。何人かが夜の通りを歩いているが、影に隠れながら進む。あんまり目立ちたくはないし、ただでさえ目立つvaultアーマーなのだ。だが真っ黒なボディーアーマーだから影を歩けば人目につかない。

 

モイラの雑貨店の影に隠れて、町の中央を見る。そこにはアメリカ製の超高高度爆撃機用の戦術核爆弾が鎮座していた。それを見る限り、かなり老朽化しており爆発するようには見えないが、何せこの世界。200年前に製造されたロボットがまだ動いているのだから油断は出来ない。

 

「さてとやるか」

 

pip-boyからステルスボーイとプラス・マイナスドライバー、ラジオペンチなどをマガジンポーチや小物入れに突っ込んだ。そして、抗放射線薬のRADーXを飲んだ。一体、なぜ被爆する放射線量が低くなるのか分からないが、そういう性能をもつ物なんだろう。

 

そして、ステルスボーイをONにした。

 

ヴォン!

 

音と共に身体が透明となり、目を凝らさなければ見えなくなった。これで中国軍将校の剣なんて持てば、サイボーグ忍者・・・・いやいや、はやく爆弾処理しないと!

 

俺は腰を屈めながら音を立てないように、颯爽と走る。ちょっと腰が高めだが音は出ず、人に見つからない。中央の広場には誰もいなかった。

 

核爆弾に近づき、放射能物質が溶け出したような水溜まりに足を突っ込む。

 

カリ・・・・カリカリカリ・・・・・pip-boyから放射能が感知され、カリカリと音を立てる。俺は慌てず、爆弾の操作パネルを見る。そこには、被せてあったであろう蓋は何処かへ消えて、コードと数字が表示されるであろうデジタル画面がくっ付けてある。見たところ電源は失われ、起爆は不可能。爆発させるための信管も200年にも及ぶ放置プレイですっかり動かない。

 

このまま核爆弾から爆弾を取り出して持っていたいと思う。だが、何処に置くスペースがあるのか。誰も盗まないからいつでもいいだろうと、俺は念のため湿気った起爆剤に繋がっているコードをラジオペンチで切ると、爆発しないように制御チップであろう物も取り除きpip-boyに突っ込んだ。すると・・・・

 

〔pip-boyカスタマイズアイテムをゲットしました。〕

 

と画面の中央に表示された。

 

どういうことだろうか。

 

今は見る時間もないのでさっさと逃げる。すると、診療所の坂道を登っている最中にヴォン!と音を出して光学迷彩が切れてしまった。すぐに腰を伸ばして普通に歩いた。誰かに見られたのかもしれないと周囲を見渡すが誰もいない。唯一見ているものとすれば、診療所近くで飼われているバラモンであった。

 

何とかなったと俺は、溜め息を吐いて、安堵の表情を浮かべて酒場へと帰ったのだ。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

「よし、これならいい。あれは爆発しないんだな?」

 

保安官のカウボーイハットを被ったルーカス・シムズはメガトンの目と鼻の先である入り口に立っていた。脇には黒と赤を基調とするパワーアーマーを着た男達がいた。彼らは「Brotherfood of steel outcast」と呼ばれた武装集団である。

 

彼らはDCにある国防総省を根城とするエルダーリオンズ傘下の部隊から離脱した者達だ。

 

元々、「Brotherhood of steel」は西海岸のとある米軍基地で離反した兵士達の武装集団である。彼らは核戦争後に、放棄された政府要人核シェルターに移り、勢力を拡大。彼等の目的は、戦前のテクノロジーを保全し管理する。そして、それらを亡くさないためにあらゆる武力を持って食い止める武装結社となった。西海岸では一代勢力となったものの、東海岸には未進出だった。核戦争後もアメリカの首都であることに変わりなく、失われたテクノロジーを保全、管理するために正規軍の将軍にあたるエルダーリオンズは傘下の部隊を引き連れて東海岸に移動。旧国防総省を拠点とし、テクノロジーの回収に当たり始めた。

 

しかし、西海岸よりも東海岸の方は荒廃が酷かった。たった少しの放射能汚染されていない水でさえ、奪い合いが起き、無法者が数多く蔓延っていた。それに比べて西海岸ではvaultのシェルターを中心とした人々が開拓を始め、小国が出来つつあった。東海岸を見たエルダーリオンズはテクノロジーの保全を優先せず、現地人を救済するべきだと方針を転換。多くはそれに賛同した。だが、彼等の本来の目的はテクノロジー保全し人類を復興させることである。それに賛同しない者も多くいた。そして袖を別ち、本来の目的を達しようとするBOSの隊員達は「Brotherfood of steel outcast」となり、旧米軍基地である「インディペンデンス砦」に司令部を設けた。

 

 

 

目の前に居るのは、そう言う目的を持つ武装集団。時折、周囲をパトロールするが、ここは高級住宅地跡。彼らが欲しがるような軍事目的のテクノロジーは見当たらない。おおよそ、シムズが通りがかりの彼らを呼んだのだろう。

 

「確かにこれは米軍で使用されていた核弾頭の制御チップだ。高性能だが、殆どは大戦後に失われたものだ」

 

制御チップを指で挟み、パワーアーマーを着込んだ分隊長の男はそう言う。もしかしたら、失われたテクノロジーとして持ち去る危険性もあった。

 

「そもそも、保安官。俺に解体を頼まずに彼らに解体を頼めばよくね?」

 

「じゃあ、パワーアーマーと重火器身に付けて行ってきたらどうだ?爆弾に近付いた瞬間、信者に袋叩きだろうな」

 

「・・・・納得・・・で、分隊長殿はそれをお持ち帰りで?」

 

俺は目の前に居るパワーアーマーを着た分隊長に訊く。表情は分からないが、多分困った顔をしているのだろう。

 

「放置されて随分経っているし、正常に動かないだろう。こいつはお前にやる。どうせ、使えないだろうからな」

 

と、チップを放り投げる分隊長。まあ、経年劣化で使えないのは当たり前か。その後、アウトキャストの分隊が去り、俺はルーカス保安官の家の前に立った。

 

「こいつが家の所有権証書と市民権証書。メガトン市民だから週に一回精製水が支給される。そう言えば、前に住んでいた男の所有物がまだ残っている筈だ。それも使っても良いぞ」

 

「え、良いんですか?」

 

そんな設定だったっけ?俺は首を傾げた。

 

「2年前に行方不明になった。一応中にあった金目の物は市民に分け与えたが、開かない金庫やコンピューターがあった。色々、あったから使えるなら使っても良いぞ」

 

オリジナルの家には、パソコンや金庫は存在しない。もしかしたら、PCのMODがあるに違いなかった。そもそも、vaultのセキュリティーになってから色々とオリジナルにはない装備品が数多くあった。もしかしたら、俺が生前集めていた兵器と会えるかもしれない。

 

証書を貰い、その後シャルと荷物をまとめて家の前にたどり着いた。

 

「じゃあ、開けるぞ」

 

「うん」

 

俺はシムズから貰った鍵で扉を開けた。

 

 

 

 




記憶にあるゲームと言うのが、XBOXで出ている「METRO 2033」と呼ばれるゲームです。このゲームも核戦争後の世界を舞台にしたゲームなのでお勧めです。

pip-boy3000の「ア空間収納スペース」はオリジナル設定。荷物はどこに収納しているのかと思い至り、じゃあ青い猫型ロボットみたいなのでいいや。と思った次第。いや、だって一応23世紀だし。

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