病魔に侵された聖杯戦争、開演です。
お楽しみください!
そこは僅かな照明しか灯っていない、薄暗い地下室。
床には複雑な文様の図が、鉄錆の臭いがする赤い液体で描かれている真っ最中。
その図を描いているのは、一人の男だった。
男のくすんだ金色の髪は整えられておらず、痛み軋んでボロボロ。服装も、同じ服を何日も着続けているかのような有様。
だが、その眼だけはギラついていた。
夥しいほどの怨嗟で、どす黒くギラついていた。
乱雑なように見えて、丁寧に作業を進めていく男が最後に図の確認を行うと、一段高いところに細長い木切れを置く。
それで、全ての準備は完了した。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
図に―――、サーヴァントの召喚陣に向け手を翳し、詠唱をする。
魔術回路が、励起する。
「
言葉を紡ぐにつれ、詠唱が進行していくにつれ、徐々に召喚陣から魔力が溢れ暴風となり、室内に吹き荒れる。
そして、一瞬だけその憎悪に染まった目を閉じる。
「――
目を見開くと同時に放たれた言葉を切欠にか、魔力の奔流は更に増して暴風は召喚者である彼の髪を、衣服を、荒々しくはためかせる。
「告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!!誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者ォォッ!!」
本来ならば、この召喚において次にくる詠唱は締め括りとなる呪文になる。
だが、彼の場合は違った。
彼の目当てとするサーヴァントを、彼の目当てとするクラスで召喚するために、一節の詠唱が加えられた。
「されどッ!汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし!!汝、狂乱の檻に囚われし者!!我はその鎖を手繰る者ォォォッッ!!!」
荒れ狂う魔力の中、毛細血管が切れたのか血涙を流しながら吠える様に詠唱を行う。
付け加えられた一節により、彼の
そして最後の詠唱が紡がれる。
「汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よォォォォッッ!!!……ッッ!!?」
最後の詠唱がなされた瞬間、黒い魔力が召喚陣から噴出し彼を吹き飛ばす。
魔力の奔流が収まり、視界が開けてくる中そこに、召喚陣の中央にいる存在は。
「■■■■■■■■■■ォォォォーーーーーッッ!!!!!」
召喚者―――『ミケルガ・ジン・ゲルトハルト』と同様に、いや、それ以上に憎しみと狂気に染まった瞳を鈍く光らせ、怨嗟の雄叫びをあげた。
しかし、その咆哮は彼の装束からは、風貌からは似合わない。
彼の衣服はボロボロだが、上等な布地で作られた漆黒の束帯。
顔には皺が刻まれ、髭に細面といった姿。
それを見たミケルガは――――
「……ク…クヒハ……。クハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァッッ!!!!!やったぞ!!これで俺の!俺の望みは叶う!!!ハッハハハッッ!!!見たかこの野郎!!ハーァッハッハッハッッ!!!」
―――笑っていた。
これで全てが、自分の望みのままに進んでいることを確信して。
後はもう、最後の仕上げを行うだけ。
三画の文様が刻まれた右腕を掲げ、告げる。
文様の名は、『令呪』。
『サーヴァント』への、三回の命令権の具現。
「……全ての『令呪』を持って命ずる。『バーサーカー』よ…………」
『令呪』が輝き、そして―――
「その『宝具』で、世界を
「ッッ!!!■■■■ァ■■ア■■■■■■■ァァァァァァァッッッ!!!」
瞬間、
その魔力の奔流に飲み込まれたミケルガは、全身を一瞬で
「……ああ、これで…………」
俺を認めなかった世界を亡ぼすことができる。
激痛と薄れゆく意識の中、彼が最後に放った言葉は、黒い怨嗟の中に飲み込まれていった。
ミケルガが死亡した同時刻、とある教会でカソックに身を包んだ神父―――『ヴェールヴァ・プルクラ』―――は『霊器盤』に最後のサーヴァントが出現した事を確認すると、口の端を歪めて、誰にとではなく宣言した。
「さあ、『聖杯戦争』を始めよう」
この晩、『
「我らが
「……今度こそ、失われた『第三魔法』。『
「召喚に応じ参上した!貴様が俺のマスターか!!」
次回、『Fate/Sickness』。
「December 15 13:19:59」
お楽しみに。