Fate/Sickness   作:逸環

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これより始まる、聖杯を求める彼らの物語。
病魔に侵された聖杯戦争、開演です。

お楽しみください!


December 19 02:00:39 【怨嗟】

そこは僅かな照明しか灯っていない、薄暗い地下室。

床には複雑な文様の図が、鉄錆の臭いがする赤い液体で描かれている真っ最中。

その図を描いているのは、一人の男だった。

男のくすんだ金色の髪は整えられておらず、痛み軋んでボロボロ。服装も、同じ服を何日も着続けているかのような有様。

だが、その眼だけはギラついていた。

夥しいほどの怨嗟で、どす黒くギラついていた。

 

乱雑なように見えて、丁寧に作業を進めていく男が最後に図の確認を行うと、一段高いところに細長い木切れを置く。

それで、全ての準備は完了した。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

図に―――、サーヴァントの召喚陣に向け手を翳し、詠唱をする。

魔術回路が、励起する。

 

閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)閉じよ(満たせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――――」

 

言葉を紡ぐにつれ、詠唱が進行していくにつれ、徐々に召喚陣から魔力が溢れ暴風となり、室内に吹き荒れる。

そして、一瞬だけその憎悪に染まった目を閉じる。

 

「――Anfang(セット)!」

 

目を見開くと同時に放たれた言葉を切欠にか、魔力の奔流は更に増して暴風は召喚者である彼の髪を、衣服を、荒々しくはためかせる。

 

「告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!!誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者ォォッ!!」

 

本来ならば、この召喚において次にくる詠唱は締め括りとなる呪文になる。

だが、彼の場合は違った。

彼の目当てとするサーヴァントを、彼の目当てとするクラスで召喚するために、一節の詠唱が加えられた。

 

「されどッ!汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし!!汝、狂乱の檻に囚われし者!!我はその鎖を手繰る者ォォォッッ!!!」

 

荒れ狂う魔力の中、毛細血管が切れたのか血涙を流しながら吠える様に詠唱を行う。

付け加えられた一節により、彼の()び出すクラスは定まった。

そして最後の詠唱が紡がれる。

 

「汝三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よォォォォッッ!!!……ッッ!!?」

 

最後の詠唱がなされた瞬間、黒い魔力が召喚陣から噴出し彼を吹き飛ばす。

魔力の奔流が収まり、視界が開けてくる中そこに、召喚陣の中央にいる存在は。

 

「■■■■■■■■■■ォォォォーーーーーッッ!!!!!」

 

召喚者―――『ミケルガ・ジン・ゲルトハルト』と同様に、いや、それ以上に憎しみと狂気に染まった瞳を鈍く光らせ、怨嗟の雄叫びをあげた。

しかし、その咆哮は彼の装束からは、風貌からは似合わない。

彼の衣服はボロボロだが、上等な布地で作られた漆黒の束帯。

顔には皺が刻まれ、髭に細面といった姿。

それを見たミケルガは――――

 

「……ク…クヒハ……。クハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァッッ!!!!!やったぞ!!これで俺の!俺の望みは叶う!!!ハッハハハッッ!!!見たかこの野郎!!ハーァッハッハッハッッ!!!」

 

―――笑っていた。

これで全てが、自分の望みのままに進んでいることを確信して。

後はもう、最後の仕上げを行うだけ。

三画の文様が刻まれた右腕を掲げ、告げる。

文様の名は、『令呪』。

『サーヴァント』への、三回の命令権の具現。

 

「……全ての『令呪』を持って命ずる。『バーサーカー』よ…………」

 

『令呪』が輝き、そして―――

 

「その『宝具』で、世界を滅ぼせ(・・・)ェェェェッッ!!!」

 

「ッッ!!!■■■■ァ■■ア■■■■■■■ァァァァァァァッッッ!!!」

 

瞬間、莫大な黒い魔力(絶大な怨嗟)が解き放たれ、一気に拡散する。

その魔力の奔流に飲み込まれたミケルガは、全身を一瞬で()に蝕まれながらも、笑みを浮かべていた。

 

「……ああ、これで…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を認めなかった世界を亡ぼすことができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

激痛と薄れゆく意識の中、彼が最後に放った言葉は、黒い怨嗟の中に飲み込まれていった。

 

 

 

ミケルガが死亡した同時刻、とある教会でカソックに身を包んだ神父―――『ヴェールヴァ・プルクラ』―――は『霊器盤』に最後のサーヴァントが出現した事を確認すると、口の端を歪めて、誰にとではなく宣言した。

 

 

 

 

「さあ、『聖杯戦争』を始めよう」

 

 

 

 

この晩、『病魔(Sickness)』に侵された聖杯戦争が、開幕した。

 

 

 

 

 




「我らが創造主(当主様)も、如何にしてこの様な代物を手に入れて来るのか……」

「……今度こそ、失われた『第三魔法』。『天の杯(ヘブンズ・フィール)』の成就を果たすのだ!!」

「召喚に応じ参上した!貴様が俺のマスターか!!」


次回、『Fate/Sickness』。
「December 15 13:19:59」


お楽しみに。
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