養って下さい何でもしますから!!   作:いつのせキノン

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ちくわ2本目

「しかし困った」

 

 早くも放課後。だるかった授業を寝ながら聞き流してさっさと寮に入った。あたしの部屋より狭いな……。

 

「どうされましたか、妹様」

 

 メイドさんが優雅に紅茶を淹れながら聞いてくる。

 

「メイドさーん、あたしミルクティー砂糖たっぷり。いやぁ、それでさ。優秀な成績云々ってどうすればいいんだろうと思って」

「妹様の場合でしたら、イベントに参加するだけで充分なモノになると思われますよ。自覚はないでしょうが、妹様はやることなすこと全てが常識外れですから目立ちますし、その行動は全て成功に繋がります。……ミルクティーです、どうぞ」

 

 へぇぇ、便利だなぁ。

 

「しかし、問題もあります」

「ずずっ……ふぅ。問題?」

「1組の生徒ですが、ここだけで1年生内の専用機持ちが妹様を除き4人おります。その内の1人は男性操縦者の織斑一夏様。また篠ノ之束様の妹にあたる篠ノ之箒様もいらっしゃる上に担任には世界最強(ブリュンヒルデ)でいらっしゃいます織斑千冬様もおられます。並ならぬ濃いメンバーから抜きん出なければ効果的な宣伝は行えないでしょう」

 

 なぬ、いきなり頓挫する可能性が微粒子レベルでも存在するとでも……!?

 

「対策を練るか。メイドさん何か案ない?」

「妹様はないんですね、わかります。私から具申できるものですと、彼らとはパイプを作るべきではないでしょうか。特に男性操縦者である織斑一夏様と接触できれば効果覿面と言えるでしょう。後はお隣にいましたシャルロット・デュノア様でしょうか。デュノア社はイグニッション・プランに乗れずに会社経営は火の車です。下手をすれば今すぐにでも倒産しかねない。高宮重工業より危ない会社です。しかし一石を投じればデュノア社とパイプを作って情報を引き出すことも可能になるかと」

「おk。じゃああたしが織斑君とブロンド君を取り込めばいい訳だ」

「何か話食い違ってません?」

「問題ないよ。織斑君があたしと結婚すれば取り込める。そうすれば世界一位の人もみりんのおまけだ。しかも!! 一目で見抜いたけど織斑君は家事の才能ある。あれならあたしは働く必要ナッシングになるんだよ!!」

「流石は妹様です。飛躍した話がお上手ですね」

「よせやい照れる」

 

 じゃあ早速、

 

「寝る」

 

 行動起こすと思った? バカジャネーノ。そんな面倒なことやってられっか。織斑君が部屋に来てくれれば楽なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

「高宮さーん……あれ?」

 

 朝。SHRの時間の出欠確認なのだが、高宮司信の姿は教室には無かった。

 

「申し訳ありません、遅刻してしまいました」

 

 と、思ったらヴェンデルガルトさんが教室に入って来た。その背には未だにすやすやと寝息を立てている司信の姿が。

 

「妹様は朝は極端に低血圧で中々起きれない人でして……無理矢理連れて参りました」

「は、はぁ……」

 

 浅く会釈して席に座らせる。一応きちんと制服を着ているのはヴェンデルガルトさんが着せたということだろう。

 

(すごいこんな幸せそうに寝てる人初めて見た……)

 

 シャルロットは隣の司信を見て驚嘆。何と清々しい寝顔だろうか。寝ることに悟りを開いてるレベルに違いない。既に机が涎でべったりだ。

 

「……ちくわぶ……むにゃ…………すぅ……すぅ……」

 

(か、可愛い……!!)

 

 きゅうん、と胸を締め付けられるような幸福感。世間知らずで不器用で自分の後ろについてくるラウラと似て非なるその存在。ラウラが人によく懐く猫だとすれば、司信は無意識にマイペースでだらしない姿を晒す無防備な可愛さを出す猫だ。これはどちらも捨てがたい。

 

「はわぁ…………」

「おい。おい、シャルロット、おい」

「ハッ!! な、何、ラウラ?」

「どこかにトリップしてたからな。あと、鼻血くらい拭いたらどうだ」

「わっぷっ、ほ、ホントだ……!!」

 

 わたわたとティッシュを取り出すシャルロットに、司信とは反対側に座るラウラは嘆息した。何と言うか、情けない他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。

 

「ふわぁ……よく寝たお」

「おはようございます妹様」

 

 気付いたらお昼か。お腹空いた。

 

「ずっと寝てたんだ……、」

「やぁ、ブロンド君。その鼻のティッシュはどうしたんだい?」

「いや、ちょっと鼻血がね……」

「ふぅん、まぁ気を付けなよ。乙女が鼻血出してるのなんてマニア以外には受けないからね」

「中々変わった奴だな」

 

 ブロンド君の向こう側に座ってた銀髪眼帯の子がこっち見てた。身長同じくらいかな。ブロンド君に比べると結構ちっさい。

 

「あたしはこれが普通。世の中があたしについて来てないのさー。ってか誰?」

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍所属、専用機持ちだ」

「ふうん、なるへそ。そうか、そう言えば専用機か。あったなそんなの」

 

 ごそごそと鞄を漁る。

 

「あ、あったあった」

「? 何それ?」

「箱……小物入れか?」

「ノン。専用機」

「専用機!?」

「……お前がか?」

「お、君たち疑ってるな? これでもスゴイんだぞ」

 

 あたしじゃなくて会社がだけど。寄生サイコー。

 

「まぁそれはさておき、御開帳~」

 

 およ、これは……、

 

「これ、指輪入れだよね?」

「この前のドラマでチラっと見た事あるぞ」

「じゃあ待機状態は指輪なのかー」

 

 まぁピアスとかじゃないならいいかな。指にはめるだけなら楽だし。

 

「何か普通のやつだなぁ。まぁ無駄な装飾ないだけマシかね。ブロンド君、これどの指にはめればいいと思う?」

「え? うーん……左手薬指以外ならどこでも大丈夫なんじゃない?」

「そう言われるとはめてみたくなるのが人の性と言うもの」

「だ、ダメだよ!! そこは大事な時の為に開けておかないと……!!」

「む、そうか。あたしを養ってくれる旦那のためか、じゃあ我慢しよう」

「欲望ダダ漏れだなコイツ」

 

 人間欲望のままに生きるのが楽なんじゃ。

 

「高宮、まだいるか」

「あ、世界一位の人」

 

 教室に入って来た。何だろう、すごく不機嫌に見える。心当たりいっぱいあるなぁ。

 

「貴様宛に高宮重工業からコンテナが6つ送られてきた。本人の確認がいるから授業開始前にアリーナに早めに向かえ。丁度午後は実習だ、着替えておけよ」

「あいあい~」

「はいは1回だ」

「はーい」

「よろしい。デュノア、それとボーデヴィッヒ。コイツに関しては任せるぞ。ヴェンデルガルトさんも、なるべく厳しくお願いします」

「承りました。善処致します」

 

 退室。何だろう荷物って。わざわざコンテナってことはISの武装か何かかな。

 と思ってたら携帯が鳴った。相手はお父さん。

 

「おいっす」

『コンテナは学校に届いたかな?』

「今届いたみたい~。あれなぁに?」

『ISの兵装さ。コンテナに1つずつ、計6つある。司信に渡したISには武装が何も積んでなかったからね』

「えっ、マジで」

 

 確認してみるとホントに何も積んでなかった。あと、既に容量が圧迫されて積めるスペースも無かった。

 

「お父さん、何このISのカタチした物」

『実はその専用機、送ったコンテナの武装を使う為だけに造られた奴でね。上級者向けというかもう頭おかしいんじゃないのって人しか使わない奴なんだ。安かったから買ってみて調整した』

「娘に預けて何やらせる気なのお父さん……」

『宣伝だ。詳細はNo.1のコンテナ内にリストデータを保存した媒体を一緒に入れておいたからそれを読んでくれ。健闘を祈るよ』

「あ、ちょっ……切りやがったよ……」

「何か大変そうだね」

「大変も何もないよー。ISとか乗ったの結構前だから大してやり方覚えてないし、しかもやること増えたし……メンドクセー」

 

 机に突っ伏す。楽だこの体勢。あ、でも机硬い。クッション欲しい……。

 

「妹様、お昼は学食と購買どちらに致しますか?」

「動くの面倒」

「ではこちらのお弁当をどうぞ」

「うぇーい」

 

 おいしそー。

 

「どうしようラウラ、僕には高宮さんがどうしようもない底辺人に見えてきたよ……」

「安心しろ、皆そうだから」

「お二方もいかがでしょう。思ったより量を多く作ってしまいましたのでよければ」

「え、いいんですか?」

「これも何かの縁ですから、遠慮なくどうぞ」

「ではお言葉に甘えよう」

「すいません、いただきます」

「おう、食え食えー」

「お前本当に偉そうだな」

「だって偉いですしー、社長令嬢ですしー」

「高宮さん、口のまわり付いてる……」

「妹様、こちらを向いて下さい」

「んー」

「はい、綺麗になりました」

「あんがとー」

「で、早速口の周りを汚すのか……」

「うるひゃいなぁ、さっさと食べないと貰っちゃうぞー」

「口に入れたまま喋るな」

「……本当に社長令嬢?」

「残念ながら、これでも立派な社長令嬢なんです。引き篭もりニートを自称するんですがね」

「シャルロットとは大違いだな」

「なぬっ、ブロンド君も社長娘?」

「ま、まぁ一応はね……」

「デュノア……ああ、デュノア社の!! あこも経営大変だよねぇ。親近感沸くわ」

「妹様、心にもないこと言わないで下さいね」

「いやでも向こうもウチと一緒で経営危ないっしょ?」

「苦労しているのは妹様の御父上で妹様ではありませんからね」

「にしてもブロンド君余裕だね。あたしは宣伝するためにわざわざ来たけど」

「いやぁ、色々問題があってね……」

「もしかしてプライベートだった? じゃあ話題変えよう。ちょっちそこの銀髪眼帯」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「長い、言いづらい。で、眼帯ちゃん」

「あのなぁ……っ」

「軍人の貴方に聞きたいんだけど、1年生内での専用機持ちのランク付はわかる?」

「ランク付? ヒエラルキーの話か?」

「そゆこと」

「ふむ……そうだな。演習での勝率なら私とシャルロットが一番上として、次点で2組の中華娘、次が我々と同じ1組のイギリス貴族、最下位は嫁だ」

「お、おう……嫁?」

「あ、嫁って言うのは一夏のことを言っててね。まぁ色々あったんだよ」

「まぁその馴れ初めは暇な時に聞くとしよう。うっし、ごっそーさん。メイドさん、アリーナってどこ?」

「身支度を済ませましたらご案内します」

「もう食べたんだ……結構早い」

「食事に時間かけてたら遊ぶ時間なくなっちゃうじゃん? だからこそ早食いはあたしの重要なスキルの1つなのよ!!」

「もう少し綺麗に食べればまだマシだと言うのに……」

「じゃ、あたしはこれで。メイドさん」

「畏まりました、ご案内します。デュノア様、ボーデヴィッヒ様、お弁当の方は食べ終わりましたら机の上に置いておいていただければこちらで片付けますので。ではまた、後程」

「……嵐みたいな人達だねぇ」

「それにしてもメイドは甘やかし過ぎじゃないか。あれではダメ人間まっしぐらだぞ」

「まぁ、否定はできないかなぁ……相当の箱入り娘なのかも」

「頭は無駄にいいらしいしな」

「あ、確かに。昨日も初日から寝てたけど難しい問題全部パッと答えてたし」

「色々と意味の分からない奴だったな……」

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