もしもし、あたししのぶちゃん。今旅館のお部屋にいるの……。
いやサボリじゃないよ? 立派な動機があるんだよ?
「さて、ではブリーフィングを始める」
と、前で指揮をとるのは世界一位さん。部屋には普通の旅館にはない、明らかに持ち込んだでしょって精密機器が並んでる。あとなんだよこの部屋の中央にある立体投影装置。いくらすんだと思ってんの。
「2時間前、ハワイ沖で試験稼働中だったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型軍用IS『
まぁ、そういうこと。本当だったら新武装のテストだとかをやる予定だったんだけど緊急事態で今部屋にいる。あたし含めて専用機持ちが6人。つっても1組と2組だけなんだけどさ。もうちょっといなかったっけか。
「お前達専用機にはこれを迎撃してもらいたい。既に米軍からの依頼は受諾された。また自衛隊が現在急ピッチで海域と情報の封鎖を行っており本隊も出撃したとのことだがそれを待ってる暇はない。直ちにこちらで専用機持ちを編成し『
帰りてぇっす……。なんで、あたしたちがそんなことを……。
「……質問はなしか。では次にメンバーを編成する。参加不参加はある程度は自由だ。ただしどちらにしろ情報秘匿の義務は負うこととなる。よく考えて行動しろ」
あ、じゃあ帰るか。
「はいッ、あたし辞退でっ」
「……元気だなお前は。まぁ良い。作戦中は隣室で待機命令だ。決して他生徒にこのことを口外するな。した場合の処置は、わかっているな?」
「うっすうっす。ほんじゃあ皆、頑張ってね~。良い結果を期待しておるぞ」
ばいびー。
部屋を出るとメイドさんが直立不動で待ってた。若干びっくりした。
「メイドさん部屋でゲームしよゲーム。神喰い」
「承知致しました」
部屋を移ってゲームしてると天井がガタガタし始めた。と、不意に板が外れてひょっこり兎の耳が。
「やぁ」
「ども」
兎さんだった。そう言えば話あるとか言ってた希ガス。
「お話?」
「ちょろっと質問がね。そのISについて」
「これ?」
と、左手の人差し指にある指輪を見せる。
「それ、どこで貰った?」
「おとーさんが会社でくれたよ。まぁ変な調整されてるから普通じゃロクに扱えないとかなんとか」
「ふぅん……そっか。わかった。じゃあ話はそれだけ。じゃね」
「あいあーい」
天井を元に戻して兎さん退場。早いな。
「なんだったんだろ」
「私にはわかりかねます」
IS生み出すような人の考えはわからんなぁ。
と、ぼちぼち寝転がってゲームしてると隣の部屋が騒がしい。なんだろ、様子見てくるか。
部屋を出てみると丁度隣の部屋の前に専用機持ちズがたむろしてた。切れ目さんはいないけど……。
「およ、皆してどしたのー?」
「あ、高宮さん……」
あれ、フレンドリーにいったら何か皆沈んでるっぽい……?
「何か緊急事態? いや今もだけどさ」
「うん……一夏が、撃墜されたの」
それマジ? 充分ヤバいじゃんか、これボケて部屋凸ってたら危なかったわ。取り敢えず用意してた髭メガネはメイドさんに渡して隠してもらっておこう。
「ブロンド君、織斑君の容態は?」
「わからない。でも、怪我も酷かったし意識も戻ってなさそうだったから……」
「ふーん……今部屋には誰が?」
「保険の先生が1人と、あと数人は手伝いかな」
「なるほど、じゃあ医者はいない訳だ。メイドさん」
「なんなりと」
「織斑君の治療、できるよね?」
「仰せとあらば」
「んじゃあお願いね。あとで報告も」
「承知しました、妹様」
と、メイドさんが一回礼をしてから織斑君が運び込まれた部屋に。これでまぁ大丈夫でしょ。
「高宮。あのメイドは、」
「んあぁ、問題ないよ眼帯ちゃん。メイドさん医師免許とか色々あるみたいだし」
流石はメイドさん、何でもできる。
「それで、皆は何してるん? 作戦には出ないの?」
って言うと、皆顔伏せた。一応メイドさんから作戦の概要はこっそり聞いてたらわかるけど、織斑君と切れ目さん以外は待機してたらしい。
「……ねぇ、高宮」
「おっふ、何だい中華ちゃん」
「それあだ名……? まぁいいわ。アンタは、一夏が落とされて何も思わないの?」
「んー? そーだねぇ、人並みに可哀想だとは思うよ。しっかしあたしってば結構変わり者だからさ、らしい結果になったんじゃない? そこに感情を持つには、あたしにはまだ経験値が足りないかなぁ。そんで、あたしにこんなこと聞くってことは中華ちゃん……他に皆も思うことがあるわけだね」
「その通りよ。あたしは一夏が落とされるのを、ただ指を咥えて見てることしかできなかった。だから、アイツを倒したい」
「それはわたくしも……いいえ、わたくしだけでなく、シャルロットさんやラウラさんも同じですわ」
「私はヤツを許さん。決してだ」
「画面の前で無力だった僕たちは、悔しかった。だから、一夏のために仇討がしたい」
あらら。皆キリッとした表情してる。完全に飛び出す気満々じゃない。
「皆はあの白いの、落とす算段はついてる?」
「決まってるわ。近付いて、叩っ斬る」
「狙い撃ってみせますわ」
「好き勝手にはやらせん」
「搦め手ならこっちの方が上手だよ」
うん、だろうね。まぁそれが皆一番最適って言うか……。
「まぁ行ってきてもいいとあたしは思うなぁ。織斑君はしばらく動けないだろうし、切れ目さんも……どうだろ。あたしは他人の気持ちなんてわかんないしなぁ。あたしは取り合えず待ってるよ。まぁあの兵装じゃまず辿り着けないし」
「そう……じゃあここのことは頼んだわよ」
「えー」
「えー、じゃないでしょえーじゃ!! 一夏が寝込んでるんだから、看病ぐらいしてやんなさい!!」
「メイドさんが全部してくれるっしょ」
「自分で動かないの!?」
「いやだって看病とかしたことないしされたこともないし……」
「鈴、高宮に働けと言っても無駄なことだ。諦めろ」
「ラウラっ、でもっ……!!」
「仕方ないよ。高宮さんはそういう人だから。大丈夫でしょ」
「優れた従者もおられますわ。彼女なら何の問題もありませんわよ」
「そーゆーことー。安心して出撃して来なって。世界一位の人がなんて言うかはわかんないけど。あ、そうだ、あたしは一応止めたってことにしといてね? 変な責任負いたくないし」
「わーかったわよ!! 全く……」
「いってらー気を付けて。怪我してもメイドさんが治してくれるから安心しなよー」
「無傷で帰ってきてやるわッ」
何その縛りプレイ。超上級者。
専用機持ち一行を見送ると気付けばメイドさんが斜め後ろに。待って、いつ部屋から出てきたの?
「織斑一夏様のご容体でしたが、概ね正常でした。あとは本人の気力次第と言ったところでしょう」
「はぁ、よくわかるねぇ」
「高宮家のメイドたる者、この程度の事ができなくてどうします?」
そっかー、じゃあ仕方ないね。
「取り敢えず織斑君の様子でも見ようか」
やることもないので取り合えず入ってみる。部屋に入ると実に静かだ。1人だけ保健の先生がいるだけで、あとはモニタリングしてる心電図が無機質な音を立てるだけ。
「織斑君元気ー?」
部屋の中央で布団に寝かされている織斑君。声をかけてみるが、当然反応はない。
「よく寝てるねー。写メ撮っとこ」
「コラにでもする気ですか」
その発想があったか。編集して起きたら見せてあげよう。
「メイドさんメイドさん、織斑君どれくらいで起きると思う?」
「そうですね。恐らく30分もあれば覚醒するでしょう。それより短くなるかどうかは彼次第、と言ったところですが」
「ふーん。原因は?」
「IS、『白式』の機能によるものでしょう。知らずとも目が覚めることは確定しています」
「そかー。あたし寝てていいかな」
「当人の自由かと」
「んじゃ寝る。織斑君起きたらおせーてね」
「仰せのままに、妹様」
ねむ……いい眠気かも……。
気付けば水の上に立ってた。
「……ハッ!?」
ちょっと待って。今あたし寝たばっかじゃん。何だよこの夢。
足元には鏡みたいに景色を反射する浅い水が水平線まで。ところどころに流木っぽいのが落ちてて、他には枯れてしまった背の低い木がところどころ…………お?
「おー、織斑くーん」
「へ? 高宮さん?」
何か織斑君が立ってた。
「なにしてんの?」
「いや、俺にもサッパリ……さっきまで女の人がいたんだけど気付いたらいなくなっててさ。丁度高宮さんが来る直前だ」
「へぇぇ。綺麗だった?」
「あ、あぁ……顔は見えなかったからわかんねぇけど、多分」
「おや、なかなかプレイボーイ発言だねぇ」
「いやぁ、そう言ってくれるとうれちい」
「ねー……ん?」
「はい?」
「どうしたの?」
「「誰っ!?」」
いや誰さ。白いワンピースに白い帽子。顔だちも綺麗じゃん。
誰だよ。
「こんにちはー。何か行こうとしたら君が来たから帰って来ちゃった。アハっ」
「あー、ども。織斑君、この人は?」
「さっき言ってた人だけど……戻って来ちゃったのか……」
「いや普通ここ来れる人って限られてるんだけどね? どういう訳か来ちゃってる子いるしぃ」
何言ってんだこの人。訳わからんぞ。
「取り敢えず一夏くん。この子も一緒に帰すから、ちょっと手を握っててあげて?」
「ああ、はぁ……って言うか、貴方は?」
「私かい? うーん……まだ秘密ってことでっ」
怪しさバンバンじゃないですか。
「妹様」
「あれ、メイドさん?」
「あら? アナタはここに来れないはずなんだけどな?」
今度はメイドさんがいる。なぜだ、なぜこうも色んな人が集まるんだここは。あたしはどんな夢を……?
「少し遅かったものですから、お迎えにあがりました。あまりここに長居するのは得策とは言えません」
「言ってくれちゃうじゃない。貴方には言われたくないわぁ」
「そうですか」
「……やけに消極的ね」
「今は張り合う必要性もありませんから」
「メイドさんや。その人と知り合い?」
「いいえ。初めてお会いしましたが」
「え、じゃあそっちの白い人はメイドさん知ってるの?」
「私も初めて会ったわよ」
なるほど。じゃああたしの夢だからめちゃくちゃになってる訳だねおっけい。そういうことにしておこう。
「では織斑様、お先に失礼致します。妹様」
「ほいほーい。ほんじゃあ織斑君お先にー」
「え、あ、おう」
「2度来ないでねぇ、ヴェンデルガルト」
「私自身から来るようなことはありませんから、ご安心下さい。それでは――――――――」
「妹様」
「ふぁ……」
あ……?
「…………ゆめ?」
「おはようございます、妹様」
「あぁ……うん。おはよ」
……なんだろ。変な夢を見ていたような……。
「……あれ」
「おぅ、織斑君。おそよう」
「おはようございます、織斑様」
「え、あ、……おはよう、ございます……。なぜ2人が?」
「お留守番頼まれちゃってね。皆は仇討じゃーゆって結構前に出てったけど」
多分切れ目さんも出たよね?
「……俺も行く」
「病み上がりじゃない?」
「大丈夫だ。全部治ってるし。それに、何が何でも行かなくちゃならないんだ」
「そこまでしてかい?」
「仲間が闘ってるんなら、それを見過ごすなんて出来ない。それに元は俺ができなかったのが悪いんだ。決着は、俺がつける」
「ああ、そうなの。じゃあ行く?」
「おう。高宮さんは?」
「いやーあたしだとついてけないしな、アレだから……」
「あ、そっか……まぁいいや。じゃあ俺は行くよ」
「んー、行ってら」
そう言って織斑君は部屋を飛び出して行ったのでしたとさ……。
「……普通病み上がりなら止めるとこだよね……?」
「保健の先生が丁度席を外していましたからね。彼にとっては最高のタイミングだったんでしょう」
そんなもんかぁ……。
「妹様、これからのご予定は?」
「ん? そーだねぇ。皆いなくなっちゃったし……、」
……何かやること、ないのかね。さっき寝ちゃったからあんまり眠くないし。
「手持無沙汰のようですね。ではこちらから提案が」
「?」
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