ええ、なんというかありがとうございます。
こんな作品でよければ今後ともよくしてやってください。
前回の大雑把なあらすじ:生き返りました
――ふと目が覚めた、どうやら旧い夢を見ていたようだ。
あの夢を見てから1週間が経過した、目が覚めた先にいたのは目にいっぱい涙をためた両親と驚いたような顔をした医者だった、両親の顔を見て生きていることを実感でき大泣きしたのだが、しかしここで問題が発生した。
あの空間に一度訪れてしまったからだろうか?まず明らかに思考が子供のそれではなくなった、なんというか考えていることが難しくなった、そして自分がおぼえたことのない知識が頭の中にゴロゴロと転がっている、そのなかには一般教養から神や魔術などのありえない言葉が飛び乱れるトンデモ理論があったり、もはや混沌とした様相を呈していた。
次に身体のスペックだ、自分は相当な難病にかかっていたこともあってかなりの期間闘病生活をしてきていた、故に本来ならば運動することはあまりなく筋肉は衰え運動神経は錆びついているものだ、そんな自分の運動能力なんてものは健康的な肉体と同じものではないハズだった、いやそう思っていた。
しかしそんな考えは退院に向けてのリハビリテーションを始めたときに木端微塵に砕け散った、身体が軽い…もうなにもこわ…ゲフンゲフン、この身体はまるで入院なんかしていなかったかのように軽やかに大地をかけた、これにはリハビリを担当した技師の人も自分も驚いていた、自分も訳が分からないよ。
しかも自分が難病に罹患する前と比べるとかなり身体能力が向上しているのだ、その事実は自分にあの夢(?)を意識させるには十分だった。だが、そんなありえないようなことのおかげもあってか2回ほど検査をして、一応ということで車いすを貸し出されることで病院を退院することができた。
外の世界は長い期間病院にいた自分からするとひどく新鮮に感じた、知識として知っていてもこの目で初めて見るものや病院とは違った空気、肩を少し超すくらいまで伸びた自分の髪を揺らす風など、興味を惹かれるものばかりで飽きることはなかった。
そんな家に念のために車いすで帰る途中だった、ふと強烈な気配を俺の体は感知した、その気配はいまだ遥か彼方ではあるが徐々にこちらに近づいてきている、そして意識が現実と剥離する感覚、どこからか意味の分からないイメージが頭の中に浮かんでくる。
真っ先にあがってきたのは船である、どちらかといえば木製のそこまで大きくないものだ、次にイメージとして挙がってきたのは羊、しかし重要なのは昔羊がもった意味であり、羊自体にそこまで重要性はない……。
「……ちゃん?……白谷ちゃん?…どうしたのそんなにぼうっとして?」
そこで母の心配そうな声によって我に返った、今のはいったい…?軽いトランスのような状態に陥っていたのか、あの夢を見てからどうにも奇妙なことが多発している、幼い自分の妄想による産物であればいいのだが、どうにも不安がぬぐえない、母も心配そうな顔をしてこっちを見ているのでとりあえず年相応の演技でなんでもないと笑う、母もつらかったら我慢せずに言うんだよと笑った。
息子は3歳の時に原因不明の難病に感染した、いや、表向きはそうなっている、情報の秘匿のためにそうせざるを得なかったといったほうが正しいか。
本当は息子は幼子には多すぎる俗にいう魔力や霊力といった力に体を蝕まれていたのだ。
人は誰しも体に微量の魔力や霊力をためこんでいる、しかし世界のどこかにはそれらの力を一切溜め込めない体質の人間も少数存在することが分かっている、そして息子はそんな体質の全く逆、つまるところ過剰に周囲から力を取り込み其の躰に濃縮しため込む、そんな体質だったのだ、ため込まれた力はその小さな器に収まりきろうと濃縮を繰り返し、本来ならば害のない力は濃縮されたことにより人を徐々に死に至らしめる劇毒となった。
そして本来ならそれらの猛毒に体を侵され一週間前に死んでしまっているはずの命だった。
しかし奇跡が起こった。
息子の体にいくつもの光の線が走った次の瞬間、息子に溜め込まれていた膨大な量の力が急激に消費されていくのがわかった、そして力が消費されていくことに比例して息子の衰えていた体が修復されていく。
――ため込んだ魔力を肉体の高速修復に使用しているのだ――
私には何が起きているのかを理解するのにしばしの時間を要した、こんな現象しかるべき呪具を集め長い年月をかけ行うべき儀式魔術でもなければ起きるはずがない、それがこんな何も用意されていない病棟で起きるわけがない。
そればかりではなく人として存在していた息子の霊格すらも微量ながら上位のものへと改変されていたもはや魔術師としては理解の埒外にあった、だがこの子の親としてはこの子の命が助かった、それだけで涙が自然と零れ落ちた。
これらの奇跡により息子の体は2年間寝たきりかつ、力をため込んだ弊害でぼろぼろになっていたはずなのにそれがなかったことのように軽快に走り回れたのであろう。
魔術師としてはありえない奇跡に息子がどうなっているのかという心配と、それを探ってみたいという知的欲求が首をもたげる、しかし一児の親としてはこの子の命が助かったことへの安堵しかなかった。
そして一命をとりとめて以来息子は変わった、理由はわからない、無理やり可能性を上げるとするならば息子の霊格が改変されたことにより何かの知識に触れてしまった可能性がある、と推測を並べ立てても息子の内面を読み取ることはできない故に真実はわからない、ただ息子のまとう雰囲気があれから妙に落ち着いたものになった、そのうえ肉体まで強化されているのか5歳児離れした身体能力を持ち、霊格もちょっぴり人間の域をはみ出している、……わが子ながら人間かどうか疑うようなスペックになったものだ。
そして先ほどこの子が行った霊視が一番の問題だ、霊視とは周囲の特殊な力に喚起されある特定の情報を取得する一つの方法のことをさすが、これは発動が確定しておらず、したとしても得られる情報が時々によって変化するので使い勝手が悪いのだ。
しかもこの能力は大地にまつわる女神に関係する女性に備わることが多い、男には備わらないというわけではないがその数は女性と比べると少ないのが現状である。
そしてこの子が霊視を使ったタイミングも問題だった、つい先日私は所属する魔術組織『正史編纂委員会』から一柱のまつろわぬ神がここ日本の首都東京に襲来することが推定されるということを伝えられていた、その神の名などは降臨してから一切正体が判明しておらず、捜査している巫女や魔女たちも芳しい結果が得られているとはいい難いのが現状であるらしい。
いくらまつろわぬ神がこちらに接近してきているとはいえ本格的にこちらに襲来するにはあと1日はかかるというのが正史編纂委員会の見立てである、そんなに離れていればその神気を感じられたとしてもかなり微量のモノのハズ、それを察知し霊視をするなんて明らかに人間業ではない。
もしくはここから近いところで新しいまつろわぬ神が降臨したとでもいうのだろうか? どちらの場合にしろろくなことにはならないのは決まっている、この子を家に送り届けたら急いで沙耶宮さんに取り次がなくては……。
うん、地の文が多くなってしまっていることはわかっているんだ、でも延々と母親と話すにもキャラを出して話すにもうまくまとめられるイメージがわかなかったんだ。
ごめんなさい
あとちょろっと今回のまつろわぬ神についての情報を出しました、次の話では名前は明かしませんが正体的なものまでわかるくらいには出します。
楽しんでいただけたら幸いです。