評価していただいた方ありがとうございます。
前回の大雑把なあらすじ:主人公がちょっぴり人間じゃなくなったよ、やったね白谷ちゃん!、ついでになんかやばいやつが近づいてきてるらしい
病院から出てバスにゆられること30分、自分と母は一つの高層ビルの前についた。
「ここが私たちのお家よ、前に住んでたところよりずっと大きいでしょう? 」
母がそういうが自分はその大きさに気を取られていた、自分の記憶では3歳の時はどこにでもあるような平凡な二階建ての一軒家だったのだ、それがいきなりこんな金のかかりそうな高層マンションになっていたとは予想がつかなかった、俺が病院で生活していた間に両親に一体何があったのだろうか。
母は車いすを押しながらビルに入る、エントランスホールはそこらのホテルに勝るとも劣らない出来であり、フカフカそうなソファや磨き上げられたテーブル、天井に目を向ければきらきらと光るシャンデリア、壁にはどこかで見たことがあるような絵画などがかけられている、そして一番恐ろしいと感じたのは自分がそれらの価値を一目見ただけで判断できてしまうことだった。
俺が戦慄している間に母はずんずんとエントランスロビーを進み、エレベーターの前まで進む、そしてエレベーターの前にいたおそらくこのビルのスタッフであろう人がエレベーターのボタンを押す、ドアが開き自分と母とスタッフの人がエレベーターに乗り込む、そしてスタッフの人は迷いもなく最上階のボタンを押し、母もそれに何も言わない。
エレベーターが最上階へとつくと母はスタッフに一言お礼を言ってエレベーターを出る、そして向かう先は5001号室、母は『岸波』とネームプレートがぶら下げられたドアの二重鍵を開け部屋のなかに入る。
部屋の中はずいぶんと広かった、前の家よりちょっぴり広くなった玄関の先には20畳ほどのリビング、そしてそれに付随するように5畳ほどのキッチンが備え付けられており、そこからいくつかの部屋につながる廊下が伸びている。
母は自分をリビングに移動させるとそこにあったテレビをつけた、テレビには自分の年相応な子供向けの番組が放送されていた、しばらくして自分の興味がそちらに向いたと判断したのか、母は
「お母さん忘れ物しちゃった、白谷ちゃんは留守番できるかな? 」
と自分に聞いてきた。
「うん、ぼくちゃんとるすばんできるよ! 」
こんなところでいいのだろうか、なるべく5歳児らしく振舞えるように努めながら母の問いかけに答える、母は自分をほめると急いで支度をして部屋から出ていく、そして玄関のドアの鍵がしまる音がした。
それを確認した自分は車いすから立ち上がり、部屋を物色することにする、リビングには大きな姿見があった、そこには自分が映し出されていた。
身長は平均的な五歳児並で体系はちょっとぽっちゃりしているかもというくらい、肩甲骨あたりまで伸びた少し癖がついている黒髪に、子供ゆえのきめ細かく柔らかそうな肌、顔立ちは子供ゆえにかわいらしい顔立ちをしている(将来どうなるかはわからないが)。
ただ一つ……その目を除けばだが、なんというのだろうか自分の目には子供特有のきらきらとした光をたたえておらず、仕事に疲れたサラリーマンのような眼、俗にいう死んだ魚のような眼になっている。
そのせいか自分のまとう雰囲気が明らかに子供ではないことに自分は気づいてしまった。
試しに自分が先ほど母さんにやってみたように子供らしく振舞ってみる。
「ぼくのなまえはきしなみはくや! よろしくおねがいします! 」
……だめだ、明らかにこれは子供じゃあない、死んだ魚のような眼をした子供が声だけは元気よく挨拶する……とてもじゃないが違和感が大きすぎる、自分はこの先小学校などの子供たちが作り出す集団に交じることができるのかとても心配になってきた。
そうすると先ほどのかあさんの顔はひきつっていなかっただろうか、不審に思われていないだろうか、そんな不安がもやもやと湧き上がってきた、最悪不気味に思われて捨てられるなんてこともありうる。
とりあえずそのことは今放っておこう、それよりも先ほどから感じるこの嫌な感じ、なんというのだろうかこれからとてつもなく大変なことが起こる気がする。
あと先ほどのトランス状態の件もある、あの夢が俺の妄想でないなら、あの声が言ってたことが本当なのであれば、自分はこれから何かしらのハプニングに遭遇するということになる。
そして自分はおそらくどうあがいてもそのハプニングに立ち向かわなくてはいけなくなるのだろう。
そのために自分が取れる方法は少ない、まずやるべきことはこの身体のスペックを知ることだろう。
リハビリでは測る余裕がなかった故にこういった機会は貴重である、己を知りうんやらかんやらの己を知ることから始めなければならない、幸いこの身体に対してこの家は広い、万全とはいえないがある程度であれば把握することはできるだろう。
しばらく室内でできるストレッチなどをした俺は自分の体のスペックに舌を巻いていた。
腕立て伏せや腹筋は息を切らさず20回までならできるし、スクワットなら30回まで、反復横跳びはおおよその長さでしかできなかったが7往復はできた、五歳児の体のスペックとしては明らかにおかしい。
そんな感じに疲労で床に大の字で転がった俺に一度感じたような感覚が再びやってきた。
突如として意味の分からないイメージが勝手に頭の中に浮かんでくる、今度のイメージはかなり物騒なものだった。
――戦いの血なまぐささと冥府に満ちる死の甘く腐ったような腐臭が混ざったにおいがする、変化する前の神性は大陸と海を渡ることを経てその物騒な神性を削ぎ落とされ、この日の本の重要な一柱の神と集合した、創世神の化身かつ破壊神の一つの呼称……そう、その名は……! ――
意味の分からなかったイメージたちがつながり、いわゆる一つの回答にたどり着く。
次の瞬間、体中の毛がぞわりと逆立った、何かとてつもなく強大なものに見られている、胡乱げな敵意がこちらに向けられている!
その敵意の主は興味深そうな声音で口を開いた。
「んー? 先ほどからちょろちょろと俺の神格を覗いてくるやつがいるから誰だと思ったら、まだ乳臭いガキじゃねえか、ってそれにしては少し違和感があるな、神殺しでもねえくせに妙に俺の琴線をくすぐってきやがる」
明らかにやばいものに目をつけられてしまった、冷汗が止まらない、ある一つの呼称が浮かんでくる。
神話の世界から飛び出てくる天災、そのありようは元の神話に縛られない、そういった神々を一括して〈まつろわぬ神〉と呼ぶ、そして自分の目の前にいるのは……!
「その表情、俺の名をわかってるな? だからあえてここでは名乗らないでおくぜ、少しそこで待ってろ、今そっちに行くからよ」
明らかな格の違い、人として絶対に勝てない相手、その声を聴いただけで動けなくなってしまう、強烈な気配がこちらにやってくる。
それを認識した直後、部屋の窓ガラスが粉々に砕け散り部屋を濃厚な神気が満たし、声の主は俺の目の前に現れた。
「まあ、誰でも周りを羽虫みたいにぶんぶん飛び回られたらいい気分にはならねえだろ? それと同じでよ、俺も少し気が立ってるのよ、どうにかするなら元凶をぷちっとつぶしたほうが手っ取り早いだろ? まあそういうことだから死んでくれや」
一面二臂、青黒い肌、頭には烏帽子をかぶり、袴を羽織った彼は挨拶するような気楽そうな声でその手に持っていた棒をこちらに尋常ならざる速度で振り下ろしてきた。
原作でヴォバンの爺さんができたんだからまつろわぬ神だってやろうと思えばできるはず、……まあ人間相手にそんなことをするかといえばわからないけど。
あと主人公の名字で分かった方も多いと思いますが、察してください
作者がまともにやったゲームでFateだとそれくらいしかなかったんだ……。
次回は戦闘
楽しんでいただけたら幸いです。