東方恋桜書   作:鏡野桜月

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まとめても短くはないですが、分けた方が面白いので。


サトリ短編(上):外の世界での覚り

地底で地震があった。

起きた時間は皆が寝ている時間で、地震があったことを知ってるものさえ少なかった。

その上比較的弱いもので岩の崩落による被害は全くなかったため、誰も気にもしていなかった。

だが、それは幻想郷を覆う結界を狂わせた。

 

地震が起きた日、地霊殿の主、古明地さとりはある声を聴いた。

普通はそんなものを気にすることはないが、その声は何かがおかしかった。

そうさとりは思った。

いままで地霊殿で聞いたことのない声だった。

声自体は小さく、遠くから聞こえてきている印象を覚えた。

それに気になり、さとりは声のする方へ足を進めた。

 

そして、ある場所へ着いた。

そこは地霊殿から人気のないところを通り、一番近い外壁にあった、

 

「…なにかしら、これ。この先から声が聞こえる?」

 

外壁の一部が崩れ、その崩れた部分だけ結界があいているようだった。

その裂け目は元の外壁と、どこか森の景色がぶれながら共存していて、どちらにもならないという、ずっと見てると気持ち悪くなるような景色だった。

サトリ自身は地震の存在を知らない側であった。

そのため、突然外壁が崩れ、このようなものが出てきたことに疑問を持った。

だが、考えても仕方がないことなのと、今は聞こえてきた声の主を知りたいという欲求の方が強かった。

そしてさとりは結界の裂け目から外に出た。

 

結界から出た次の瞬間に、そこは木々の生え渡ったちょっとした丘の上だった。

そこに出た途端、地霊殿の者たちの心の声が聞こえなくなり、代わりに聞いたことのない者たちの心の声が聞こえてきた。

だが、その中で一番近く、一番強い声が聞こえてきた。

さとりが知りたいと思っていた声の主はすぐ近くにいた。

それは人間の青年の様で、木によりかかかり、うずくまっていた。

 

『怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……』

 

もう何が怖いのかさえ分からないくらいにその青年の心は恐怖心に染まっていた。

それはさとりも聞いたことのない種類の声だった。

だが、さとりが聞いた声はこれじゃなかった。

さとりは恐怖の声は良く聞いていた。

わざわざそんないい記憶でないものを聞くためにこんな遺体の知れないところに来たわけではない。

まあ、この恐怖心は自分の向けられたものではないことはわかっていたため、そんなことは関係ないのだが。

 

「あなたが私を呼んだの?」

 

さとりはしびれを切らし、青年に話しかけた。

青年はそれでやっとさとりの存在に気付いたようで、驚いたように肩を震わせてた。

その瞬間の青年の声にさとりは聞こえてきた声に確信を持った。

 

『こw…!!』

 

その瞬間には恐怖心が和らいだのがわかったのだ。

そして、それどころか、かすかにだが、希望を感じたようにさえ思えた。

 

 

「あなたが助けを求めたのでしょう。全部聞こえていたわ」

「……」

 

…まだ戸惑いが見えるわね。

やはり心を読まれたことにかしら。

でも驚きはあるけど、恐怖心は増えてないのよね。

なら助けてといったらほんとに来たからの方かしらね?

 

「……」

「何があったの?」

 

まだ戸惑いはあるけど、もう言おうかどうか迷っている段階ね。

あと一押しって感じね。

 

「……聞いて、くれるの?」

 

青年は顔を上げてそう聞いた。

その目には目の前にいるさとりに希望を持っていた。

さとりはそのような目で見られたことがなく、その目に少し怯んだ。

だが、すぐにいつもの調子に戻り、答えた。

 

「もちろん、いいわよ」

 

 

 

 

その内容は人間の弱いところ、悪いところがこれでもかとあった。

それはさとりを人間不信にさせるレベルであった。

覚妖怪は表面上のことはわかるが、深層意識、記憶までは見えないので、人間の本質を分かっていたわけではなかった。

だが、人間の青年から聞く人間の話はその知りえなかった本質を補うものとなっていた。

しかし、その青年の話を聞いていて伝わったのは人間の悪だけではなかった。

心を読むことで恐れられていた自分が、逆にその心を読む能力のおかげで、その話をよく理解でき、青年の苦悩にちゃんと応えたあげられたことだ。

 

青年はやはり話してる途中につらさで話していることが支離滅裂になっていたりしたが、言いたいこと自体は心の中にあるため、さとりが先導するようなこともできた。

そして、すっかり話し終えた時には青年はさとりのことを信じ切り、必要としていた。

それにさとりは自分の呪われたような能力、妹はそれが故に第三の目を閉ざしたまでのこの能力が青年を助けたことに、自身の中で驚きを隠しきれてなかった。

今まで恐れられていたこの能力が突如として必要とされ、戸惑いがあった。

だって、深層意識は読めないから。

そしてある行動をとった。

 

「一通り話終わったようね。…それで、一つ聞いていいかしら」

「?」

 

その質問次第でどんなことになるかはさとりには目に見えていた。

だが、聞かずにはいられなかった。

 

「あなた、私が怖くないの?」

 

さとりはこの青年の気持ちのすべてが知りたくなっていた。

知って、どうとなる物ではないが、知りたかった。

返答次第では、やはりどんなことになるかはわかっていた。

そして、青年は口を開いた。

 

「何で?なんでそんなことを聞くの?」

「っ!!」

 

青年はその問いに答えなかった。

その表情はなんでそんなことを聞かれたか、訳が分からないようだ。

だが、それにさとりは気が触れた。

 

「なんでって、あなたは気付いてないの、私が何者かが!!そんなわけはないわ。あなたはそこまでバカじゃない。本当は、心の奥では私のことを怖がってるんじゃないの!!」

 

その叫びは答えを知りたくて、早く答えを知りたくて発しているものだった。

さとりは言った後に後悔していた。

これでは嫌われてしまっても仕方がないからだ。

せっかく自分を必要としてくれるかもしれない存在だったのに。

そして、予想していた言葉が青年の声から発せられた。

 

「そりゃあ、怖いよ」

「っ~!!」

 

その時のさとりは表面上の心の声など聞こえていなかった。

まただめだった。

それだけしかなかった。

だが、次の瞬間、一転する。

 

「でも、それ以上に僕は君のことが必要なんだ。だから、怖いなんて思わない」

「う、うう、あなたはなんでそう……」

 

さとりは青年の最初の恐怖に染まった顔からは想像もつかないほどの笑顔に顔に熱がこもったことがわかった。

だが、それが何なのかはわからなかったが、青年の気持ちが知れて、とてもうれしかった。

そんなことを想っている間に、青年はある事に気が付いたようだ。

 

『…今更だけど、名前、なんていうんだろう』

 

「わたしは古明地さとり。妖怪、覚よ。まあ、妖怪なんて、気にしないでくれるわよね」

 

青年は一瞬言おうとしていたことを先に応えられて驚いていたが、すぐにその理由がわかり、笑顔になった。

さとりはその質問に青年がなんて答えるのかがわかっていた。

だけど、その答えは先に言わないで、青年の言葉で知りたかった。

だから待った。

 

「もちろんだよ、さとり」

 

答えを聞く前からわかっていた答えだったが、実際に聞いたことで、青年の言葉だと実感でき、うれしかった。

それと、青年の笑顔につられて、さとりも笑ってしまった。

 

「あ、僕の名前は…」

「言わなくてもわかってるわよ」

 

さとりと青年はその後、身の上話をした。

青年はさとりの話にすごく興味を持ち、さとりが話すたびに目を輝かせていた。

代わりといわんばかりに、青年は外の世界についてを話した。

青年は博識で、とてもさまざまなことを知っていた。

さとりも青年の話に心を奪われた。

そして、もう夜も遅くなってきたときに、話も一段落ついていた。

 

「さとり、もうそろそろ戻らないといけないだろ。ペットたちが心配している」

「ええ、そうね。そうさせてもらうわ」

 

さとりは青年と話せて、もう満足していた。

青年といた時間はとても楽しく、有意義なものだった。

そして、さとりが去ろうとした時、青年の声が聞こえてきた。

 

『また会いたいな』

 

さとりはその声に喜んでいた。

自分でもなんでこんなにうれしいのかがわからかったが、言えることはある。

 

「ねえ、また明日も会えるかしら、ここで」

「!ああ、もちろんだ」

 

そして二人は約束を交わした。

さとりは青年を信じて疑わなかったし、青年もまたさとりを信じていた。

二人はまた明日も会えると信じて、その場を後にした。

 

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