午後に気付いて、夜に書いたものなので
天狗の日
射命丸文は今日も幻想郷中を飛び回っていた。
それ様子を千里眼の持ち主、犬走椛はひっそりと監視していた。
「文さん、なぜあの人間に興味があるようですね」
文はある一人の人間の男をつけまわしていることが椛には見て取れた。
しかし、ここで椛は少し疑問に思った。
「なんで文さんはあのような何の変哲のない男を?ネタにもならなさそうなのに」
文はいつも文々。新聞のネタになる事柄を探して飛び回っている。
なのになぜあのようなネタにもならない普通の人間をストーキングしているのかだ。
椛は何か文が企んでると思い、ずっと文を監視していたのだ。
だが、一向に何かするようなそぶりはなかった。
っと、文が妖怪の山に帰ってくるようだ。
椛は意を決して聞いてみることにした。
「あの、文さん?」
「おや、あなたの方から話しかけてくれるなんて珍しいじゃないですか?どうかしたんですか?」
ある程度距離があったが、文は一瞬のうちに椛の目の前に飛んできていた。
その様はまさに風、であった。
「文さん、あなたは何を考えてるんですか?」
「あやや、いやー、私の心を知りたいんですかー。困りましたねー、私の心は誰のものでもないんですよ」
文はいつもの調子でお茶らけていた。
それにジト目で見ていた椛もため息をついた。
そして核心を突いた。
「・・・あの男に何かあるんですか?」
その言葉を聞いた文の動きは一瞬止まった。
だが、今度はお茶らけず、真剣な顔立ちになっていた。
「そうなんですよ、何故か、気になってしまうんです」
「?どういう事です、それもあなたの記者としての勘ですか?」
真剣な文に感化され、椛も背筋を伸ばして聞き入った。
だが、そんな椛に対して文は頭を掻きながら笑った。
「・・・それが、どうもそう言うわけではないのかもしれないんですよ。なんていうか、こう、いつもと違う風に気になるというか」
そんな文の言葉に椛は意味がわからずに、きょとんとしていた。
当の文自身がわからないのでは椛がわからなくても無理はないのかもしれない。
「で、その理由でなんであの男を追っているんですか。ネタにもならないのに」
「そうですよね、あのようないっかな人間の男はネタにはなりませんものね。・・・ですが、何故かあの男から目が離せないのです。なんていうか、あの人のことを想うと、こう、胸がきゅんと・・・、って、意味がわからないですよね、あはは・・・」
そう少し頬を赤らめて言う文に椛は少しその文の気持ちが何なのかがわかった気がした。
だが、それを言おうと口を開いたまま、止まってしまった。
「おや、どうかしましたか?何かこの私の事態について分かったのですか?」
「・・・い、いえ、何でもないんです」
椛はすぐにその言葉を飲み込んでそう答えた。
だが、その心の中では、
「なんで、なんで嘘をついたんだろう」
そんな自分に対する疑問があった。
だが、すぐにそれを慰めるような問題を自分の中で上げ始めた。
「どうせ言ってもどうにもならない」
「人間と妖怪だから無理」
「教えない方がいいんだ、いずれ忘れる」
だから、言わなくて正解だと思った。
「そうですか、それでは、私はまたあの男を追いますね」
そう言った次の瞬間には椛の前から文の姿はなかった。
「相変わらず早いですね」
だが、椛の目の先にはちゃんと文が映っていた。
それからあまりしないうちにある事件が起きた。
その事件は人里の人間が妖怪に食い殺されるというものだった。
そして、その事件は妖怪の山の近辺で起きた。
「文さん、ネタには、なりましたね」
「・・・そう、ですね」
目の前には文が追っていた男の死体と、その男が庇おうとした少女の死体。
それとオオカミのようだが、もっとおぞましい姿をした妖怪の死骸。
これは文が殺したものだ。
「この妖怪、幻想郷の理を知らなかったようですね」
「・・・なんででしょ、何故か、涙が・・・・・・」
文の目からは大粒の涙が流れた。
椛はそんな文を見て、やはり言わなくていいと確信していた。
「椛、この男はですね、優しいんですよ。私が最初に会った時もそうでしたから」
「・・・でも、それが原因で死んでしまいましたけどね。妖怪相手じゃあ、かばっても意味ないのに」
椛の言葉に文は涙をぬぐって椛に向かってこう言った。
「やはり、あの勘、記者の勘でしたね。それじゃあ、取材は終わりましたし、帰りましょう、椛」
「・・・そう、ですね」
文と椛は人間二人の死体と、妖怪の死体をそこに残し、飛び立った。