刀剣乱舞〜蒼き審神者〜   作:ルミナス

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第参話

葵が審神者となってから二日目の朝。

 

葵本人から近侍をお願いされた切国は、その主を起こすために部屋へと向かっている。

 

「……どうして俺なんだ」

 

切国が少し溜息を吐いていると、鬼灯とバッタリと鉢合わせた。

 

「ん?切国、どうした?」

 

「……今から主を起こそうとしてたんだ」

 

その切国の言葉に鬼灯は少し首を傾げて何かを考えると、今度は何かに納得したようにポンっと手を叩いた。

 

「ああ、お前は知らなかったな」

 

「?何がだ?」

 

「葵ならもうすでに起きて、朝ご飯を作ってるぞ」

 

それに切国は驚く事なく、逆に何処か納得した。

 

ほんの少しの間でも一緒に過ごして分かった事だが、葵は真面目な人間で、優しさの塊だ。

 

その人間が、朝だけ寝坊するというのは殆どないだろう。

 

「……なら、俺もその手伝いにいく」

 

切国はそう言って台所まで向かっていく。

 

その後ろ姿を見ながら、鬼灯は思った事を呟いた。

 

「……彼奴、料理出来るのか?」

 

***

 

結果として、鬼灯の不安は当たった。

 

そもそも、包丁以外の道具の用途を知らなかったのだから、お話にならない。

 

葵はそれを微笑ましいそうな笑顔を浮かべながらも教え、なんとか二人で作り終えた頃には、既に薬研も五虎退も起きていた。

 

ただ、何故か多めに作られていたが。

 

「……おい大将。流石に俺達でもこの量は食べれねえぞ?」

 

薬研が少し不思議そうにしながらも葵に問うと、葵は笑顔を浮かべて返す。

 

「実は今朝方に鍛刀しましたのですが、その新しく来られる方の為にもちょっと量を多めに作ったのです」

 

「あ、新しい仲間ですか!」

 

五虎退が少し嬉しそうに言うと、その笑顔が伝染したのか、また葵は笑顔を浮かべて頷いた。

 

その時にちょうど良く鍛刀部屋から鈴が鳴り響き、新しい仲間が出来たのを知らせた。

 

「あ!来ました!ちょっと行ってきますね!」

 

「それなら、俺も行こう」

 

「いえ、切国さんは食べてもらっても……」

 

「俺は近侍だ。主の側にいない時に何かあっても、困るからな」

 

「そうですか……それでは、すみませんがお願いします。鬼灯は皆んなに箸の使い方とかを教えてあげて?」

 

「いや、その新しく来る奴が来てから一緒に教えた方が効率的だろ。それまでは待つさ。お前達もいいな?」

 

鬼灯が薬研、五虎退に顔を向けて問いかけると、二人とも頷いて返した。

 

「そういう事だ」

 

「……分かった。それじゃあ、迎えに行ってくるね」

 

葵が申し訳なさそうな顔をして頭を下げると、鍛刀部屋まで迎えに行った。

 

その鍛刀部屋に着き、中に入ってみると、そこにいたのは浅葱色の羽織を着た黒髪の青年と、狐を肩に乗せた白髪で面頬で口元を隠した男。

 

「えっと……」

 

葵は刀を見ればその名前がすぐに分かるのだが、流石に人間体でいると『名前』は分からない。

 

葵がまた申し訳なさそうな顔をしていると、浅葱色の羽織を着た青年が自己紹介を始めた。

 

「僕、『大和守安定』。扱いにくいけど、いい剣のつもり!よろしくね!」

 

「はい!よろしくお願いします!安定さん!」

 

次に紹介を始めたのは白髪の男……ではなく、その肩に乗っている狐。

 

「やあやあ、これなるは鎌倉時代の打刀、『鳴狐』と申します。私はお供の狐でございます」

 

「は、はあ……」

 

葵が狐が喋ったことに少し驚いた様子を見せ、視線を少しずらして鳴狐の方に向けると、こくりと頷き、小さな声で挨拶した。

 

「……よろしく」

 

その声はかろうじて葵に聞こえ、葵は嬉しそうに笑みを向けた。

 

「よろしくお願いします!鳴狐さん!それで、あの……その狐さんが喋っているのは腹話術ですか?」

 

葵が鳴狐に聞くと、首を小さく横に振った。

 

「いえいえ、これは腹話術などではございませぬ」

 

「へ〜!凄いです!」

 

葵が何かに感動をしていると、そこで漸く声を掛ける切国。

 

「……主、挨拶が終わったなら、連れて行くべきところがあるんじゃないか?」

 

「あ!そうでした!」

 

葵は切国の言葉で思い出し、手のひらを合わせると、二人に向き直る。

 

「それではお二人共。来ていただいて早々ですが、皆さんの所に案内します。そこで自己紹介をしながら、ご飯にしましょう!」

 

葵の言葉に二人と一匹は頷くと、歩き出した。

 

「主殿、油揚げはございませぬか?」

 

「油揚げならありますよ。鬼灯も好物ですからね!」

 

「おお!ありがとうございます!」

 

狐と普通に会話しだした葵に対して、切国は何も言うことはしなかった。

 

ただ、その順応性の速さには、少なからず驚いてはいた切国だった。

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