邪神さまは容赦なんてしません。だって邪神さまからしたら大半の人間なんて有象無象の塵芥、一部の人間でも道化師扱いがせいぜいなんですもの。
プロローグ
私は、ふと見上げた遥か上空に広がる光景に身動きできないでいた。
普段であれれば綺麗な青を見せるその空は、今は無数のタマムシ色の球体で埋め尽くされている。
ーッ……なんて神々しいのだろうか……ー
手足は金縛りにあったように動かない。
声は声帯が麻痺したのか出てこない。
ーなんだ……アレはッ……!?ー
私は理解しようとして脳を働かせ、頭上に広がる光景を本能的に理解してしまう。
アレは見てはならぬものだと、理解してはならぬものだと。
その瞬間、到底人の身では抗えぬほどの根源的な恐怖に襲われ、私は正気を失った。
「■■■■■ーーーーー!!!」
声にならぬ叫びをあげながら。
ふと目がさめると、私は真っ白な空間に放り出されていた。
周りには何もない、ついでに言えば私の体すらなかった。
……どうやって物事認識してるんだ?霊体?
ふと背後に気配を感じ振り向くと(体ないけど)そこには虹色のローブとファラオの冠に身を包んだいかにも高貴そうな男性がそこに立っていた。
ニヤニヤといやらしい笑顔を顔に貼りつけながら彼は話しかけてくる。
「やぁやぁ、これはごきげんよう。哀れでお間抜けな人間くん?」
……初対面でお間抜けとか失礼だと思わないのか?
私は苛立つ心を隠し、問いを投げる。
「いや、あんた誰よ?」
すると彼は大げさに驚きやたらと芝居のかかった動作でこちらに一礼する。
「これは失敬、自己紹介がまだだったね。私は暗黒のファラオ、膨らんだ女、無貌の神と呼ばれている。」
「……あんたあれか、思春期特有の痛い空想引きずった大人か。」
「いやいや、あんな道化にすらなれない連中と一緒にしないでくれたまえ。さて、本題に入るが君にはもう一度人生をやり直してもらう。転生という形でね。」
……こいつは何を言っている?
怪訝な顔をした私を愉快そうに眺めながらその男は聞き捨てならない一言を発する。
「あぁ、そうそう。伝え忘れたけど、君死んだから。」
……本日二度目のこいつは何を言っている?
そんなことを思っていると男は堪えきれないというように盛大に吹き出しながら耳障りな声音で困惑する私に言い放つ。
「ヒャハハハッ!覚えてないかなぁ?君ね、あのタマムシ色の球体を見て発狂、気絶したところを同じく発狂した運転手が乗ったトラックにはねられて死んだんだよぉ!んで、たまたま通りかかった私の気まぐれで二度目の生を得ようとしてるとこなのさぁ!でも、ただ生き返るだけじゃつまんないからさ、魔法の世界に放り込んであげるよ!大丈夫大丈夫、君も知ってる世界だからさ!ついでにクトゥルフ神話系の魔術は全て使えるようにして置いたからさ!」
そして男は先ほどとは打って変わってまるで虫けらでも見るような目で私を見ながら、背筋が凍りつきそうなほど冷たい声で何も言えぬ私に告げる。
「せいぜい私を楽しませてくれよ?卑小な人間くん?」
そうして私は知らぬ間に意識を失い第二の人生を歩むことになった
さてさて、物語が始まるのはもう少し後になります。