入隊試験に向けて
流れる雲を見ながらオレはいつも思っていた
どこかへ…歩き出さないと
このままだと同じ場所で同じ空を見上げているだけだと
これは…そんな始まりの物語
ビリビリビリ…
封筒を開ける音…私の兄の手は若干震えていた。
「っ!……通った。」
「!…よかったね!フレン。」
「そう言うフレアはどうだったんだ?」
「私も、書類審査は通ったよ。」
そうか…と穏やかな声と少し緩んだ顔をする人は私の双子の兄、フレン・シーフォだった。
私とフレンは騎士団の入隊試験に応募したのだ。
「合格…できるといいね!」
「当然だ。入隊試験でつまずいている様ではダメだ!」
「うん…」
「……素振りをしてくる。試験本番まであと少しだ。フレアも鍛錬は怠ってはいけないよ。」
「うん!」
そう言ってフレンは家を出て行った。一人残された部屋から窓の外の空を見上げると真っ青な空に流れる雲を見た。こんな空を見ているとあの日の事を思い出す…
父さんの死を伝えられたあの日を
あの日からフレンの父さんに対する思いが変わった。フレンは父さんを恥じている様な言動が増えた。すると自然と私とフレンの間の会話は父さんの話がなくなっていった。
私はフレンが好き…父さんの事だって大好きで、誇りにさえ思ってる…だからフレンに父さんの悪口を言って欲しくはなかった。
私が騎士団に入ろうと思ったのは父さんの守った物を守りたかったから…父さんの守った物を無駄だと言われたくなかったから…
「フレン!」
私は家を出ていつもフレンが1人で鍛錬をしている場所に足を運んだ。
「フレア」
フレンは私に視線を送ると一旦手を止めこちらに歩いてきた。そんなフレンに私は持ってきたタオルを投げつける。フレンはそれをうまくキャッチしながらありがとうと言うと汗を拭き始めた。
「フレアも鍛錬する気になった?」
「うん…フレンにお手合わせ願おうと思って。」
「ああ…いいよ。」
フレンはタオルを置くと私の少し離れた場所に立ち自身の持っていた木で作られた剣を構えた。私も持ってきた木の剣を構える。
かんっ!
木と木のぶつかる音がこの空間に響く。
「っ!…ねぇフレンっ!」
「っ!…話してくるなんて、余裕だなっ!」
「私ね、今度の試験でユーリに会える気がするの」
「え…」
フレンにできた一瞬の隙を私は見逃さなかった。フレンの手にある剣を思い切り弾き飛ばすとフレンの剣は宙を弧を描いて少し遠くの地面にカランと言う音を立てて落ちた。
「私の勝ち!」
「……卑怯だぞ、唐突に彼の名前を出すなんて…」
「勝負に卑怯もクソもないわ。」
冗談っぽくおどけて言うとフレンはため息をついて落ちた剣を拾った。
「彼が…ユーリが入隊試験にいるなんてあり得ない。」
「なんで?」
「騎士団に彼の性格はあってない。」
「わからないわよ?案外試験に受かるかもしれない。」
「それこそあり得ない!」
「私たちだって強くなったんだもの、ユーリだって強くなってるわ。」
「強さだけで騎士団に入れるほど騎士と言う職業は甘くない!」
「それは…確かにそうね。」
「だろう?」
「でも、ユーリは受かる気がするの…」
「なんで?まだ彼が入隊試験にいるかすらわからないのに。」
「んー……勘?」
「か…勘…」
私は肯定する事もなくニコニコとフレンに笑顔を向けた。フレンは溜息を吐いて
「ユーリが騎士団だなんて頭が痛くなってくるよ。」
でも、ユーリは優しいから…
だから私は…
きっといい騎士になると思うよ?