章とタグとサブタイトルでネタバレ過ぎる……。
海鳴市と謎の気配
気が付くと、私とオーフィスは暗い部屋の中央に佇んでいた。
辺りを見渡すが生憎部屋の中からでは、ここが異世界であるかどころか、そもそもどんな場所なのかも分からない。
私は仕切られたカーテンを開けて、外の様子を確認してみる。そこからは地上十数メートルの高さから、辺りを一望出来るようになっていた。どうやら、ここは高層マンションらしい。
外から入ってくる光で、部屋の中がよく見えるようになる。
5LDKぐらいだろうか? 基本的な家具は向こうと変わらないようだけど、部屋の付属設備がいくつかある。私は時計を探して視線を彷徨わせると、すぐに見つける。時刻は2時過ぎ。
……おかしい。私たちが向こうで紙を破ったのは昼食の前の筈。しかし、こちらではすでに昼を過ぎている。こちらに来るまでに時間が掛かったのか、はたまた世界が違うから時間がズレているのか……。
「…………悪魔、天使、堕天使、神、どれも気配、感じない」
不意にオーフィスが呟いた。私も意識を集中させて、辺りの気配を探ってみる。オーフィスに比べれば範囲は狭いけど、町一つ分くらいなら私でも探れるからね。
それで探ってみると、確かにオーフィスが言った通り、悪魔も天使も堕天使も神も気配は感じられなかった。でも……。
「大きな魔力が二つ。それと微かだけど妖力、なのかな? 不思議な気配も感じる」
「ん、あと、別世界にドラゴンの気配」
「異世界に来て別世界っていうと、なんか変な感じだね」
まあ【ハイスクールD×D】の世界でも冥界とか天界とかあったから、この世界にも別世界があっても不思議ではないけれど。
「絆、テーブルの上に何かある」
「あっ、本当だ」
部屋の中央にあるテーブルには、いつか見たような紙が置かれていた。私はそれを手に取って目を通す。そこには、こんな内容が書かれていた。
―神様見習いより―
此度は、私の申し出を受けていただきありがとうございます。現在、あなた達のいる場所は海鳴市の○○と呼ばれるマンションです。日付は9月10日、翌日から私立聖祥大学付属小学校に転入することになっています。机の下に、制服、体操服、履歴書、案内書、教科書、バック、筆記用具など必要なものが入っているダンボールがあります。ご確認ください。
「テーブルの下のダンボール……これかな?」
私が覗き込むと、そこにはかなり大きめのダンボールが一つ。
取り出して開けてみると、そこには白を基調にした制服が二つ入っていた。他にも下の方にいろいろ入っているらしいので取り出していく。書かれていたもの以外にも、戸籍の証明書や地図まで入っていた。
「ん? これ――」
そして一つずつ確認していくと、ある物を見て私は手を止めた。
「履歴書と戸籍の情報が少し違う」
その二つには、私とオーフィスが6歳と記されていた。まあ、本当の年齢を書くわけにはいかないから違うことは仕方ないんだけど、私の身体は転生時の10歳のままなのだ。流石に6歳では大きすぎる。そして、私を参考にして姿を作ったオーフィスもまた然り。
オーフィスは姿を自由に変えられるからいいけど、私は能力を使って6歳ぐらいの身体まで時間を巻き戻すことはできるのかな? 転生したのは10歳からだから、それ以上前に戻すことができるのか分からない。
「あと、オーフィスの名前を変えたのはどうしてなんだろう?」
私の名前は真代 絆のままだったが、オーフィスは
「異世界なんだから、オーフィスのままでもいいと思うんだけど」
それとも、この世界でオーフィスという名前は何か特別な意味を持っているから使えないのだろうか? 履歴書だから、元の世界に戻った時に気づかれないようにするためなのか? はたまた別の理由か。
「考えても仕方ないし。とりあえず、身体の問題をなんとかしよう」
私は目を閉じて、身体が6歳ほどにまで身体が戻るように念じてみる。すると――
「絆、縮んだ?」
オーフィスの言葉に目を開いて、近くにあった鏡を見てみると。そこには、ぶかぶかの服を着た小さくなった私がいた。
「服も調整しないと……」
私は、着ている服に自分の身体の大きさに合うよう念じる。すると、鏡の中には完全に6歳ぐらいになった私がいた。
「縮むことはできるみたいだね……オーフィス、あなたも私と同じぐらいの大きさになってくれる?」
「なぜ?」
「あの神様が、学校にそれで手続きしたから。あと、名前とかも変えられてる」
私は、先程読んでいた履歴書をオーフィスに渡す。
「そこに書かれている内容に合うよう、身体を変えてもらえないかな?」
「……分かった」
少し読んでオーフィスが答えると、徐々にオーフィスの姿が縮んでいき、私同じぐらいの身長になった。
「これでいい?」
「うん、大丈夫だよ。それと、二人以外の時は、私はオーフィスのことを美遊って呼ぶから」
「ミユ?」
オーフィスは首を傾げる。
「何の意図があるかは分からないけど、神様がその名前で手続きしたから、世間的にはそっちの名前で通すしかないんだ。大丈夫?」
「別に、構わない」
あまり興味がないのか、どうでも良さげにオーフィスは言う。
それから私たちは、町の地理を把握するために部屋を後にした。地図は持っていたけど、それはあくまで参考でしかないし、ついでに買い物をして来なくてはいけない。
そして一通り町を見てまわると、魔力と妖力らしき妙な気配のする場所に向かった。妙な気配があったのは、やたら大きなお屋敷だ。表札には『月村』と書かれていた。次に向かったのは魔力を感じる場所、大きい方に向かってみるとバリアフリーで設計された一軒家だった。こちらは
『八神』という表札が付けられていた。
そして最後に、もう一つの魔力を感じる場所へ向かう。
「ここは、喫茶店?」
魔力の気配を頼りに歩くと『翠屋』と言う看板がある喫茶店に辿り着いた。有名なのか、それともピーク時なのか分からないが、随分と繁盛している。それに――。
「絆、もう一つある」
「分かってる」
その中には、僅かにだが妙な気配も感じた。それも、屋敷で感じた気配と似ている気がする。さて、どうするか……。
前の二つは個人の所有地だったから入れなかったが、ここは喫茶店だ。客として入ることは可能。しかし安易に入っていいものか……。
「………入ろう。今は少しでも情報が欲しい」
「分かった」
私たちは入ることに決めて、扉を開けた。
カランカランとドアの上に付けられたベルが鳴る。中は予想通り、かなり混んでいた。座れるかな?
少しするとメガネの女性がやって来た。高校生ぐらいかな?
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「2名です。座れますか?」
「申し訳ありません。ただいま満席で……あっ、少々お待ちください」
そういうメガネの女性は、少し離れた少女が三人座っているところに向かい何かを話し出す。そして、すぐにこちらに戻ってきた。
「相席でよろしければ座れますが、いかがしますか?」
「構いません。お願いします」
「それでは、こちらの席へどうぞ」
そう言われて私とオーフィスは女性についていくと、先程の三人の少女がいる席に来る。
「それじゃあ、さっきも言ったけど、この子達と相席お願いね」
『はーい』
女性の言葉に元気よく返事をする三人の少女。それと同時に女性は注文に呼ばれて別の席に向かった。
「ほら、いつまで立ってないで座ったら?」
金髪の少女にそう言われ、私とオーフィスは席に着く。
「すみません。そして、お気遣いありがとうございます」
「別に構わないわよ。それより自己紹介でもしない? アタシはアリサ・バニングス、あんたは?」
なんで自己紹介する流れに……ただの相席なのに。
「真代 絆です。それと、こちらは音無 美遊」
「真代さんと、音無さんだね。私は月村 すずか、よろしくね」
そう言ってきたのは、藍色に近い紫の髪の少女……月村。この子から感じる気配と、お屋敷で感じた気配が似ている。でも人間の気配もある、何かのハーフなのかな?
「私は高町 なのは。よろしくね。絆ちゃん、美遊ちゃん」
元気よく言ってきたのは、茶髪のツインテールの少女。というより、いきなり呼び捨て? そして私が絆『ちゃん』? おそらく女の子に間違われているんだろうな~。
それと、大きな魔力はこの子から感じる。雰囲気的に危険は、なさそうだけど。
「よろしくお願いします。バニングスさん、月村さん、高町さん」
「アリサでいいわよ」
「私も、すずかって呼んで?」
「私も、なのはでいいの」
子供ってすごいな~。理屈無用で誰とでも仲良くなろうとする。
そうして私たちは適当に注文をして、しばらく話をした。それと、看板メニューと言われているらしいシュークリームを食べてみた。かなりおいしい、私が作る物とは趣向が少し違うので新鮮だ。オーフィスは終始無言、話しかけられても最低限の返事しかしなかった。そして話をしていくうちに、ある話題に高町が声を上げる。
「絆ちゃんと美遊ちゃんも聖祥に通うの!」
「も?」
「アタシ達も聖祥に通ってるのよ。ちなみにだけど、アンタ達の学年は?」
「二人とも、一年生だよ」
かなり話したので、もう口調は元に戻している。
「そうなんだ。私たちも一年だから、同じクラスになれるかもしれないね」
「その時はよろしくね」
なったらね……。
「こちらこそ、お願いするよ。っと、そろそろ私たちは帰らないといけないから、ここら辺で失礼するね。行こう、美遊」
「ん」
そう言って私は立ち上がり、会計を済ませて翠屋を後にした。
帰り際に「またね~」と手を振られたので、振り返しておいた。
閉店間際で割引されている物を中心に買い物を済ませて、家に戻ってきた。今は夕飯も終えて、明日の支度をしながら今日のことを振り返っている。
まだ初日だから、確実とは言えないけれど。この町には、特に危険なことはなさそうだ。神様が言っていた、この世界の原作がいつ頃から始まるのだろう。
小学生から原作が始まるとするならば、ある程度思慮ができる5~6年生ぐらいだろうか。それとも原作は水面下で行われていて、すでに始まっているのか。
「どちらにしても、下火ぐらいは既にあるよね」
現状で分かる原作の手掛かり。例え私たちが5~6年生で関わることになっているとしても、その予兆がどこかにある筈。
今日のことで印象に残ったのは高町なのはの魔力と月村すずかの妙な気配だ。もし彼女らが原作に関わっていたとしたら。この世界では、異能の何かが起こる筈。それに――。
「あの子たち、本当に小学生なの?」
小学生にしては、言動が随分と大人びている。というより達観しているのだ、あの三人は。私が言えたことではないけど、もし彼女らの思考の高さが原作に合わせるための物だとしたら。
「案外、低学年から原作が始まるかもしれないね」
考えれば考えるほど、多くの可能性が出てくる。そして、それはいくら考えても答えは出ない。暗い迷宮の出口を手探りで探し回っているようなものだ。これ以上考えても仕方ない。
「それにしても、随分とレベルが高い学校だね」
私は手に持った学校のカリキュラムを見ながら呟いた。普通小学一年生って、分数やらないよね? 6年になったら微積って……私とオーフィスはできると思うけど、ここの子たちはそんなに頭いいの?
「さてと。あとは制服を取り出して、今日はもう寝よう」
私は、ダンボールに入れられていた制服を取り出す。私とオーフィスで、それぞれ男女に分かれている。私が男子だから、オーフィスは女子だね。戸籍も、女性で登録されているし。
「あれ?」
そこで私は、ある違和感に手を止める。制服が……大きすぎる。
「そういえば……身体を縮めたんだった」
ダンボールに入っていた制服は10歳時の身体に合うように作られていた。そのため大きい。そして、それはオーフィスも同じ。
「というか。だとしたら、家の服全部ダメってことだよね……」
能力でサイズを変更できるけど、冬服とか夏服とかで分けて仕舞っているから全部取り出して直さないと。
結局、私が布団に入れたのは、それから1時間後のことだった。
オーフィスの名字の
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