1.お帰りなさいませ、10代目
並盛高校を無事卒業し、その足でそのままイタリアに渡ったボンゴレ10代目ファミリーは空港で待ち構えていた門外顧問(チェデフ)のオレガノとターメリックに静かな歓迎を受けた。
「・・・お帰りなさいませ、10代目」
オレガノの言葉に、ツナは首を傾げた。
「お帰りって・・・」
「本日より、綱吉様はボンゴレ10代目候補としてイタリアでお過ごしになるので・・・」
「あぁ・・・ナルホド」
ニコリと笑うオレガノの言葉に、ツナは納得の声をあげた。
「車を準備させてあります。どうぞこちらへ」
ターメリックに案内され空港の外に出ると、突き抜けるように高い青空が眼前に広がった。
「・・・すごい」
溜息を漏らしてツナが呟く。
「気に入ったか?・・・今日からこの国で暮らすんだぞ」
「うん・・・同じ空とは思えないや・・・ボンゴレの本部がある所ってもっと森の中なんだろ?どんな所か今から楽しみになってきたかも」
「本部に行ったら景色よりも何よりも“城”に目を奪われるだろうけどな」
ニヤリと笑って言うリボーンに、ツナは目を瞬かせる。
「“城”・・・って?」
「・・・まぁ、行ってみての楽しみだ。よし、オメェらとりあえず出発するぞ」
ツナと守護者達は頷き、促されるままに用意されていたリムジンに乗り込んだ。
車が進むと同時に外の様子も徐々に変わって行く。
コンクリートの建物が目立つ町から木製の建物が多く建つ町へ、そして更に道の奥へと進んで行くと村や集落と呼ばれるような古い町並みの奥に深い森が見え、その奥の高台にまさに“城”と呼ばれるにふさわしい建物があるのが見えた。
「アレが、ボンゴレ本部だ」
そう告げたリボーンがツナの表情を伺えば、呆然と“城”を見つめていた。
「驚いたか?ツナ・・・アレが3ヶ月の後オメェのモンになるんだぞ」
「・・・え・・・ええぇええッ!!」
自分のモノと言われて改めて驚きを露わにしたツナに、運転していたターメリックと助手席に座っていたオレガノがクスクスと笑った。
「綱吉様のお部屋も守護者の皆様のお部屋も、あの“城”にご用意させていただいております」
「そ、そうなんだ」
「ははっ、すげーのな♪」
「・・・天下のボンゴレだぜ、当たり前だろうが野球馬鹿」
楽しそうに言う山本に獄寺が呆れたように告げる。
「・・・ボヴィーノの何倍あるんだろ・・・」
ボソリ、とランボが呟く。
「マフィアの城ランキングでは堂々の1位だった気がする・・・」
フゥ太が言えば、ツナは口元を引き攣らせた。
「へ、へぇ・・・」
「まぁ、見た目以上でけーぞ。地下もあるからな」
「地下ぁ!?・・・また、地下・・・っていうか、アジトって地下に作るのが常識なの!?」
未来でも自分が並盛の地下にアジトを作らせていたことを思い出したツナがそう言えば、リボーンが肩を竦める。
「さぁな。・・・ただ、地下アジトってのは良く聞くぞ」
「どうしよう・・・今からついていけてない・・・」
動揺しっぱなしのツナに、リボーンは苦笑をうかべた。
ダメツナは脱したが、一般人的感覚はそう簡単には抜けないらしい。
「まぁ、そのうち慣れるぞ」
「うう・・・そうかなぁ・・・」
ツナの諦めの悪さは天下一品だが、順応性は高いことをリボーンは知っている。
全てに染まる大空の如く大らかなその気質はとても好ましい。
「あ、あの、オレガノさん」
「はい、何でしょうか綱吉様」
「・・・あ、えと、その様っていうのは・・・ちょっと」
「では、10代目。何か?」
「クロームはもうこっちに着いてるんですよね?」
ツナの質問にオレガノは頷く。
「はい、すでに“城”の一室にお招きしております」
「・・・彼女、ちゃんとご飯とか食べてますか?」
「ええ、緊張した様子は見受けられますが、お食事はきちんとされていますよ」
ニコリと笑い答えたオレガノに、ツナは安堵する。
未来に飛ばされた当初は環境の変化に戸惑い、ほとんど食事に手をつけなかったことがあるクロームのことだから、また心を閉ざしているのではと心配していたのだが、杞憂だったようだ。
「クロームもいつまでも子どもじゃねーんだ。昔のような真似はしねぇだろ」
リボーンにはツナの心配がお見通しだったらしい。呆れたような視線を向けられた。
「イイだろ、心配だったんだから。でも、良かった・・・」
「・・・クロームより心配するべき連中が後から来ることを忘れてねェか?」
「・・・・・・・・・えーと“城”に着くまであとどれくらいだろう!?」
(・・・話を逸らしやがった)
雲雀と了平についてはつっこまれたくなかったらしい。しばし硬直してから無理矢理話を逸らしたツナにリボーンは溜息を漏らした。
(俺からの話を逸らすなんざ、だいぶイイ性格になってきたじゃねぇか)