某所
一方、見事脱走に成功したツナと9代目は、とある場所に向かってのんびりと歩いていた。
「ほえ~、こんな道もあるんだね」
「そうだよ。ここならば絶対にリボーン達には見つからないよ。なにせ、初代特製の脱出口だからね」
「へぇ~」
キョロキョロと辺りを見まわすツナ。
まるで樹木でできた迷路のような通路・・・そう、ツナ達は今、本部周辺を囲む森の中にいた。
「でも、この迷路の入り口が見つかったらアウトだよね」
「ふふふ・・・それがまた違うんだよ」
「?」
楽しそうに笑い、9代目は杖に死ぬ気の炎を宿す。
「この迷路はね、死ぬ気の炎・・・しかも、大空の炎にだけ反応するようになっているんだよ」
「・・・あ、じゃあ・・・匣兵器みたいな感じ?」
未来で潜入したミルフィオーレのメローネ基地。それ自体が晴の炎で操る匣兵器だったということは、正一から聞いて知っている。
この一見ただ造園したように見える森の迷路もまた、そのシステムに似た作りになっている―――なんて知ったら、正一やスパナが喜んで研究しそうだ。
「そう、匣兵器のように物騒ではないがね」
「リングがⅠ世の頃からあったんだから、そういうことも有り・・・かなぁ?」
「有り、ということにしておこう・・・ここはね、ボス以外では大空の炎を宿すことのできる者だけがこの迷路を潜り抜けることができるんだよ」
今は希少な大空属性。この迷路を潜り抜けてツナと9代目を探そうというならば、XANXUSか同盟ファミリーのディーノ辺りを連れて来ないと無理、ということだ。
「あ、ロンシャン辺りでも可かな・・・あ~、いや、アイツ元々は敵対ファミリーだしなー・・・」
「ああ、トマゾの彼かい?・・・そういえば、正式な継承式には彼も呼ぶんだろう?」
「うん、そうだよ。同級生だし、先代までは知らないけど今は仲良いし」
ボス同士が仲良ければ、ファミリー同士のいざこざも有耶無耶にできるというものだ。
外も中も危険いっぱいな生活をしているロンシャンがあまりにも可哀想だったので、ツナがそう提案したのだ。
「なら、ツッ君が10代目になった暁には、同盟を組んでみるのも良いかもしれないねぇ」
「うん、それに・・・シモンファミリーの皆とも、正式に同盟組みたいんだ」
「ああ・・・それは良い考えだね。もう、私は引退する身だから、ツッ君の好きにして良いんだよ」
「・・・そうする」
苦笑をうかべ、ツナは頷く。
好きにしても良いといわれても、まずは守護者を除いた他の幹部を黙らせる力が必要だ。
出迎えたファミリーの中にも、年若い日本人がボスになることに不満を持つ者もいたようだ。後からリボーンに言われて、気をつけておいた方が良い人物リストとやらを作成させられた。
なぜ、ツナ自身に作らせたかというと、自分で作れば忘れねーだろ、とのことだった。
「・・・で、大空の炎でどうやったら追手を撒けるの?」
話を戻すツナに、9代目は破顔する。
「おお、そうだったね・・・そう、この杖に灯した死ぬ気の炎を・・・え~と、この辺りだったと思ったが・・・ああ、ここだ。ここに当てると・・・」
9代目は、ガサガサと木に絡みついたツタをめくり、ようやく見つけた木の窪みにその炎を当てる。すると、ザワザワと木が意志を持ったかのようにざわめく。
「・・・な、なんか、怖いんだけど・・・」
「大丈夫、お化けとかではなく、ちゃんとした理由があるからね」
「理由?」
「そう、この迷路の木々は特殊でねぇ。死ぬ気の炎を吸収する作用があるんだよ。・・・初代の頃にリングと共に与えられたらしいんだが、この森はいわばその木々を隠すためのカムフラージュというわけだよ」
「なるほど・・・これもトゥリニセッテの関係するものってことかぁ」
ツナが感心しながら、9代目の炎を吸収した木を見つめていると、やがて地鳴りのようなものが聞こえてくる。
「どうやら、守護者の誰かがこの迷路に気付いたようだね」
「・・・どういうこと?」
「言ったろう?この迷路は大空の炎に反応するって」
目を細めた9代目が不思議そうにしているツナに、他の皆には内緒だよ、と告げる。
「・・・この迷路は形を変えるんだ」