雲雀はここ1カ月で一番の上機嫌だった。
なぜならば、目の前にいる男と一戦交えるチャンスが巡って来たからだ。
「・・・XANXUS、今の言葉忘れないでよね」
獰猛な笑みをうかべる雲雀に、XANXUSは目を細めた。
「ああ・・・こっちとしても、この匣の威力を確かめたい」
そう言うXANXUSの手の上で転がされているのは、ヴァリアーの紋章が刻まれた匣。
白蘭戦の時と同じであるならば、XANXUSの大空の炎と憤怒の炎を注入された匣の中からは天空嵐ライガーが出てくるはずだ。
「楽しみだね、沢田のボンゴレギアもなかなか面白いけど、純粋な大空属性じゃない匣兵器を使えるのは、君ぐらいだろうしね」
今にも獲物を取り出しそうな勢いの雲雀に、XANXUSはわずかに眉間のしわを深めた。
「う゛お゛ぉ゛いッ!雲雀恭弥ァ!!戦うのは今じゃねぇぞォォオ!」
部屋中どころか、屋敷中に響き渡るのではないだろうかと思えるほどの大音量。
「ウルセェッ!!カス!!」
「ぃだッ!?・・・う゛お゛ぉ゛いッ!XANXUSぅ!!手近にあるモン投げんじゃねぇえ!!」
机の上に乗っていたガラス製のペン立てを投げつけたXANXUSに、大音量の発生源であるスクアーロが叫ぶ。
「・・・フン」
鼻を鳴らすXANXUSに、ペン立てがクリーンヒットした額を撫でながら恨めしげに視線を向けるスクアーロ。
「・・・相変わらずだね。まぁ、そう簡単に変わるものでもないか」
とか言っている雲雀が一番相変わらずだと思いつつ、スクアーロは再度忠告する。
「・・・イイかァ!匣兵器のチェックはヴァリアーの幹部が揃う次の休みの日だァ!その時に雲属性への耐性を測る、そのためにテメェに依頼したんだからなァ!!」
ヴァリアーには未だに強い雲の炎を扱える隊員がいない。そのため、雲雀にビジネスとして依頼をしたのだ。
「わかってるよ、報酬も貰ってるしね」
マーモンとタメを張れるんじゃないかと思うくらいに法外な値段を吹っ掛けられたが、それはXANXUSとも戦えるというおまけがつくことを条件に値引かせた。
「・・・沢田はよくコイツを守護者にする気になったなァア・・・」
自分達のことは棚のてっぺんに放り投げて、スクアーロはぼやいた。
その時だった。隊員の1人が入室の許可を求める。
「・・・どうしたァ!」
XANXUSの代わりにスクアーロが応じると、ボンゴレ本部からの通信が入っている旨を告げられる。
「・・・ふぅん、もしかして沢田がやったかな?」
楽しそうに呟く雲雀に、XANXUSとスクアーロが不審げに視線を向けた。
ここ最近リボーンに隠れてツナに挑みまくっていた雲雀は、その戦いの最中に例の引き継ぎの際に聞いた脱走の話を持ちだした。
ボンゴレギアなんてものを使い出してから、更に強くなったツナは雲雀の攻撃を軽くいなしてそれに答えた。
「・・・『ボンゴレボスの最大の仕事』なんだってさ」
「・・・はぁあ゛あ゛あ!?・・・脱走が、かぁあ゛!?」
雲雀の説明を聞いたスクアーロが呆れた表情をうかべる。
「本気にしてないようだけど、この話は初代まで遡るらしいよ?」
クツクツと笑う雲雀はとても楽しそうだ。
「テメェはイイのかァ!?」
「僕は彼の雲の守護者だ。自分の好きなようにさせてもらう。・・・ああ、でも、他の守護者が全員彼を捕まえるために動いているなら、彼の味方をしてやるのも良いね」
目を細めた雲雀はその方が面白いかもしれないと思い始めていた。
それを肌で感じ取ってしまったスクアーロは、ツナと雲雀なんていう凶悪なタッグを組まれたら堪ったものではないと、そうなる前にとXANXUSに視線を向けた。
「う゛お゛ぉ゛いッ!ボスぅ!」
「・・・通信を繋げろ」
半眼で隊員を睨み据え、XANXUSが命じる。
隊員が慌てて差し出した通信用のパッドを手にとり、XANXUSは画面を見つめた。
「・・・黄のアルコバレーノか」
『XANXUS・・・9代目がツナを連れてボンゴレ本部を脱走した。オメェらヴァリアーは9代目直属だろ?少し協力してくれねェか?』
リボーンらしくもなく最初から下手に出て来たので、さしものXANXUSも目を瞠った。
「・・・どうなってやがる?」
とりあえず、現状を聞こうという姿勢を見せたXANXUSに、リボーンはその表情に疲れを滲ませて説明を始めた。
『・・・実は・・・』
フン・・・ドカスが脱走したぐらいで大げさだな(by XANXUS)
脱走したぐらい、で済むならこんなに焦ってねェぞ!!!(by リボーン)