「あれ?なんか嫌な予感がする」
ポツリ、と迷路の中でくつろいでいたツナが呟く。
「おや、ツッ君もかい?私もだよ」
2人の超直感が同時に示した嫌な予感。それが何かまでわかればいいのにと思いながらも、ツナと9代目は重い腰をあげた。
「日暮れまではもつと思ったんだがねェ」
「ん~、大空の炎じゃないと入り口が開かないっていうのは、じい様の守護者は知らないんでしょ?」
「ああ、そのハズだよ」
「だとしたら、この予感はなんだろう?」
首を捻るツナの指に嵌められたVG(ボンゴレギア)が光を放つ。
「へ!?」
「おお!」
浮かびあがったのは、ボンゴレ初代ボス、ジョット。
『Ⅹ世(デーチモ)、久しぶりだな』
「・・・Ⅰ世(プリーモ)?」
『どうやら、俺の遺産をちゃんと使ってくれているようで嬉しいぞ』
キョトンとして己を見つめるツナに笑みを向け、ジョットは次の瞬間眉を顰めた。
『おそらく、裏で手引きしているのはGだろう。アイツはこの迷路のコトを知っているからな』
「Gって、初代嵐の守護者の?・・・ってことは、獄寺君が近くまで来てるんだ」
ポン、と手を打つツナに、ジョットは苦笑する。
『随分と余裕だな?』
そもそも9代目とノリノリで脱走するなど、昔のツナならば有り得ない行動をとっていることに、ジョットはやはりツナは自分の血筋を濃くひいているのだと実感する。
「ええ、まぁ・・・今回は捕まっても良いかって思ってるんで」
「試してみているだけだからねェ」
のほほんと答える爺孫に、ジョットはああ、と納得した。
『なるほど、今回は引き継ぎの進み具合の確認といったところか?』
「へへ、当たりです」
ニコリと笑うツナ。
「獄寺君達がどこまでコヨーテ達に引き継ぎを受けているか、それからリボーンにどこまで通用するか、その確認なのですよ」
9代目が補足すると、ジョットは頷いた。
『黄のアルコバレーノか、確かに厄介な相手だな』
「でも、これで門外顧問とかが出張ってきたら大変だよね」
「ああ、そうか・・・家光達を忘れていたな」
「・・・ラルとかに怒られるくらいだったら、すぐに降参しちゃおうかな」
「そうだねぇ、ラルは怖いからねェ」
ツナも9代目も何気に酷いことを言っているのだが、ここにはツッコミを入れる者がいない。
唯一のツッコミ要員だったツナがツッコミを止めたら、一体、誰が彼等を止められるのか。いや、誰も止められない。
この迷路の前に集合し始めた守護者達のことを思い浮かべて、ジョットはほんの少し憐れみを覚えた。
が。
『・・・まぁ、イイか。楽しいし』
それも一瞬のことだった。
***
ヴァリアー本部
「・・・・・・大空属性の炎しか感知しない迷路、だと?」
『・・・そうだ』
リボーンの説明を受けて、ぎゅうぅぅ、とXANXUSの眉間にしわが寄った。とてつもなく不機嫌な己のボスに、スクアーロは冷や汗ものだ。
「う゛お゛ぉ゛いッ!それは間違いねェんだなぁあッ!?」
『・・・間違いねぇぞ。初代嵐の守護者のGが言ったんだからな』
「初代だァ?・・・あぁ、そういうことかぁあ!」
縦の時間軸の話は白蘭戦の時に聞いていた為にピンと来た。
「クソジジィが・・・カッ消す!!」
ガタン!と立ち上がったXANXUSに、スクアーロは慌てた。
「ま、待て!ボスぅ!!カッ消すのはマズイだろうがぁああ!!」
「そんなの、言葉のアヤでしょ?・・・というか、僕もその迷路とやらに行くよ。このカギ・・・その迷路にも有効なのか知りたいし」
そう言って雲雀が取り出したのは、引き継ぎの際に受け取ったアラウディのカギ。使う為には雲属性の炎を通さなくては使えないという、雲の守護者専用のカギだ。
『迷路の前には獄寺と山本がいる・・・連絡を取り合って合流してくれ。俺もすぐに行く』
リボーンがそう言うと、通信が切れる。
「・・・・・・おい、カス」
「・・・何だァ」
今のXANXUSの機嫌の状態からいって、カスじゃねェ、などと言おうものなら途端に憤怒の炎が投げつけられそうだったため、スクアーロは不承不承返事をする。
「今いる幹部を集めろ・・・俺の炎でも開かねえ時は・・・迷路をブッ壊してでも、ドカス共を引きずり出す」
相当なキレ具合である。一見静かに見えるが、その眼にはギラギラと怒りの炎が燃えていた。
「わ、わかったぞぉ・・・」
もしかしたら血の雨が降るかもと思いながらも、スクアーロは現在ヴァリアー本部にいる幹部達を呼びに走った。
そして集まったのは、レヴィ、マーモン、ベルの3人。他の面子は現在任務中で本部にはいなかった。
「・・・ターゲットはジジィとドカスのコンビだ。どんなことをしてでも迷路から引きずり出せ」
ギラギラ輝く視線に、幹部達はやる気満々?で頷いた。
「わかりました、ボス!ボスの御命令であれば!!」
「わかったよ・・・後で、迷惑料を9代目と沢田に払ってもらわないとね」
「・・・シシシ・・・うっかり殺しちゃっても大丈夫?」
「・・・だいじょばねぇぞぉおお!絶対に殺さず生かして捕まえろぉ!!良いなァ!?」
やる気というより、ヤ(殺)る気満々だったらしい。
思わずスクアーロが叫べば、幹部達はそちらに一瞬視線を向け、それから何事もなかったかのように元に戻る。
「ボスためならば、火の中水の中森の中・・・」
「それ、少し違うと思うけどね・・・まぁ、生かしておいた方が請求はしやすいからね、ギリギリ生かしておいてよ、ベル?」
「シシ、じゃあ、その後はうっかりやっちゃっても平気?」
「う゛お゛ぉ゛いッ!!俺の話を聞けぇええええッ!!!」
ヴァリアーは今も昔も変わらずマイペースだ。
「・・・ねェ、群れてないで早く行くよ」
雲雀の不機嫌な声に、ヴァリアー幹部達はピタリと動きを止める。
なにせ、雲雀はここ数日ツナだけでは飽き足らずに、ヴァリアー幹部にも勝負を挑みまくっていたのだ。
さすがのヴァリアー幹部も、数々の戦いを乗り越えて来た雲雀と彼が扱うVGにアッサリとまではいかないものの、苦戦の末敗退するという目に遭っている。
もはや、雲雀とサシでやりあえるのは、XANXUSくらいだ。
他の10代目の守護者達にしてもどれだけヴァリアー幹部が抵抗できるのか、かなり怪しい。それだけ、彼等は成長せざるを得なかったのだと実感している。
「・・・テメェは通信機は持ってねェのかぁあ?」
他の守護者達と連絡を取り合うための方法はヴァリアーの通信回線をねじ込むか、雲雀の通信機を使うかの2択だった。
なるべくならば穏便に行きたい。そう思って問いかければ、雲雀は上着の内ポケットからイヤフォン型通信機を取り出して、スクアーロにポイっと投げた。
「山本なら80、獄寺なら59で繋がるよ」
一応、番号は覚えているのかと感心しつつ、スクアーロは話の通じやすいだろう山本の方に通信を繋げた。
『・・・お?雲雀?』
誰からの通信かわかるようになっているらしい。(今度、ヴァリアー用にも作らせよう)山本が珍しいと言わんばかりの声をあげた。
「う゛お゛ぉ゛いッ!山本武ィ!!」
『うぉ!?・・・スクアーロ?』
いきなりの大音量に驚いたようだったが、例によって例の如く、慣れた様子でスクアーロの名を呼んだ。
「今、どこにいるんだぁあ!?俺達も、加勢するぞぉお!」
『ははっ、そりゃ助かるぜ。・・・えーっと、場所は説明し難いのな、だからボンゴレ本部を囲む森の東側を見ててくれ』
山本の言われる通り、XANXUSの執務室から見えるボンゴレ本部を囲む森を見降ろして、スクアーロはその合図を待った。
『行くぜ!・・・小次郎!!』
山本の声と共に、森のとある場所から雨燕が飛びだした。
「確認したぞォお!!そのまま雨燕を出しとけェええ!」
『りょーかい!』
「・・・行くぞォ!!」
山本の雨燕を目指して、スクアーロ達は走りだす。
その先に開き直った9代目とツナとⅠ世がいるとも知らずに・・・。