迷路の中に先に入った雲雀は、くるりと辺りを見回した。
「ふぅん・・・まさに迷路だね」
ざわざわと揺らめく木々は、雲雀が敵か味方かを見極めようとしているのだろう。
「僕は沢田の味方だよ。そう言っただろう?」
雲雀は誰ともなくそう告げる。一瞬の後、木々が両わきに避けて雲雀の前に一本の道が出来上った。
「ナルホド、この先に沢田がいるわけだ」
クツリと笑い、雲雀は悠然とその道を進んでいく。
「あ、雲雀さん。こっちです」
しばらく進んだ頃、不意に呼び止められて雲雀は横を向いた。
「いきなり迷路の中に一本道が出来てビックリしちゃいましたよ。雲雀さんの仕業だったんですね」
ニコニコと話しかけてきたのは、皆が必死に探している相手・・・沢田綱吉本人だった。
「・・・君、こんなにイイ性格してたっけ?」
「さぁ?もう自分でもわかんないです。でも、なんだか、じい様が楽しそうだったから」
「・・・楽しそう、ね。まぁ、僕はどうでもいいけど・・・外には9代目の守護者も君の守護者もXANXUS率いるヴァリアーも揃ってるよ」
「おぉ~、豪華ですねェ」
「・・・群れすぎだよ」
「あはは・・・っていうか、雲雀さんは味方してくれるんですね」
ムッとした様子の雲雀に、ツナはニコリと笑いかけた。
「まぁね、どっちがより群れてないかと言ったら、君達の方が群れてないだろう?」
自分は群れていない方の味方だと告げられれば、ツナは困ったように笑った。
「そこは、他の誰でもなく俺の味方になってあげるって言って欲しかったですけど・・・」
「じゃあ・・・他の誰でもなく、僕は君の味方だよ。・・・これでイイ?」
「・・・雲雀さん、ちょっとイイ性格になりました?」
「さてね。駄犬が羨ましがって吠えてるのが面白いっていうのもあるけど」
「だ、駄犬って・・・」
ニヤリと笑う雲雀に、ツナはああ、と思わず納得してしまった。
(獄寺君・・・雲雀さんに噛みついたんだね~)
最近は落ち着いてきた獄寺だが、まだまだ荒っぽい所があり、たまに大胆な行動にでるから安心できない。
というか、雲雀に余裕が出てくると、こんなにもイイ性格になるのかと感心してしまった。
「雲雀さん、大人になった方が厄介ですね」
「それは君にも言えるでしょ。昔なら君自身が大騒ぎしてそうな状況なのに」
「あはは、確かにそうですよね・・・っていうか、XANXUSかぁ・・・ちょっと怖いかも」
(ちょっと、なんだ)
雲雀はそれほど怯えていない様子のツナに、目を瞠る。
XANXUSの名前を聞くだけで“ひぃ!”とか“ぎゃあ!”とか叫んでいた人間とは思えない。
もちろん、雲雀の名前を聞いた時も同じような反応をしていたのだが、そこは考えないことにする(その当時は化け物扱いかと苦々しく思いはしたが)。
「で、どうするの?今回に限っては君の思うようにさせてあげるつもりでいるんだけど?」
「一応、じい様と相談して、ある程度逃げたら捕まるつもりだったんですけど・・・」
「けど?」
雲雀が聞き返すと、ツナはことり、と首を傾げた。
「XANXUSがキレてるようなら、ちょっと怖いのでもう少し逃げようかな~と思ったり」
「それで、さらにXANXUSがキレたらどうするの?」
「さじ加減がちょっとわからないんで様子見をしてたんですけど~、今の時点でプッツンしてるのは変わりなさそうなので、もうどうでもイイかって・・・」
ね?じい様。とツナが振り返った先には9代目がいて、その後ろにはツナに良く似た男の姿。
「・・・ナルホド、向こうは初代の嵐がバックに付いて、こっちは初代ボンゴレが付いてるわけか」
「なんか、GとⅠ世の追いかけっこに巻き込まれた感たっぷりなんですけどねー」
『おそらく、Gも俺がこちらに味方していることはわかっているんだろうしな。Ⅹ世の嵐の守護者という媒体を得た今、こうして“外”に出られるようになったからな・・・ここらで1回説教でもしておこうといったところか』
「なんだか、味方に付いているというより、とり憑かれたって感じだね」
雲雀が辛辣な感想を漏らせば、ジョットは傷ついたような表情をうかべた。
『俺は、悪霊ではないのだが・・・』
「あぁ、そうそう・・・悪霊といえば、霧も味方なんだって?」
『・・・Ⅹ世、お前の雲の守護者はアラウディよりもイイ性格をしているな・・・』
「あはは・・・っていうか、ダブルで貶すなんて高度な技を雲雀さんが使うとは」
「ねぇ、クローム髑髏は?・・・まさか、あの男が手助けしているんじゃないだろうね?」
「・・・クロームはまだ見かけてませんよ。誰にも見つからないようにこの迷路に入ったんですから。・・・たぶん、XANXUS達が強行突入してきたら助けに来てくれると思いますけど」
ツナがそう言った時だった。ざわざわと木々が揺らめくのを確認したジョットがハッとして叫んだ。
『来るぞⅩ世!捕まりたくないのならば、この迷路から脱出するぞ!』
「じい様!」
「そうだね、ツッ君。とりあえず・・・逃げよう!」
「・・・じゃあ、僕がここでヤツ等をくいとめてあげるよ」
雲雀がそう言えば、ツナは首を横に振った。
「ダメです、雲雀さんも一緒に逃げてください」
そう言うや否や、ツナは雲雀の右手首をガッチリと掴んで走りだした。
『はっはっはっ!Gがいくら助言しようと、こっちには超直感(×3)があるのだからな!そうそう簡単に捕まらんぞ!』
(確かにそりゃ捕まらないや)
ツナは雲雀の手を引きながら、ジョットの言葉に苦笑いをうかべる。
(獄寺君達、かわいそー・・・)
自身も元凶の1人であることを棚にあげて、追手となった己の守護者達を憐れんだのだった。