スレツナと化したツナは強かった。
XANXUSに攻撃の隙を与えず、殴る、蹴る、ふっ飛ばす、燃やす、凍らす―――それはもう技のオンパレードで、XANXUSをぶちのめした。
「っ、く・・・」
エクステンションは燃え上がり、手が凍りつき、壁に叩きつけられた。
XANXUSもさすがにここまで来ると認めざるを得なかった。目の前の沢田綱吉は乳臭さが抜けたどころの話ではない。
ボンゴレボス候補として相応しい力とカリスマ性を兼ね備え、余裕さえ見せて優雅に全力で気に入らない者をぶちのめすという域まできていた。
「XANXUS・・・」
ダンッ
壁を蹴る音が聞こえたと思ったら、顔のすぐ脇に足があった。
「いい加減、俺をドカス扱いすんのは止めろ。・・・まぁ、今日はこれでお仕置きは終わりにしてやるが・・・次に俺の気に入らないことをしてみろ、今日の比じゃないお仕置きが待ってるからな?」
美しい笑みだった。思わず見惚れる。
ビクビクとしていたあの頃の沢田綱吉は、どこかイライラさせられた。
甘い考えをその口から聞くたびに、なぜ自分がこんな甘ったれたヤツに負けたのかと腹が立った。
未来でのことを知った時でもまだ認められなかった。いつかまたコイツに牙を剥くことになるだろうと思っていた。
しかし、目の前にいる男はXANXUSの知る沢田綱吉ではなかった。
自分を完膚なきまでにぶちのめしても、まだ息が上がった様子もない。しかも炎を自在に操り、何の躊躇いもなく自分にその炎を向けた。
その覚悟は、美しく透明度の高いオレンジの炎から察することが出来た。
もう沢田綱吉に迷いはない。ボンゴレのボスとして、イタリアのひいては世界中のマフィア達の頂点に立つ姿が目に浮かんだ。
(悪くねェ・・・)
あの頃はちんちくりんだと思っていた見目も、甘いベビーフェイスは変わらないが、にじみ出る威厳がそれらを飾り、美しく見せていた。
力もある。人徳もある。それに、意外と頑固なのだということも知っている。
他人の意見に耳を貸す度量の広さも必要だが、自分の意見を押し通す頑固さは時には必要だ。こう考えてみると、沢田綱吉という男は意外とボスにふさわしいのではないかと思えてきた。
冷酷な表情もまた似合うではないかと、XANXUSは口の端をあげた。
「クク・・・ククク・・・」
「ぼ、ボスが笑ってる・・・!」
ゾッとしたのはヴァリアーの幹部達だ。
あそこまで徹底的にやられておきながら、怒るのではなく笑いだしたのだ。とうとう壊れたかと心配していると、XANXUSは妙に晴れやかな表情でツナを見上げた。
「大した成長だ・・・今のテメェなら・・・認めてやっても良い」
「認めてやっても良い?・・・へぇ・・・あくまでも上から目線か。まぁ、いいよ。お前にもプライドってもんがあるんだろうからな。でも・・・いつかその高い鼻ごとへし折ってやるから覚えておけよ?」
冷笑をうかべてXANXUSを見下ろすツナは、天使の皮を被った悪魔のようだった。と後にヴァリアー幹部達は語る。
そして、ここにも1人冷や汗をかいている者がいた。リボーンだ。
(やべぇ・・・マジでやベぇぞ・・・スレツナの扱い方がわからねェ!!)
最初からスレていたわけじゃないぶんリボーンには免疫がなく、あんなに可愛かった生徒がいきなりスレてしまったショックからまだ抜け出せない。
しかも、さっきから読心術で心を読もうと思っているのに、全く読めない。ちょっと放っておいたら、なんでスレを開花させてしまったのか。
ツナに聞けば明確な答えが返って来るはずだ。リボーンは勇気を振り絞ってツナに声をかけた。
「ツナ・・・どうして、いきなり・・・スレちまったんだ!!!」
「スレ・・・?なにそれ、美味しいの?」
「あ、いや・・・そういう意味じゃなく・・・」
真顔で返されてワタワタと慌てるリボーンに、ツナはフッと馬鹿にするような笑みをうかべた。
つい1ケ月前とは全く違う生徒の様子に、リボーンは泣きたくなった。
「ツッコミの辛さがお前にわかるか?歩く傍若無人」
「ブハ!」
歩く傍若無人と称されたリボーンに、XANXUSはじめヴァリアーの面々が噴き出す。
「ツッコミっていうのがどれだけ苦労しているか、お前にわかるっていうのか!!どんなにどんなにどんっっっなにツッコミを入れても改善しないボケ共の為に、この歳で『●スター10(某胃腸薬)』のお世話になってんだぞ!」
あ、そうだったんだ。とヴァリアーの面々が憐れみの視線を向けた。