そんなこんなでツナの守護者とヴァリアー幹部が妙な親近感を持ち始めた頃、ツナと雲雀の戦いも終わりに近づいて来ていた。
「・・・はぁ・・・はぁッ・・・まだ、全力じゃ・・・なかったの?」
あちこちに火傷を負い、息が上がっている雲雀に対し、ツナの表情は僅かに疲労の色を見せているだけ。
「全力、出しましたよ。さすがにさっきまでの“追いかけっこ”で消耗してるんで、これが限界です」
つまり、通常状態であればもっと強いということだ。
「・・・・・・はぁ・・・そう、かい・・」
懸命にトンファーを構える雲雀だったが、もう足はガクガクと震えて立っているのがやっとだ。
震え、といっても恐怖からではない。たて続けにツナの空からの攻撃を受けて腕よりも先に踏ん張っている足の方にガタがきたのだ。
「というわけで―――」
ニッコリと笑ったツナの姿がまたも視界から消える。
「―――またお互いに本調子の時にやりましょうね?」
耳元でささやかれたと思った瞬間、膝の裏を蹴られてカクンと地面に膝を付く。
「沢田―――」
「楽しみにしてますからね?」
そこで雲雀の意識はぶっ飛んだ。
***
「・・・終わった、のか?」
獄寺がごくりと喉を鳴らす。
「雲雀の奴、完全に伸びてら・・・」
山本が目を丸くする。
「シシッ、ボスがあっさりやられるくらいなんだから、この強さはとーぜんじゃん!」
「え!?」
「XANXUSが・・・あっさり!?」
そういえば、かなりキレた様子で隣の部屋に入っていったXANXUSと戦ったはずなのにツナは無傷だ。
ツナの守護者達が呆然としている所に、ツナがやって来た。
「さてと、さすがに疲れたから、俺は部屋で休んでるね?」
そう言い置いて、ツナは何もかもを放置してその場を離れていこうとする。
「・・・・・・じゅ、10代目!!」
ハッと我に返った獄寺が呼びとめる。
「ん?なぁに、獄寺君」
「・・・あ、あの・・・お、お食事の時間になりましたら、お迎えにあがります」
どうして脱走したのかとか、いつの間にこんなスレを開花させたのかとか、いろいろ聞きたいことはあったのだが、振り返ったツナの笑顔を見たらもう何も訊けなくなってしまった。
「うん?・・・じゃあ、待ってるね?」
「はい・・・」
今までと全く変わらない笑顔。
先程までのツナが白昼夢だったのではと思えるほどに、全く違和感がなかった。
「まるでスイッチがオフになったみてェだなぁあ・・・」
去っていくツナを見送りながらスクアーロが脇でぼやき、獄寺は頷いた。
「・・・たしかに」
「シシッ、とりあえず・・・沢田を怒らせない方が良いっていうことだけはわかったよね」
ベルが楽しそうに言えば、その場の全員が真剣な表情で頷いた。
「・・・ついでに、退屈させるのもまずいんだろうなぁあ・・・」
スクアーロが憐れみの視線をツナの守護者達に向ける。
なにしろ脱走したのはツナがキレる前である。面白半分で守護者達を試そうとしたのは間違いない。つまり、ツナを退屈にさせたら脱走するという可能性はかなり高い。
「・・・・・・だからと言って仕事を増やせば、仕事からのエスケープも考えられる。そこは守護者のさじ加減だな」
9代目の嵐の守護者・コヨーテが経験則からそれを口にすれば、一番その役割を担いそうな獄寺がガックリと肩を落とした。
「・・・自信が無くなってきた・・・」
ツナを退屈させず、かといって仕事をさせ過ぎずなんてまず無理な相談だ。
「ま、まーまー。俺等もお前だけに頑張らせたりしねーから・・・」
果たして“野球馬鹿”にどこまで期待できるかと冷静に考える獄寺だったが、それでも中学の頃よりは断然マシだと思いなおし、コクリと頷いた。
「守護者は一蓮托生・・・テメェ等、覚悟しとけよ」
ツナを理想的なボスで居続けさせるためには守護者が力を合わせなければならない。
が、
雲と霧はボス側に回る可能性の方が高く、雷はまだ子どもで晴は人の話を聞かない。雨は・・・まぁ、少しは頼りになると信じたい。
それでなくともてんでバラバラな守護者達をまとめなければならない苦労を思い描き、獄寺はガックリと肩を落としたのだった。