ちょっと雰囲気が変わりまして、シリアスな空気が加わります。リボーンさんのツッコミなどは少なくなります。
もちろんスレちゃったツナ様なので皆が振り回されてますが、第1部ほどギャグっぽくはありません。
同じ感じだと思って読むと違和感があります。気をつけてくださいね~!
30.霧と大空―――真面目に語ってみた
そんなこんなでツナの10代目就任式が開催される前日を迎え、城の中はてんやわんやの大騒ぎだった。
様々な準備とリハーサルを終えて、ツナは自分に宛がわれた執務室でどっかりとソファーに座り、溜息をついた。
「うーん、いよいよ明日かァ・・・俺、大丈夫かな」
もう決めたとはいえ、マフィアのボスなんていうのは面倒なことこの上なしの職業だとわかっているだけに溜息がもれる。
「・・・何言ってんですか・・・ここ2ヶ月、守護者を散々振り回した人間が」
呆れた声をあげたのは六道骸。言うまでもなく、ツナの霧の守護者の片割れである。
「えー、アレは不可抗力というか・・・」
「・・・ホント、君、図太くなりましたねェ」
感慨深げに骸が言えば、ツナは肩を竦めた。
「開き直った者勝ちでしょ?・・・今まで散々振り回されたのは俺の方」
ツナが言えば、それもそうだと骸は頷く。
「・・・ねぇ、骸?今でもマフィアは憎い?滅ぼしたいと思う?」
「思っています。・・・君が本格的にマフィアのボスになる前日にこうして2人きりとは、随分と油断をしていますね?今すぐ乗っ取ってあげても良いんですよ?」
骸が意地悪く微笑めば、ツナはおっとりと笑った。
「そう?・・・別に構わないよ?」
「!?」
骸はあっさりとそう言ったツナの言葉にギョッとした。
「なんだよ、自分で言ったのに驚いてんの?」
「まったく・・・こうも僕の気持ちを乱してくれるのは君だけですよ」
「それ、なんか告白みたい」
「っ・・・気持ち悪いこと言わないでもらえますか!!」
「うん、そうだねぇ・・・骸が俺に告白なんて、気でも違ったかと思うね」
「・・・それはそれで、腹が立つ言い方ですね」
彼は先程自分で口にした通り、すっかり開き直ってしまって可愛げがなくなってしまった。
「昔は、ヒーヒー言ってたのに・・・」
「何が?」
「いえ、何でも」
骸は首を振りながらツナの表情を伺う。危険だから同席すると言い張った嵐の守護者まで追い出して、自分と一体何を話そうというのか。
そう問えば、ツナは一瞬視線をさまよわせてから骸の顔をじっと見つめた。
「・・・お前さァ、復讐者を出ても霧の守護者を辞めなかっただろ?」
「・・・ええ、その方が君を狙いやすいですしね」
「それ、本音?」
「・・・・・・何が言いたいんです?」
眉を顰めた骸に、ツナは肩を竦めた。
「いや、他意はないよ。・・・狙い続けるのは構わないけど、ボンゴレを乗っ取っても世界大戦なんて無理だよ?」
「・・・まぁ、そうでしょうね。君1人操ったところで精々マフィア界を混乱させるのが関の山です」
おそらくマフィア壊滅まで行く前に復讐者が動く。
復讐者が世界の根幹に関わっていると知った今、ただ単に“マフィア界の刑務所”という認識は改めた。
「そこまでわかってても、俺を狙うんだ?」
「そうですね。ボンゴレがマフィア界の柱になっているのは確かですから」
ボンゴレが崩れればマフィア界が混乱する。マフィア界が混乱すれば骸が付け入る隙もできるというものだ。
「ふーん・・・そういうもん?」
「そういうもんです」
とはいえ、正直な話、霧の守護者を辞めようと思ったことは何度もある。
もちろん―――ツナと契約を果たした後で。
「でもさ、それって俺と契約したら霧の守護者を辞めてもできちゃうよね?」
骸の考えを読んだかのようにツナが問うてくるので、骸は小さく溜息をついた。
「・・・だから、さっきから何が言いたいんです?」
「ん~・・・お前って、悪役だけど悪役じゃないよなって」
「はァ?」
「ん?だから言ってることは悪役っぽいけど、結局はマフィアが嫌いで潰れちゃえって思ってるってことだろ?」
「そう―――ですね」
「それってやり方はともかく、対マフィア側の考え方としては真っ当じゃん。警察とか政府とか」
「・・・・・・まぁ、そうですね」
一体、この男は何を言いたいのだろうと骸は首を傾げる。
「うん、つまりね?・・・このまま霧の守護者を続けてくれるっていうのなら、お前には俺を見張ってて欲しいんだよ」
「見張る?」
「そう、俺がお前の大嫌いなマフィアみたいにならないように」
「そんなのは、アルコバレーノや他の守護者に頼めばいいでしょう?」
「ふふ、ダメだよ、俺は彼等を言い包める自信がある。・・・お前なら、言い包められはしても俺を乗っ取って止めることはできるだろ?」
「!」
一瞬、息をするのを忘れた。
ツナがこんな事を自分に頼んでくるとは思ってもいなかったのだ。
「別に、すぐ乗っ取れなんて言わないけど・・・他の守護者の皆が言っても聞かないようなら自由にしてイイよ」
自分にそういう素質があるかもわからない。もしかしたらマフィアの闇に呑み込まれて、当初の誓いを忘れるかもしれない。だから、見張っていて欲しい。
そう言って真っ直ぐに己を見つめるツナに、骸は言葉を詰まらせた。
「・・・ボン、ゴレ?」
「だからね、お前には守護者というより、監視者になってもらいたいんだよ」
それは、普通の守護者よりもずっと彼の傍にいるということにはならないだろうかと骸は思う。
そして、その言葉はツナの深い信頼が自分に向けられてこそのものだとも。
「お前を信じてるよ。だって・・・お前はいくらでもチャンスがあったのに俺と契約しようとはしなかった。そして、なんだかんだ言いながら俺の味方でいてくれた」
「ッ・・・沢田綱吉、なぜ僕なんです?」
まるで心を見透かすような目で見つめられることに居心地の悪さを感じながら骸は問う。
「実態のつかめぬ幻影、それがボンゴレの霧の守護者だろ?・・・こんなこと俺が考えてるなんて、他の守護者に、いや、ボンゴレ関係者に絶対に悟らせるな。俺を乗っ取る時も悟らせずに乗っ取れ。その為に力を磨け。・・・それに、俺はお前以外には“殺されて”やらないから」
「ほう・・・僕以外には、ですか」
「そうだよ。お前に乗っ取られて存在を殺されない限りは、お爺ちゃんになって老衰で死ぬんだ。真っ当な死に方だろ?」
「ええ、至極真っ当な死に方ですね。・・・マフィアらしくない君にはお似合いです」
骸が皮肉交じりに告げれば、ツナは苦笑した。
「だろ?・・・それから、乗っ取った後は俺の身体をどう使おうがお前の勝手だよ。どうせお前が乗っ取る頃にはボンゴレはどうしようもなくなってるんだろうし」
「・・・君を乗っ取ることができなかった場合の僕のメリットはどこにあるんです?」
「俺はボンゴレをブッ壊したいし、ついでにマフィア界も浄化させておきたい。お前はマフィア界を壊滅させるためにボンゴレを崩壊させたい。ほら、手を組むだけのメリットはあるだろう?」
ツナはそう言って、骸に手を差し出す。
「・・・これは、俺とお前の秘密だよ?」
「・・・秘密、ですか」
骸は差し出された手をじっと見つめる。その意味をなんとなく理解していたからだ。
「そ。・・・じゃあ、契約しよっか?」
だから、そう言われた時も驚きはなく、ただ、疑問だけが残った。
「・・・良いんですか?」
「・・・マフィア嫌いのお前だからこそ任せられる。俺の誓いを守る・・・いわば保険だよ」
ボンゴレをブッ壊す。それが彼の誓いなら、それに一番近い思想を持っているのは確かに骸だった。
「・・・知りませんよ、僕なんかを信じたりして。せいぜい、いつ裏切られるかと毎日怯えているんですね」
そう悪態を吐き骸は三叉槍を取り出した。