夕食時になり、それぞれに引き継ぎをしていた守護者が食堂に集合する。
食堂に向かう途中で獄寺やランボと合流した山本が、食堂のドアを開ける。そこには先客がいて、それは久々に見た同僚だった。
「お、クロームじゃねェか。おーい!」
「・・・あ、雨の人に嵐の人にランボさん・・・ボス、は?」
山本達の姿を認めたクロームが、席に座ったまま首を傾げた。
「多分、9代目とまだ一緒におられるんだろ。・・・というか、まだそんな呼び方してんのかよ?」
獄寺が眉間にしわを寄せると、クロームは不思議そうにきょとんとした。
「呼び方・・・?」
「その、“雨の人”とかいうヤツだ・・・属性名だけじゃ誰だかわからねェだろうが」
まだ、並盛や黒曜にいた頃なら良い。自分達の周りにマフィアの関係者は殆どいなかったのだから。
だが、イタリアでは9代目の守護者やヴァリアーの幹部を始めとして、多くのマフィアに囲まれることになるのだ。
「・・・俺達だけの時なら良い、他にいねェしな。だが、ここじゃ“雨”なんて言ったらブラバンダーさんやスクアーロやバジルだっている。その度にいちいちヴァリアーの雨の人、とか、チェデフの雨の人、とか呼ぶつもりか?」
「・・・あ」
「・・・まぁ、獄寺の言うことももっともなのな。俺ら以外に話しかける必要が無いっていうなら良いんだけどさ、俺等って10代目の守護者って肩書じゃん?絶対に関わって来るだろ?それに・・・」
「・・・それに?」
「仲間なんだしさ、そろそろ名前で呼んでくれよ」
ニカリ、と笑った山本にクロームは目を瞬かせ、その瞬間にボッと顔を赤らめて俯いた。
「出た、天然タラシ・・・」
ボソ、と呟く獄寺に、隣に立っていたランボが苦笑いをうかべる。
「クロームはあんまりそういう扱いは慣れてないんだもんね・・・」
ツナがクロームを沢田家に連れて来ては人に慣れさせようとしていたのをランボは知っている。
イーピンとは特に未来に行った時のこともあり打ち解けていたので、ツナは無理をさせないようにしながらもイーピンにクロームを連れ回すように頼んでいた。
徐々にではあるがクロームも人と会話を楽しめるようにはなって来ていたが、それは沢田家の人間や黒曜の仲間、京子やハル等といった比較的近しい者に限られていて・・・。
だからこそ同僚とはいえ、あまり接点の無かった山本や獄寺に気後れしてしまうのも、ランボはよくわかっていた。
そこにあんな言葉を言われれば、恥ずかしくなってしまうのも当然だろう。
「あの・・・じゃあ・・・武」
「うん、それで良いのな」
「・・・まぁ、普段は無理しなくていいぞ。他の連中がいる時に雨だの嵐だのと呼ぶのは止めろって言ってるだけだからな」
「・・・うん、わかった。隼人」
獄寺のさり気ない優しさを含んだ言葉に、クロームははにかんだ笑みをうかべる。
イタリアに来て早速引き継ぎを受けたことにより、使命感と同僚への意識が高まったからなのか。守護者達の気持ちは互いにより近くなったように思えた。
「・・・あれ、皆もう来てたんだ」
そこに天候の中心たる大空、ツナがやって来る。
「・・・あ、ボス」
「お疲れ様です、10代目」
「俺等も丁度今しがた来たところなのな」
「ツナ、俺っちお腹空いた~、早く座って食べるんだもんね」
皆が一様にツナに声をかけ、ツナもそんな守護者達に笑みを向ける。
「そうだね、ランボ。俺もお腹ぺこぺこだ」
今日からこんな光景が日常になるのだ。
そう思うと、引き継ぎやら何やらと面倒なことも乗り越えられる気がした。