スレツナまでの軌跡☆彡   作:cibetkato

5 / 32
5.引き継ぎ・・・霧の場合

 ツナ達が渡伊する数日前にイタリアに到着したクロームは、その重厚な城の雰囲気に圧倒されていた。

 

「さぁ、クロームさん、こちらへ」

 

 本当の霧の守護者は骸なのだが、その器であり、それなりの実績もあるクロームは“もう1人の霧の守護者”としてボンゴレ内では認識されていた。

 

「・・・あ、はい」

 

 とはいえ、生来の引っ込み思案な性格がすぐに治るわけでもなく。

 

 まったく見知らぬ者達の中に突然放り込まれた形のクロームは、おどおどと辺りを見回し、己を案内してくれるチェデフの女性――オレガノといったか――の背を追った。

 

 案内されたのは、ボンゴレ9代目の執務室。

 

「よく来たね、クローム髑髏君」

 

「・・・」

 

 穏やかな笑みをうかべる老人が、巨大マフィアのボスであるとわかっていても、どうにも実感がわかない。

 

「ははは、そう緊張しないでおくれ。・・・綱吉君達よりも先に来てもらったのは、他でもない。君の意志を確認したかったからだ」

 

「意志?」

 

「ああ・・・君は六道君のためにここにいる。そうだろう?」

 

 9代目が何を確認したいのかいまいちわからなかったが、骸のためにボンゴレに所属していることは事実なので、クロームはコクリと頷く。

 

「・・・君の立場はとても危ういものだ。すべて、六道君次第」

 

 ピクリ、とクロームは肩を震わせた。

 

 実際、骸が守護者であることをどう思っているのかを聞いたことは無い。が、ツナ自身に喝を入れるくらいには心を許しているようにも思う。

 

「・・・もし、骸様がボスを裏切るとしたら、・・・それはボスが骸様を裏切った時」

 

 妙な確信を持ってクロームは答える。

 

「ほう・・・それは、六道君が言っていたのかな?」

 

「・・・私の、希望・・・だけど」

 

「希望、か。うん、良い答えだね・・・ところで、君は綱吉君が好きかい?」

 

 突然問われ、クロームはギョッとする。

 

「変な意味ではないよ?・・・人としてどうか、と聞いているんだ」

 

 クロームの誤解に気付いた9代目がクツクツと笑う。クロームは若干頬を赤らめたまま、俯き加減で答える。

 

「好き・・・ボスは、私を“私として”見てくれるから」

 

 だから、いつかは・・・本当の名を呼んで欲しいとも思っている。

 

 骸のように。

 

 今のクロームの心の中は骸や黒曜の仲間が大部分を占めているものの、残りのほとんどはツナが占めていると言って良い。

 

 こんな得体の知れない自分を、元は敵であった骸達を、信頼する仲間のように扱う彼を憎く思うわけが無い。

 

「そうか・・・わかった、ありがとう。君の意志は確認させてもらった。早速、引き継ぎを始めてもらおう」

 

「引き継ぎ・・・?」

 

「守護者としての心得を先輩から聞く、と思ってもらえればいいよ」

 

 そう言って微笑む9代目に、クロームは小さく頷く。

 

「クロッカン・・・入りなさい」

 

 呼ばれて執務室の奥の扉から現れた黒人男性に、クロームは首を傾げた。

 

「彼が、私の霧の守護者だよ。・・・これから約3ヶ月、彼の傍について守護者が何たるかを学んでもらいたい」

 

「・・・クロッカン・ブッシュだ」

 

「クローム髑髏・・・よろしく」

 

「ああ」

 

 クロームはぶしつけにクロッカンを眺めまわし、ふと気付いて苦笑した。

 

 つい術者としての実力を計ろうとしてしまうのは、悪い癖だ。

 

 ツナはこう言うと嫌がるが、術者の戦いはまず第一印象から始まる。互いに主導権を得るためにある程度の“騙し”があるのが普通なのだ。

 

 姿、声、その雰囲気までもが“本物”なのか、見分けられなければ術者として主導権を握られたも同然だった。

 

「・・・それで良い」

 

 ボソリ、と告げられた言葉に、クロームはハッとする。

 

「味方であっても、まずは疑ってかかれ。・・・それが、俺達霧の役目でもある」

 

「うん・・・わかった」

 

 霧同士でしかわからない心情に気付いたのか、クロッカンはクロームのぶしつけな視線に不快感を示すでもなく、淡々と告げる。

 

「それから、なるべく他の守護者とは距離を置け」

 

「・・・?」

 

「ボスの脱走を手伝うのも霧の使命だ。その時、守護者と距離が近いと気付かれる」

 

「・・・・・・え?」

 

 彼は今、とても重要なことを告げるような雰囲気で、どうでもイイことを告げなかっただろうか。

 

 クロームはもう一度訊こうと視線を上げ、クロッカンの視線がすごく泳いでいることに気付いた。

 

「・・・それ、引き継ぐ、の?」

 

 チラリ、と9代目に視線を向ける。まさかこんな好々爺然とした人が、脱走とか有り得ない。

 

 そんな視線を受けながら、9代目は胸を張って答えた。

 

「ツッ君が望むのであれば、手とり足とり、様々な脱走法と脱走ルートを教え込むつもりだよ」

 

 何の冗談だ、と問いたかったがこれは紛れもなく本気だとクロームにはわかった。

 

 伊達に術者をやってるわけではない。嘘の匂いには敏感だ。彼等は嘘をついていない。―――つまり、これは本気の話。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・ボンゴレって、どうなってるの?」

 

 思わず骸に助けを求めたくなったクロームだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。