スレツナまでの軌跡☆彡   作:cibetkato

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6.引き継ぎ・・・嵐の場合

 ツナと引き離され、グイグイと廊下を引きずられていく獄寺。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・あ、いや、待ってください!」

 

 一応、ボンゴレの守護者としての先輩にタメ口をきくのはマズイかと敬語に直す。

 

「・・・普段通りで構わん。お前は10代目の右腕となるのだろう?他者に媚びへつらうことなどしなくていい」

 

 それは、10代目であるツナの権威をも落とす行為だ。そう言われれば、獄寺はわずかに目を細めた。

 

「・・・わかった」

 

「わかったなら、行くぞ」

 

「だ、だから、待てって。行くってどこにだ!?」

 

「この城のありとあらゆるトラップと隠し通路と構造をお前には覚えてもらわねばならん」

 

 キッパリと答えるコヨーテに、獄寺は首を傾げた。

 

「・・・そりゃ、知っておいた方が良いと思うが・・・それは個別じゃなくても良いんじゃねぇのか?」

 

「10代目次第でこの引き継ぎが生きるかどうかが決まる。が、間違いなくこの引き継ぎが絶対に必要になると確信できる。・・・10代目は初代の直系の子孫だからな」

 

 初代の直系だとどうなのか、未だ獄寺には理解できない。

 

「・・・どういうことだ?」

 

「・・・・・・案内しながら説明してやろう」

 

 コヨーテはとてつもなく憂鬱そうな表情で告げる。

 

 まず案内されたのは、地下に通じる通路。

 

「ボンゴレの本部が攻められた時は、地階にある作戦室が本部になる。もちろん、通常の作戦室は地上階にもある。・・・それと、万が一にも本部を捨てることになった場合にも備え、地下通路がある」

 

「・・・ああ」

 

 案内されながらも、獄寺は1つ1つのトラップをチェックしていく。

 

「トラップには味方も敵もないからな。お前だけは確実に全てのトラップの解除方法を覚えておけ。それと、嵐は攻撃の核となる。お前が真っ先にやられては意味が無い・・・それはわかるな?」

 

「ああ」

 

 今までの経験で、嫌というほどわかっている。

 

 ボスを補佐する立場の者が、真っ先にやられるなど以ての外だ。自分が冷静になり、広い視野を持って戦況を見つめなければならない。

 

「やはり若いとはいえ経験がある分、引き継ぎは楽だな」

 

 コヨーテはここに来て初めて笑みを見せる。

 

 命懸けの戦いの経験は、ツナだけでなく守護者達も成長させていたのだ。

 

 コヨーテは次々にトラップの場所と解除方法、秘密の出入り口を獄寺に教え込んで行く。

 

「・・・それで、どうしてコレが嵐の守護者に必要なんだ?」

 

 次のトラップの場所に案内される道すがら、獄寺が何気なく問う。

 

「・・・・・・ボンゴレのボスの試練は知っているな?」

 

「ああ」

 

 ツナが未来で受けた試練のことだろう。そう考えて、獄寺は頷く。

 

「歴代のボンゴレボスと対話出来るのは、その時に限らないというのは知っているか?」

 

「・・・まぁ、縦の時間軸を継承するのがボンゴレリングの特徴なら、可能だとは思うが」

 

「そうか、ならば理解は早いな。・・・ボンゴレの本部というのは、何度も改装を重ねている。それは歴代のボスが揃いも揃って守護者にバレない出入り口とやらを造ることを引き継いでいるからだ」

 

「・・・あ?」

 

 なんだかコヨーテの表情がたそがれているように見えるのは気のせいだろうか。

 

「つまりは、だ。・・・歴代のボスは、脱走のための手段を講じていたというわけだ」

 

「・・・脱走?」

 

「そうだ。実際に脱走するとかしないとかは関係ないが、代々脱走ルートを作るのは伝統となっている」

 

「それは・・・ボスがやられたら、まずいからな」

 

「・・・・・・そうともとれる。いや、もちろんそれが引き継いできた主な理由なんだろう。が、これにはもう一つの意味がある」

 

「もう一つの、意味?」

 

「・・・仕事からのエスケープだ」

 

「・・・ちょっと待て、仕事からのエスケープって・・・まさか」

 

 その意味を正しく理解した獄寺は、さぁ~ッと青くなった。

 

「そのまさかだ。・・・少なくとも、8代目から9代目への引き継ぎ事項の中に“ソレ”があったのは間違いない」

 

 とんでもなく手のつけられないお転婆だったという8代目・ダニエラ。まさか、そんなことまでも引き継いでいたとは思わず、獄寺は口元を引き攣らせた。

 

「・・・9代目も、若い頃は何度脱走をしたことか。歳をとってからは随分と減ったが・・・ああ、そうだ、10代目が3歳くらいの頃か・・・孫に会ってくるとかいう置手紙をして、日本にまで行ってしまったこともある」

 

 どんなに城の警備をきつくしても、いつの間にかボスは姿を消している。

 

 その秘密を知ったのは、ごくごく最近なのだとコヨーテは告げる。

 

「・・・秘密?」

 

 獄寺は超直感なんてものは無いが、嫌な予感を覚えて身を震わせた。

 

 コヨーテは顔を青褪めさせた獄寺を憐れむように見やって告げる。

 

「初代が、手引きをしているんだ。・・・代々の嵐に引き継がれている出入り口とは違う場所があるらしくてな・・・長い歴史を持つからこそ、ボスしか知らない秘密の通路は数多くある。だから、発見したら全て塞ぐか、有用ならば俺達が利用できるようにする」

 

 獄寺の嫌な予感が見事に当たった。

 

「初代・・・まさか、そんな・・・・・・お茶目な一面があるなんて」

 

 獄寺の初代への感想が、このままお茶目という言葉で済むかどうかは、10代目であるツナ次第だ。

 

 が、初代の直系なのだ。その素質があると思って良いだろう。

 

「・・・獄寺、10代目がこの引き継ぎをどう捉えるかはわからないが、最悪の事態を想定しておくのは、右腕の役目だぞ」

 

「・・・あ、ああ」

 

 ボスの脱走の対策まで引き継がれることになるとは思ってもいなかった獄寺は、ツナが仕事を放り出して脱走するなどとは思えず、コヨーテの心配は杞憂に終わるだろうと結論付ける。

 

 だが、引き継ぎ事項である以上、見た目に反して真面目な獄寺は、コヨーテの教え通りに次々とトラップの解除方法と出入り口を頭の中に叩きこんでいった。

 

 

***

 

 

 そして夕食を終えてひとしきりツナ達と談笑し、自室へと戻った獄寺の嵐のボンゴレギアが輝きを放つ。

 

「・・・これは!」

 

『・・・久しぶりだな、Ⅹ世(デーチモ)の嵐・・・獄寺隼人』

 

「・・・テメェは、G!」

 

 久々に見る初代ファミリーの嵐・Gの姿に、獄寺は目を丸くする。

 

『・・・引き継ぎが始まったようだな』

 

「あ、ああ・・・」

 

 縦の時間軸を継ぐボンゴレギアの作用か、と理解した獄寺は何故“彼”が現れたのか首を傾げる。

 

『・・・どうも、お前は危機感が足りないようなのでな』

 

「危機感が足りないだと!?・・・んなことはねェ!!」

 

 ギッとGを睨み据え、獄寺は叫ぶ。

 

『いいや、足りないな。・・・あのジョットの子孫だぞ?絶っっっ対に、Ⅹ世は脱走の常習犯になる』

 

「・・・は?」

 

 すると何か。

 

 初代の嵐が言いたかった危機感というのは、ボスの脱走への危機感ということか。

 

「じゅ、10代目がそんなことするはずが無い!!」

 

『素質は充分だと思うがな』

 

「テメェに10代目の何がわかる!!」

 

 ツナが脱走の常習犯になるなどと認めたくない獄寺は、尚も叫ぶ。

 

『・・・今はそう思うだろうが、いずれ俺の言うことが正しいとわかる』

 

「~っ!・・・うるせェッ!!」

 

 腕を振り回しGを追い払おうとする獄寺。そんな彼を見やり、Gは溜息をついた。

 

『・・・まぁいい。困ったらいつでも言って来い。お前には特別、俺の知っているジョット特製の脱出口を教えてやる』

 

「~~~っ、んなもんは要らねェエエ!!」

 

 ゼェハァと肩で息をしながらGのいた場所を睨みつけ、獄寺は拳を握りしめた。

 

「次に出てきやがったら、ゴ○ジェットを思いっきりぶっかけてやる・・・!!!」

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