会長の思惑、Second Phase   作:抱き枕50

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発芽ノ兆シ

「えーと根本さんで最後・・・・・・と。これで転入生全員が提出ですね。試験日程が終わる頃には、貴女達の評価を出しますので楽しみにしていて下さい。そうそう、貴女達は課題が終わったからって羽目を外さないようにして下さい。まだ試験を受けてる人が居ますからくれぐれも邪魔をしないように。試験期間中の貴女達の予定は掲示板に貼ってあるからそれを見てください。それと関本さん、白羽さんが帰ってくるまで、根本さんと一緒に居て下さい。それから・・・・・・今後について大切な事が有りましたんで少しお時間・・・・・・」

 

 

 わざわざ付け加えたので大したことかと思って聞いていたのに、実にどうでもいいことだった。しかも話が長い。先生は大抵そうでげんなりする。ダリア先生も例外では無かった・・・・・・未だ若いのに。

 

 それにしても課題出し終わったからって、休みを貰えるとは思わなかったけど、掲示板を見ると夕方まで予定がぎっしり。皆で顔を見合わせてため息をついた。

 

「全く・・・・・・。とりあえず、校舎の周りの草むしりです・・・・・・か。なんにしてもこの日差し、購買行って日焼け止めでも買ってきますかね。それとも裸でやって焼いちゃう? 小夜花」

 

 まだ私達の歳なら日焼けとかでシミだの避けなくて良いから焼くことには抵抗はない。だけど私達はバレエスクールでコーチから焼くことを堅く禁じられていたので真っ黒になったことはないのだ。

 

「ゆかりは焼いた事あるんだっけ? 」

 

「無いよ。焼こうとしてたらコーチにバレて未遂。挙げ句に父母会ルートでチクられて家バレよ。それでお姉ちゃん共々お仕置き。それから日焼けとか家ではタブーになったわ」

 

 そう言えばお尻を真っ赤に腫らしていたゆかりをバレエ教室で見かけた事が有った。

 

「皆も焼いた事無いよね」

 

 辛かった思い出してか急に無口になったゆかりの代わりに話を振る。

 

「うん。おかげで海とか行ったこと無いよ、一度も・・・・・・」

 

「だよね。家族で旅行に出掛けても私だけ何時もホテル・・・・・・」

 

「此処もうるさいのかな。黒い子全然居ない気が」

 

 それは私も気が付いていた。皆美白。レベルが高い。個人的には多少は黒めの方が引き締まって見えるから良いと思うのだけど。アングレカム学院にはグラウンド、屋内屋外問わずプールもコートも無い。これから造るのかは聞いてないけどよくこれで学校を名乗れるのか不思議。これは蛇足か。

 

「焼いてはみたいけど、今この白さで、私達だけ放課後に真っ黒だったら不気味よ。乙女の嗜みとしと言うか転入生組の女子力をアピールする意味を加味し、先ずはみっともない土方焼けにならない様にUVケアはきちんとしましょう。ゆかり、購買に女優帽みたいなつばの広い帽子は売ってるのかな? 」

 

「小夜花、女優帽は無いかも。お姉ちゃんの写真にそういうの無かったし。代わりと言っちゃなんだけど、実習で作るいまいちイケてないチューリップハットなら上級生から借りれるはず。交渉してくるね。ねえ、誰かこの間のバレエの授業で使ったジャグを借りてきてくれない? 私、麦茶のパック持ってるから学食で氷もらって麦茶を作ろうよ。外から全員いちいち食堂になんて行ってられ無いし。私達ハブられ肉体労働組はそれで水分補給しようよ。熱中症からの脱水だけはしないようにしないと・・・・・・。この間の白羽さんみたいになっちゃ大変だもの。終わったら購買でアイスも買おうよ。私がおごるよ。ソーダ味のとかいいよね。ねえ、孝崎さんもそんな所に居ないで一緒に来て・・・・・・」

 

 

 ゆかりは保健委員らしく熱中症の注意を喚起して場を締めた。皆が従って行動する中一人離れ動かない人。

もう一度声をかけたけど孝崎さんは一人で行動したい様子だったので、担任からの言いつけを反故にし敢えて放任することにした。正直あまり関わりたくはない。明らかに私達を嫌っている様が判るから・・・・・・。

 

 

 

 

「委員長、白羽の最新情報無いかい? 私もだけど孝崎がえらく気にしてるんだよ。アイツ、いつの間に親しくなったんだ? そりゃお見舞いに来てたのは知ってるけどさ。どいつもこいつもあのたらし女に惑わされて・・・・・・」

 

「そうね、表現はともかくとして、蘇芳さんが心を奪った子は学院に一杯居るわね。蘇芳さん病院で元気してると良いのだけど。私も意識が戻った以降の情報は無いのよ。今は信じるだけね」

 

 

「黒沼さんが、性の手解きを受けたのって病院で看護婦さんなんだってさ。立花、そうなんでしょ? 」

 

「蘇芳さんはそう言ってたけど? マユリそれがどうかしたの? 」

 

「いや、あっちでもっともっと色んな事マスターしてきたりして、蘇芳さん見かけによらず結構凄いんだよね。性的好奇心って奴。まだ押さえてるとこ有るけど、グルに出会って導かれてもしたら・・・・・・」

 

「自分がそうだからって、蘇芳さんをそんな風に言わないの。マユリ。八重垣さんが呆れているわ・・・・・・」

 

「酷いなあ、立花の方が私より好き者じゃん。おぼこい少女が大化けしちゃって今じゃセックスモンスターだもの。こんな可愛い顔してる癖して」

 

「セ、セックスモンスターですって!!! マ・ユ・リ覚悟なさい! マユリが何時も酷いことしてってせがむのに・・・・・・そう言う事言うともう逝かせてあげないわよ! 」

 

「こ、匂坂、い、委員長、お、お前らの話はどうでも良い。そ、それより白羽はどうしてるって言う話だよ」

 

「八重垣さん、貴女は私とマユリ、どっちの言い分を信じるの? それを答えてくれたら話を進めるわよ。それにしても耳まで赤くしちゃってねんねさんには刺激強すぎたかな? 」

 

「だねー。同じ書痴でもコンバットプローブンの蘇芳さんとただの耳年増の八重垣さんでは比べるレベルじゃないもの仕方ないよ、立花」

 

 

「えりかっち、勝てない戦に深入りは禁物。私達純潔のツインズがリハビリしてあげるから、こっち来て。その謝礼といってはなんだけど、試験のヤマを・・・・・・」

 

 

 

「白羽蘇芳さん、おはようございます。良く寝られましたか、体温計りますよー。このまま脇に入れて下さいね」

 

 暫くして、電子音が。取り出して数値を見ると6度5分、平熱だ・・・・・・。

 

 私、ここに居ていいのかな? だって病気じゃないし、頭のこぶも目立たなくなったんでそんな気持ちになる。変な気が顔に出ていたのだろうか、大丈夫よ必ず元気になって戻れるからね。そう言われ頭を撫でられた。天使の笑みに愛想笑いで誤魔化す私。

 

 

 御飯までに時間があるからもう少し待ってて。その前に、検尿するからトイレでこの紙コップにお小水を取って、トイレの所に有る出窓の所に名前を見える様に置いておいて下さい。そう言われ看護師さんが紙コップに私の名前を書いた。それを受け取りトイレに赴く。あまり水分は取らなかったけど点滴をしたので出るものは出る。紙コップの八分目にとどめて、出窓に置く。色が濃いのが妙に恥ずかしい。

 

 御飯が届いて病室での食事。子供の頃入院したときに食べたものに比較すると、段違いに美味しい。だけどやっぱり薄味。何かかけて食べたい・・・・・・。

 

 食事が終わって検査まではちょっと暇。届けられた鞄を開けて最後の試験勉強。検査が終わったらここでテストを受けることになる。立ち会いの先生はまだ来ていない。定例の体温の測定をするのに看護師さんが部屋に来た。

 

 

「おはようございます。白羽さん。気分はどう? 食事は完食ね。感心感心。はい、これ入れて」

 

 再び体温計を渡されて、脇に入れた。看護師さんが変わった。昨日から今朝の夜勤の人と違う。日勤というのだろうか。今、前に居る人は夜勤の人よりもちょっと年上で、ちょっと怖い感じの人・・・・・・。口調は涼しげで雪女のイメージだ。制服も微妙に違い襟にラインが入り主任のバッチがついてる。音が鳴った体温計を手渡すとその数値を控えている。

 

 そうしていると、ドアが開き今度は年配の看護師さんと、学院の先生が部屋に入ってきた。

 

 

「白羽さん、ごきげんよう。私が試験の担当をします、三年生の外語教師の鈴木です。図書室で会ってるから知ってるわよね? 」

 

 

 頷く私。図書室に良く来る先生だ。ローブ姿が多い学院の先生の中で、何時もスーツ姿でバリッと決めている。出来る女のイメージそのままの先生だ。先生と話をしていると、主任さんより少し年配の看護師さんがずっと私を見ている。初対面ではない気もするけど、思い出せない・・・・・・。その看護師さんが、意外なことを聞いてきた。以前家族で暮らしていた街の名前を。私が名を答え、それを聞き、そして得心した様に頷き、私に話しかけてきた。

 

「私もその街に居た事あるのよ。貴女は忘れてしまったかもしれないけど、私の努めていた病院に貴女が入院してきたことが有ったわ。貴女は『食事が不味い』ってすごくむくれて、言わなくなったと思ったら、ナースの目を盗んでお醤油を御飯にかけて食べるてるんだもの。

 

 私、驚いてお説教したのよ覚えてる? そこそこキャリアの有った私でも、そんな事する子供初めて見たから、その事が印象に残ってるの。それにしても一段と綺麗になって・・・・・・また会えるなんてすごい偶然ね」

 

 あの時の・・・・・・。記憶が蘇る。怒られて、面会に来た両親が謝ってたっけ。お母さんは、私には何も言わなかった。仕方ないって言ってくれた・・・・・・。私は、あの時の事を改めて謝った。無表情のままその話を聞いていた主任さんが、微笑みながら口を開いた。

 

 

「師長、何時も口癖の様に話すその話、作り話かと思ってました、すみません。私も謝らないといけないわ。白羽さん、ここに居る間は薄味でも我慢してね。変な事したら、本気で怒るから覚悟してね」

 

 

 顔は笑っているけれど、目が笑っていない・・・・・・。主任さんに、はいと答えた。

 

「白羽さんは、いい子ね。検査が主体になるから、ドクターや私達ナースの指示には従って下さい。そうすれば互いがいい関係でいられるからね。約束よ」

 

 

 

「小御門、お前ちょっと薄情だぞ。昨日白羽が街の病院に入院したって何で知らせないんだよ。今朝食堂で一年が話してるのが耳に入って来てさ初めて知ったよ。しかもお前白羽の部屋から荷物持ち出すのに関わったって?」

 

「ごめんなさい。千葉さんに言わなかったのは悪いと思ってるのよ。でもそれは貴女に心配をかけたくなかったから・・・・・・貴女、色々と無茶しそうだったし。私達は大事なテスト前なのよ? 」

 

「八代は知っているんだろ? アイツが知っててアミティエの私だけが聾桟敷かよ」

 

 

 緑さんが私の胸ぐらを掴んだ。力の強さによろめいた。刹那教室に悲鳴が響く。そして試験前に最後の追い込みしていた譲葉が私達に気付く。

 

「千葉、ネリーから手を離せ。離せって言ってるんだ。僕はニカイアの会の会長なんだから蘇芳の事は僕に先に一報が入った。僕に立ち会う話が来たけど、現状そういう立場じゃないから副会長のネリーに代わってもらった。それだけの事だ。君に言わなかったのは、今起きてる様なことを避ける為だったんだけどな・・・・・・僕だって色々我慢してるんだ。蘇芳が出て来るまで止めてある事だってある」

 

 

 緑さんがバツが悪そうに手を離した。掴まれた制服のリボンの所が解れてしまっている。

 

 

「小御門、ゴメン。次の休み時間に直すからそれまでそのまま着ていてくれないか? 」

 

「自分で直すから別に気にしないけど。そうね、貴女の気のすむようにして。緑さん、耳を貸してくれない? 貴女だけに教えてあげる。入院してるのは黒沼さんが最後に入ってた病院よ。貴女の代わりにあの人に会いに行ってもらえば? 」

 

「頭の怪我って聞いたけど、あそこなんだ? 八代が入院した脳神経専門のとこじゃ無いのか。何か変だな。でもありがとう。連絡取ってみるよ。この間はスレ違って会えなかったから」

 

 

 予鈴が鳴った。いよいよ夏期試験が始まる。ざわめいた空気が一気に引き締まった。

 

 

 

「やっと終わったねー。今日の分。えりか先生のヤマがばっちりで助かったよ。林檎、とりあえず、食堂に行くよー。早くしなー」

 

「苺姉、待ってよ。椅子を出しっぱなしで行かない! 粗忽者め。八重垣先生、ありがとう。蘇芳ちゃんが居なくてどうなるかと思ったけど、次も頼むね」

 

 ばたばたと騒がしく、双子が教室を出て行った。試験期間は半ドンで,三科目と二科目の日が有る。今日は英語と数学と保体。今日は私も教えていた沙沙貴達もばっちりの筈。まさかの回答欄の間違えとかないかぎり・・・・・・。腹減ったー。私も昼食に行くか。鞄を膝に載せハンドリムに手をかけて机を離れた。何か変だな。なんだこの違和感は・・・・・・。

 

 そこでふと気付いた。介助してくれる孝崎が居ないんだっけ。あいつは外で仕事やらされてるんだっけか。つーとお昼持ってきてくれる人は居ないってことだよな。介助の予備要員の風紀委員は、見渡しても居ない。ダリア先生、話しを通してなかったな。後でぶーたれたろ。仕方ない、自力で食堂に食べに行くか。教室を出るとガクンと車椅子にショックが走った。誰かが押してる!?

 

 

「八重垣さん、ごめんなさいね。萩野さんに介助の連絡をするの忘れてました。今日は食堂で召し上がるの? 」

 

「バスキア教諭!? びっくりしたー。急に押さないでくださいって。冷や汗かきましたよ。えーと、お昼は食堂で取ります」

 

「それじゃあ私もご一緒しようかな。何時以来かしらね、ご一緒するのって。それにしても教え子と食事なんて楽しいわー。前は良く東屋とかでしたのよ。でも最近は・・・・・・どうもクラスの子、私を避けてるみたいなの・・・・・・」

 

 

 バスキア教諭、それはクラスで求心力のある委員長や勾坂、皆の憧れの対象の白羽にきつく当るからですよ。そうは思うも口には出さない。したら最後、『どうして? なんで? でも・・・・・・』そう、とことんまで論を交わす事になってしまう。教諭はかなり面倒臭い女なのだ。

 

「八重垣さんは、今日のスペシャルAで良いのかしら? 私はBにするから二人で分け合いましようね、八重垣さん。良いでしょう? 」

 

「ちょっ、待っ、バスキア教諭・・・・・・」

 

 教諭は聞く耳持たずに、カウンターにすたすたと歩いて行ってしまった。はたと気がつくと、周りの目が痛い。『八重垣さん、お待たせ』その声を待つまでもなく、匂いが到着を知らせた。二人して相好が崩れる。美味しい食事は魔力が満ちている。すっかり熨されてしまった・・・・・・。

 

「八重垣さんは、ダリア先生とスールみたいね。ちょっと羨ましい・・・・・・。あっ、ダリア先生がフォークでお肉を差し出して・・・・・・食べさせてる! 」

 

「この間のバレエの時も、妖しい感じだったね。あの二人。私もお姉さま欲しいな・・・・・・」

 

「アミティエの孝崎さん、これでは所在無いよね。可哀想。一生懸命に介助してるのに。あの子苦手だけど、嫌いじゃないわ。しっ、ダリア先生来るわよ」

 

 

 

「ご馳走様です」

 

 手を合わせ二人して作ってくれた人に感謝する。特に私は、作るのは苦手で食べるオンリーだから尚更だ。本人は語りたがらないけど、バスキア教諭もどうも私と同じ、"私食べる人"って印象を濃く持った。

 

 

 私が料理上手なら、入学以来お世話をかけっぱなしなバスキア教諭に恩返し出来るのにと切に思う。脚の障害もあり家では厨房に立ち入りはしなかったし、お手伝いの要請は皆無のまま。よって料理の腕は推して知るべし・・・・・・。事実、小学校の時家庭科の調理実習では何も出来ずにいい晒し者だった・・・・・・。何れ有るはずの調理実習も考えるだけで憂鬱だ。

 

 

「それでね、図書室にお菓子隠しておいたら司書のおば、お姉さんにバレちゃって没収されちゃったの。昨日試験勉強で図書室に行ったらお姉さんがすたすたと来てさ、バックヤードに連れてかれて、何か小言を言われるのかと思ったら、『あのクッキー美味しかったわ。だから材料用意するから作って』だってさ・・・・・・」

 

 突然、沙沙貴姉妹の大声が耳に飛び込んできた。思えばコイツら料理部だったよな確か。試験勉強の貸しもあるし、試験が終わったら料理部の体験実習に潜り込むルートを作って貰うか。その頃には白羽も帰って来るだろうし。白羽が料理部で作ったものをおすそ分けしてくれたことが有ったけど絶品だったなァ。アイツなら沙沙貴と違って下手でもバカにしたりはしないだろうし。そうと決まれば、もう少し恩を売っておくとするか。

 

「おーい、一号二号。今日から一緒に勉強しようぜー。部屋に来いよ。傾向を分析してヤマかけてやるぜ。今日みたいにばっちり当ててやるよ」

 

 

 

 

「白羽さん、お疲れ様。今日の試験は終わりました。明日の試験の科目は予定通りです。時間的には今日の感じで進むと思います。ドクターに急患やオペが延びたりすると変更の可能性が有ります。それでは私は学院に戻ります。急用は電話で事務の女史に」

 

 颯爽と戻っていく先生に手を振り、深く息を吐く。午前に三科目の皆と違い、私は午前に二科目、午後に一科目。検査との切り替えは意外と大変だった。何しろ一人。昔の私ならどうってことないけど、クラスの皆や上級生に囲まれる生活に慣れた今は一人で居ることは想像していたよりもずっと淋しい。

 

 アキラは良くここでの入院生活を耐えていたのだと思う。それは亡くなる寸前でなく、学院に復学する前の話し。入院していた時の事を聞いたけど、とたんに寂しそうになり、言葉につまることもあった。手紙は欠かさなかったと言っていたけど。会えないこと。自分だけが級友から遅れて行ってしまう事。弱っていく身体。

 

 そんな時に"主任さん"に生ならず性の手ほどきを受けて堕ちてしまったという。まさか今私の担当の主任さんとアキラの言う主任さんが同一人物!?この業界は入れ代わりも多いと聞くし・・・・・・。どうなんだろう、聞いてみようか。聞いてどうする? 遊びだったとでも言うのだろうか? それとも本気だったのに、アキラが復学して別れた? そうならきっかけの私が悪者? 思考の迷路を彷徨って答えが出ない。聞いてみようにも切り出し方が・・・・・・。

 

 

「白羽さん、三時のおやつです。ここに置くから食べて下さい。美味しいのよ」

 

 看護学生らしいかわいい制服に身を包んだ少女がおやつを持ってきた。話には聞いていたけど、今はそう言うのが有るんだなと感心した。まあ私が疾病で入院でないからというのもあるのだろう。出されたプリンを手に取って食す。

 

「美味しい。コクがあって滑らかだわ。どこのお店のだろうか・・・・・・」

 

 下げに来た時に聞いてみよう。窓の外は夏の陽光。景色が揺らいで見える程。しかし病室は空調が効いていて学院以上に快適だ。見ようと思えばテレビも有るし、ネットも出来る。それでも一人は淋しい・・・・・・早く帰りたいと切に思った。

 

 

 

「あー疲れた。初日からこれじゃ先が思いやられるね。今日からずっと暑いんだって・・・・・・。真夏日飛び越して酷暑日だってさ。私達に死ねって言ってない? 」

 

「取り敢えずアイス食べよう。今日は私がおごるよ好きなの選んで。孝崎さんもだよ。ほらこっち来て」

 

 

 購買のショーケースから氷系のアイスを取り、売り子のおばちゃんから匙をもらって、クーラーの吹き出しの側に行って食べることに専念した。

 

 

「いやーアイス考えた人、ホンとに偉いわ。一回で良いならやらしてあげるのに」

 

「ゆかりさんは、そっちに走りすぎよ。発案者が女だったらどうなのよ」

 

「えっ、それは願ったり叶ったりだよ。私はどっちかっていうと女の方が好きだもの」

 

「カミングアウト!? バスキア教諭に聞かれたらヤバいよ。私、委員長とマユリさんが正座させられてお説教されてるの見た事有るもの・・・・・・ねえ、小夜花はどうなの? 」

 

「どうって。ゆかりと違って私は女の人以外はパス」

 

「小夜花もそっちの人なんだ。ゆかりと二人で夫婦に成りなよ。応援するよ」

 

「あー。パス。私達はダメね。誰でも良いって訳じゃないから。それはゆかりも一緒だよねー。好きな人と結ばれなきゃ意味無いし。それは貴女だってそうでしょう? ここに来るちょっと前に結構イケメンのバレエのコーチに口説かれてたけど、手酷くふったじゃない」

 

「だって、大学生のくせにマザコンで変に少女趣味で・・・・・・キモかったんだもの」

 

 私は離れたところで、赤裸々なガールズトークを聞いていた。おごってもらったアイスは有り難かったけど、どうも彼女たちには馴染めない。彼女たちも私には話をふってこなかったし、参加する気もなかった。食べ終わった後、シャワーを浴び汗を流し、また明日。そう言って皆と別れた。それを引き金に、解散となりって各自バラバラに散って行った。

 

 

 

「ゆかり、葉子先輩のとこ行こ。今から夕御飯までの二時間くらいなら良いよね。この間の続きしなくちゃね」

 

「そうね、鉄は熱いうちに打てだよ。さて何処に居るかな? 」

 

 

 そんな会話が聞こえてきたけれど私にはどうでも良いことだった。ただ何処か禍々しく感じてはいた・・・・・・。

 

「おう、お帰り。あんまり日に焼けてないな。最近のUVケアってのはたいしたものだな」

 

「おじゃましてるよ。もうすぐ帰るから安心して」

 

 

 くたくたになって部屋に戻ると、双子とあの子がテスト勉強していた。白羽さんが入院しているので代わって面倒を見ているという。そんなに好事家とも思えないのに・・・・・・。勉強しながらの会話を聞いていると何か変だ。料理の事ばかり話をしている。聞いている私がお腹を鳴らしてしまったほど刺激的な内容だった。

 

「孝崎ちゃん、聞こえたよー。この時間は仕方ないよ。蘇芳ちゃんも図書室で良くお腹鳴ってるし」

「お前は、何時もサラダみたいのしか食わないから・・・・・・。肉食え。肉。ここは食事だけは絶品なんだからよ」

 

「貴女たち、試験勉強してるんじゃないの? 聞いてればさっきから食材の話しかしてないじゃないの! 」

 

「だってさ、試験が終わったら収穫祭だって有るし、私達料理部も活動再開するし、体験入部会もするんだよ。先の楽しみを糧に、辛い試験を乗り越える。青春だよ。孝崎ちゃん」

 

「沙沙貴さん達はともかく、あんたは、料理部でも何でも無いじゃない? 」

 

「あんたじゃないよ。私には八重垣えりかって言う名前が有るんだ。呼びにくかったらあだ名付けてもいいぜ。だけどメドゥーサは止めろ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「孝崎ちゃん、"がっきー"でいいじゃん言いやすいし」

 

「またそれかよ。幼稚園からの定番だよ、正直飽きた。まあいいや慣れてるし」

 

「夕食の介助を頼むよ。お昼は食堂に出向いてこっ恥ずかしかったから・・・・・・」

 

「ダリア先生と、いちゃいちゃして大変だったんだよ。あーんとかしちゃってさ」

 

「ウソ付くな沙沙貴。そんな目で見るなよ。ちょッ誤解を解いてから帰れよ、おい! 」

 

 

 

「葉子先輩、一体何処に居るんだろ。何処にも居ないね。探し疲れちゃったよ、ゆかり・・・・・・」

 

「小夜花、諦めて早めに御飯行こう。部屋に戻る前に食事にしようよ。お腹鳴りまくりだよ。御飯大盛りにして、おかず追加して分け合おうよ」

 

「異議無し。先に食堂行こう、さあ行こうぜ兄弟」

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