会長の思惑、Second Phase   作:抱き枕50

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月の光

「お待ちしておりました。不束者ですがご指導ご鞭撻宜しくお願い申し上げます」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「!? どうしてここに居るの・・・・・・!!」

 

 

 朝から暑い中、熱中症と戦いながら学院内をを草むしりして疲労困憊。その後も先輩を捜して散々っぱら校内や、学院の敷地内を捜し回わって全くの坊主だったから心が折れた。

 

 酷暑の中大汗をかき、不快な様を先ずはシャワー室で水に流し、動き回っての空腹を夕飯の時間の前から並んで、いの一番に食事をして満たした。そして二人でぐだぐだと愚痴をこぼしながら部屋に戻ってきたのだ。そして部屋に入るとあれだけ必死に探しても見つからなかった件の先輩が私達の部屋の床に正座して座っていた・・・・・・。

 

 

「鍵が開いてたから、失礼かと思いましたけどお部屋に入って待ってました。防犯上はあれですけど、待ってる様を見られたくない私にとっては助かりました」

 

「そんなこと聞いてるんじゃないわ。どうしてここに来たのかということよ。私達に復讐するつもり? 」

 

「復讐なんてとんでもない、復習の為に来ました。私を導いて下さい。お願い致します」

 

「何よ、何を言ってるの? 担ぎに来たって訳? 」

 

「違います。私を・・・・・・開発して下さい。急ぐの。急がないと・・・・・・お願いします。この間みたいのを・・・・・・して・・・・・・下さい」

 

 葉子先輩は三つ指をついて私達に頭を下げ続けた。見て固まる私達。未だ開いてるドアから、人の気配を感じて慌てて我に返る。

 

 

「ゆかりー、小夜花? どうしたのー何かあったの? 」

 

 

「ゆかり、ちょっと外に出て! 適当に誤魔化して人払いして。私はこの人を何とかするから」

 

「判った。でも何で私が外なのよ。勝手なんだから小夜花は・・・・・・」

 

 

 

「一体どうしたのよ、変な声出して。部屋に何か有ったの? あっ,何か居たのね。まさかゴキ・・・・・・」

 

「ち、違うわ。ゴキじゃないわ信じて。だ、断末魔のセミが・・・・・・」

 

「セミねー。あいつら死んでると思って取ろうとすると突然生き返るんだよね。ゆかり達でも苦手なもの有るんだ。それはいい情報ゲットしたわ。それじゃね。暑いから判るけど、窓を開けっぱなしじゃなくて網戸にしておきなさいって。それじゃまた明日、奴隷労働がんばろうね」

 

 

「外は収まったよ。小夜花、先輩はどうしたの? 」

 

 問うてきたゆかりに最上段のベッドを指さす。ふたりで顔を見合わせて床に座り込む。まさかここに居たなんて。それは学院内をあれだけ探したって見つからない道理。

 

 

「降りて来て。ドアをロックしたからもう大丈夫。ここには私と小夜花しか居ないから安心して」

 

 降りようとしてるも、なんだか震えてしまっておぼつかない先輩を私達で支える。床に足がついた瞬間ガクンと倒れた。ベッドの下段に上半身を載せ、床に崩した正座で座る先輩。

 

「ちょっと。平気ですか? 先輩。拙いって・・・・・・また私達が病院送りの死神扱いされちゃうよ。小夜花、自販機で牛乳買ってきて。気持ちを落ち着かせるのに牛乳は良いのよ」

 

「了解。にしてもさすがに保健委員じゃん、ゆかり」

 

 小夜花は世辞を言った後、ドアを静かに開け周囲を伺ってから音を立てずに素足で部屋を出て行った。

 

 

「先輩、さっきの口上。何処で覚えたんですか。何をどう導けば良いのかなー。すごくやらしいですよ。普通の女の子はあんな言い方しないわ・・・・・・答えて下さい。答えないと・・・・・・」

 

 

 後ろから抱きつき先輩の小さな胸を揉む。

 

「えっ、先輩ノーブラじゃないですか。ますますやらしい。破廉恥な人。まさかショーツも? 」

 

「こっちはしてるのねって、Tバックじゃないの。何よ、何なのよこの人。この間は学園の指定のドロワーズ、いやカボチャパンツ履いてたのにどういう心境の変化? ねえ、答えてよ先輩」

 

「だって、食い込みが・・・・・・良くて・・・・・・」

 

 切れ切れに答える先輩。思わず押し倒したくなる。そう思った刹那、鍵の音とともにドアが開いて我に帰った。

 

 

「ゆかり、牛乳買ってきたよ。?、ゆかりどうしたのよ顔真っ赤よ。あんたでもそんな初な顔する事あるのね。いいもの見させてもらったわ」

 

「からかうなー! もう。牛乳寄こしなよ。ほら先輩、ビンじゃなくて悪いけど一気に行って」

 

 先輩は、言われるままに250mlの大きめの牛乳パックを、一気に吸いつくした。そしてそのパックを大事そうに両手で抱えている、先輩。惚けている先輩をそのままにし、私達は部屋着に着替えた。

 

「何時まで固まってるんですか、葉子先輩。落ち着いたでしょうから、こっち向いて話をしましょうよ・・・・・・」

 

 ゾウガメが動くようなスローな動きで私達の前に座り直した。真面目に正座をして指をモジモジさせて下を向いたまま話し始めた。

 

 

「私、もっともっと、気持ちよくなりたいの。この間のことが忘れられない・・・・・・。理屈ではいけない事なのかもしれないけど、抑えが利かないの。このままじゃ試験に全く集中できないの。それに蘇芳さんが帰って来る前に、譲葉にアタックしないとなんだか手遅れになりそうで・・・・・・」

 

 そこまで話すと、ぐずぐず泣き始めた。よほど思い詰めていたのだろう、手にしていた牛乳パックを押しつぶした。瞬間、ストローの先から残っていた牛乳が出てしまい、スカートから見えるこの間よりも少し日焼けした褐色の太股にかかった。ものすごく煽情的だけど、先輩は絶対的に知識が足りないのだろう、そういう風には意識していないようだった。ゆかりはそれを舌で舐めとった。

 

「何をしてるの。関本さんやめて・・・・・・。くすぐったい・・・・・・」

 

 そう言って、ゆかりを払いのけた。

 

 

「そう、じゃ止めるわ。自室に帰って頭を冷やして下さい。立って! 一人戻れないのなら私が連れて行ってあげます。小夜花も来て。こんなへたれ女に関わってる時間なんて私達には無いの。アミティエの会長に私が全部話してあげる。そうすれば解決するでしょう? 葉子先輩は性欲の抑えが利きません。試験期間に関わらず私達の部屋で、して下さいって土下座するんですよって。迷惑ですから八代先輩が面倒見てこの色きちがいをしつけて下さいって」

 

「うわっ、直球すぎない? それ・・・・・・」

 

「だって元々は、葉子先輩が会長とくっついてもらうのが目的なんだもの。ただのヤリたがりに関わってる時間は無いのよ。向こうが蘇芳さんから手を引いてくれるならプロセスなんてどうでもいい。こっちだって蘇芳さんに病院に逃げられちゃって大誤算なんだから」

 

 

 全ての感情がない交ぜになった様な、半泣き、半笑い、半怒顔の先輩。S心が刺激される。それはゆかりも一緒の様だ。

 

 

「先輩、御免なさい。ちょっとキツい言い方になってしまったわ。機嫌直して。葉子先輩は可愛い。でも、今日の私達は疲れてるの。明日はしてあげるから、今日は遅いし・・・・・・だから」

 

 

「そこで逝くまで一人でしなさい。もちろん全裸で。出来なきゃ裸で放り出すから。それともそれの方が良いかしら? マジックで見せたがりの露出狂って書いてあげるわよ」

 

 ゆかりの言葉に、先輩だけでなく、私も驚く。さすがだなと思った。私はそこまで鬼ではないので、先輩にキスして服を脱がしてあげた。少しくらい自分自身に言い訳立たないと可哀想なので・・・・・・。そんな気持ちも、下着を見て翻意した。まさかのノーブラ、Tバックのショーツに目を疑った。ゆかりは知っていた様で取り立てて驚いていない。

 

「はい。通せの通りに致します・・・・・・」

 

 

 

「無事に帰ったかな。これでガス抜き出来ると良いんだけどね。あそこまで思い詰めて煮詰まっちゃってると何にしても良くないし。あんなんで、アタックされたらされるほうも、迷惑千万だよ。それにしても他人の自慰見るのってヤバいね」

 

「だよね。まさか実際にして逝くんだもの。それにしても、ゆかりの対応は神掛かってるよ。まさに師だわ」

 

「それってほめ言葉じゃないでしょ・・・・・・。この歳でそんな事言われるのって。何時からこんな女になっちゃたんだろ・・・・・・」

 

「明日から、葉子先輩ずっと来るのかな。テストに影響しない様に、時間は短く、内容は濃くだねー。ゆかり」

 

「明日のことは、明日考えよう。今日は疲れたから、寝るわ。小夜花、明日も忘れない様にお花にお水を頼むね・・・・・・お休み」

 

 

 

「孝崎、いい加減に機嫌直せよ。バスキア教諭だって悪気が有った訳じゃないんだからよ」

 

「悪気が有ってヤラれてたまりますか。大体、ガッキーがそんな所に本を積んでいるからこんなことになるのよ」

 

 そう、それを言われるとぐうの音も出ない。孝崎が何を怒っているかと言うと、孝崎の留守にバスキア教諭が孝崎のベッドにスイカの食べカスをぶち投げて汚してしまったからだ。

 

 収穫祭に食すスイカの試し食いを私とバスキア教諭二人で風呂上がりに自室で行った。そこまではまあ良かったんだが、かたして教諭が部屋を出ようとした時に悲劇が・・・・・・。

 

 床に有った私の本にバスキア教諭が蹴躓いてしまったのだ。スイカは実は孝崎の分も有ったんだけど、私が内緒で食べてしまったんで、非常にバツが悪い。勿論、孝崎はそれを知らない。知っていたら・・・・・・悪い方に考えるのは無しだ。そう考えると悪い方に引っ張られてしまうから。

 

 

「ベッドは明日、業者入れて何とかするって、バスキア教諭が確約したよ。問題は今日だよな。面倒見の良い委員長のとこ行ってくるか? お前がよければ一緒に寝るって手も有るぞ? 」

 

「誰が誰と一緒に寝るの? 花菱さんの部屋、ベッドは一つ開いてるのに、何であの狭いとこで同衾しなきゃいけないのよ。ガッキーはバカなの? 」

 

「バカは孝崎お前だ。誰が委員長と同衾なんて言ったよ。この部屋で私と一緒に寝るかって言ったんだよ。委員長と匂坂と一緒に夜を過ごすなんてのはちょっと自重しておけ」

 

「なんでよ、二人は出来てるから、私が行ったって安心でしょうに。ん、私の事心配してくれてるの? それとも一人が淋しいの? そっか淋しいのね。素直じゃないんだなあ」

 

「馬鹿言ってんじゃねえョ。誰が淋しいもんか。ただ・・・・・・」

 

「ただ? 何よ。ハッキリしなさいよ。らしくないわ」

 

「実は・・・・・・」

 

 

 

「白羽さん? こんな時間にこんな所でどうしたの? もうすぐ消灯よ。今日はちょっと風が強いから少し冷えるわ。夏だからって油断しちゃダメよ。さあ部屋に戻りましょう」

 

 部屋から見える夜空がとても綺麗に見えたので、部屋を抜け出して病棟の屋上に夜景を見に来た。勿論、禁則事項を破っての事だ。主任さんは叱る事もせずに、私の背後から私の肩に自分の着ていたカーディガンを掛けてくれる。そして私の手を取った。とても温かい手。いつもクールに無表情の主任さんの意外な事実。雪女のイメージだったので衝撃だった。

 

「主任さん。今日は夜勤なんですね。ここは夜景がすごく綺麗で・・・・・・。お月様も良く見えて、ウサギさんも今日ははっきりわかるー。学院はどの方角なのかしら。あっちの何も明かりの無い方かな・・・・・・。みんなどうしてるのかな・・・・・・学院のウサギさんも元気かな? 私、こんなに一人が淋しいなんて思わなかった。アキラはこの孤独、何ヶ月もしていたなんて。それに比べて私は・・・・・・」

 

 そこまで口にすると、大きくくしゃみが。と共に涙が。なんだかホームシックになってしまったみたい。孤独に強い、いや強かった過去の私は何処に行ったのだろう。学院に入ってから、何時も側には級友や先輩が側に居た。すっかりその存在が私を変えていたのだと気付かされる。

 

 袖で涙を拭い、鼻をすすり、主任さんに手を引かれて病室に戻ることになった。その間、主任さんは無言。重い空気のまま階段を降り廊下を歩き続ける。エレベーターを待つ間、主任さんが重い口を開いた。

 

「白羽さん・・・・・・。外に居る時なんて言ったの? アキラってもしかして黒沼アキラ・・・・・・さんのこと? 」

 

「えっ? そうですけど・・・・・・」

 

「そう。やっぱり貴女だったのね。そう思っていたけど、白羽さんの口から直に聞くまでは・・・・・・違うって思っていたかった。そう貴女があの子を・・・・・・」

 

 押し黙る主任さん。どういうリアクションをして良いか戸惑う私。そこにエレベーターが来て先に私が乗り込んで主任さんが後から乗った。息が詰まる様な無言の時間。そして部屋の有る階に着きエレベーターを出る。

 

 主任さんは私に一人で部屋に行く様に言い、自身は病室と正反対の暗い廊下を一人消えて行った。やっぱりこの人がアキラに性の手解きをしたした主任さんで間違いないと思った。さっきの態度といい、未だ特別の感情を持っているのだろう。私は部屋に行くのを止めて、主任さんの後を追った。

 

 

 

「お帰り。今まで何処に行っていたんだい? 、葉子。また勉強会? そんなにじたばたしなくたって葉子ならトップ5に入るだろうに」

 

「ただいま。譲葉。貴女はもうちょっと頑張りなさいよ。やればもっと上に行けるでしょう? でも貴女にガリ勉は似合わないわね。そのままで居た方が貴女らしくて良いのかな・・・・・・」

 

「何か疲れてるみたいだけど、マッサージでもするかい? 」

 

「いや、触らないで。今日はしなくていい。貴女も早く寝ましょう」

 

 キツい言い方に軽くショックを覚えた。消灯までにはまだ時間がある。余計なことでも言ったかなと。直ぐに布団潜り押し黙った葉子。なんとも微妙な空気に居たたまれなくなり、部屋を出て外の空気を吸いに行く。

 

 今日は風が強く、夏にしては空気がクリアに感じた。星が綺麗に見える。虫よけをしていないので基本、藪には近づかずに石畳の遊歩道を歩く。遠くに人影が見えた気がした。ちらちらと懐中電灯の明かりも見える。虫取りってことは無いか。そうでないとすれば肝試しでもしているのだろうか? 試験期間なのに・・・・・・。

 

 

 ふと蘇芳に出会った春の日の夜を思い出す。入寮者が夜に歩いてるなんてこれっぼっちも思わなかった。桜の中の幽霊かと思ったくらいに現実感が無かった。今頃何をしているだろう。

 

 一人で淋しがっているのでは無いだろうか。そう思うと帰って来るまで読まないと決めていた、交換日記を読み返事を書かかなければ。そう思った。届ける手段はおいおい考えるとしても、書かないことには始まらないのだ。まだ消灯までには時間があるし部屋に戻って書く事に決めた。

 

 

 

「マユリ、文章はこれでいいかしら。推敲してみて」

 立花から、蘇芳さんのお見舞いを直訴する申請書の下書きを渡された。堅苦しい文章が並んでいる。一応筋道は通ってるし、言葉遣いも問題無い。ただ、これが通るかどうかは別問題だ。何しろここは刑務所の様な施設、中はある程度の自由が有るものの、外部との関わりは極端に制限されている。お見舞いとは言え、私達生徒が学院の外に出られるかは予断を許さない。

 

「いいと思うよ。でも仮に通ったとしても、どうやって行けば良いのかな? バスと電車の乗り継ぎでは時間がかかりすぎるよ。それこそ病院に5分も居られない。一日使ってもそうなりそうだ。タクシー使うっ手も有るけど費用が・・・・・・」

 

「そうね。四人でいければまだそれも有るけど、取り敢えず申請は二人で考えてるし・・・・・・。四人でも私達の自己負担では片道でも苦しい。ここの先生は車出してなんてあり得ないし」

 

 

 二人して、ため息をつく。そして病院の蘇芳さんを想う。一人は淋しくないか、食事は合うのか、本当に検査結果に異常は出ていないのか等々。

 

「ねえ、立花。本当に実現出来たら、一緒に帰ってきたいよね。帰りに何処かでショッピングとかしてさ」

 

「そうね、マユリや蘇芳さんの私服姿を見てみたいわ。私もお洒落なお洋服着てみたいし・・・・・・」

 

「それにはどうにか策を考えないと。試験なのが恨めしいよ・・・・・・」

 

 

 

「小御門、無理を言ってすまなかった。君の手紙が功を奏した。ペダルの破損を理由にして彼女と連絡とれたよ。真相を知ったら殺されそうだけど。試験の最終日に来られるって。本当は代わりに会いに行ってもらうのではなくて、私が行きたいんだけどね」

 

「そう、良かった。私が譲葉に会いに行った時は、こんなに苦労しなかったんだけど。どうもあれがお気に召さなかった学院の関係者が居るみたいね。なんか外出絡みで変な噂もあるみたいだし・・・・・・」

 

「それって、横流し的なことかい? そういうのは私も聞いたことがあるよ・・・・・・」

 

 この話は止めておきましょう。小御門がそういうので私は話題を変えた。そして明日の準備をして上のベッドで消灯を待つ。小御門はまだ用事が残っているらしくごそごそと物音を立てている。気にはなるけど睡魔が襲ってきて消灯を待つまでもなく落ちてしまった。

 

 

 

「ねえ、ゆかり。まだ起きてる? 蘇芳さんに会いたいね。何で今ここに居ないんだろう。どうしてなのかな。どうしてだと思う? 」

 

 消灯が済み、月明かりの部屋。疲れているはずなのに、寝つかれない私。多分まだ起きていると思われる、ゆかりに話しかけた。

 

 

「小夜花、本当にどうしてこうなってしまったんだろ。私達どんどん堕ちていってるよね。こんな私達を蘇芳さんはどう思うんだろうね。考えると怖い。神様ってやっぱり居るんだよ。何処かで見てる気がする」

 

 

「今日は風が強くて、雲が無いせいか月が眩しいね。パワーストーンは月の光で清めるけれど私達もここで浴びると浄化されないかな・・・・・・小夜花はどう思う? 」

 

 そう言いながらベッドを出て窓辺のテーブルに向い、椅子を引いて腰掛けた。

 

「そうね。でも邪気だらけの私達だと・・・・・・私達の存在そのものが消えたりしないかしら・・・・・・ゆかり? 」

 

 私もまた、ベッドを出てテーブルに向い、ゆかりの正面に座った。月明かりのテーブルにはアネモネの花が活けてある花瓶。夜故に花は閉じている。そして主の居ない三つ目の椅子。

 

 

「そうかもね。そうだとしたら・・・・・・一体、誰が泣いてくれるのかな・・・・・・蘇芳さんは泣いてくれるかしら」

 

 淋しそうな顔をして微笑み、窓の外を見て涙するゆかり。私もまた、同じ・・・・・・。

 

 アネモネの花の花瓶を手に取り香りを感じる。これは黒沼さんの誕生花。蘇芳さんの恋人だった人。黒沼さんは早逝し、残された蘇芳さんは悲しみに打ちひしがれた。

 

 時は流れ表向きは立ち直りつつ見受けられるけど、今でもまだ吹っ切れてはいない。色々な人が色々に手を差し伸べてはいるけど、まだ一ヶ月も経っていないのだ。

 

 私達は蘇芳さんが好き。恋人になりたいと思う。だけど、彼女の悲しみを全て癒せるかは自信が無い。それはゆかりも自認している。方法の是非はともかく私達は私達のやり方で進むしかないのだ。青い月の光の中、ゆかりと私は自分の気持ちに改めて向き合った。

 

 

 

「譲葉、まだ起きていたの? 月明かりの中で読書なの? 目を悪くするわよ。私に気兼ねしないでスタンド付けなさいよ」

 

「悪いね。起こしてしまったかな。もう終わったよ。僕ももう寝る。今日は月が馬鹿に明るく感じるよ。おかげで月明かりだけで用が済んだ」

 

「あっ、今日はスーパームーンよ。月が接近して大きく見える日。願い事をすれば叶う日と言われてるけど・・・・・・」

 

「さすがに葉子は天文部だね。確かに大きく見えるよ」

 

 そう譲葉は世辞を言った。私は今の今まで忘れていたので褒められるのは本意ではない。慌てて飛び起きて月の光を浴びた。

 

「なによ、忘れてたの? 一体なにをお願いしたのさ。ねえ、葉子。教えてよ。ねえってば・・・・・・」

 

「譲葉こそ何をお願いしたの? 」

 

「内緒だよ。そんな恥ずかしいこと。言える訳がないよ。さあ明日も試験、寝ようよ。あれ、0時回ってる。もう試験は今日だ・・・・・・」

 

 

 

 この子ったら、寝相がいいけど寝返り打てないのかしら。辛くないのかな。寝顔は可愛いけど、色々大変なんだろうな。もう少し優しくしてあげようかしら。天の邪鬼で嫌がりそうだけど・・・・・・。月の光に照らされた八重垣えりかの寝姿を見ながら寝つく前のことを思い出す。

 

 花菱さんの部屋で寝るからと部屋を出て行こうとした私を止めた理由。それは・・・・・・

 

 

「なによ、そんな理由なの。呆れた。スイカの食べ過ぎで利尿が心配? それで一人が嫌だって言うの? 私はあなたの介助をすることになってるけど、ああもう・・・・・・。大体、なんでそんなに食べたのよ。試食じゃなかったの? 」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

「まあ、頼りにしてくれるってのは嬉しいけどね。弱みを見せてくれること、貴女は極力避けるのに、少しは認めてくれたって事ね。ガッキー!」

 

 

 楽しそうな孝崎。まずい、いよいよ言えない・・・・・・。こいつの分までスイカを食べてしまったなんて・・・・・・。しかし私が口を割らない限りバレない話。バスキア教諭は私と昵懇の仲。彼女は秘密を守ってくれるはず・・・・・・だ。多分。おそらく・・・・・・。

 

「ガッキー、どうしたの気分でも悪いの? 何か合ったら私が何とかしてあげるから、安心してね」

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