「ねー、委員長。試験の最終日って一時間しかテスト無いじゃない? 」
「そうだけど・・・・・・。それがどうかしたの、沙沙貴さん? 」
夕食の時、沙沙貴さん達が声をかけてきた。そして 私の隣、左右から挟み込むように席を取る。正面のマユリも怪訝な顔をしている。今まで、隣に来ることは有っても、二人は何時もくっついていたから・・・・・・。
「明日、テスト終わったら、ピクニックみたいのしない? 天気は晴れそうだし。テスト終わるんだし、パーっと行こうよ。良い所見つけたんだー。転入組にも声をかけてさ」
「明日は、ちょっと無理。茶葉が無いのよ。切らしちゃってて・・・・・・ごめんなさい。それに私もちょっと用事が有って・・・・・・」
「えー。それって酷いよ。楽しみにしてたのに・・・・・・」
「仕方ないだろ、前々から決まったならいざ知らず、急に言われたって人には都合ってモノがあるんだよ、苺」
「ユリーには 聞いて無いよ。委員長と話してるんだ、割り込まないで! 」
「沙沙貴さん、そんな言い方しないでくれる? マユリと一緒に先生のお手伝いに行くのよ。だから無理なの」
「わかったよ。用事があるなら仕方ないね。林檎、ガッキーのとこ行こう。明日の試験に向けて最後の追い込みしないとね」
渋々といった態で教室を出て行く、沙沙貴さん達。それをマユリと二人で見送る。
「立花。その内に閻魔様に舌を抜かれるよ・・・・・・。この間のトイレのときの嘘といい、嘘上手過ぎだよ。全く」
「あら、正直に本当の事言った方が良かったかしら? お互いの身体を貪っていて書類を無くしました・・・・・・って」
「声が大きいって。聞かれたらヤバいよ。 全く、最近なんか溜まってないかい? ひやひやするよ」
「やっぱり、明日アレを実行に移すみたいだね、苺姉。カマ掛け御苦労様。だけどどうやって実行に移すのかが想像出来ないわ」
「私達の時と違って、真っ昼間だものね。アレ読んでも協力者の存在は判らないし、仮に居たって書いたりはしないな。手品のタネを最初に客にバラす奴は居ないし。だけど絶対タネが有る・・・・・・」
「委員長達をぴったりのマークしかないよ。それと車の出入りする場所。かつカメラの薄い場所。寮の方は、車止め有るし警備会社とリンクしてるから日中は先ず無理。そうなると校舎正面玄関横の外来用の駐車場とかかなァ? 」
「あそこ教室から死角なんだよね・・・・・・。廊下の出窓からならよく見えるのに」
「それにしても、このマル秘書類のコピーを私達が持っているなんて、委員長たちは想像だにしてないみたいだね」
「私達をハブって立案なんてあの二人ちょっと許せないよ。 絶対に同行してやるんだから! 」
「ねえ、今日も双子さん達来るの? 八重ちゃんの事、そんなに気に入ってるのかしら。もてもてねー。その前にその汗だくの身体を拭いてあげるわ。どうかしたの? 怖い顔して」
「おい、八重ちゃんは止めろって・・・・・・」
「そんなことでそんな顔してたの? キレイな顔に怒りしわが出来ちゃうわ・・・・・・何よ可愛いじゃない、"八重ちゃん"って。おしとやかな和服少女みたいで」
「ちゃんづけなんて柄じゃないって事だよ。どうせなら白羽みたいのにそういうあだ名、呼び名を付けてやれって」
「そう言えば、やっと八重ちゃんの大事な人、戻ってくるんだよねー。すました顔してるけど内心嬉しくてしょうがないんでしょ? 八重ちゃんは巨乳ラブだから」
「てめえ千鳥、ちょっとこっち来い。数見も真っ青の下段の回し蹴りをくれてやるよ」
「八重ちゃんがいくらそんなこと 言っても怖くないもの。だって相変わらず寝言の内容が・・・・・・。この間飛び起きてメモに取っちゃったわ。読み上げてあげようかなー。いや白羽さんに手渡そうか・・・・・・」
「マジ? おまっ、それは反則だろ。止めろ・・・・・・。止めてください、何でもするから、後生だからお願いします・・・・・・今度学食でおごるから・・・・・・」
「それにプラスして、私のこと千鳥"ちゃん"て呼んでみて。ここでじゃなくて教室で」
「馬鹿野郎! そんな恥ずかしい真似が出来るかよ。生まれてこの方、友達をちゃん付けしたことなんて一度も無いんだよ、私は! 」
「じゃあ、私が八重ちゃんのファーストに成れる訳だ。絶対に言ってもらう。白羽さんにも聞いて欲しいな。そうすれば彼女よりも私が上に・・・・・・」
「ガッキー、居る? 勉強教えてよー」
ドンドンと部屋の戸を叩き、沙沙貴達の声がする。返事を待つ迄も無く、がちゃりとドアを開けて入ってきた。
「お前たち、返事を待ってから入って来いよ。勉強は見てやるけど、ちょっと待ってろ清拭を済ませてからだ」
「何、ガッキーのヌードが見られるの? でも見てもしょうがないか。私達の方がエロいし・・・・・・準備して待ってるからごゆっくり・・・・・・」
「おいっ、なんでお前達の方がエロいんだよ!? 。証拠を見せろよ。もし出せなきゃ、その時は・・・・・・」
「ちっ、ちっ、ちっ、私達、効果出てきたんだ。蘇芳ちゃんのレシピ。進化の証、見せてあげるよ。ほら、ほら、ほら」
沙沙貴達はそう言っていきなり制服を脱いだ。スポーツブラが普通のブラになってる。しかも図に乗ってブラも取って私に見せつけてきた。たっ、確かに膨らんできてる。姉の苺よりも、妹の林檎の方が少し大きい。二人してドヤ顔だ。千鳥の奴は拍手してやがる・・・・・・。
くそー、こいつら背は伸びてないのに、女の沽券にかかわるこっちが成長してるとは・・・・・・やられた。何かすごいショック。テストも、先程までの、ちゃん付けの話しも頭から消えた。こいつらよりも・・・・・・って事は、クラス一の貧乳って事だ・・・・・・。おそらく、学院でも乳カーストの最下層・・・・・・。
「何落ち込んでんのよ。私はそんなこと気にしないから安心してよ。ありのままの八重ちゃんがいいわ。ストレス溜まったらまた揉ましてあげるから」
「お前、この歩くスピーカーの前で変な事言うなー。さっさと拭いてくれ・・・・・・」
「痴話喧嘩、ご馳走様です。でもすっかり仲良くなって、私達も嬉しいよ。ガッキーは孤高の人だから心配してたんだ。孝崎ちゃんもなんか淋しそうだったから・・・・・・」
「孝崎ちゃん達、転入組は、明日は出席だけ取ったら後はフリーなんでしょう? 予定は有るの? 」
「関本さん達は、何か用事が有りそうだったけど、詳しくは聞いて無いわ。他の子は寝て過ごす子や視聴学室で映画見る子もいた。私は、白羽さんお薦めの湖の方に行ってみたいのだけど、八重ちゃんの介助有るし。ちょっと迷ってるの」
「私達、特例で内線の無線電話をペアで貰ってるんだけど、精々校舎から寮までしか電波が届かないんでお出かけには役に立たないのよ・・・・・・。目立つと何かと暮らしにくいからこれの話するの貴女たちが最初。先生以外は誰も知らない秘密なのよ。そうそう話し変わるけど、八重ちゃんは皆より一時間試験多いのよ、知ってた? バレエの踊れない分の筆記試験が有るのよね」
「そう。私だけが、最終日に二時限迄の試験なんだ。後、学期末にレポート提出も有る。まあこんな脚なのに、ここに来た報いみたいな物だよ。千鳥みたいに踊れるのなら良いけど私は・・・・・・」
ガッキー、ごめんね。すまなさそうな顔で沙沙貴達が私に謝ってきた。私は気にしてないからと諭す。千鳥も何か浮かない顔をしてる。こういう空気は苦手だ、話題を変えるとするか。
「試験が終わった後、食堂で当日限定スイーツが出るの知ってるか? 食べに行こうぜ。沙沙貴、なんだよノリが悪いな? さっきからじっと見てるけど、そんなにこれが気になるのか? 」
「白羽さんもいよいよ明後日退院になるのね、やっと皆に会えるのよ、元気出しなさい。明日非番だけどここに来てあげるから。もう、手紙を読んでからホームシックに輪がかかっちゃったわね。仕方ないけど・・・・・・もう暫く抱いてあげるから、泣かないで」
「主任さん、本当に・・・・・・ごめんなさい。自分でもこんなに弱い女とは思わなかった。でも私のために貴重なお休みを潰してしまうのは止めてください。私大丈夫ですから・・・・・・」
「ダメよ、そんなに情けない顔して。私、休みでもぼーっとしてるだけの事多いの。気にしなくて良いわ。そうね、今日からここに泊まって良いかしら。一人で淋しいのでしょう。ここに来てから、同年代の子は入院してないし、看護学校の子は皆帰っちゃったものね。私の様なおばさんでも、貴女を悦ばせる事が出来て嬉しいの。もっといろんな事教えてあげるわ」
私はこくりと肯いた。何度となく、主任さんに女の悦びの享受をされていたのだ。それは巧みで、今までに味わった事の無い物だった。癖になってしまう。病み付きになってしまいそうになる程だった。それまでは試験の関係で幾らか控えていたのだけど、明日は得意中の得意の古文の試験。多少体調が疲れていても良い点を取る自信は有る。そして肌を合わせる最後の機会。だとしたら答えは決まっている・・・・・・。
「おばさんって言った所は、否定してくれないのかしら・・・・・・。その分意地悪するから。話し戻すけど、じゃあ決まりね。ご馳走を持参で来るから、お腹空かせておいて。じゃあ後で」
そう言って主任さんは部屋を出て行った。口に残る主任さんの唾液の味を反芻する。そして胸に残るキスマーク。濡れた下着。今の私は所謂、事後だ。鏡を見て変じゃないかを確認する。
鏡に映る私は普段しない髪形。聖母祭でアキラがセットしてくれた髪形と同じ。もともとは主任さんから手解きを受けてそれを私にしたという事らしい。私の知っているアキラはショートヘアだったけど、それより前、入院したころはロングにしていたのだという・・・・・・。私を通してアキラを思い出す、否忘れようとしているのだろうか・・・・・・。主任さんが救われるなら私はどちらでも構わない・・・・・・。
「先輩、明日いよいよ実践か。小夜花もこの色仕掛け、絶対にうまく行くと思うよね、今までの事を思い出してみて。こんなに進歩の早い、飲み込みの早い人は私は知らないわよ。素質が有ったと言う事みたいだけど、それにしても長足の進歩よ」
「私達、二人がかりでやっと葉子先輩に対して有利に立てたけど、サシだったら完敗よ。ゆかりもそう思うでしょ? 」
「そうね。全く、なんていうか・・・・・・パンドラの箱を開けてしまった感が有るわね。あの人一人で収まらないかもしれない・・・・・・」
「八代先輩って、ああいうキャラしてるけど結構ウブいから葉子先輩と肌を重ねたらあっと言う間に侵食されて廃人になってしまうかも・・・・・・」
「それって笑い事じゃないよ。そっちに行けば良いけど、万が一拒否られたら葉子先輩、暴走しかねないわ。一途な分反動が恐ろしい・・・・・・。あっ帰ってきたよ・・・・・・」
「葉子先輩、後片付けお疲れ様。何だか何時もにもましていい顔してるよ。成功を祈ってるからね」
「今の先輩なら、どんな手練でも一捻りよ。自信を持って・・・・・・」
先輩は、それを聞き真っ赤に照れながらしゃがみこみ正座をし、私達に頭を下げた。三つ指を付いて・・・・・・だ。あの日の様に。つられて私達も正座をして頭を下げた。そして私達は頬にキスを交わし、葉子先輩は今まで見た事の無い様な晴れやかな笑顔で部屋を出て行った。私達も笑顔で送り出したのだけど・・・・・・。
「ちょっとゆかり、何泣いてるのよ。貴女、葉子先輩に情が移ったんじゃない? 何だか"指導"の途中から必要以上にのめり込んでたもの。本心ではうまくいって欲しくないのじゃなくて? 」
「ばっ、馬鹿な事を言わないで。泣いてなんか・・・・・・あれ? 私、もしかして泣いてる? 嘘。なんで? だって葉子先輩がうまく行かないと・・・・・・蘇芳さんが・・・・・・蘇芳さん?!?! 」
刹那頭の中が真っ白になった。なんてこと! もともとは蘇芳さんを私の籠の鳥にする為に、先輩を堕として利用するはずだったのに・・・・・・。小夜花に言われるまで蘇芳さんの存在を忘れていたなんて・・・・・・。へたり込んで泣き続ける私を小夜花が抱きしめてきた。そして頭を撫でてくれる。なんだろうこの気持ちは・・・・・・。
「千葉先輩。いらっしゃいますか。一年の級長の花菱です。匂坂も一緒です」
千葉先輩の部屋のドアをノックする。すぐに返事が来てドアが開いた。
「入ってきて。誰にも見られてない? 」
「はい。誰にも会いませんでした。小御門先輩は? 」
「あいつは、用があったらしく席を外してるよ。君たちが来たのは手筈の再確認だろ? 居なくても平気だからさ。お茶の用意をするからそこに座って待っていてくれ」
千葉先輩は、緑茶に素甘をお茶請けに出してくれた。紅茶党の私もこの組み合わせには、たまらないものがある。相好が崩れてしまう。そして実家に居た頃を思い出す・・・・・・。あの頃は楽しいことばかりだった。
「ねえ、立花。何をそんなにニヤニヤしてるのさ。変なの。美味しいけど、普通の素甘じゃん? 」
「"じゃん"、なんて言葉使いはしないものよ、マユリ。何時までもそんな言葉使いしてるとマナーの授業で単位貰えないわ」
「なんだよそれ? 勝手に増やさないでよ。今だって辟易してるのに。試験が終わったら収穫祭が有って夏休みでしょ? 」
「いや一年生の君達は夏休みの少し前から授業の種類が増えるんだよ。第二外国語,音楽か農作業の選択授業や礼法の時間も増えるんだ」
とたんにマユリの顔が歪む。本当に表情が良く変わって見ていて飽きない。じっと見つめていると千葉先輩がやれやれといった顔で見ている。
「君達は、すごく仲が良い様だね。だけどこの学院はそう言うの嫌う所があるから、場所とか時間を注意するんだぞ。私は寛容だけど、そうでない人もかなり居るしね。小御門もやたらハグしたりするけど、真に受けない方が良いよ。アイツは教義を第一と考えるからな」
「さて、時間が惜しいから本題に入るよ。君達は試験終わるのは何時だっけ? 私達より早いはずだから・・・・・・」
千葉先輩は微に入り細に入りプランを立案していた。マユリは特に驚いた様で、所謂鳩が豆鉄砲を食らった様な顔になっている。
「こんなに、細かく事を成さないといけないのですか? 。ちょっと自信ないです・・・・・・。立花はどうよ。乗り込む辺りは秒単位での割り振りだよ出来る? 」
「そうかな? これでも最低ラインのプランなんだけどね・・・・・・」
「先輩は完璧主義なんですね。あの時の林檎さんもこんなに細かくプラン組んだのかな・・・・・・」
「組んだのかもしれないけど、実行するのが苺じゃ無理でしょ、いくらなんでも。これと同等のを立案したって、寸分違わぬ実行はさすがに・・・・・・」
「とりあえず、これを渡しておくから頭にたたき込む様に。キーは乗り込むタイミングだ。見られない様に、そして見られたとしても特定されない様にだ。その時の着替えはこれだ。ウイッグも見つけたから入れてある。時間がとれなかったら付けなくても良いけど、一応オンタイムなら無理なく付けられるはずだ。押してきても最低でも帽子を被ってくれ。他に何か質問は有るかい? 」
私達はいくつか質問をして返事をメモにとっていった。正直不安だらけだけど、やるしかないのだ。部屋を出ようとした時、小御門先輩が戻ってきた。
「あら、来ていたの。ちょうどよかった。これを預かってきたから。明日蘇芳さんに渡してあげて頂戴」
「これは? 」
「蘇芳さんとの交換日記よ。アレでも譲葉は乙女チックなの。照れの裏返しで、変な事ばかりするけど、許してあげて」
なんとも可愛い柄の巾着に入ったそれを丁重に鞄に仕舞った。また一層のプレッシャーがかかっていく。失敗したら・・・・・・。いや、絶対に成功させる。その為に色々な人が動いてくれるのだから。
「それにしても、八代はここに来てこの子たちに挨拶くらいしてやれって。何してんだ? 八代は」
「譲葉は先生対策よ。蘇芳さんの試験が終わったら直ぐに学院に戻る様に、用事を作ってる最中よ。そんなに言わないであげて・・・・・・」
「わかったよ。小御門がそう言うなら、もう何も言わない。悪かったな。そう言えば八代も小御門も、黒沼の月命日のあれやってるんだろ? 明日業者と打ち合わせするんだよな。そっちもうまくいかしてくれよ。そうだ、君達は黒沼とは親しかったのか? 」
「黒沼さんとは、そんなに親しくは・・・・・・。アミティエだった蘇芳さんは特別親しかったけれど、クラスの中では歳上と言う事もあり、ちょっと距離感が有りました。彼女は大人っぽくて偶像みたいな存在でしたし、話をするのに気後れする・・・・・・そう言う事を漏らす子は多かったです。正直、私達も・・・・・・。聖母祭の頃には、かなり溶け込んできてはいましたけど、その後、直ぐに亡くなってしまったから・・・・・・」
「そうか。そうだよな。黒沼は復学してから何処か達観してる様な所有ったしな。そんな中蘇芳とは小さい頃からの知り合いだっていうし、その辺りがああいう関係になった理由なのかもしれない・・・・・・か。それにしても聖母祭のアイツは綺麗だった。もっと写真を撮っておけば良かったと後悔してるよ」
「君達に協力するのも、後悔させない為。それが最大の理由だ・・・・・・」
「それでは、鈴木先生。蘇芳の答案を受け取ったら、直ぐに学院に戻ってきて下さい。待ってますから。それでメンバー揃って打ち合わせと言う事になります。足の確保は大丈夫ですか? 」
「大丈夫よ。送ってもらう手筈は取り付けたから。ついでに貴女達に頼まれた書籍も持ち込む事になってるの。蘇芳さんがリクエストした本も結構あるから期待していて。あの子、本当に書痴ね。選考がマニアックで驚くわよ。それに映画のDVDも期待していてね。こっちかさばらないし軽いし数は本より多いわよ。まあ少ない予算の都合で殆どがレンタル落ちだけど」
「それにしても、先生も食えない人ですね。蘇芳の入院をダシに私用を画策して。感づかれたら懐柔に走る・・・・・・。少ないとご不満の用ですけど、先生の向こうでの行動費、色々買ってくる物の予算は、ニカイアの会の裏金なんですから・・・・・・。まあ、こちらとしても折角出来たコネクションですから・・・・・・誠意を見せての出資ですからね、先生」
「判ってるわよ。あーあ。貴女がカメラ好きだって知ってたら、もう少し気をつけてたのに。あの距離から撮られちゃうなんて思いもしなかった。事が済んだら消去して頂戴」
「一応、これでも会長の職に有る身ですから。約束は守りますよ。そちらもドジは踏まないでくださいね。ここの人達は私達と違って聖人君子ばかりですから・・・・・・」
「ここを押すと会話が出来るの? 八重ちゃん」
「そうだよ千鳥。予め登録してある番号、そのダイモテープの番号だけにかかる仕組みだ。だから手間はかからないけど、対になってる同士しか会話が出来ない状態だ。だからここから外部には繋がらない」
「それが出来たのなら尚良かったのに。まあ欲をかくなって事ね。で、貴女たちがこれを貸して欲しいって理由を聞かせて・・・・・・」
なんとも言いにくそうに沙沙貴さん達が口を開く。話し始めた内容はあまりに突飛でびっくりしてしまった。私よりも八重ちゃんの驚き方は正に驚天動地と言った感じで・・・・・・。最初は担いでいるのかと思っていたけど、あの嘆願書のコピーを見せられては信じざるを得ない。
「お前たち正気か。いやお前らよりも、委員長達の方がだな・・・・・・それは。沙沙貴達はそれに便乗って訳だものな。しかしまあアイツ来週には黙ってたって帰ってくるんだろうに。なんでこんな事を・・・・・・」
「だって、蘇芳ちゃんに早く会いたいし、街で"自由に"ショッピングとか一緒にしたいからだよ。たかだか半日でもね。ここに居たら監視抜きの外出っていうの、それは中々叶わないもの。外出出来ても買い物は特約店ばかりにしか行けないし。ガッキーはそう言う事思わないの? 」
「私はこんな脚だから、そう言うのは考えた事なかった。家に居るときは姉が連れて行ってくれたけど、何か肩身が狭くってさ。気にするなとは言ってくれたよ、でも・・・・・・」
「八重ちゃん・・・・・・。私、代わりにしてあげるわよ。私なら気を使わなくていいから気が楽でしょう? 監視付きだけど外出許可取って街に行こうよ・・・・・・」
「孝崎ちゃん、優しいね。こんな優しいのに誤解されてて悔しいな。素の孝崎ちゃんをクラスの皆に理解してくれる様に、どうにか出来ないかな・・・・・・」
「いいよ、無理しなくて。私、嫌われるの普通だったから、誤解される状況慣れっこだし・・・・・・それに関本さん達、蘇芳さんを脅したりしてたから仲良くなりたくない! 」
「なんだよそれ? 詳しく話してみろよ」
「ごめん。蘇芳さんの了承が無いと話せないの。しまった迂闊だった・・・・・・口止めされていたのに・・・・・・」
「なるほど、そういうこと。蘇芳ちゃんが転入生が来てから私達に口ごもることが何度か有って、問いただしても迷惑がどうこうと口を濁してたのってそういうことか。林檎はどう思う? 」
「苺姉、もしかすると、私達の脱柵の経緯が原因なのかも。でもなんで関本さんが何をどうして知ったのかな。それに何を知っての何の脅迫だろう? 先輩に聞いてみようよ。ノンポリだけど何か知ってるかも。天文部から漏れる可能性は0じゃないし」
「気になるけど、それはちょっと忘れろ。沙沙貴達は、明日の事だけ考えろ。失敗するとお前ら全員放校だぞ。前の時はあの会長がくい止めて、先生ばれはしてないんだろうけど、今度しくじったら・・・・・・」
「孝崎、お前手伝ってやってくれ。校舎に近づく車をアレで知らせてやってくれないか。イヤホン使えば試験中でもバレないだろ、お前ら席順後ろだし。おいおい、何かちょっと面白くなってきたな。試験のことなんか忘れてしまいそうだよ」
「葉子、お帰り。毎日何処に行ってるんだ? 。上級生の所なのか? そんなに勉強ばかりしてどうするんだよ。もう少し息を抜いて行こうじゃないかい、お嬢様」
「勉強はとっても大事よ、譲葉。新たな知識、技術を習得するのは私の血や肉になるもの。明日、試験が終わったらそれを証明して見せるから、クラブハウスに来て頂戴。絶対よ約束して・・・・・・」
「わかったよ。もう消灯だ、寝ようよ。明日は試験の最後。やっと終わる・・・・・・」