「ねえマユリ、起きてるの? 」
「ああ、どうにもダメだ。良く寝られない。立花もか。そうか。ちょっと、まあ、なんだ・・・・・・」
「何よ、奥歯に物が挟まった様な言い方! 気になるじゃないのよ・・・・・・」
「二人して寝坊したらどうしようかってこと。立花のお寝坊は何時ものことだけどさ」
「もう、意地悪。私を起こすのってマユリだって楽しんでやってるんじゃない・・・・・・そうだマユリ、いっその事、もう起きちゃう? お外を散歩でもしない? 」
「まだ日の出前だよ・・・・・・さすがに早過ぎでしょ、立花。それなら・・・・・・」
マユリが ベッドを抜け出して梯子を降り、私のベッドに潜り込んできた。そうなったらする事は決まっている。上体を起こしキスを交わしながら、巧みに互いに服を脱がせていく。プルオーバーのシャツを脱ぐためにキスを止めて身体を離した。唇から堕ちる銀の糸。前よりも大きくなった胸のふくらみが受け止めてシャツに染みが付く。そして互いにシャツを脱ぎ、私はお下げをしていない髪を首を振って整えた。そして目の前に上気した顔のマユリ。私もまたそうだと思う。火照っているのが判るから・・・・・・
「立花はメガネしてない方が魅力的だよ。 見るたびに惚れ直しちゃう。立花のメガネしてない顔って今は私だけが独占出来てるんだ。今日のお出かけを利用して、街でコンタクト買って来るのはいいけど、普段はコンタクトをしないでよ・・・・・・お願いだから・・・・・・」
「でも、バレエの授業の時の為に買いに行くのだから、その時は当然するわよ? だってメガネだと汗が溜まって大変なんだもの・・・・・・判って頂戴、マユリ。そうそう蘇芳さんも、メガネを欲しいみたいに前に言ってたから、行かないっていう選択肢は無いからね!? 」
「立花は、汗っかきだものね。それは頭では判ってるけど・・・・・・ライバルが増えそうで・・・・・・さ。 転入生の子で立花に色目使ってる子が居るじゃない? 立花の優しさを勘違いするああいう子が、立花の素顔を知って増えたら嫌だもん」
そう言ってまたキスをしてきた。当たり前の様に舌を入れてくるマユリ。私もそれに答え舌を絡ませる。何度となくしたキスだけど、この瞬間がすごく好き。心が通じ合うという感じが心臓をタンパリンの様に打ち鳴らす。融け合うように舌を絡ませながら互いを愛撫する。あまりの心地良さに涙が出てきた。
それを見てそしてマユリが私を押し倒す。狭いベッドの中で絡み合う二人。マユリは私を巧みに弄っていく。胸、お臍、そしてまだ産毛しかない秘部に指を動かし、舌でその後をトレースする。私は思わず声をあげてしまい、慌ててマユリが手で口を塞いだ。何度も達してしまう、嫌らしい私。グッタリする私にマユリはそして何時もは責めない恥ずかしいところに指を使ってきた。
「そこは汚いわ、止めてよ・・・・・・マユ」
「立花の身体に汚い場所なんて無いよ。ここだってキレイな色してるよ。ちょっと匂うけどね」
「嫌。恥ずかしい事言わないで、マユの馬鹿、馬鹿、馬鹿。だってそこは・・・・・・」
「判ったよ。ここは今日はこれで止めておくよ。でも、何時もこんなに濡れないでしょう? ここ責めたら急にびちゃびちゃになっちゃってさ。立花はこっちもイケルくちなんだね。それにしても漏らしたみたいだよ。このシーツ苺が見たら間違いなくいい歳してお漏らししたって噂流されるね。じゃあ今度は立花が責める番だよ・・・・・・」
マユリはそう言って身体を入れ換えてきた。濡れてるシーツの所にはバスタオルを置いて。逝ったばかりで拙いけど心を込めて愛撫する。それに応えていくマユリ。すごくいい顔してる。キレイで尊い。何度か声を上げ達して・・・・・・賢者の時間になった。私はマユリの顔を見てある事を思いついた。
「ねえマユも、メガネ買わない? 伊達で良いから。いや紫外線カットのレンズで。マユは目の色素薄いでしょ? いいと思うんだ。でもそれは建前で本当は私もこの綺麗な顔を独占したくなってしまったの。お・ね・が・い」
「えっ、私も? 似合うかな・・・・・・蘇芳さんだったら、銀縁のスリムな教育ママメガネが似合いそうなんだけど」
「マユはセルフレームのクラシックなデザインが似合いそうね。お金は言い出しっぺの私か持つから心配しないで。今月、部費高かったんでしょう? 」
「いや部費はもう・・・・・・。ゴメン。そのうち返すから。身体で・・・・・・」
「じゃあ、ついでにエッチなもの扱ってるようなお店にも寄らないとダメかしら? 」
「蘇芳さんが居るんだよ。自重しようよ。洒落にならないって、立花」
そう、今日は蘇芳さんに会いに学外に出る。それが一番の目的。一人、街の病院に入院して淋しい思いをしている彼女に会いに行く。そして三人であちこちショッピングに行く計画を企てた。二人にとって蘇芳さんはキーになる人物。あんまり軽蔑される様な事は避けたい。
「ねえ、蘇芳さんに会ったら何を話そうかしら、たった一週間居ないだけなのに。この喪失感はなんなのよ・・・・・・あー早く会いたいわ」
「立花は、蘇芳さんの事、好きなんだものね。でもそうサラッと言われると・・・・・・キツいよ。嫉妬してるんだよ? 私は・・・・・・。まあそれをひっくるめて立花を愛してるんだけど、正直もやもやする。立花は喪失感がすごいのかもしれないけど、正直私はそれ程でも・・・・・・。何か酷いこと言ってるね、ゴメン」
「そーよ。マユリは、蘇芳さんに好かれていたのに、そっけなくふっちゃった酷い人だものね。私と違うのは仕方ないけど・・・・・・会ったら優しくしてあげてよ」
「判ってるよ。そんな事。立花に嫌われるような事はしないよ。立花が笑ってくれるなら悪魔にも魂を売るよ。 私が立花に一目惚れしたみたいに、立花も蘇芳さんに一目惚れしたんだよね? 」
マユリの言葉に記憶がフラッシュバックする。そう一目惚れ。だって今まで生きてきて、あそこまで整った美人を見た事なんて無かった。大人びて憂い顔が似合う黒髪の美少女。 最初、上級生がオリエンテーションに来てるのかと思った。それ位に他のクラスメートと違って見えた。皆が気遅れして遠巻きに見つめる中、ふとした切っ掛けから話をするようになり、その控えめな性格、人見知りすること、切れる頭脳。そして容姿と正反対の、お子ちゃまの様な極端なまでの恥ずかしがり屋さん。全てが愛おしかった。
蘇芳さんと偶然にもアミティエになる事が出来、これはもう神が支度した私の運命の人だと思った。しかし私は都度都度好意を寄せたのに、蘇芳さんは一線を超えては来なかった。
そして、身近なところに私の恋に水を差す女が居た。女の名は匂坂マユリ。彼女もまたアミティエとして同室になった。中性的な魅力を持つ快活な少女。女だけの学院で中性的な彼女は、ファーストコンタクトにしてクラス一の人気者だった。
白羽蘇芳もまたクラスの皆と同じ様に、そのアミティエのマユリに一目惚れをしていた。態度を見ていれば直ぐに判るような初々しい好意の持ち方で、私はそれをポーカーフェイスで流した。素振りで感情を悟られないように、心の中に押しとどめて気付かれない様に嫉妬する日々だった。
だけどマユリは蘇芳さんの思いを袖にし続け、何故か好意に応えることをしなかった。落ち込む蘇芳さんを元気付けようと心とは裏腹に二人の仲を取り持った事すらした・・・・・・
サッカーの試合の怪我で私とマユリ、二人きりになった時にマユリは意を決して保健室で私に愛の告白をし、過去の経緯と私への恋心を吐露した。私もその真摯な気持ちに絆されてマユリを受け入れて恋仲になった。だけど、未だ心の奥底では蘇芳さんを捨てきれてはいない酷い私・・・・・・。
蘇芳さんは、マユリを私に盗られた形になった後、黒沼アキラさんという病欠から復学してきた年上のクラスメートとお付き合いすることになった。二人は何処から見てもお似合いで他人の付け入る様な隙も無く、私はこれでけりがついたんだという気持ちを抱いた。
しかし蘇芳さんの幸せな時間は長くは続かず、黒沼アキラさんは病気の進行で程なくこの世を去ってしまった。悲観にくれる蘇芳さんに無力の私。その姿を見ていると、固く封印した思いが再び解けてしまいそうに・・・・・・。
その反動でマユリとはそれまで以上に積極的になって行った。学内でも隠さず、時として学院から処罰を嫌がられる程に。こんな邪な心をマユリは気付いてはいないと思う。気付かれたら私は・・・・・・蘇芳さんに八代譲葉という新しい恋人が出来た今でも・・・・・・心の底には・・・・・・未だ枯れず芽は眠っている・・・・・・。
「そうよ。でも、それは終わった話よ、マユ。私には貴女だけ。貴女が居るもの。少し寝なさいな。なでなでしてあげるから・・・・・・ね」
どれくらい撫でていたのだろうか。ふと時計を見ると何時もの起床時間になっていた。
「マユリ起きなさい。時間よ。ふふっ、今日は私がキスして起こす番ね。あらあら無防備な顔しちゃって・・・・・・」
「林檎、支度は終わったの? 」
いつもなら決して起きないこの時間、先に起きて出かけていた姉が部屋に戻ってきた。手には自動販売機で買ったブラックの缶コーヒーとカモフラージュの虫かご。中には既に色々捕らえた獲物が入っているようだ。それを床に置いて、缶コーヒーを眠気ざましと私に手渡す。
「準備万端。内線電話も使い方完璧だよ。後は孝崎ちゃんに協力してもらえれば、気を逃す事は無いと思うよ。車の種類が確定してないのが問題といえば問題だけど。最悪の場合は実力行使も止むなしでOK? 」
料理部から持ち出した折り畳みの果物ナイフを靴下の中に確認する。
「最悪の場合はね。そうならないように、先輩に最後のお願いをしてきたところ。それに万が一の先生バレの時の対処のお願いをしてきた。それ用のディスインフォメーションの流布etc・・・・・・先輩に頼りすぎだけど、一番頼れる人だし」
「それにしても、先輩こんな時間に起きてるなんて・・・・・・一体何時に寝てるのかな? 」
「林檎、荷物を来客用の下駄箱の指定されたところに入れるからちゃっちゃっと行こう。抜いた鍵は無くさないように首にかけてだって」
「判ったよ。苺姉。これでやっと外で会えるね・・・・・・蘇芳ちゃんに」
「今日もロードワークなのね。お疲れ様。でもその真っ黒な合羽は脱いで走りなさいよ。いくら発汗促進ったって言っても、その姿は変質者みたいだわ」
「そうかい。葉子には悪いけどもう暫く使い続ける事になるから、気に入らなくても我慢してはくれないか? お嬢様」
「ねえ譲葉、秋の衣替えと共にジャージが導入されるんでしょう? 私が耳にした話ではニカイアの会に試着用の試作品が届いてると聞いたわ。それを着れば良い話じゃないの? 」
「おいおい耳が早いなー。つーか機密ダダ漏れだね。参ったな。うーん確かに届いてるよ。だけど僕のサイズのはまだ来てないんだよ。いや多分来ない。どういう訳か葉子サイズのなら何着も届いていてさ、ネリーが無理無理に着てるよ。地は良いし出来は良いんだけどネリーが着るとやっぱりきつくて、胸が邪魔でファスナーが上がらないんだってさ」
「なによそれ。私に対する当てつけなのかしら? ユ・ズ・リ・ハ さん! それより、試験が終わった後、天文部の部室に来てよ。まさか忘れていないでしょうね? 」
「ちゃんと覚えてるよ。だけどその前に黒沼アキラの祭事の打ち合わせをするから少し遅くなるよ。祭壇設置とか仮設電源等のハード系の話とかも有るし、ご両親を呼ぶとかそういうソフト的な話もするんだ」
「わかったわ。こっちも少し用意があるから助かる」
「さっきの話しに戻るけど、ジャージの話を誰から聞いたの? 最近何か色々気になることが多いんだ。ここに来て急にニカイアの会の要望事項が通るようになったり、新制服の話やジャージ、ダメもとで出してた秋の遠足まで許可になるなんて僕だって不思議でしょうが無い」
「ジャージの件は教室で聞いたけど、誰から聞いたかは忘れたわ。教室で聞いてみると良いと思うけど、怒られるのなら嘘をつかれるかもね」
「僕はそんなに人徳が無いかねえ。まあいいや。ジャージの件は何れ皆に判るし」
そう、ここの所急に色々な事が動き始めている。全面的なIT導入こそ却下されてしまったけれど、こちらの要求は九割は通った感じで驚かされた。一体何処に予算が有ったのかと。
僕たちがコソコソ作った裏金で買い出しをお願いするのも、これが最後かもしれない。鈴木先生が持ってくる荷物は明日届く。蘇芳は一体どういう本やDVDをセレクトしたのだろうか楽しみでも有り不安でも有る。先生の話ではホームシック気味で不安定になってきてるらしいので、早く会って抱きしめてやりたい。先行して渡される交換日記、読んで欲しいな。花菱君と匂坂君のプチ逃避行がうまく行きますように。
「小夜花、起きた? おっはー。気にしてたお天気はまあまあよ。ちょっとガスってるけどこれから晴れると思うわ」
「ゆかり、おはよう・・・・・・。こんな時間に起きてるの? 早いじゃない? 。今日は私達ホームルームだけなんだから、ギリギリまで寝てれば良いのに。私はもう少し布団にくるまってるわ」
「そうしようかと思ったんだけど、ほら一応ここに居るのは今日までということになってるから。元の部屋に持っていくものとか片付けをね」
「そうだ、今日で戻っちゃうんだっけ。今晩だけは一人部屋な訳・・・・・・か。ちょっばかり淋しいわね」
「何言ってんのよ。これから先はずっと蘇芳さんと一緒のくせして。あんたも部屋をかたしてちゃんとお迎えの用意をしないとダメよ」
「わかってるって。桃の香りのボディソープを今日貰える手はずをしたし、爪も整えたし、むだ毛も処理したし抜かりは無いわ」
「小夜花、あんた頭の中そっちだけなの? 用意ってお花飾ったりとか、ランチョンマットをおニューにするとかカーテンやスリッパを入れ換えるとか・・・・・・そういうことを言いたかったんだけど・・・・・・」
小夜花がとたんに真っ赤な顔をして、布団の中に潜り込んだ。かわいい子。そう思った。蘇芳さんに先に目をつけたのは私。でも、私よりも小夜花の方が思いが深いみたい・・・・・・。
一緒に共同戦線を張ってきたけど、最近は小夜花に一歩引いてしまう。私が葉子先輩に計画以上に入れ込んでしまったのも理由の一つ。
八代譲葉という、蘇芳さんの恋人をその地位から蹴落とすために、この女に惚れているアミティエの白木葉子をけしかけた。およそお嬢様学校に似つかわしくない、いやらしい企みを企てて。それは功を奏し、葉子先輩はわずかな時間に性の伝道師に羽化した。仕掛けた私達がたじろぐほどに。それは他にも何か事情が有りそうだったけれど、私達には知る由も無い 。私達と葉子先輩は身体だけの関係だから・・・・・・。
そのはずだったのに今の私は、蘇芳さんよりも葉子先輩が気になっている。葉子先輩の身体は他の誰よりも深く知ってるけれど、他のことは何も知らない私。どんな些細なことも知りたい気持ちになっている。何でこんなに囚われてしまったのだろうか。自分でも良く分からない、考えても考えても・・・・・・。
「ゆかり、ありがとう。先に蘇芳さんを好きになったのは、貴女なのに・・・・・・ゆかりは私の為にわざと悪役をかってくれたんでしょう? 」
「いやそれは正しくないよ。 純粋に欲望に忠実に動いただけだ。それで満足してしまったと言うか、プロレスのタッグマッチで一通り責めたから交代するような感じ。これからは小夜花の時間だよ。返り討ちに遭ったらタッチを受けるけど、タッチロープの所に何時も居るとは限らないよ。これからは姉の相手もするから」
「ゆかりって・・・・・・。気をつけなさい、貴女は不器用なんだから」
「あら、めずらしい。私よりも早起きなんてどうしたのよ? 寝冷えでお腹でも壊したの? 」
「小御門、なんだよそれ。そんなに変か、私が早起きって。まあ、変なのは認める。アレの準備のことで誰も居ないうちに下見してきた。彼女たちのプランで成功するか確認してきたんだ」
「そういうことなのね。お疲れ様。あの子たちならうまくやるはず。心配は要らないと思うわ」
「それはそうなんだけど。一応確認したくって。それにしても、皆早起きしてるんだな。上級生や下級生も。八代みたいに走ってる子も居れば、かぶと虫を手にしてるのも居たよ。試験期間なのに何してるんだか。たまには朝靄の中を外に出るのも悪くないけど」
そこまで言って、自分もわざわざペナルティ覚悟でこんなことしてるんだと苦笑した。私にとって対してメリットなどないこんなことに。
新設の演奏部に蘇芳を勧誘する時に、多少の恩義を着せることにはなるのだろうけど、それだって蘇芳が参加してくれるかどうかは・・・・・・。蘇芳は八代の恋人で、私は八代が嫌いというか苦手だ。八代絡みで、料理部、サッカー部、合唱部これだけ所属しているのに、こっちの方になびくかは期待する方が無理だろう。
それにしても、蘇芳の演奏を切っ掛けに、新部設立の申請を出して、まさかこんなに簡単に通るとは思わなかった。少し違和感がある。誰かに勝手に神輿に乗せられているような感覚・・・・・・
「なあ、小御門。お前、八代とヨリ戻さないの? 何だかんだ言ったって、お前たちお似合いだよ。息もぴったりだしさ。幼なじみから始まってこんな学校まで一緒に来て。お前は敬虔な信徒だろうけど八代はそうは見えない。そんなあいつを最後までみてやったらどうよ。あー、黒沼が生きてたら! 」
「緑さん、私は外に大事な人が居るの。知ってるでしょう? 」
「知ってるよ。八代の家に居た家政婦さんの娘さんでしょ。サッカー部の試合の写真で見たから知ってる。食堂に貼って有ったじゃない」
ぱっと小御門の顔が赤くなった。こいつは肌が白いから赤くなるのが良く分かる。好きなんだ。それを改めて理解した。だけど・・・・・・。
「それはそれ。その人とどれ位会えているんだ? 小御門。その人を思う気持ちは尊いし、大事にすべきだけど、八代ももっと大事にしてやった方が良いよ。アイツは直接言わないけど、この間理事の所に呼び出されていたろ。アイツ何か有ったんじゃないのか? 今は支えてやる時期だと思うよ。それは蘇芳じゃなくて君だと思う・・・・・・」
そう、この間八代が先生に呼び出されて理事の所に行った。戻ってきたアイツは少し元気がなかった。その後教室で色々な噂が流れた。問いただす者は居なかったが・・・・・・。小御門は何かを知っている様だったが一切を語らず沈黙を守り通した。それが最善とばかりに。それを見、二人の間にヨリが戻るのかと邪推したのだけど・・・・・・。
「私だって譲葉の力になりたいし、頼って欲しい。でもダメなのよ。私達はもう・・・・・・」
「蘇芳さん、おはよう。早く着替えなさい。風邪を引いても知らないわよ。あんまり寝かしてあげられなかったわね。でも今日で試験も終わりになるし勘弁して頂戴。ちょっと寮に帰るからまた来るわ。それじゃまたね」
主任さんが手を振って部屋を出て行った。まだ、起床の時間にはかなり有る。もう少し遅かったら主任さんとベッドで朝チュンなのに。そう思うとちょっと悲しい。それでもこの部屋で一晩中ずっと抱かれて過ごしてくれた事に代わりは無いのだ。
今日はいよいよ試験の最終日。試験が終わったら明日の退院までは言ってみれば自由時間。主任さんとデートでもしようかな。今日休みだって言ってたし。そんな事に思いを巡らせながら、窓の外が夜から朝に変わる様を見続けた。景色がすっかり変わった頃、部屋のドアがノックされて主任さんが戻ってきた
「蘇芳さん、御免なさい。今日外科で緊急のオペが有ってそっちに応援出す事になって、代わりに私がシフトの穴を埋め無いといけなくなってしまったの。だから今日は一緒に成れなくなってしまったから・・・・・・本当に御免なさい」
「そんなに謝らないで下さい。大切なお仕事なんですから。主任さん見てると、プロって言葉が理解できる気がします。気構えとか・・・・・・。だから私の事は気にしないで下さい」
「本当に・・・・・・。貴女がいい子で良かった」
そう言って私にキスをして上手にウインクし、再び部屋を出て行った。あーあ。口では強がったけど淋しいな・・・・・・。試験の後どうしようかな・・・・・・。鈴木先生のデートにでもくっついていこうかしら。妹ですって。
「白羽さん、おはようございます。良く寝られましたか。先ずは検温お願いします。朝御飯はもう少し待ってね」
「八重ちゃん、起きて。ねえ、ねえってば。今日もまだテストが有るのよ。 もう、双子さんに触発されて消灯時間過ぎてからSF小説なんて読んでのこの体たらく。消灯時間過ぎたら読書禁止だわね。仕方ないけど実力行使よ覚悟しなさい」
給湯室から金たらいを借りてきて、その中にクラシックな目覚まし時計を2つ入れた。電子音でなくベル音が鳴り響くタイプ。そして時間をセットして時を待つ。その間私は耳栓を入れて準備万端。そして、キター!
耳栓をしても聞こえる激しい金属音。爆音といっても差し支えない。
「うわー、なんだ、なんだ。火事か、逃げなきゃ、助けてくれ・・・・・・。ってなんだこの金たらいとめざまし? 」
「さすがに起きたのね。さすがに昔の人の知恵は効くわー」
「てめえ、千鳥。一体何の真似だよ。これは。シモ・ヘイヘ直伝の狙撃シーンがパァになっちまったじゃないか」
「戯れ言はその時計を見てから言ってくれるかしら? 。夢の続きの話は試験が終わってからゆっくり聞かせて頂戴」
「マジ? もう、こんな時間かよ。何でもっと早く起こさないんだ。着替えするから制服を用意してくれ、いやして下さい。その後食事も取ってきて・・・・・・お願いします・・・・・・千鳥・・・・・・"ちゃん" 」
「よしよし。素直な八重ちゃんは可愛いわ。取り敢えずそれを脱いで。なによ寝汗凄いじゃない。ケムール人にでも追われてたのかしら」
身体をタオルで拭いてあげる。そして下着を取り替え制服を着させるお手伝い。そして食堂に朝食取りに行く。途中委員長達とすれ違った。委員長は何時もと同じ挨拶をしてくる。私もそれに応える。委員長は私達の企てを知らないだろう。でも私達は委員長の企てをある程度知ってるのだ。何か私、小説の女エージェントになった気分。すごく楽しい。早く時間にならないかな・・・・・・。
「孝崎ちゃん、おはよう。私達も運ぶの手伝うよ。これ最終の手順書ね・・・・・・」
食堂で双子さんに声をかけられた。そして三人で部屋に戻った。ここの所ずっと勉強を一緒にしていくから誰も怪しんだりはしない。さてとしっかりと腹ごしらえでもしますか。長い一日になりそうだもの・・・・・・