会長の思惑、Second Phase   作:抱き枕50

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道連れ

「起立、礼。着席。」

 

 日直の声に皆が揃った動作で応える。バスキア教諭も礼を返す。私は立てないので当然座ったままだ。

 

「ごきげんよう、皆さん。元気そうですね。いよいよ今日で試験期間も終わりになります。終わったからと気を弛めずに過ごして下さいね。転入組の方、今日はホームルームだけで後は自由時間になります。試験を受けている人の邪魔にならないようにお願いいたします。今日は私午前中は試験の採点で職員室、お昼過ぎは農場か教科準備室に居りますから用がある人はお手間かけますけれど来て下さい。試験は今まで通り教科の先生が来ますから、その指示に従って下さい。次の伝達事項は・・・・・・」

 

 職員室からは正面玄関方向は死角になる。思わずほくそ笑む私。これは沙沙貴達には好都合。午後も農場&教科準備室なら尚の事。少し前なら、農場とかの用向きにはクラスメートを連れて行ったけど、今のバスキア教諭はそれをしにくい立場。委員長、匂坂、白羽にきつく当たった反動で避けられているのだ。声をかけても拒否られるだろうし強制してはどんどん深みに・・・・・・。自分の世界に入っていたら突然教室がざわついた。慌ててにやけた顔を修正して真顔を作る。

 

「八重垣さん、何をニヤニヤしているのですか? 弛んでます。伝達事項聞いてました? ・・・・・・この状況を鑑みて午後の用向きは是非とも八重垣さんにお願いしたいのですけど、宜しいですよね? 」

 

 強い語気に空気が絞まっていく。皆の視線が私に集まる。話を全く聞いていなかった。ヤバい。皆の視線が哀れんでいる目になっているではないか! 一体何がどうしているのだ。孝崎は何か伝えようとしてるけれども、この状況では手話かモールスコードでも使わないと伝わらない。無理だ・・・・・・。

 

「すみません、バスキア教諭。話を聞いていませんでした。よろしければ、伝達事項の件を最初からもう一度お伝えしては頂けないでしょうか? 」

 

 教室に漂う、"やっちまったなお前"感。バスキア教諭もまた肩を落としてがっくりしている。私は障害の関係で介助を必要とする立場だ。入学してきてその介助はバスキア教諭がそれをこなしてきた。孝崎とアミティエになって以降、徐々にバスキア教諭は介助の任を孝崎に肩代わりさせて行った。今は入浴だけがバスキア教諭とのサシでの介助行為。その時、バスキア教諭は普段と違う顔を私に見せる。私はその時の先生は好きだ。だけど今のバスキア教諭はそれとは正反対の顔をしている・・・・・・

 

「八重垣さん、やはり聞いていなかったのですね・・・・・・仕方がないわね。では繰り返します。次週から始まる選択授業の資料を配付しますから、夕食時に食堂に取りに来てください。アンケートの結果次第で説明会をするかどうかを決めますから必ず提出してください。期限は月曜の朝のホームルームとします」

 

「その資料作りにこのクラスからお一人を徴用したいのですが・・・・・・と言う事だったんですけど。それで八重垣さんは午後、その資料作りをお願いします。これは既に決定事項です。判らない事が有ったら私に聞いてください」

 

 

 マジかよ。私だけ、二科目試験で午前中拘束されて。午後はこんな仕打ち。しかも、話の流れでは一人で仕上げなさい・・・・・・だ。バスキア教諭に判らないことを聞けって言われたって、この脚で農場なんてに行くのは無理だ。孝崎に視線向けるとがなんだか悩んでいるようだ。手伝うのとやっと来た自由な時間と天秤にかけているように見えた。不毛な時間から解放してやりたくなった。

 

「バスキア教諭、作業するのは構いませんが、この脚なので判らないことが有っても気軽に尋ねられません。ですので作業中、側に居ては下さいませんか? 」

 

 驚く孝崎の顔を見て正直あれっと思った。しかも親指を下に向けるアクションしてやがる。それは気軽にやって良いものじゃないんだよ孝崎・・・・・・。でもそういう気分なのかお前・・・・・・。

 

「判りました。 では、八重垣さん、お昼食べたら寮に迎えに行きますから、宜しいですね? 」

 

 誰ともなく、はやす声が聞こえてきた。だけど、盛り上がらずに静かに落ち着く。いつもならのって来る沙沙貴達が静かにしている。私にはその理由が理解できる。この後の事の為だよな・・・・・・

 

「はい、了解しました。至らない私の為にお時間をとらせて申し訳ありませんでした。お話を先に続けてください・・・・・・」

 

「・・・・・・以上を持ちまして私の話は終わります。では、今日の最後の試験頑張ってください」

 

 再び、日直が号令をかけ、教諭は教室を出て行った。

 

 

 

「ちょっと、八重ちゃん。どういうつもりよ。どうして拒否しないのよ。それに手伝うならどうして私も一緒にとか言ってくれないの? 」

 

「お前な、ちょっと落ち着け。私はバスキア教諭に色々世話になっているから、借りを少しでも減らしたいだけで、他意はない。孝崎に頼まなかったのも、お前の貴重な時間を奪いたくなかったんだ。判ってくれ、行きたい所が有るんだろう? 泉は綺麗と聞くぜ・・・・・・」

 

「ひとりじゃ嫌・・・・・・それに、八重ちゃんが私を差し置いてあの女と一緒に居るのなんて許せない」

 

「おいおい、仕事だよ仕事。邪推するなって。めんどくさいよお前・・・・・・どうせなら孝崎もアイツらと外に行っちまえよ・・・・・・そうだなそれも悪くないぞ」

 

 

 

「なになに、痴話喧嘩? それはともかく、試験のヤマを教えてよ。それと内線電話のチェックしたいから、孝崎ちゃん花摘みに行こう。ほら早く! 」

 

 双子が私の所に襲来した。それ自体は試験期間になってからは何時もの事。だけど今日は意味合いが違う・・・・・・。

 

 

「試験はある程度何とかしてやるけど、あっちの方はどうなんだ? 私に出来る事はもう無いぞ? 」

 

「ガッキーにやって貰う事はまだ有るよ。午後からダリア先生を籠絡しておいて。探りを入れられない様にうまいこと頼むよ。ガッキーはダリア先生のお気に入りだから・・・・・・他の子と信用度が違うもの。そうそう私達の事よりもあの二人の方に気を配って。一応向こうは先生としても計画自体を見せちゃってるじゃない? 不自然な言い訳では看過されちゃうから。私達は川に魚取りにでも行った事にしておけば疑う人居ないでしょ」

 

「ダメよ。それじゃ八重ちゃんが金髪女の毒牙にかかっちゃうじゃないの。それは認められない・・・・・・」

 

「おい、仮にも担任教師にそういう言い方は・・・・・・」

 

「だってあの女は八重ちゃんをお風呂で自由にしてるのよ。そんなの耐えられない。内心あんな事やこんな事したいと思ってるに決まってる。もしかしてもうされてしまったの? 八重ちゃんは口止めされてるんじゃなくて? 写真をばらまくとかって・・・・・・」

 

「孝崎、いい加減怒るぞ。恩師に対する無礼な態度。許さない。今日はずっとバスキア教諭にかまってもらうから。お前が反省するまで前みたいに先生に介助してもらうよ」

 

「それ酷い。私とだってあんな事やいろんな事した仲でしょう・・・・・・。八重ちゃん歳上に弱いから心配なのに」

 

「泣かしたー。あーあ。酷いなあ。蘇芳ちゃんにチクッちゃうよ」

 

「泣くなよ孝崎。悪かった。発言取り消すから。でも、バスキア教諭の事そんなに悪く言わないでくれよ。もっと人と也を知っていけば敬愛の気持ちも生まれるって。孝崎だってそう思うよ・・・・・・きっとそうなるって」

 

「そんなものかしら・・・・・・」

 

「そうだよ。孝崎。これ、時間があったらこれ読んでみな。しおりの所からでいいから。面白いぞ」

 

 

 予鈴と共に、古文の先生が入ってきた。手には答案用紙の束。そうだ、まだテストは終わっていない。転入生組は大半がバスキア教諭と教室を出ていて、残っていたのは孝崎だけ。私の渡した本を手に慌てて立ち去る支度ををしている。そして沙沙貴達に目配せをして教室を出て行った。

 

 

 本鈴前にテスト用紙が配られた。伏せたまま本鈴を待つ。本鈴が鳴り、皆一斉に用紙を裏返す。そして静かな中に鉛筆の滑る音がする。問題の大半がマークシートで最後の3問が記述式。ざっと見渡すとヤマは大体ヒットしている様だ。沙沙貴達も赤点にはなるまい。とはいえ記述の方は一夜漬けではちょっと厳しいかと思う。まあ、責任は果たした。後は自分の為にがんばりますか。文系で白羽とどっちがトップになれるか私は自身にプレッシャーをかけて臨んでいるのだ。

 

 容姿端麗にして頭脳明晰のあいつはそういうの気にしないかもしれないけれど、私の取り柄は脳味噌の他にも何も無いから・・・・・・。理系は委員長の独壇場だろうから、その分野は端から除外だ。粗方仕上げて周りに気を配る。何人かは私と同じ様に終わっている様だ。ふと孝崎の席を見やる。当然其処は空席なのだけど、何時もなら会う眼が其処に無いのは淋しい。他の子にはそう思ったりしないのに・・・・・・。

 

 

 

「それでは試験開始。答案用紙を受け取ってください」

 

 鈴木先生の声が個室内に響く。試験は学院の15分遅れで行われている。同時にしないのは病院の食事、検温、診断との兼ね合いだ。ここにはカンニングのタネも何も無いので、先生は答案用紙を手渡した後、終了間際までは部屋に居ない。学院的にはペナルティものだろうけど、ここにはそういう空気は無い。試験の内容はどうってことなく、早々に終わった。見返しも何度もしたし、正直もういいと思ったので、ナースコールで先生を呼び出した。鈴木先生はナースステーションに入り浸っているのだ。もう終わって良いですと伝えた。学院なら許されないだろうけど、ここでは早上がりも有りだ。先生も自由時間が増えるのだから、渡りに舟。願ったり叶ったりだ。

 

「それでは、白羽さん。また図書室で会いましょう。それにしても、こんな所で一人ぼっちで・・・・・・。クラスメートやご家族の方が来るわけでも無いし、今まで大変だったでしょう。最後まで耐えきったなんて強いわね。私が責任をとるから退院までの時間は自由に使って頂戴。街に遊びに行ったって良いのよ。貴女は悪い道に行く様には見えないし。信用してるわ」

 

「だけどね、老婆心からの忠告だけど、貴女あの主任さんのお気に入りなんでしょう? ステーションで聞いたわ。あんまり羽目を外さないでね。一見クールで仕事一筋なああいう人ほど、内面はぐたぐただったりするものよ。自分で自身にきっちり箍を、リミットをきっちりかけてるつもりでも他愛無い事から狂ってしまったり。ミイラ取りがミイラになるみたいにね」

 

「気が付いたときには・・・・・・絶対にならないと思っていた状況に取り込まれて、あがこうとしてもあがけずに沈んでしまうものよ。白羽さんはそういう切っ掛けを作る資質が・・・・・・少しは自覚が有るんじゃない」

 

「気をつけなさい。貴女まだ14歳なんだから。未来を狭くしないでね」

 

 私は黙って頭を下げた。未来か・・・・・・。一年前には今の私のこの現状を想像する事なんて不可能だった。それくらいに今の私は変わって行った。そして私が変えた、私に変えられた人達も・・・・・・。この先私達はどうなって行くのだろうか。暫くそんなことを考えベッドの上の人となってうたた寝をした。

 

 

 

 見直しが終わってテスト用紙を裏返しにして時計を見ると、あと20分で試験が終わる時間だ。予定通りに行くのだろうか正直不安だ。詳細に立案して計画通りなら無問題だけど、イレギュラーな事態が起きるかもしれない。

 

廊下側の中程にある私の席からは何も見えないのだけど、視線は教室の窓の外に吸いよせられる。その時小御門と目が合った。小御門は窓際の最前列で外がよく見える絶好の場所。そこからは外から校舎に向う車や人が見える。そろそろ迎えの車を運転してあの人が来る。学校の受け付けで書類に記入し来校の許可を取り、一応形式的に仕事して、忘れ物をしたということで、一時帰宅する。その時に脱柵するわけだけど、その時間をテスト終了にシンクロさせるには、そろそろ来ないとダメだ。

 

小御門もそれを承知しているので、チラチラと外を見ている。一方、教室の中程の列の最後尾に居る八代はというとまだ答案用紙に向き合っている。そして隣の白木がそんな八代を頻繁に気にしている。一般的な感覚ではカンニングを疑われる程に。とはいえ、試験のことで私と一位を争う白木が八代の答案を見てどうこうすることはあり得ない。逆ならいざ知らずだ。だから皆も対して気にしていない。だけど今日は何時も以上に気にしているようで、何か有るのかと気になってしまう。私にはそんなものよりも気にしないといけないものが有るのだけど・・・・・・

 

 小御門の席の方で、何かが動く気配がした。突然アイツが窓を開けた。今日は風が少しあり、小御門のふわふわした髪が乱されるのを嫌って閉めて良いですかと試験前に試験官にわざわざ問いただしたのに・・・・・・。そして唇に指を当てて、シッ!のゼスチャー。

 

 前もって合図は決めていなかったけど、時計と見比べてまず間違いはない。来たのだ。一気に緊張が高まる。何しろ真面目一本槍で今まで過ごしてきた、私の冒険というか挑戦というか、反逆というか。

 

 ルールを破るようなこう言う謀反を過去一度もしたことが無くここまで生きてきた。親の言うことを素直に聞き、習い事をし、勧めに従ってここ聖アングレカム学院に来た。道半ばで挫折したあの人の思いも背負って・・・・・・

 

 

 

「はい、伺っております。ビアノの再調律ですね。わざわざこんな辺鄙な所に来ていただいてありがとうございます。それにしても格好の良いお車にお乗りなんですね。凄いわ。もちろん速いんでしょう? 」

 

「ありがとうございます。ええ。目を三角にして本気になったらとんでもなく速く走れます。街まで1時間ちょっとで戻れます。だけどそれはよほど運が良くないと・・・・・・。免停どころか取り消しになってしまいます。だからそこそこのペースで音楽を聴きながら流す感じですね。手のことも有るし・・・・・・」

 

「御免なさい。無神経でした。気を悪くしないで・・・・・・。これ鍵です・・・・・・」

 

「気にしてないわ。もう昔のことだから。あの時は貴女にも迷惑をかけてしまったものね。でも貴女の処置が適切だったからこういう仕事が出来るのよ。感謝してるのだから本当に気にしないで・・・・・・担当は職員室? 先に挨拶してきますね。それでは帰るときに寄るから・・・・・・また来ます」

 

 試験が終わる少し前に車の所に来ていおかないと。何しろ制服を着ていない子を待たせるわけにはいかないし。緑の所に寄るのはよそう。顔写真のデータを貰ってはいないけど、制服を着てない二人組が来るから、その子達を乗せて学校を出る単純な事だ。その為に特急で違法を承知でフルスモーク仕様にして貰った。もともとはそうしようかと思っていたのだ。私の様に若い女がポルシェに乗ってる図は何かと煽られたり、絡まれたりして不愉快に成った事は多々あったから。

 

 

「あと一分です。答案用紙の名前を落していない様に確認してください。いいですか? 」

 

 試験官の声が教室に響く。教室を見渡しても、皆答案を伏せてある。既に全員終わっている。もう、皆この後の自由時間に思いを馳せている。深刻な顔をしているのは、この後悪い事をする4人だけ。もっとも私も、私だけの特別な試験が残っているので浮いた顔はしていないが・・・・・・

 

 さっきから、沙沙貴達がそわそわしている。窓際の林檎の方が連絡係をしている様で、カーテンを巧みに使いイヤホンを隠して孝崎からの連絡を受けている。夏服は半袖なのでバレない様にするのは難しいかと思っていたけど、中々やりおる。それを苺に指の合図で伝えている様だけど、私には内容は掴めない。乱数表でも使っているのだろうか? 何しろ一度は脱柵を成功させてる手練だ。抜かりは無いのだろう。一方、正規軍? たる委員長組は、不安そうな顔を隠せない。どうもシミュレーションはしているようだけど、協力者に付いて良く知らない、知らされていない様だ。それは沙沙貴達も同じだけど、孝崎が見ていて状況がある程度伝わってるからだいぶ違うと思う。

 

 

 本鈴が成った。日直が号令をかけ、皆教室を出る。先生が残った答案を回収する。ただ私だけが、居残るわけだ。さっさと教室を出る皆だけど、沙沙貴達と委員長達だけが私に挨拶をして出て行った。一刻も早く次の行動に移りたいだろうに。いい奴らだ。成功する様に心の中で祈った。

 

 

「マユリ、こっち来て。早く・・・・・・」

 

「立花、待ってよ。遠回りだよ? こっちからだと・・・・・・」

 

「こっち方面が人目につかないで着替えられるからよ。指定の場所はここね。ほら故障中の札がかかってる、其処のトイレに入って! 」

 

「あるあるー。着替えが一式。 脱いだ制服はここのバッグに入れておけば小御門先輩が確保してくれるから・・・・・・マユリにはウイッグも用意してあるわ」

 

 今日の立花は、いい意味で切れてる。緊張感がいい方に働いている。立花の指示通りに、トートバックの中から、用意してくれたサンドレスを取り出して着替える。 上級生が家庭科の実習で作ったもの。多少サイズが合わないけど、リボンで調整する。これなら街で発見されてもいきなり通報される事はないだろう。何しろ世間の学校は既に半日授業になっていたりするのだ。平日に女学生が繁華街にいてもそんなに不自然さは無い筈だ。

 

同梱の大きめの帽子を被り、立花はお下げを解いて普段しないメタルフレームのメガネに取り替え、私はウイッグを被り、蘇芳さんの様なロングヘアーのお嬢様に変身と相成った。そして靴下を脱ぎサンダルに履き替えた。これで完璧。校内を出て校舎の窓の死角を早足で歩き正面玄関の横に設けてある外来駐車場に進んだ。時計を見る限り順調で最後の角で一瞬間を取り立花と二人で目を見合って頷き、呼吸を整える。そして満を持して飛び出した。指示された黄色の車が其処に有った。

 

 

 だけどそこには意外な先客が・・・・・・居た。それは青天の霹靂だった・・・・・・。

 

 そこに居たのは孝崎千鳥。着ているのは何故かサッカー部のユニホーム。蘇芳さんのキーパー仕様のだ。そして既に車の中に居るのは沙沙貴姉妹。二人も私達と同じ様なサンドレスを着ている。戸惑う私達の手を取り、孝崎千鳥が助手席のドアを開けシートを倒し強引に後ろの席に押し込む。座ってと言う話ではなく、ラッシュの電車みたいにギュウ詰めだ。そしてシートを戻し孝崎が乗り込んできた。そして運転席のドアが開き、眼鏡をかけた黒髪の女性が乗り込んできた。そしてエンジンをかけて、シートベルトもしないままダッシュで発進し、無言のまま学院を後にする。暫く走って路肩に止まった。そしてその女性が口を開く。

 

「ちょっと、二人じゃなかったの。緑は二人って言ってたのに。五人も乗せるなんて聞いて無いわよ。まあ千鳥ちゃんは仕方ないけど、どういう事なのかしら? 緑ったら後で問い詰めてやる」

 

「ごめんなさい。私達が割り込んだんだ。委員長とユリーが私達に内緒で行く話するからこうなったわけ。こうなったら呉越同舟、一蓮托生。まあいいじゃない? 病院まで連れて行って・・・・・・」

 

 

「どうして、沙沙貴さん達がこの話を知っているのよ。マユリ、貴女漏らしたの? 」

 

「立花、酷いよ、疑うなんて。私は漏らしてなんかいないよ。信じてよ」

 

「ユリーは無実だよ委員長。私達が委員長が作ったの偽造書類を、拾った人から見せてもらった単純な話し。だから二人のミスだよ。原因をあえて言えばね」

 

「そして、私達に協力してくれたのが、孝崎ちゃんとガッキー。本当は孝崎ちゃんは行かない予定だったんだけど・・・・・・」

 

「だって。私に声をかけてきたのは、冷子さんだもの。冷子さんとは芸能プロダクションで一緒にお仕事した事が有って、ちょっとした知り合いなの。ここでこのタイミングで会うなんて思わなかったけどね。それで沙沙貴さん達を乗せてってお願いしたの。それにほら、八重ちゃんはダリア先生に捕まっちゃったし、暗に行けってアドバイスくれたんだもの」

 

「ダメなときは、マジで実力行使の予定だったんだけど、何にしても流血沙汰にならなくて良かったよ。孝崎ちゃんアリガト。千葉さん、よろしくお願いします」

 

「今のが姉の苺で、私が妹の林檎です。今日は無理言ってすみません。そこの二人はサブです。メインは孝崎ちゃんと私達です。お見知り置きを」

 

「何よ、ずうずうしい。私達が千葉先輩にお願いしたから脱柵が成功したのよ。それを忘れないで。二人とも。私は級長の花菱立花と言います。千葉冷子さん、今日の行き帰りよろしくお願いします。ほら、マユリもお願いして・・・・・・」

 

「私は匂坂マユリです。今日はよろしくお願いします。苺に林檎、お前達合体して一人分のスペース作り出せよな狭いよ・・・・・・」

 

「仕方ないからこのまま行くわ。帰りは車を変えるから我慢しなさい。速い車を用立ててきたのに、こんなに重くては飛ばせないわよもう・・・・・・。手荷物はトランクに入れて。食べ物は室内にね。双子さん達、前席に二人で乗ってくれないかしら。それの方バランス的に助かるのだけど・・・・・・」

 

 

 路肩で乗り換えて再出発。助手席に小柄な双子二人を無理無理に座らせた。後席は私、孝崎を真ん中に、右に花菱、左に匂坂。いちゃいちゃされてもアレなんで。こう座った。決して広くないこの車、これでなんとか乗れる様になった。窮屈は窮屈だけど・・・・・・。そして走り出したら飛ばすの何のって。無理はしてないというけど、まあ速い速い。車の中は挙動が変わるたびに嬌声と悲鳴でうるさい。それにしても街まであっと言う間だ。さすがにスーパーカー。それにしても高価だろうこの車。この学院の関係者はやはりただ者でない・・・・・・。病院の地下駐車場に車を入れて無事到着。

 

 

「さて、着いたわよ。私はここまで。忘れ物はしないで。渡すものが有るんでしょう? 帰りはまた来るけどその話の前にそこの車に積まれてる荷物をこっちに移してくれるかな。学院の荷物なのよ。それが終わったら病室に行っていいわよ。帰りはこっちのミニバンで帰るからここに集合して。時刻は17時いいわね? 」

 

「これ何? やたら重いけど・・・・・・」

 

「本とDVDよ。図書室と視聴覚室用。蘇芳さんがセレクトしたらしいわ。そうそう蘇芳さんに会ったら聖堂では失礼な事を言ってしまって反省してるって言っておいて」

 

 

「えーと、この階だよね。それにしても立派な病院だね。びびるよ。これって大学病院なんでしょう? 財前教授の総回診みたいの有るのかな? 見てみたいんだよ。ああ言うの生で」

 

「苺姉、それテレビの見過ぎ。私的にはこうまで立派だと、幽霊とか出なさそうでつまらない・・・・・・」

 

「二人とも静かにして、病院なんだから。孝崎さん、そのかっこ何とかならないの? 浮いてるわ・・・・・・」

 

「そうね。でも花菱さん。お見舞いに来たみたいでいいじゃない。試合で怪我したチームメートを尋ねてきた様な感じ、しない? 」

 

「立花、ここだ。ここ。見つけた。個室だよ。凄いなー。幾らするんだろう・・・・・・」

 

「ユリーの気になるのはそこなの? 庶民だなー。委員長に笑われるよ。費用は全部学校持ちだって聞いたよ。ほら寮での事故だし・・・・・・じゃノックするのはほら、委員長がしなさいよ」

 

 フロアが広く難儀したけど、やっと蘇芳さんの病室を見つけた。立花が部屋をノックする。返事が無い。数回繰り返しても返事は無い。居ないのかな? それとも? 廊下で戸惑っていると、看護師さんが声をかけてきた。

 

「蘇芳さんの、お友達? 蘇芳さんは中に居る筈だけど? 」

 

「蘇芳さん、入りますよ? 」

 

 

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