会長の思惑、Second Phase   作:抱き枕50

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心の深遠

「根本君、ありがとう。おかげで早く終わった。君は手先が器用なんだね。感心したよ。そこでなんだけど、この仕事に加わってくれないかい? もちろん君に拒否権はあるし、断ったからって学院側のブラックリストに載ることは無い。それに殆どは業者の人間がするからさ」

 

「それって。 真に受けると、どツボに嵌まりそうなんですけど・・・・・・。私一人が人身御供にされてしまいそう。もちろん先輩も加わって一緒に作りあげてくれるのでしょう? 」

 

「そうしたいだけど、他の仕事が山積みでね。その要望には応えられないんだ。でも君がなし遂げたら、感動した蘇芳は君に相応の感謝の意を・・・・・・。悪い話ではないと思うよ」

 

「そう来ましたか。わかりましたよ。やります。だけど、梯子は外さないでくださいね。信じてますから・・・・・・」

 

「ありがとう。根本君。追って詳細を伝えるから、今日はこれで。蘇芳は明日の夜に帰って来るんだろう? 宜しく頼むよ、アミティエさん」

 

 

 そう言い残して、八代先輩は立ち去っていった。アミティエさん、か。先輩のこれからを思い少しばかり複雑な気持ちになった。

 

 

 

「蘇芳さん、視力下がっているわね。春の時は1.2は有ったじゃないの。本の読みすぎじゃなくって? 暗い所で読んではダメよ。いい機会だから蘇芳さんも作った方がいいわよ」

 

「下がったって言っても、片側で0.7+あるんだから・・・・・・朝と違って今度は立花がお母さんみたいだな。自分のことを棚に上げて・・・・・・」

 

「目が悪いからこその、アドバイスよ。もしかして、マユリ、妬いてるの? 」

 

「そんなんじゃないよ・・・・・・。だけど・・・・・・」

 

「素直じゃないなー 馬鹿ねマユリが一番大事よ・・・・・・。私のコンタクト、受け取れるようになる迄少しばかり時間かかるから、その間マユリのメガネを選んであげるわ。だから許して・・・・・・」

 

 

 現実に帰ってこい! このバカップルめ。すっかり二人の世界に入ってる。人前でキスするなっていうの! 店員さんがドン引きしてるじゃんか。これじゃ暫くここには来られないでしょうに・・・・・・。

 

 会話の中から弾かれた蘇芳ちゃんに、姉がフォローに入っている。そこに孝崎ちゃんも加わっていろいろなフレームを見ている。孝崎ちゃんは、各種の測定でも視力自体には問題が無かった。やはり心理的な要因の様だ。本人もメガネで良くなるとは思っていなかったので、ショックの様なもの無い様で、至って普通にしている。私と姉は無問題なのでさっさとサングラスを物色し、お揃いで買った。

 

 

「林檎、またジャッジを頼むよ。蘇芳ちゃんのメガネで意見が分かれてさ。メタルのオーバル押しの私と、アンダーリム押しの孝崎ちゃん、蘇芳ちゃんはリムレスが良いって聞かないの」

 

 

「本人の希望で良くない? 度がさほど強くないのだから、私的にはリムレスで良い様に思うけどな。 次点でアンダーリム。苺姉押しのメタルは良いんだけど、はまりすぎると言うか、事務的と言うか、お洒落感が薄いと言うか・・・・・・」

 

 

「林檎は姉を見捨てるの? 血を分けた姉妹なのに・・・・・・同意してくれないなんて・・・・・・ぐすぐす」

 

「はい、嘘泣きはそこまでよ苺姉。蘇芳ちゃん、早く店員さんにフレームを渡してきて。私達、時間を無駄に出来ないから・・・・・・」

 

 そうは言ったものの窓の外は真昼の様相。既にオーダーを済ませて雑誌を読んでいる委員長やマユリさんは何言ってんの? まだまだ帰りを気にする時間じゃないわ・・・・・・そう言う視線。でも"ちりつも"。帰りは車も遅いし山道からの帰還になるから少しでも時間を積んでおきたい。一応荷物だけは車で寮に運ばれる算段なのでそれだけはちょっと救いだ。姉と地図を見ながら窓の外を見ていると・・・・・・。マユリさんが反応した。

 

 

「もしかして、苺達はこの後何処かに行きたい場所でもあるの? 」

 

「カメラをね、買いたいんだよ。 八代先輩と同じ様な奴。新品ではとっても高価で無理だから、中古で良品を狙ってる。お店は先輩が教えてくれたんだ。 全国チェーンでこの街にも支店があるの。ここに無くても余所に有れば、取り寄せて送ってくれるんだって。先輩からそこの店長の名刺貰ってるんだ。店長さん口の固い人で学院にチクったりはしないから安心してお買い物が出来るって・・・・・・」

 

 

 普通の子ならスマホや携帯持ってるから、八代先輩と同じ様な本格的なものは興味無いのかもしれない。でも外部とのネットを禁止されている私達が写真に手を出そうとすると、撮るだけに専念した機械でないと即取り上げられてしまう。それにデジイチなら、記録係的に見逃してくれるのは先輩を見ても明らか。

 

だけど重いんだよね、先輩のは・・・・・・。先輩はミラーレスって言うのが君達には向いてるって言ってくれて幾つかお薦めを挙げてくれた。ちょっと格好悪いのが多い中、小型のファインダー付きで粋なのをチョイスしたのは私。連写の効くゴツい大きめのは苺姉の本命。マウントは共通なのでレンズは融通が利く。

 

「デジカメか、私も欲しいな。沙沙貴達は、私や立花に隠れて先輩とコソコソしてた時有ったけど、この事だったんだ? 」

 

「マユリも良い機会だから買ったらどう? 。前に絵の為に欲しいって言ってたじゃないの。貴女は小型コンパクトので良いでしょう。片手で撮る様な・・・・・・」

 

 

「ハメ撮りだけはやめてよね。貴女たち・・・・・・」

 

 孝崎ちゃんがとんでもないことを言う。蘇芳ちゃんがそれを聞き吹き出した。苺姉はバカップルに視線を向けマユリさんは真っ赤になって顔を横に振る。委員長はきょとんとしている。本当に世界の違う人だと再認識。それなのに、この中で一番の"進んでいる子"だったりする不思議。蘇芳ちゃんは耳年増だから、よからぬ妄想にとりつかれている様だ。何だか赤い顔してモジモジしてる。

 

 

「孝崎ちゃんも、何か買おうよ。撮るもん無かったらガッキーのお胸の記録でもいいじゃんさ。ぼちぼち、甘食からおやつにくまん位に成るんじゃないの? 」

 

「苺姉、その例えは生協を利用してないと判らないって。さすがに蘇芳ちゃんは判った様な顔してるね。生協に異様に詳しかったもの。自分で注文書書いてたんでしょ? 」

 

「ええ。毎週カタログ見ながら。おやつにくまん、良く頼んだわ。祖父が特に好きで・・・・・・」

 

「生協に精通している小学生か。蘇芳さんらしいわー。話戻すけど、八重ちゃんもせめて、ブラに違和感が無い位有ると良いんだけどなー。今は見栄張って付けてる感がね・・・・・・」

 

「それ、大胸筋サポーター? ってからかったら、涙目になっていじけちゃって大変だったんだ。その後半日、口を聞いてくれなかったの。八重ちゃんたらコンプレックスから牛乳飲み過ぎてお腹緩くしたり。いろいろあるのよ、飄々としてても・・・・・・。私的にはあんまり巨乳になってしまうと、八重ちゃんの酷い肩こりがもっと悪化しちゃいそうだから。そこそこで良いんだけどね」

 

「そう言えば、八代先輩もガッキーの肩こり言ってたよ。酷いって。孝崎ちゃんが習いに来ないって、先輩がしょげてたよ・・・・・・」

 

「マッサージ!?。忘れてた。そうね教えてくれるって言ってた、言ってた。マッサージついでに、お胸も揉んで大きくしてあげようっと。じゃあ決まり。皆でカメラ買って成長期を撮ろうよ」

 

 

「ちょっ、趣旨が変だよ。苺姉が腰を折るからおかしな事に成っちゃったな。私は先輩みたいにアートチックな写真撮りたいのに。でも、仲間が増えるのって素直に嬉しい。いっそのこと写真部立ち上げちゃおうかな。そしてコンテスト作品出して、金賞貰って、テレビ出て・・・・・・巨匠と呼ばれて・・・・・・メーカーに限定モデルを作ってもらって・・・・・・」

 

「林檎さん、隗より始めよって故事知ってる? 」

 

 

 

「どうしたの、くしゃみなんかして。夏風邪は気をつけないといけないわ」

 

「多分、噂でしょう。沙沙貴か孝崎辺りが肴にしてるんだと思いますよ」

 

「ならいいけど、体調が悪くなったら軽いうちに保健室に行ってくださいね」

 

「判っています。養護の先生とは親しいですし。孝崎に負担ばかりかけていられませんから」

 

 曇っていたバスキア教諭の顔に笑みが戻る。本当に心配性なのは貴女ですよ、ミスバスキア。資料づくりに駆り出されている訳だけど、何だかんだ言って 私と一緒にずっと居てくれる。用事は平気なんですかと、私が気に病むくらいに。

 

「いちいちこんなにも表紙を付けるんですね。手間掛かりだなあ。どうせ入力してデジタルデータにしてこれは自体は廃棄してしまうんでしょう? 」

 

「ここには、パソコンなんて事務の方にあるだけなのよ。私達は紙の書類と資料ををそのまま使い回すの。21世紀も10年以上過ぎていたってここは昭和なの。生徒の人数も少ないし、まだなんとかなってるからね。暫くはこんなやり方だと思いますよ。八重垣さん」

 

「そ、そうなんですか。それはまた大変だ・・・・・・。それにしても、バイオリンの方は先生がお一人で面倒見るのですか? 」

 

「いえ、外部の講師と上級生が見てくれますから、私は基礎だけです」

 

「上級生がですか? 」

 

「ええ。私なんかより上手な子は何人も在籍してますし、年齢が近く親しみやすくて良い様ですから」

 

 手を止めずに、話を続ける。私は歩けないので、選択はバイオリンを選ばざるを得ない。正直困ったなと思う。なにしろ楽器はリコーダーとハーモニカしか触った事ないし、楽譜も当然読めない。白羽がすらすら楽譜を読み、淀みなく音を出す様を見てアイツ手品師かと思ったくらいだ。頼りにしたいけど、アイツはもう一つの選択肢のガーデニングに転びそうなのだ。委員長や双子の泣き落としの前に落城寸前。あんなにも虫が嫌いなくせして・・・・・・。

 

愚痴ってもしようがない。そうだ、孝崎。アイツはどっちを選ぶのか。まさか見捨てたりしないよな・・・・・・前に歌をけなしたから、それも無くもないか・・・・・・。あーあ。憂鬱だ畜生・・・・・・。

 

 

「先生終わりましたよ。仕上がりを確認してください」

 

 気持ちを切り替えて助手の立場に戻り、教諭の元に車椅子を進める。教諭は私から資料を手に取り確認しながら机に並べた。

 

「丁寧ね。びしっと揃ってるし。ありがとう八重垣さん・・・・・・」

 

 

 刹那、なにが起きたのか判らなかった。これって・・・・・・。キス? バスキア教諭が私の唇に? 唇を重ねた? 夢でも見たのか? 白日夢? いやしかしこの感触は・・・・・・。無遠慮に唇を手で拭った。手にはうっすらとルージュの痕が・・・・・・。私が唇を拭う様を見て、バスキア教諭が顔を手で覆った。

 

「そんなに嫌だったのね。御免なさい・・・・・・。私、八重垣さんの事好いているから、貴女も・・・・・・と思っていたから・・・・・・。勘違いしてたのね。八重垣さんの柔らかそうな唇に、つい魔が差してしまったの。忘れて・・・・・・。本当に御免なさい。後は私が一人でしますから、八重垣さんは寮に戻って・・・・・・」

 

 

 居たたまれなくなって部屋を出た。部屋からは教諭のすすり泣きが聞こえる。寮の部屋に戻る気にはならなかった。スロープを下り、外に出た。日陰を見つけてそこでさっきの事案を反芻する。とはいっても混乱したまま何もまとまらない。

 

 

「八重垣さんじゃない、ごきげんよう。こんな所でなにをなさっているのかしら? 顔が赤いけど、お熱あるのかしら? 測らせて頂戴」

 

 小御門先輩・・・・・・。先輩は私の顔に手を伸ばしてきた。反射的に払ってしまう。引いている先輩に心の中で謝罪する。そして先輩はその払った私の手を取り声を出した。

 

「これ、ルージュでなくて? もしかして、キスでもされてしまって、反芻してたの? 安心して。内緒にしてあげるから。違ってたら悪いのだけど、お相手はバスキア教諭? 図星の様ね。覚悟が無いならあの人に本気になってはダメよ。傷つくのは貴女。大人は狡猾よ・・・・・・」

 

「それって、ご自身の体験談ですか? ご忠告痛み入ります。私は平気ですから」

 

「とてもそうは見えないけど。まあ、忠告の意味はおいおい判るでしょう。ところで、八重垣さん。譲葉見なかったかしら? 何処かに消えてしまったのよ。会長の決済が要るのに」

 

「残念ながら存じあげてはおりません。ですが、お見かけしたら捜していた旨をお伝えしますので、ニカイアの会の方に行く様にお伝えします」

 

「ありがとう。今度、試験も終わった事だし、改めて孝崎さんと合唱部にいらしてね。歓待するわよ」

 

 

 

「お姉ちゃん、どうしたの? 私に何か付いてる? 」

 

 生まれたままの姿になって、浅瀬で水浴びしているお姉ちゃんが、服を脱ぐ私をじっと見ている。

 

「ううん、ゆかりも大人になったなーって。背も伸びたし、胸も大きくなったし何しろ綺麗になったもの。性徴も進んでるじゃない。私は相変わらずパッとしないけどね。そんな所で立ち止まらないで、早くこっち来なさい。湖水が冷たくて気持ちいいわよ」

 

「何言ってるのよ。お姉ちゃんだっていい線いってるって。自信持ちなよー。だけど、お姉ちゃんさ、普段からもう少し女らしさを意識した方が良いよ。言葉遣いとか。立場的に色々とあるんだろうけど、後輩がびびってるのって、側から見てると勿体ないなって思うよ。お姉ちゃんと普通に話しているのって、三年の同級生くらいでしょう。まあそれはある意味真っ当なんだけど。それにしてもね・・・・・・」

 

こんなに優しいお姉ちゃんが、部活であの言われ様を耳にしてショックだった。西大后とか言われちゃってて、廊下で愚痴ってた二年生を茶巾にして外に吊るしちゃう寸前だったのは内緒。

 

「ゆかり私ね、自分に自信が無いのよ。ゆかりも知っての通り、成績だってそんなに良くないし、バレエもここでもまた落ちこぼれでさ。容姿だって自慢できる所なんて無いし。でも、人心を掌握するのだけは何故か上手なったの。鞭とアメを巧みにって感じで。アジ演説も今では誰にも負けない。それだけを支えにしてる・・・・・・私の事、アングレカムのゲッベルスって言ったのは誰だったかな・・・・・・ほめ言葉と思ってるわ。私自身は天文部のチトーの方が好きなんだけど」

 

 自分を卑下し作り笑いで私を見る姉。確かに姉の自己分析は正しい。だからと言って、私はそんなのは折り込み済み。全てひっくるめて姉が好き。小さい頃から 私は姉の理解者だった。その逆もまたそうだったと思う。

 

だけど今はそれ以上に好きな人と言うか心を奪われる人が出来てしまった。白羽蘇芳に、白木葉子・・・・・・。葉子先輩はお姉ちゃんの後輩にあたる。一匹狼のお姉ちゃんと違い、穏健派の派閥に所属。他にも反体制派というのだろうか、反目する派もある。蘇芳さん達を捕縛したのはこっちの派だ。お姉ちゃんはこちらの派を重用している様で、葉子先輩とはあんまり親しくない様だ。

 

「お姉ちゃん、二年の白木先輩ってどんな人? 」

 

「白木コンツェルンの一人娘で、大金持ちのお嬢さん。そんなに親しくは無いわね。世界の違う人だから。部の備品もあの子の実家からの寄贈も結構あるのよ。機材も、仮眠室のベッドも確かそうだったわ。ゆかり、あの子に限らず何か変な事されたら私に言いなさい。私が処理してあげるから」

 

「私は平気よ。何もされてないし。どっちかと言うと、色々おイタしちゃったんだ。あの人に。でね、予定通りに事が運んだのに、なんだか辛いの。心が、暴発しそう・・・・・・」

 

「ゆかり、お姉ちゃんに話してみて、少しは楽になるかもよ。怒ったりはしないわ。絶対に」

 

 

 

「遅れてすまない。ちょっと紛糾してね。でもまあ。残ったのは些細な問題だけだから、肩の荷が下りたよ。それで、葉子。僕に何の用だい? 」

 

 約束通りに天文部の部室に譲葉が来てくれた。仕事が片づいて直ぐにだ。相変わらず義理堅い子・・・・・・。奥のテーブルに案内して追加した部屋の鍵をロックする。これで部屋を出るのには、私の頭の中の数字を入力しないと無理になった。出窓から日差しの入る部屋はエアコンを効かせてあるものの少し暑い。奥の部屋のテーブルには事前に準備した菓子と冷たい飲み物。薦める前に一気に飲み干す譲葉を見て苦笑する私。

 

「ごめん。あまりに美味しそうだから、勝手に手を出してしまった。悪いね、葉子」

 

「良いのよ。世の中には我慢できない事なんて、いっぱい有るもの。私もそうよ・・・・・・譲葉。お代わりは? まだ沢山あるからね」

 

 薦める私に、譲葉は笑顔で頷く。譲葉からタンブラーを受け取りキッチンに一旦戻る。ピッチャーからタンブラーに注いだ。キッチンからテーブルに戻り手渡したタンブラーを飲む譲葉。刹那、部屋に響くタンブラーの落下音。グッタリとする譲葉。

 

前に私が味合わされた改造スタンガンを、今回は私が使う。気絶し脱力して椅子から落ちかかっている譲葉を、支えながら丁寧に床に寝かせた。制服が汚れてしまうけれど、床を引きずり隣の部屋の、ざこ寝用キングサイズのべッドの上に担ぎ上げた。背が高く女性らしい体格の譲葉は意外と言うか当然と言うか重く大変だった。肩で息をする私。だけど、意識を取り戻してしまう前にする事が有る。荒い息のまま譲葉を裸にしていった。

 

 一瞬、罪悪感が過るも、理性と言うブレーキはもう効かない。明るい陽の中で改めて見る譲葉の肢体は、純日本人とは明らかに違う。白い肌、胸の大きさ、ウエストのくびれ腰から脚のライン・・・・・・。見とれていながらも手は動く。腕と脚を紐でくくり口にはダクトテープ、眼にはアイマスク。罪悪感が蘇るも、続けてしまう私。どこまで堕ちてしまうのだろう・・・・・・。

 

 譲葉の身体を濡れタオルで満遍なく丁寧に拭き、マッサージオイルを塗る。脇腹の辺りを揉みしだいていると、譲葉が意識を取り戻した。テープで塞がれた口からくぐもった声になら無い声がが聞こえる。全身をばたばたさせて拘束を解こうとする。けれどそんな程度では解けたりはしない。

 

「落ち着きなさい。私の言う事に同意なら首を縦に。従わないなら横に振って・・・・・・。またアレを食らいたくは無いでしょう? 答えを聞かせて」

 

 譲葉が、間を置いた後首を縦に振った。感謝の意を込め、舌で胸を愛撫する。反応を楽しみながら、指を下半身に滑らせていく。そして後輩に仕込まれたテクニックを譲葉に注ぐ。なんども気をやる少女はすっかり抵抗する事を止めた。頃合いだと思い、口のテープを剥がし、アイマスクを外した。

 

「葉子、これは一体何の真似だ。解いてくれ。聞いてるのか、葉子。誰にも言わないから・・・・・・。おい、これは犯罪なんだぞ・・・・・・」

 

「黙りなさい。貴女の様は録画されているのよ。晒されたくは無いでしょう? 強がりを言ったって、貴女のターンはもう来ないのよ。大体がこんなに濡らした女がどの口で私を拒否できるって言うのかしらね」

 

 濡れた人指し指と中指を、譲葉の目の前に差し出し、指を開いて糸を引く様を見せつける。顔を背ける譲葉。恥ずかしがる姿は私のスイッチを再び入れた。完全に屈伏させてあげるわ。愛しの譲葉・・・・・・

 

 あれからどれ位の時間が経ったのか、ベッド上にも日が差し込んで二人の身体を赤く染めている。拘束は既に解かれている。譲葉は、私のなすがままされるがままだ。完全に堕ちた・・・・・・。

 

「葉子、どうしてこんなことを・・・・・・」

 

 さっきと違い、非難の意は限りなく薄くただ問うだけの言葉を吐く。

 

「どうしてって? 譲葉が欲しかったからよ。入学式前の説明会、もう一年半も前に成るのね。あの時に初めて会ったのよ。覚えてる? 取り巻きに囲まれて騒いでいた私を、『静かにしろ場を弁えないなんて最低だよ』って、ひっぱたいたのよね。私今まで手を上げられた事なんて無かったから、衝撃だった。それで貴女は先輩に組み伏せられて、先生に預けられて三日間の反省房に送り込まれてしまった。そうあの時から譲葉を意識したの」

 

「それでね。父に頼んで学院に圧力かけて、譲葉とアミティエにしてもらったの。貴女と小御門さんがアミティエにならなかったのはその為よ。でも、譲葉は私の事なんてまるで空気みたいに相手にしてはくれなかった。でも、何時かは振り向いてくれると思っていたわ。そうしたら譲葉が蘇芳さんの事を気にしだした。願書見てだから、今年の冬頃よね。ショックだった。ずっと尽くしてきたのに、ポッと出の女に盗られるなんて。まあ会ってみたら蘇芳さんはいい子で嫉妬していた自分が恥ずかしくなったりもした。譲葉が小御門さんと別れたのはラッキーだと思った。蘇芳さんなんかより強敵だと思っていたから。神様は小御門さんを攫ってくれたと神に感謝したのよ」

 

「そして、蘇芳さんが黒沼さんとうまく行きそうに仕向けた。次は私の番だと思った。だから、事件を起こしたのに。貴女はアミティエの私でなく小御門さんを選んでしまった」

 

「事件? 僕が頭の怪我したアレか・・・・・・」

 

「ええ。そうよ。でもしくじったので、搦手から行く事にしたの。この間、学院から呼び出されたでしょう? 突然の弟さんのイギリスへのサッカー留学の話。それに、卒業までに私と貴女が一つになれる様に成るのよ・・・・・・とてもすばらしい事が起きるの。それはね・・・・・・」

 

 

 

「苺も林檎もニヤニヤしすぎだよ。もう、そんなに嬉しいものかね? 」

 

「あったり前でしょう。ずっと欲しかったんだもん。自分専用のカメラ。ユリーも買ったのに、何だか醒めてるじゃないのさ。委員長にお金借りたのが負い目だったら、撮りまくって借りを返したらいいんだよ。何しろ、デジカメは枚数撮れるからねー」

 

「そうよ、私をいっぱい撮って。私もお返しにマユリのヌードも撮ってあげるから」

 

「ヌード限定なの? 立花。確かに学院には制服と家庭科で作るサンドレスと浴衣しかないものね・・・・・・。果物や花と組み合わせてバラエティ増やす? 昭和っぽいかな」

 

「そういえば、秋から制服か刷新されるんでしょう? あれ、誰がお金出したんだろう。後で請求来るのかなあ・・・・・・。お父さん怒ったら怖いから・・・・・・」

 

「なんでも、ニカイアの会に多額の寄付が有って実現したらしいわよ。だから、請求とかは無いって。匂坂さん良かったね。私的には脱がしやすいと良いのだけど」

 

「孝崎ちゃん、また問題発言だよ。ばってん付けたマスク付けてー」

 

「勘違いしないでよ、八重ちゃん介助の時、セパレートしてた方が良いかなって思ったからよ。他意は無いわ」

 

「そういう事ね。邪推してゴメン。苺姉はおっちょこちょいで・・・・・・」

 

「何一人で良い子になってるのよ、林檎。あんたもやらしい事考えてたんでしょう。私はお見通しだよ。双子を舐めるなー」

 

 

 苺姉が私の頭をげんこつでぐりぐりと責める。照れ隠しなんだろうけど、いい迷惑だ。でも、皆が楽しそうなので我慢する。特に蘇芳ちゃんが・・・・・・。

 

「蘇芳さん、そんなに笑うなんて。元気になって良かったわ。明後日からクラスで会う子にもその笑顔を見せてあげてね」

 

「さすがに委員長。締める所は締めるねー見習って、孝崎ちゃん」

 

「えっ私に振るの? 」

 

 馬鹿話をしながら、建物を出た。日がだいぶ傾いてきている。楽しい時間もあと少し。カメラの袋を見ながら、店長の言った言葉を思い出していた。

 

 

「八代様の事、何か聞いていないですか? ご実家の方で何かあったのか、お父様と私どもと連絡が取れなくなってます。カードの方は滞りは無い様なのですが・・・・・・ちょっと気になりまして・・・・・・」

 

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