会長の思惑、Second Phase   作:抱き枕50

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サプライズ

「先生この道って・・・・・・・・・・・・」

 

「白羽どうした? 何かおかしいか? ここらは既に私道だからな、学院に関わる車しか走ってないよ、だからすれ違う事なんて滅多に無いぞ・・・・・・人が居る様なら、そいつはジョエル・ランバートかもしれないな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「おい、お前に合わせて考えて振ったネタを、スルーするなよな・・・・・・」

 

「ごめんなさい。ボーッとしてました。でも本当に何も無いんですよねこの辺り・・・・・・。私がこの学院に初めて来た時の事なんですけど、学院行きのバスが廃線になってるなんて知らなくて・・・・・・。夜、真っ暗な中を一人で何時間もこの道を歩いてきたんですよ。もう心細くて半泣きで、何度も何度も帰ろうか思いました」

 

「なっ? 」

 

「外灯は疎らだし、車の音がすると攫われてしまいそうで木の影に隠れたり・・・・・・不安で不安で仕方なかったんです。でやっとの事で学院に着いても勝手がわからなくて、一人でとぼとぼしていたら、偶然散歩していた譲葉に出会って、寮に連れて行って貰ったんです」

 

 

「ここを一人で夜中に街から歩いてきたって? お前チャレンジャーだな。何年もここに努めているけどそんな奴聞いた事ないよ。昼間だって街から歩く距離じゃないだろうよ。しかも最後に控える10%の登り坂も有るって言うのに・・・・・・。それで八代はなんて言ってた? 」

 

 

「なんて言ったかは忘れてしまいましたけど、とにかく驚いてましたよ。今の先生みたいな反応でした。そして寮に連れて行って貰ったんですけど、時間外だって入寮手続きを拒否されて・・・・・・」

 

「それは酷いな。で、野宿でもしたのか? 」

 

「さすがにそれは・・・・・・。譲葉が僕の部屋に、って招いてくれたんです。同室のアミティエの方も歓待してくれて・・・・・・その日はそこで寝ました。あの日、上級生お二人の優しさに触れて、ここで過ごすのも悪くないと思ったんですよ」

 

 

「そうか。あの白木と八代がね。良い経験をしたな。お前も何時かそういう事をして、後輩を導いてやりなさい。継承って言うのは八代と白羽にこそ相応しい」

 

「先生・・・・・・」

 

「感情を抑えるのは大人になってからで良いよ。身体は大人でも、白羽はまだまだ子供なんだから無理はしなくたっていいんだよ。ほれ、タオル」

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

「なんだよその目は」

 

「何時もそんな甘言で女生徒を口説いてるんですか、先生? 私、今すごくドキドキしちゃった。ねえ、先生の恋愛話を聞きたいな・・・・・・。誰にも言わないから・・・・・・お願い・・・・・・良いでしょう? 二人だけの秘密にしますから・・・・・・」

 

 

「おいおい、子供が媚びるなよ・・・・・・そうだな。夏期テストの成績がクラス一位になってたら、お前の手作り料理と引き換えに話してやるよ。料理部なんだろ? 白羽は」

 

「うわー、保険を掛けるなんてズルいな先生。でも、良いのかなそんな約束しちゃって。今回のテスト、結構自信あるから・・・・・。指切りでもしましょうか、せ・ん・せ・い! 」

 

 

 

 

「ユズ、まだまだよ。こんな程度で音を上げてだらしないわね。終わりの無い女の悦びを味わって頂戴。身体は正直よ。もっともっとしてって言ってるわ・・・・・・。見なさい、この綺麗な銀の糸・・・・・・それにしても白くて綺麗な肌。こんなところに黒子が無ければ満点なのに・・・・・・」

 

「ユズ、そうよ。もっと気持ち良くなって・・・・・私と一緒に、第二の人生を生きましょう。これからは朝おきて夜寝るまで、ユズは私のものよ。誰が近づいてきても排除するわ。でも夢だけは貴女のモノなのが残念・・・・・・」

 

 

 葉子が指と言葉で僕をおもちゃにする。あの日以来、僕たちの関係は爛れる一方だ。節度ある同居人の関係は霧散した。土曜日の今日は昼食をとった後、自室で縛られてのまぐわい。一年生から教わったというスキルで僕を嬲る。硬軟軽重織りまぜての性行為に僕はドンドン堕ちていく。しかしそんな境遇に不思議と安らいでいる自分が居る。

 

 僕はもう・・・・・葉子には逆らえない。逆らったら、弟の将来も、父の事業も従業員、その家族の生活も破綻してしまう。ここに来る前、屋敷を手放した辺りからうすうす判っていたけれど、先日の父からの電話は僕に引導を渡した。会社の債務を処理する課程でお前には迷惑をかけるけど、耐えてくれと涙ながらに話す父。その時は事の詳細を知らされてはいなかった。ただひたすら耐えてくれと・・・・・・。

 

 

 葉子の家の助けが無かったら、父は間違い無く自殺していた。苦悩を語る本人の自筆の手紙は倒れるくらいに衝撃だった。先日のレイプ禍後に届いた二通の手紙。一通は父からのもので、内容は事の顛末の記載と、犠牲になる僕への謝罪だった。そして養子になって白木の家に入るという仕組まれた完全な籠絡、八代譲葉への死刑宣告に値する内容だった。後幾年月で過去を捨て白木譲葉として生きる事に・・・・・・それでもお前は生きなさいと・・・・・・。

 

 もう一通は、裏の事情など知らない、弟からのものだ。念願だったサッカー留学が決まり、イギリスに行くことを嬉しそうに綴っている。イギリスには祖父の実家も有り、そこで厄介になるという。弟が真相を知ったら、父や葉子を殺すかもしれない。僕が、僕だけが我慢すれば、丸く治まる構図に逃げ道などは有りはしない・・・・・・。

 

 

 今日を迎える前は、僕だけが知っていたこの案件。今は皆が知っている。入院していた蘇芳だけがまだ知らない。どう伝えれば良いのだろうか。経緯を知った蘇芳はどういう反応をするのか・・・・・・。快感の海に沈む僕は、思考が停止し答えを捻り出せない。執拗な葉子の愛撫に、身体はとめどもなく悦びの涙を流し、ただただ時間だけが過ぎていく・・・・・・

 

 

 

「ありがとうございます。人数分のバスタオル、明日にはお返ししますんで・・・・・・。くれぐれも先生には内緒にしてくださいお願いします」

 

「判ってるから大丈夫よ。それにしてもやるわねー貴女たち。白羽さんって人こんなに慕われて幸せ者だわ。でも、なんかあったんでしょう? 」

 

「それ、本人に言わないで下さい。お願いします。今日だけでも、知らせたくないんです。見かけても、退院おめでとう程度に頼みます」

 

 委員長と三人で寮のクリーニングの窓口に出向き、退院歓迎ホットタブパーティーの事を話し、参加人数分のバスタオルをゲットした。本来は水着着たりするんだけど、ここには無いので知恵を絞ってたどり着いたのがここだった。バレエのレオタードも考えたけど、すけすけで煽情的になりそうなので取りやめた。ホットタブパーティー改め乱交パーティーになっては拙いから・・・・・・

 

 私達の恩人でもある小御門先輩の思い人が本部スタッフに居るので、こういう時無理強いの場面では有り難い。脱柵の時協力して貰って以来、お目にかかっていないけれど、お手紙は定期的に取り交わしている。本来だったら絶対にこんな要望は通らないけど、私達は一緒に逃避行をした仲なので、現場のスタッフさんも意を酌んで書類の員数を弄ってくれた。

 

「さてとこれで準備万端。持つべきものは戦友だね。それにしても委員長、全員が参加するなんて思わなかったよ。嬉しい反面、蘇芳ちゃんが離れてしまった様でちょっと淋しいな・・・・・・」

 

「苺さん、私達は外で会ったりしたのだから、今日はホスト役に回りましょうよ。皆だって蘇芳さんのこと心配だったんだもの。だから全員参加になったのよ」

 

 

「そうだね。今日は委員長の言う通りにサポート役に回ろう。林檎、聞いてる? どうしたの、深刻な顔して・・・・・・」

 

「なんでもないよ。それより誰が蘇芳ちゃんをお風呂に案内するの? それに養護の先生もお風呂に入るんでしょう? 」

 

「そうね・・・・・・誰かが誘導しないといけないわね。それにあの先生もずぶ濡れなんだっけ。迂闊だったわ。でもあの先生は理解がある人だからなんとかなるわよ・・・・・・多分」

 

 

「林檎がエスコートやりなよ。うちのクラスで一番の適任だからさ。養護の先生とも仲いいし。林檎なら蘇芳ちゃんも抵抗感無いだろうしね。そうだ、聖母祭のメイド服。あれ着ればいいじゃん。お帰りなさいませ、ご主人様って、さ」

 

「苺姉、良いアイデアだけどメイド服、クリーニングから戻って来てるかな? 委員長は所在聞いてる? 聖母祭終わって直ぐに出したから、ぼちぼち戻ってくる時期なんだろうけど・・・・・・」

 

 

 

「脱輪したり災難続きだったけど、やっと戻って来たな。お前は久々で懐かしいだろ? にしても雨降りだからって出迎えは無しかよ、お姫様をお連れ差し上げたのに・・・・・。まあいいか、後でシメちゃる。 白羽、荷物を下ろすのは後で良いだろ? 西の空が明るいからもうすぐ雨が止みそうだ。止んでからでないと濡らしてしまうし。それよりなんだ、直ぐにお風呂入ろう。特別に沸かしてくれてるからさ」

 

「ここで油断すると、また風邪引いてホスビタルクィーンに逆戻りになっちまうぞ。それにても・・・・・・退院の日に全身ずぶ濡れになるなんて・・・・・・。学院の中に、行いの悪い奴が居るんじゃないのか? 」

 

 

「私知ってますよ。そういう人が身近に・・・・・・。生徒の引率を口実にこっそりとビールやチューハイを大量に持ち込んでる人が居るみたいなんですよねー。何処の誰とは言いませんけど」

 

 

「ちょっ、お前、見てたのかよ。黙っててくれたら、少しくらい分けてやるよ。お酒、興味有るんだろ? 黒沼が言ってたよ。白羽は身体も大きいし、まあ少しくらいなら飲んでいいよな。飲むなら安息日の前日に私の部屋に来な。バーターになるけど、部屋の片付けを多少は・・・・・・・して貰うよ。今晩でも良いけど、まあ今度にするか? 」

 

「今日は・・・・・・」

 

「そうか。さっさと借りは返したかったが仕方無い。この事、誰にも言うなよ。未成年者飲酒が学院バレしたら、本人は停学。提供者の私はクビだし、そっちがバレなくても、教職員が校内で飲酒してるのバレると、賞与、昇給が無くなっちゃうからな。生徒は金持ち多いけど、教員はそうじゃないの多いんだよ・・・・・・」

 

 

「先生を筆頭にね。判ってますから安心して。先生には無事に昇給して頂いて、早くこの可哀相な車を修理してあげて欲しいですから。多少の片付けって、そうしないと座るところも無いんでしょう? せ・ん・せ・い」

 

「何故判る白羽・・・・・・」

 

「今日は遠慮しておきます。でも私の分、残しておいて下さいね。そうそう、私の荷物ですけど後で保健室にお伺いしますから。判るようにしておいて下さい・・・・・・」

 

 

 出迎えが無いのを、改めて先生が訝る。到着予定は伝えたのにと・・・・・・・。そして寮の玄関をくぐると・・・・・・・

 

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

「なんだ、沙沙貴。そのイカレた格好は。それにお前、一人で一体何してるんだ? 」

 

「林檎さん? 、それ聖母祭の時の服よね。似合ってるわ、可愛い・・・・・・・。でも、本当にどうしたの? こんな所で・・・・・・」

 

 

「ご主人様、こんなにずぶ濡れで、さぞお身体がお冷えになったでしょう? お風呂の用意が整っております。浴場までご案内申し上げます。蘇芳様も、どうぞこちらに」

 

 

「だから、沙沙貴、何の真似だよ。そんな格好でうろついてると、ダリアが切れるぞ。 でもまあ、メイド服似合うなお前。姉貴よりもそういう洋服似合うと思うよ。白羽もそう思うよな? 」

 

「ええ。仕種もメイドっぽくて。苺さんは執事の方が似合いそうな気がするもの。それで一体どうしたの、その格好・・・・・・」

 

「浴場に着きましてございます。お洋服をお脱ぎになったら、ランドリーにお運びしますので、入浴後は私どもの用意した着替えをご着用お願いします。それではごゆるりとお寛ぎ下さいませ」

 

 林檎さんは徹頭徹尾、メイドさんとして行動した。先生と二人して戸惑い続けた。でも、その表情言葉のトーンから罰ゲームの様な陰惨なものは感じ取れず、ノリノリにやっているのが判ったので、そのサービスを享受した。言われるままに服を脱ぎ、用意してあるタオルを手に浴室の戸を開けると・・・・・・」

 

 

「お帰りなさい、蘇芳さん」

「お帰りなさい、白羽さん」

 

「ゴリセンもおかえり・・・・・」

 

 そう呼びかけられて、クラッカーの代わりのおもちゃの火薬銃の音が響く中、万雷の拍手を浴びた。見回すとクラスの子が全員居る様だ。全員が祝福してくれるなんて・・・・・・。

 

 後ろから先生も、花束を手に退院おめでとうと改めて祝福してくれた。思わず涙が出る。皆がハグを求めてきたので一人一人じっくりと抱き合った。そして、蘇芳さんと先生は先ず温まってねと、手を引かれ湯船に漬かる。すると先に漬かっていた八重垣さんが、背後から抱きついてきた。浮力のあるお湯の中で、八重垣さんは人魚の様に自在に動き、後ろから正面に回り私を抱きしめてくれる。追う様に隣に来た孝崎さんもやれやれと言った顔でその態を見ている。

 

 しかし程なくして目つきが変わり、仏の顔も三度とばかりに八重垣さんは浴室の角に連れ去られてしまった・・・・・・。

 

 私が来たことで、バスタオルを纏っただけの少女たちの宴が始まった。試験も終わってるし、明日は安息日。羽目を外したって無問題。菓子を摘む者、ハーモニカをカラオケがわりに歌を歌う者、先生に身体の質問をする者、野外用のツイスターを持ち込んで楽しむ者。いろいろに楽しんでいる。

 

 遅れて、林檎さんが入ってきた。皆でエスコートから花束の用意等の労をねぎらう。そしてその手には、禁断のビール。先生が持って来いと頼んだ様だ。皆の視線が集まる中、先生は缶を開け、ゴクゴクと喉を鳴らして一気に空にする。漂う臭いはむせ返る様な少女の匂いの中で、そこだけが大人のアピールをしていた。

 

「先生、少し頂戴。えー。ダメって。ケチ・・・・・・」

 

「当たり前。お酒は二十歳から。お前は私をクビにしたいのか。今のこれだってバレたら減給+始末書もんなんだからな・・・・・・」

 

 

 そう言いながらも、皆が一気一気とはやし立てる中、二本、三本と次々に空にしていく。全てを飲み尽くして先生は、赤ら顔で私の所に来て耳打ちした。

 

「白羽には、チューハイを取り置きしてるからさ。安心しろ・・・・・・」

 

 

 ほろ酔いの先生が、保健室に戻ると言うので、保健委員の関本さんと、補佐として根本さんがサポート役を買って出て退室した。菓子も殆ど無くなり、お開きの時はもう間近、皆も理解している。自発的に片付けをして、証拠を消し、何時もの入浴状態に戻していく。全員が退室したら、スタッフさんが臨時にチェックするという。

 

 

 私達のために沢山の人が動いてくれたことに感謝し、改めてお礼を述べて締めとなった。退室する皆を手を握って送り出し、残ったのは立花さんと沙沙貴さん達。沙沙貴さん達に今日は一緒に寝ようと言われたけど、入院の経緯も有り、根本さんに悪いからと固辞した。

 

 苺さんと立花さんは、仕方ないわねと、少し不満そうに出て行った。違和感を感じながらも着替えをしていると・・・・・・。脱衣かごに二通の手紙が。一つは譲葉から。もう一つは林檎さんからのモノだった。刹那後ろから視線を感じる。振り向くとまだバスタオル姿の林檎さんが、私を凝視している。そして意を決した様に、口を開いた。

 

 

「蘇芳ちゃん、着替えの途中で悪いんだけど、今すぐここで私の手紙を読んで。八代先輩のよりも前に書いたんだもの、先に読んで。お願いだから・・・・・・」

 

 いつになく真剣な顔をしている。先程のメイド服を着ていた時と、眼光が違う・・・・・・。気押されて、着替えの途中だけど手紙を手に取って読んだ。

 

 立って読んでいたはずなのに、何時の間にか、床に座りこんでいる私。言葉の重さに、耐えきれなくなった。何度も読み返し、林檎さんを見つめる。林檎さんは、私を愛している。それも、この上なく真摯で重い。一遍も茶化すところなど無い、純粋な愛の表現。私が今フリーなら、今すぐに指輪を交わしそうな位に心を揺さぶられた・・・・・・。だけど、今私は譲葉と付き合ってる。それは林檎さんも知っている訳だ。

 

「蘇芳ちゃん、読んでくれてありがとう。これが私の本心なの。嘘偽りなんて無い、今の気持ち。それじゃ今日は・・・・・・」

 

 最後は涙声になって良く聞き取れない。でも判る。バスタオルのまま、泣きながら部屋を飛び出す林檎さんを、外に居た苺さんが急ぎガウンをかけ介抱する。そして私に頭を下げて立ち去っていった。

 

 

 暫し放心した後、譲葉の手紙を読んだ。そこにはシンプルに、『今日の夜、午後十一時にサッカー部の部室にて。とても大事な話が有る。余人を交えず二人で話をしたい。秘密厳守の事』とだけ書いてある。この間の交換日記と全く違う文のトーンに戸惑う。偽物? と疑ったけど署名は譲葉の字で間違いはない。一体何の話だろうか、私が部活を辞める話のことなのだろうか・・・・・・。

 

 そうだ譲葉に交換日記を渡さないと・・・・・・。途中だった着替えを済ませ、入り口のコルクボードにスタッフさんへのお礼を書きピン止めして部屋を出た。向かうは私の荷物が運ばれているはずの保健室。

 

 

「白羽です、入ります」

 

「先生、荷物を取りに来ました。先生? 居ないんですかー」

 

突然聞き慣れない声が私の耳に飛び込む。

 

 

「白羽さん、こんにちは。私の事覚えてるかしら? 天文部の部長の和田です。先生は其処よ。よほど疲れたのかしらね? 今は仮眠を取っておられますよ」

 

 カーテンに閉ざされた、一番奥のベッドの方を指さす先輩。そして手前のベッドのカーテンが揺れて、出てくる人影が・・・・・・。

 

 

「蘇芳さん、改めてだけどお帰りなさい。お風呂場では控えていたの。こういう時間が有ると思っていたから・・・・・・」

 

「おかえりなさい。そこのトートバッグ以外の荷物は私が部屋に運んでおきましたよ。また今日から一緒ですね、蘇芳さん・・・・・・・」

 

 関本さんと根本さんが並んで頭を下げてきた。抱きしめてくるかと思いきや、普通に挨拶をしただけだった。何だか二人赤ら顔で、もじもじしてるのが妙に気になる。それに何故か靴を履いていなくて、裸足だった。

 

 

「ねえ、白羽さん、この子達なんだけど、蘇芳さんに謝りたいって言うの。私から聞き出した事で貴女を脅迫して、イヤらしい事を強制したでしょ? 卑怯な事して、農場で、保健室で、自室で・・・・・・・」

 

「どうして先輩が知ってるんですか。先輩は関本さん達と何の関係が・・・・・・・」

 

 

「あれ、知らなかった? 私は、関本ゆかりの姉です。名字が違うのは家庭の事情って言う奴ね。ゆかりが貴女を狙った発端は、私の持っていた貴女の写真だったの。だから私も、貴女に謝りたくってね。妹達が迷惑をかけてしまって御免なさい。双子さんとか、貴女の所の級長さんや、元芸能人のお友達には、昨日謝罪を済ませて手打ちにして貰ったから。後は白羽さんに謝って最後なの。許して貰えないかな? もちろんこちらも誠意を示すわ。だからね、今この二人に、貴女に成り代わって私がお仕置きをしてるのよ」

 

 

「貴女達、一歩前に出なさい。蘇芳さんに確認して貰うのだからカーテンを開けて・・・・・・・」

 

 そうか、この人が関本さんのお姉さんなんだ。先輩の言葉に二人の顔が、限界まで赤くなった。耳まで、首筋まで真っ赤だ。後ろ手のまま身体をくねらせて不自然にカーテンを開ける二人。

 

 

「ほら、どんなお仕置きされているのか、白羽さんにお話して。正しくお伝えしないと、お許しを頂けないでしょう? ほら早く」

 

「す、蘇芳さん、私達二人は今、お浣腸のお仕置きをされています。こんな姿を蘇芳さんに見られてしまって・・・・・・・とてもとても恥ずかしいです。でも、私達は蘇芳さんに酷い事をしてしまいました。だから・・・・・・・お許しを頂くために恥ずかしいけど・・・・・・・耐えて全うします。最後までご覧になって下さい」

 

「白羽さん、この子達の後ろの点滴スタンド見て。あの下がってるボトルにいっぱいのお薬が入っていたの。今はもう半分くらいかしらね。牛乳ビンの半分くらいはお腹に入ってる計算よ。全部入って一分我慢して、もう一度蘇芳さんに謝って、お許しが貰えたらおトイレに行けるって言うお仕置き。ゆかりも小夜花ちゃんもほらスカート捲くりなさい。チューブがお尻の穴に確実に入ってるところを蘇芳さんに確認して貰うのよ、当然でしょう? 」

 

 二人は制服をまくり上げながら後ろを向いた。ショーツは履いていなかった。むき出しのお尻に刺さるチューブが目を閉じても記憶に焼きついてしまった。先輩に言われるままに、手首のところで括られた不自由な腕でのお尻の肉を手で広げ、チューブがお尻の穴に入ってる態を私に見せつける。正視に耐えない。目を逸らすも、二人の苦しそうだけど何処か甘ったるい喘ぎ声が耳に入ってくる。

 

「もう、こんな無意味な事を止めさせて下さい。いくらなんでも酷すぎます。先輩が止めないなら私が・・・・・・」

 

 

「そんな事したら、もう一度、今度は白羽さんのお部屋で液量を倍にしてする事になるだけよ。まあこの子達にはそれも良い経験になるけど・・・・・・・。ゆかりも小夜花ちゃんもきっちり最後まで我慢したいよね? 二人ともだらしないわ、お仕置きなんだから辛いのは当たり前よ。本当にダメな時はそこの洗面器にするのよ。白羽さんにそんな恥ずかしい事、見られたくないんでしょう? だったら泣き言を言わずにしっかり全うしなさい! 」

 

「白羽さん、お仕置きだけど辛いだけだとなんだから、液にお酒を少し混ぜてあるの。顔が赤いのは恥ずかしさも有るけど、アルコールのせいもあるの。酔ってるのよ、この子達。もちろん急性アルコール中毒になんてならない程度に薄めてあるから安心してね白羽さん。後もう少しだから最後まで見届けてね」

 

 

「お酒って・・・・・・・まさか? 」

 

 先輩は私をにっこり見つめて、床に置いてある空缶を指さした。そこに有ったのは危惧した通り、先生の持ち込んだビールだった。もしここで何か間違いが有ったら、先生にも迷惑がかかってしまう。仕方ない、従う事に・・・・・・・。

 

「さすがに察しがいい子。二人が取り合うだけの女の子ね。蘇芳さんみて。ほらボトルが空になったわ、五十九、五十八、・・・・・・・」

 

 先輩がカウントダウンをしていくのを聞きながら、二人を見る。私を見ながら涙を流し、うわ言の様に謝罪の声を呟き必死に耐えている。時間と共に私は二人を許した。二人は土下座で私に謝って、お尻を手で抑えながら小走りで保健室を出て行った。

 

やれやといった仕種で、開けっ放しの戸を閉めながら、先輩が私に謝る。

 

「白羽さん、私達の事、軽蔑するわよね。こんな事をして見せつけて。でもね私達なりの謝意なのよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「全く。仕様の無い子達だわ。女の子の所も涙がダダ漏れで・・・・・・。白羽さん、あの子達の立ってた場所の床を見て・・・・・・。後始末するのは私なのに」

 

 水を零した様に濡れていて、リノリウムの床に足跡が付いている。ここまで床を濡らすなんて・・・・・・・一体どれだけ感じていたのかしら・・・・・・・。ふと我に返ると、私もまた激しく濡れていた・・・・・・・。私もこんな恥ずかしい性癖の資質が? 固まってしまった私をよそに、先輩はお仕置きの後片付けを手際良くこなしていく。

 

 

「さあ、貴女は、残りの荷物を持って部屋に帰って下さいな。私は先生が起きるまで、ここに居るから。白羽さん、ううん蘇芳さんに、あの子の姉としてのお願いなんだけど、これから卒業まで、あの子達といろいろな事が有るかもしれない。でも、二人の事を毛嫌いしないで・・・・・・。勝手な言い分だけど、あの二人は蘇芳さんを愛して道を外してしまったわ。蘇芳さん・・・・・・貴女これから何人の女を惑わすのかしらね・・・・・・・怖い人・・・・・・・。言葉が過ぎたわ、ごめんなさい・・・・・・・」

 

 

「いえ、もしかしたらそうなのかもしれません。自覚は無いですけれど、結果として・・・・・・・」

 

 そこまで言って口を噤んだ。先生の寝ているベッドを覆っているカーテンが動いているのが見えたから・・・・・・・。

 

 

「先生、白羽さんがお見えになりましたよ。それではわたしはこれで失礼します。後は白羽さん、よろしくお願いしますね。そうそう先生にお水を上げて頂戴・・・・・・・」

 

 先輩は、先程とは別人の顔をして帰って行った。私は冷蔵庫から炭酸水をコップに取り、ベッドで半身を起こす先生に手渡した。一気に飲み干し、若干の間を置き汚くゲップをする先生。二人して似合わせて苦笑いをした。

 

「最低ですよ、女の子の前で」

 

「白羽、醜態を晒してすまない。つい飲み急ぎすぎたよ。関本たちは帰ったのか? 二人に寝かされてさっきまで熟睡しててさ。なんだそこの洗面器とか。私のゲロ用かよ。随分と用意がいいな。でもまあ、こんな程度じゃリバースしないよ」

 

 

「先生、今日はありがとうございました。先生との帰朝、今思うと映画みたいで面白かったです。今度は晴れてる日、涼しくなってから乗せてくださいね」

 

「そうだな、お前と乗ってる時、若かりし頃の初のドライブをデートを思い出したよ・・・・・・・その事で一つ後悔してることが有ってな・・・・・・・」

 

 

 先生は私を手招きし、間髪入れずに私を強引に抱きベッドに押し倒し、手を押さえつけて強引に唇を奪った・・・・・・・

 

「先生、一体どうしたんです? 酔ってるんですよね? こっ、困ります。私、好きな人居るんだから・・・・・・・」

 

 

「悪いな、白羽。これは不幸にならないためのおまじないなんだよ。初ドライブデートの子とは別れのキスをし損なってさ。次の日から連絡取れなくなって、それっきりになっちゃってさ・・・・・・・。次に会えたときは、もう骨になってた。青磁の壺を抱きしめて、恥も外聞もなく泣いたよ」

 

 「そんな事が有って、車に乗せた気になる子とは、別れる時にはキスを欠かさない事にしてる。もちろん、本気で嫌がる子も居たけどさ、それでも理由を話すと受け入れてくれたよ。お前もしたいと思ったら我慢するなよ。人生に又と今度って奴は、無い時の方が多いんだから・・・・・・・。お前はそれを近々・・・・・・・」

 

 

「先生、その人って私に似てたの? 」

 

「イヤ、全然似てないよ。白羽の知ってそうな例えだと、そうだな、黒沼を真っ黒に日焼けさせたような感じが一番近いか・・・・・・・」

 

「だから先生は、アキラの事を気にかけてる事多かったんだ。そうそう、召天記念日の事なんですけど、アキラが世話になった病院のナースの方をお呼びしたいのですけど、招待状リストに入れていただけませんか? 」

 

「それは、もちろんOKだよ。私も会って礼を言いたいしな。もしかして今日お前を見送った中に居たりしたか? 」

 

「ええ。勤務の関係で、来られるのは一人か二人でしょうけど・・・・・・・」

 

「そうか。一人でも多く来て欲しいんだよ。お前やアイツが淋しくないように・・・・・・・」

 

 

「先生、今のキスの話・・・・・・。アキラや譲葉も車に乗せたって言ってましたよね? だとすると二人ともキスしたんですか・・・・・・まさかその先も? 」

 

「目が怖いよ。白羽。その辺りの事は、今度話してやるから、引き換えに酒のつまみ作ってくれ。手羽先とかを好きなんだよ・・・・・・それ、手料理の話と別な」

 

「それって。私、足元見られて良い様に利用されてます? ただの都合のいい女なの? 違うって言って、先生! 」

 

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