「根本さん、何を!?」
それまでベッドの中で大人しくやりとりを聞いていた蘇芳が、突然布団を払いのけ鬼の形相で飛び出てきた。殴りかからんばかりの勢いだったので、僕が必死に蘇芳を取り押さえた。今まで具合が悪くて臥せっていたのはなんだったのかと思うほどの力強さだ。
「離して、譲葉。離しなさい! 冗談にしても聞き捨てならないわ。譲葉もあんなこと言われて何平気な顔してるのよ! 」
「落ち着け。一体どうしたんだよ、おい。蘇芳、暴れるなって。腕に噛みつくな・・・・・・痛いよ、あっ、こら」
理性を失い切れてしまった蘇芳が、抱き押さえていた僕の腕に噛みつき、怯んだ隙に腕を振りほどいて部屋の奥の隅にずり下がった根本君の元に迫った。
「蘇芳さん、落ち着いて。さっきのは冗、冗談です。気分を悪くしたのは謝ります。だ、だから、こっち来ないで・・・・・・。痛! ヒィ。苦・・・・・・しい・・・・・・」
正気ではない蘇芳が、根本君を突いて倒し馬乗りになり彼女の首に手をかける。もう洒落にならない。割って入って全力で引き剥がそうとするけど、指を怪我してるので何時もの力が出せない。
大柄な蘇芳は力も強く、なかなか阻止出来ない。そんなとき保健室から寮に移送されたことを知らされて、蘇芳の様態を見に来た級友達が結果として絶妙のタイミングで部屋に入ろうとしてきた。
「蘇芳さん、居る? 勾坂だけど入るよ、立花も苺、林檎も一緒だよ。こっちに移送とは良くなったのかい? 」
「蘇芳ちゃん、保健室に行ったら居ないから焦ったよ。良くなった? 試験勉強一緒にしようよ。蘇芳ちゃんだけが頼りなんだから」
明るい声でドアを開けて入ってくる級友達。まだ異変に気付いてはいない。匂坂君が居るようだ。スポーツ得意の彼女は体力的に僕をフォローしてくれるに違いない。早くー!
「奥に、奥に来てくれ。蘇芳がー」
「どうしたんですか、先輩。えっ、えー。立花、ちょっ、ヤバいよ! す、蘇芳が普通じゃない! 」
勾坂君は、鬼気迫る蘇芳を見て怯んだ。動けないで固まってしまう。
「痛!マ・ユ・リ、どうしたのよー急に止まらないで。もー、眼鏡の鼻あてが曲がっちゃうじゃない!ねえ、普通じゃないって何よ? マユリったら最近言葉遣いが悪いわよ。で、蘇芳さんがどうかしたの!? 」
「勾坂君。頼むからこっち来てこの馬鹿女を引きはがすのを手伝ってくれ・・・・・・一人じゃキツいんだ。全くクソ力出しやがってお前は吸血鬼かよ・・・・・・」
立ちすくんだ勾坂君の後頭部にぶつかってズレたメガネを直しつつ、未だ事情を理解してない花菱君が顔を出した。と同時に事の次第を理解し悲鳴の様な声を発した。
「蘇芳さん! 一体何をしているのよ! 根本さんの首から手を離しなさい。マユリも早く手を剥がすの手伝って。沙沙貴さん達はドアを閉めて鍵かけて。早くしないと、人が来てしまうわ。廊下の人払いもお願い」
なんとか3人がかりでやっと蘇芳を根本君から引き剥がせた。根本君は、花菱君が介抱しているけど苦しそうにゲホゲホしている。間一髪。危ないタイミングだった。蘇芳に目を向けると未だに収まらない状況だ。僕が前から勾坂君が後ろからやっとのことで押さえている。暫く、すったもんだしたけど、2対1の蘇芳が根負けした。今度はこっちの番。
「勾坂君、ちょっと退いて」
蘇芳の頬を思いっきり叩いた。二度三度、四度五度・・・・・・。僕も痛んだ指に響く。蘇芳は頬を腫らし唇が切れ、鼻血も出ている。それ見ていた花菱君、匂坂君が今度は僕に止めてくださいと懇願する。しかし激情にかられたとはいえ、首締めは言語道断。これくらいは当然、いや足りないぐらい。
「蘇芳、お前何したのか判ってるのか? 嫉妬にかられたとはいえいくらなんでもやりすぎだ。本当に人を殺める気か。根本君に謝れ」
蘇芳はぷいっと向こうを向き、ぼそっと呟いた。
「だって、あんなこと言われたんだもの・・・・・・。譲葉を私から攫うって言うのだったらこうするしかないじゃない。譲葉を失ったら・・・・・・私には残るのは絶望しかないわ」
タオルで顔を押さえ、しぶしぶ答える蘇芳に僕は戦慄し、花菱君達は目を丸くし驚愕の表情。皆、押し黙ってしまった。何時もの妖精然とした美少女はそこには居なかった。居たのは恋を患って歪んでしまった14の女・・・・・・。
そうこうしてると、こそこそ気配を伺うように静かにドアを開けて沙沙貴君達が入ってきた。
「外は収めてきたよ。舎監に適当に言い繕っておいたから。まぁ、チョロいチョロい。それより何がどうなったの? 教えてよ。影の功労者たる私達だけ除け者はありえないでしょ」
このままここにいても、状況は進展しないだろう。こっそりと花菱君の部屋に蘇芳と沙沙貴君達を移送し、僕が事情を説明することにした。花菱君には、落ち着く様にハーブティーにミルクを淹れたものを蘇芳のためにオーダーした。紅茶マイスターを自認する彼女は意図を汲み快諾してくれた。
その前に先んじて根本君を寮の保健室に連れて行く。この時間は誰も居ないはず。首にタオルを巻き、くっきりと付いた手の跡を隠しながら連れて行った。案の定誰も居ない。ベッドに寝かせて先ほど別れたネリーを呼び出し、この子を見てもらうことにした。学院には僕の指の治療と言うこととし、後で養護教諭に書類を出してもらうことにして・・・・・・。
「ネリー、ちょっとこの子を見てやってくれないか。蘇芳のアミティエの根本君だ。出来たらで良いけど鎮静剤代わりに、ホットミルクを淹れてやってくれ。頼んだよ」
「判ったわ。任せて頂戴。事情は後で説明しなさい。で、譲葉は? 」
「僕は、蘇芳の面倒をしないといけなくなってね。遅くなると思う。食事とかは勝手にやるから。葉子に伝言を頼む。それじゃ頼むよ」
根本君は、これでもう大丈夫だろう。次は花菱君の部屋に行って、蘇芳を何とかしないと。もう落ち着いていると良いのだけど。
「花菱君、失礼するよ。落ち着いたかい? 蘇芳は」
部屋に入り、蘇芳を見やる。蘇芳は顔に濡れタオルを当て、鼻にティッシュを詰め鼻血を抑えて床に体育座りで俯きながら外を見ていた。傍らには空のティーカップ。虚ろな目で見ている窓の外は夏の情景。向日葵が咲き乱れてる。建物に止まっているのか、窓からはミンミンセミが鳴いてるのが聞こえてくる。しかしガラスの前の蘇芳は、青ざめて氷像のように固まっていた。
「どう様子は? 花菱君、匂坂君。あれ? 沙沙貴君達は戻ったのかい? 」
「事情を説明したけど、信じられないって・・・・・・。取り敢えずクラスに戻って、そっちを押さえに行ったわ。騒動が知れると、保健委員にバトンタッチしないといけないかもしれないんで。そうだと秘密の保持が難しくなってしまう恐れが・・・・・・。でもあの子たちならこの状況を煙に巻ける」
花菱君が問いに答え、続けて匂坂君が口を開く。
「蘇芳さんは、見ての通り。頑なに自分の世界に閉じこもったままです。何を聞いても訪ねても黙ったまま。一体何が有ったんです? 蘇芳さんがあんなに激高したなんて、全く信じられない。いまでも夢の中の出来事みたいですよ。でもこの傷は現実だし・・・・・・」
「八代先輩、根本さんは? 」
「彼女は、寮の保健室に寝かせた。ネリーが見ている。だいぶ落ち着いてきたし、根本君はもう平気だと思うよ。本来なら蘇芳も保健室に・・・・・・なんだけど、さすがにまだ会わすのは無理だよな。さっきのあれ見てると。蘇芳、血は止まったかい? 」
僕の言葉に、蘇芳は無視を決め込む。仕方がないので、花菱君にハーブティーをもう一杯蘇芳の為に出してもらい、彼女達に蘇芳の今を聞いた。血は止まった。頬の腫れは未だ有るけど、冷やして良くなってはきている。ずっと傍に居て見なくても良いようなので、少しの間一人にしてみようと思う。
「花菱君、匂坂君、保健室に行こう。君たちも軽い怪我をしたみたいだし」
目配せして、フェイクを匂わす。二人はそれに気付き、首を縦に振る。あえて蘇芳に何も言わないで部屋を出た。保健室では、根本君が寝ついたところだった。ネリーを交え、事の次第を説明した。さすがに幾らかはぼかしたりしたけど、概ね真実を話した。
「そんな軽口に激高して、首締めたっていうんですか? 蘇芳さん、風邪薬の副作用とか有ったのかしら? インフルエンザのタミフルみたいに。いくら考えたってあり得ない話に思えますよ」
「でも、事実だし、現実問題として君らも取り押さえたろう? 鬼の様な蘇芳を・・・・・・」
「根本さんもこんなことになるとは思わなかったろうに。転入早々、災難だな、ちょっと自業自得だけど。今日は蘇芳さんを私達が預かるとして、明日からどうする? 立花」
「そうね。今日はともかく、これからよね。蘇芳さん、喪失することを恐れてるみたいだから、一人にするのは一番拙いかもね」
「発端の譲葉はどう考えてるのかしら? まさか蘇芳さんをあんなにして見捨てたりはしないわよね? 」
最後は、僕か。まあ僕の軽率な行動から始まったことだから・・・・・・。ニカイアの会に連れてきて、放課後長く一緒に居て気持ちを軟化させようと思ったけど、試験期間は活動禁止だし、部活もそうだ。試験が終わるまでは禁止となっている。
「悪いけど、試験が終わるまで、君たちで面倒見てはくれないかい? 元はアミティエだし。沙沙貴君は親友と聞いてる。勝手、で悪いけど、頼むよ」
匂坂、花菱両名は快諾してくれた。2人をクラスに帰し、僕は根本君が起きるのをネリーと待つことにした。久しぶりにネリーとゆっくり時を過ごす。コーヒーを淹れ、保健室がコーヒーの香りに包まれた。
「悪いね、ネリー。巻き込んでしまって。蘇芳があんなにも熱い子とは思ってなかった。根本君も驚いたろうな。本気で首を締めに来るなんて、蘇芳と付き合ってる僕だって思わなかったよ」
「譲葉、私は今でも信じられないわ。だってあの蘇芳さんが・・・・・・。一度、それとなくシスターに相談してみようかしらね? カウンセリング位してくれるでしょうから」
「ここは? 」
「気が付いたかい? ここは寮の保健室だよ。もうすぐ午後の二限目の授業が始まる。根本君、気分はどうだ? 」
「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました。これから教室に戻ります」
起きてベッドを降りようとしてよろけ、ネリーが支える。ここに居たらと諭したけど、どうしても戻ると言うので僕とネリーで連れて行くことにした。首には包帯を巻き痕を隠す。一年の教室に来てみると、なんだかざわついている。八重垣君が僕を見つけ声をかけてきた。
「あっ、会長、副会長。二人して何の用ですか? 」
「キミのクラスの根本君が首に怪我をしてしまってね。養護の先生不在でたまたま保健室に居た僕達が処置したわけだ。保健委員は居るかい? 」
根本君を,八重垣君を経由して保健委員の関本さんと言う子に引き渡した。そしてに八重垣君に気になっていることを問うた。
「何だか騒がしいけど、どうしたんだ? もう本鈴が鳴るだろう? 」
「正確には知らないのですが、一年の誰かが"ゆすられてる"らしいっていうメモ書きがバスキア教諭の部屋のドアに挟まってたらしく、具体的な名前でも載っていたのか、それで委員長と勾坂、沙沙貴達が呼び出されたという訳ですよ。まだ帰って来ないので、このざわつき様です。あいつら、クラスの中心人物ですからね」
「脅迫ってことなのか? 判ってる限りでいいから詳しく教えてくれないかそれ」
「私が思うに、只の"ゆすり"だったら、いの一番に私が呼び出されるでしょうから。そうでないところを考えると、具体的な記載があったのではないかと」
「何故? 」
「何しろ私は、委員長に図書カードのことで事件をこしらえた実績が有りますからね。あれは白羽が丸く納めてくれましたけど」
一難も去っていないのに、また何か問題が発生しているのだろうか。ここでは話しにくかろうと、続きを外で聞こうとしたら、本鈴が鳴りタイムアウト。後で話を聞くことになってしまった。もどかしい・・・・・・。
ネリーと一緒に教室に帰ろうとしたけど、蘇芳を一人残したことに気付き、ネリーと別れて蘇芳の所に行った。ネリーは複雑な顔をしていたけど行ってあげてと言ってくれた。静かにドアを開けて音を立てずに部屋に入ると、蘇芳は相変わらず座って外を見ていた。後ろからそっと近づいて抱きしめた。少し驚いた様で、ビクッとしたけど、また固まって外を見つづけている。
「蘇芳、痛かったか。ごめんな。でもあれはしてはいけないことだから、叩いた。判って欲しい。僕は蘇芳が好きだ。愛してる。だから元の蘇芳に戻ってくれ! 僕が悪いのだったら言ってくれ・・・・・・直すから」
「ごめんなさい、譲葉。今日の私、どうかしてた・・・・・・。皆に迷惑をかけてしまった。どうしたらいいのかしら。嫌われちゃったよね・・・・・・前みたいに親しくしてくれるかな? 譲葉だって愛想が尽きたんじゃなくて? 譲葉も指大丈夫なの? もっと痛めちゃったんでしょう、本当にごめんなさい」
「大丈夫だよ、蘇芳。お前は魅力的だし、誰だって親しくなりたいと思ってるよ。アキラの一件の後、皆が会いに来たり手紙くれたって言ってたじゃないか。蘇芳が望むなら、僕以外にも、浮気したくなったらしても良い。ぼっちの蘇芳より、友人や愛人に囲まれてる蘇芳が良い。でも蘇芳の本気は僕だけのものだからね」
そこまで言って、キスをしつつ床に二人して横になった。カーテンを閉めて熱く抱き合う。固まっていた蘇芳が解凍されて行った。さっきの二の舞はゴメンなんで、早めに切り上げ花菱君の部屋を出て、二人で寮の保健室に向う。相変わらず誰も居ない。さっきの根本君と違い、一度帰朝の指示の出ている蘇芳なんで、一応インターホンで校舎の保健室に連絡を取って許可を取る。先の経緯を色々ぼかして話しをし、その結果許可は取れ、蘇芳はここで静養となった。
しかし僕は、授業に送還されることになってしまった。一年の誰かが、ここに来ると言う。代わりに来たのは保健委員の関本君だ。
「八代先輩、お疲れさまでした。根本さんは問題ありませんでした。それでは交代します。あの、白羽さんのお具合は・・・・・・」
「顔に少し、怪我があるから処置をしてくれないか。今は、寝てるからそっとしてあげてくれ。放課後また来るから、それまで頼む。容態が変わったら、インターホンで先生を呼んでくれ。それにこの事は多言無用だ。くれぐれも内密に」
関本さんに引き継ぎをして保健室を離れた。教室に戻る間、八重垣君の言った"ゆすり"とさっきの行動について色々考えた。関係があるのか無いのか等々。答えなど出るわけも無く、教室に着く。戸を開け中に入ると、クラスの皆に自分の指の怪我を聞かれた。遅かったけど、街まで治療に行ったの?とか根も葉もないことを色々と。
ネリーは知ってるのになぜ言わないと思って、ネリーを見るとウインクしてわざとだと暗示する。蘇芳のことを隠匿するためと理解し納得した。先生にも色々言われたけど、巧みに交わし授業に混じった。しかし頭の中は、蘇芳のことでいっぱいだった。
「白羽さん、また二人だけになれたわね。また秘密を共有出来るなんて、やっぱり私と蘇芳さんは縁があるのね。フフッ。あらあら酷い顔しちゃって、唇は切れてるし、鼻血も出た跡があるわ。随分と激しく叩かれたのね、可哀想・・・・・・手を出すにしても顔になんて。痕にならない良い薬塗ってあげる。沁みない様に丁寧に塗ってあげるわ」
起こさない様に気を使いながら唇に薬を注意深く塗る。鼻の下にわずかに残った鼻血の痕を舌を延ばして舐めとった。それにしても本当に美人。眉の形も、睫毛の長さも、鼻の形、高さ、目の形大きさバランス、何処をとっても非の打ち所が無い。
「ねえ、私だけのものになって、蘇芳さん。あんなあいのこの年増はやめてね、お願いだから。皆が押しかけるまでまだ時間があるから、それまで私といいことしましょうね。す・お・う・さん」
放課後まではまだまだ余裕が有る。暫くはここで二人きり。起こさない様に、しずしずと服の下に手を入れて身体を愛撫する。なんだかこの間よりも冷たい気がする肌。それでもすべすべで柔らかいしとても愛おしい。秘所に指を滑らすとここだけは熱く、生を感じる。気のせいか、指の動きに呼吸がシンクロしている様に思える。今、寝てる蘇芳さんが夢を見ていて、その夢の中で私とメイクラブしていると良いなと思いながら・・・・・・。確かめる術が無いのは残念だけど。
「ねえ、譲葉。指大丈夫なの? 挟んだとき切断したかと思ったわ。私の叔父が車のドアで指先落としちゃった事が有ってね・・・・・・」
教室で隣の席の子が心配して僕に話しかけてきた。彼女は僕の同室のアミティエ。名前は白木葉子。何処かで聞いたようなお嬢様と同じで、本人は好きではないというけど、僕は葉っぱ繋がりで好きだ。
「大丈夫だよ。腫れてるだけ。痛いは痛かったよ。今まで生きてきて最高に痛かった。叔父さんは大変だったんだね。つながったの? 」
「ううん、ダメだった。だから指の形したキャップみたいのしてるわ。譲葉がそうならなくて良かった。あんなにきれいな指が失われたら、悲しすぎる・・・・・・」
「そうなんだ。僕は大丈夫。心配かけてしまったね。遅くなったのは、蘇芳に保健室で偶然に会ってさ、それから色々有ってごたごたして、参ったよ」
彼女は蘇芳を良く知ってる。蘇芳がここに初登院してきたその夜に知り合ったから、学内では僕に次いで長い。入学前、夜になって入寮手続きが出来ずに寮受付でに途方に暮れていた蘇芳を、僕たちの部屋に泊めると言った時快諾してくれたのが葉子なのだ。その後も血塗れメアリーの時やら都度都度関わりがあった。
「蘇芳さん、どうしたの授業中よね? 風邪でも引いたのかしら。昨日の放課後に外で何か有ったみたいだし」
「放課後まで、校内の保健室から寮の保健室に移送されて寝てるからチャイムなったら会いに行くんだ。それまでは一年の保健委員、関本さんが見てることになってる」
「関本さんって、ショートボブの子? 」
「そうだよ知ってるの? 」
「知ってるも何も、この間天文部に入ってきたのよ。関本ゆかりって言うの。何でも、部長の妹だそうよ」
「あれ? 天文部の部長って和田さんでしょ? 名字違うんだ。妹居るなんて知らなかったよ。そう、あの部長の妹さんか、関本君は。あんまり似てないな」
「そう、あのキツい部長が、人が変わったみたいに関本さんにすごく気を使ってるの。目の中に入れても痛くないって言う、そんな感じにね」
「八代さん、白木さん、お喋りは終わったかしら。授業中なんですからね。続きは部屋でしなさい! 」
何時の間にか後ろに立った先生に、教科書の角で頭をこずかれてしまった。葉子と目を合わせて舌を出す。さて集中しますか、放課後まで・・・・・・。