あの友利との一連の出来事から、三日が過ぎていた。支えたい、なんて思っても、肝心の友利があの瞬間突然消えたようにいなくなったので、少し落胆したが、まあ、いつか会えるだろう、なんて気楽に構えて、しばらくはネットカフェや、漫画喫茶を転々としていた。
そこで、突然降って湧いたように友利が現れた。こちらが驚く暇もなく、いきなり、「ついてきてください」なんて言うもんだから、いろいろ問い詰めたいのを我慢して、付いていった。
その数十分後、一人の男ど出会った。顔が隠れるほどの、肩甲骨辺りまである長髪に、学ランを羽織っていた。
「なぁ、友利。誰だこいつは」
さすがに初対面の人に対して、こいつ呼ばわりなんて常識的に考えて普通しないような僕だけれど、この男が風体があまりにも怪しくて、少し警戒してしまう。
「こいつは熊耳。わたしたちをあの人の元に連れて行ってくれるそうです」
「その人が僕の元に行け、とお前に指示したんだよな」
「指示というか、提案ですが。あの人はただ、わたしの進むべき道を示してくれただけです」
などと話していたら、その熊耳が、
「付いて来い」
だけ言って、歩いて行ってしまったので、二人とも慌てて付いていく。すると、一台の車がある。見た感じ高級車なようだ。
これに乗れ、と身振り手振りで、示し、彼は助手席に座る。僕と友利もそれに従った。運転手らしきオールバックの男が扉を開けてくれる。車はリムジン。席が多数あるが、僕はもちろん、友利の隣に座る。
車が動き出す。隣の友利を見ると、もう眠ってしまっていた。疲れていたのだろうか。車って眠りやすいよな、なんて思いながら、窓の外の景色を見てーーーーー刹那、世界がぐにゃりと歪む。
「!」
あまりにも突然すぎて、何が起こったかわからないが、強烈な眠気が僕を襲い、体が重くなってゆく。直感的に、こいつらの仕業だ、と助手席の熊耳と、運転手のオールバックの男に向かって手を伸ばすが、力尽きてしまった。
ーーーーーーーーーー暗転。
「⁉︎」
体感時間、直後、僕は飛び起きた。 僕はソファーに座っていた。手口が手口なので、騙されて、誘拐されたか?と思ったが、拘束などはされていなかった。部屋を見渡すと、書斎のような雰囲気を醸し出している。そして、目の前には、青い髪の優しげな雰囲気の男。傍らには、先ほどの熊耳と白い棒がある。隣の友利を見やると、まだ寝ている。こんな時に可愛い寝顔しやがって、と少し和んだが、そんな場合じゃないだろう、と、急いで体を揺する。
起きた。
前方の男を見やると、突然、満面の笑みで、
「隼翼さん!」
と言い、男に近寄る。
「奈緒ちゃん、元気だった?」
「はい。すごく元気です。それも、あなたが示してくれた道のおかげです」
かっこいい声音で友利と話す男、隼翼さん。話の流れを読むと、隼翼さんが友利の言っていたあの人らしい。
「あの、僕はいったい、何でここに連れられてきたんだ?というか、あの眠気はなんだったんだ?」
「はぁ?お前敬語使えよ!相手はあの隼翼さんだぞ!」
「いや、そんなこと言われても、知らないし...」
理不尽にキレられる。
「そのことは、本当に、申し訳なく思っているよ。凪斗くん。じゃあ、まず一つずつ、説明していこうか」
と、隼翼さんは、僕の目の前のソファーから立ち上がり、書斎の机に腰掛ける。その際に、熊耳が肩を貸していた。
「ん?あぁこれ?俺は盲目だからね。こうやって『プー』に手伝ってもらわないと」
手にある白い棒がを掲げながら、僕の視線の意味を察知し、説明したが、僕にはそれ以上に気になる点があった。
「『プー』?」
「誰ですか、それ?」
友利もわからなかったのか、便乗して質問した。
「え?熊耳だけど」
「「はぁ⁉︎」」
熊耳の熊でプーかよ⁉︎全然そんな雰囲気ねぇ!と、一人で戦慄していたら、友利も同様に、驚愕の顔をしていた。
そんなこんなしているうちに、隼翼さんは、微笑みながら、語り始める。
「まずは、ここに来るまでにあった、眠気の説明をしようか。あれは、俺の同志の一人である、『目時』が、特殊能力に寄って眠らせたんだ。どうしても、ここまでの道のりを知られるわけには、いかなかったからね。」
「この前も、言っていたが、特殊能力というのは、なんなんだ?僕のこの爆発させる力が、そうなのか?」
「ああ。数が少ないが、思春期の間だけの、病のようなものだ。我々は、全員が、特殊能力者で構成されている。」
「道のりを知られるわけにはいかなかったと言ったが、ここはそんなにヤバい場所なのか」
「ああ。ここは、最後の砦だからな」
友利も、熱心に僕と隼翼さんの対話を聞いていた。どうやら、友利をこの話は初耳らしい。
「ところで、君は今何歳だ?」
「多分、今年で15歳になると思う。」
「そうか。じゃあ、奈緒ちゃんと同い年か」
と、一人で納得したように、天井を見た。熊耳は、扉の近くの壁に寄りかかって、黙って話を聞いていた。
「次に、君をここに連れてきた目的だが、一つ聞きたい。君はもともとは、というか、今もそうだが、白髪なんだな?」
「ああ、うん。それが僕の特殊能力の発現の予兆らしい」
「できれば、君の特殊能力について、詳しく説明をしてくれないか?」
初めはそっちが説明するのではないのか、と思ったが、しかしそれがあまり不自然に感じないのは、隼翼さんの話術が達者なのか僕が話し下手なのかわからないが、どうやら説明をしなければわからないような気がした。
「わかった。僕の能力の発現方法は、ぶっちゃけわからないんだ。」
「何?」
「何故なら僕がその能力を使えるようになったのが、つい一月前だからだ。」
「しかし、では、ここ二週間の連続爆発不祥事事件は?」
「そこがミソなんだ。僕の能力の発現方法はただ一つ。それは、とてつもない負の感情を持つことだ。それで能力が使えるようになる。それで、触れたものを爆弾に変えることができるが、それの起爆までに、百二十時間かかる。」
「ということは5日か...何故この事件を起こしたんだ?」
「......あまり、人に話したくない」
「そうか。しかし、説明がやけに他人行儀だが、なんでだ?幸い、けが人も少ない上に、死人もゼロだから、あまり有名ではない事件だが」
「それは友利のおかげだな。」
「わたしですか?」
「ああ。友利が僕を救ってくれた」
「.....わたしは何もしてませんが」
「お前には、人を変える力がある。それは、素晴らしいことだ。僕が保証しよう」
「.....あなたに保証されても困ります。」
と、うつむき、少し赤い顔でつぶやいた。
「じゃあ、話を戻すが、僕は何故ここに連れられてきたんだ?」
「ああ、そうだったな。先ほどの、連続爆発不祥事事件、あれほどの爆発だったのに、証拠が一切なく、不審者もいないことから、俺たちは、これが特殊能力者によるものだと判断した。そしてその時期、ちょうど奈緒ちゃんがうちに来た時でな、奈緒ちゃんのサポートを任せられる人物を探していたんだ。だから、保護して、奈緒ちゃんとともに行動してほしい、と思ったわけさ」
「何で僕を保護しなければならないんだ?」
「それはーーーーー
研究者に解剖され、最終的には処分されてしまうからだ。」
「........ は?」
言っている意味がわからない。
「特殊能力者は、研究者にとっては、格好の研究対象なんだよ。特殊能力がなんたるかを解明すれば、様々な技術が進化するからな。大抵捕まった特殊能力者は、実験されて、廃人になるか、処分されて終わりだ。」
だから、と、隼翼さんは、怒りがこもった眼差しで言った。
「我々にとって、研究者は、『敵』だ」
「ーーーーそんなわけ、ない、だ、ろ...」
「?」
思い出が、蘇る。
優しい瞳。白い部屋。検査。父親と母親。動かなくなった友達に、何も思わなくなっていた自分。
様ザマな、オモい出が、よミガえ、る、る?るる、るるるるるるるるるるーーーーーーーーーーーー
「ッ⁉︎、あ、あ、ああああああ、ああああァァァっ、ァァァァァァああああ‼︎」
部屋を、飛び出した。