曇天二ヒカルノハ、死ノヒカリカ、ソレトモ   作:インサイト

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高城丈士郎という男

「なんでい?呆れたァ顔してがし、おまんらの名もなのれないかなとォ、あん?」

「俺が名乗ったんだからお前らも名乗れ、みたいな感じです」

「あ、ああ。わかった。.....僕の名前は谷城凪斗だ」

「わたしは友利奈緒です」

「んんんん?このあいだのやつとは違うなだのォじゃかあ、違うんなたか?」

「あー、うん。なんとなく、なんとなくだけれどわかってきた。ーーーそうだ!違うぞ!」

「ほぉーか!ならいいや!」

「.....。バカか?」

「おいバカ友利。そんなこと言うなよ、本人の前で」

「んで、おまんらはなにしにきようとか?」

「ん、ああ。実は、僕たちがここにきた目的は、何を隠そう、お前なんだよ」

「あなたに、我々が通う予定となっている、星ノ海学園に入学してもらいます」

「......は?ように言っとる意味がわからんかし。星ノ海学園?入学?まず、学園ってなんじゃあ?」

「.......え?」「は?」

 

びっくり仰天だった。

 

「.....そこから説明しないといけませんかね?」

「うーん.....なんか、ここは北海道だから意味わからん原語があると思ったけれど、明らかに人語じゃあないし、演技臭くないか?」

「じゃあ、今までの意味不明の言動は全てフェイクであると?」

「そう考えたほうが自然っちゃあ自然だなぁ」

「なんじゃあ、おまんら、こそかそとさべりやごって。いいたいことあるのんなら、さっさとしゃべんさい」

「なぁ、おまえって、本当にここの住人なのか?」

「は?いきなり何を言うとおもえば、おまんらバカか?」

「バカにバカって言われると殺意湧きますね」

「落ち着け友利。女の子がしちゃいけないぞ。そんな顔」

「なんでいそんなこときくんじゃある?」

「お前の言動が、なんとも胡散臭かったから」

「おまえ、それはこのニッポンイチすんばらしかる村、松方村ばバカにしとるんでねぇちゃうさかいか?」

「なんかいろいろ混じってるよな?」

「たしんかに、この村ば方言はわかんりにくういことでぇ有名やぁ...だがしかし、みよこの大自然‼︎」

「お前に遮られてるから見たくても見れねぇよ」

「こいつノしていいっすか?」

「やめろ友利。女の子がしちゃいけないぞ。臨戦体制なんか」

「空気もうまい、ジビエもうまい、山菜もうまいし、なんなら人間関係もうまかよぉ!」

「....。」「.....。」

 

もはや反応するのが、面倒になってきた。

 

「おらがこのニッポンに住んでるゥことをぉ贔屓目にしかてぇも、やんぱりん、この村がニッポンイチじゃあなごし!」

「.....まあ、そんな話はいいんだよ」

「はあ⁉︎おんまえ、このおらが松方村の良さをたいそーてーねーにせつめーしてやつたいうううにいいい.....!許せん!許せんぞお!」

「いいんだよどうでも。つまりだ、お前は、ここを離れるつもりはない。それでいいんだな?」

「あああ!もちろんだともお!」

「じゃあ友利、待とうか」

「そおっすね」

「なにい⁉︎」

「だってわたしたち、べつに諦めるとは言ってないですし」

「僕たちには、お前を連れていかなきゃならない使命があるんだよ」

「......わぁったわあった。勝手にせいや。おらはおらで、おまんらを監視させてもらうわぁ」

 

そう言って、その場にどかりと座った。言葉通り、僕たちを監視するらしい。

 

「谷城さん。ZHIENDの曲聞きます?」

「ん、いや。それも魅力的だけど、なんかこの前『How-Low-Hello』っていう、バンド?のCD衝動買いしちゃったんだよ。お前これ聞く?」

「そうですね。少し興味が」

「『How-Low-Hello』ですかぁ⁉︎」

「うわぁ⁉︎」

「きゃあ⁉︎」

「あなたも『How-Low-Hello』が好きとは!なかなか見る目がありますねぇ!私も好きなんです、『How-Low-Hello』‼︎

『How-Low-Hello』通称『ハロハロ』は、あの人気朝情報番組、『ムーブメント朝』、略して『ムブ朝』で、レギュラーメンバーだったアイドル、『西森柚咲』通称『ゆさりん』がボーカルのロックバンド‼︎その魅力はなんと言っても、キャッチーな可愛らしさに、ほんのちょっぴりのゆさりんの苦味が入り、それはもうそれはもう大大大ヒット中の、超‼︎人気‼︎ロックバンド‼︎そして、ゆっさっりーーーーーーーん!!!!!」

「ひくな!」

ドン引きだ。

5キロ退いた。気分的に。

 

「お前....やっぱ演技だったのか.....」

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家出?」

「はい、少し家庭崩壊みたいなものがありまして、この村に逃げてきたのです。ここには私の親戚がいるので、私を匿ってくれたのです」

 

彼は、高城丈士郎。一人称私、二人称あなた。好きなものは西森柚咲。そして、『Hiw-Low-Hello』通称ハロハロ。嫌いなものは、西森柚咲、ないしはハロハロが嫌いな奴。

彼の一族は、代々その地の大地主をしており、大分裕福な家庭だったという。父、高城健介。母、高城よし子。家族三人でそれはそれは楽しい生活を送っていた。しかし、その平穏な日々は唐突に終わりを告げる。

家に泥棒が入ったのだ。

ただ泥棒が入ったままだけでない。そこには、一つの紙切れが残されていた。

契約書。

私、高城健介は、借金、三億三千万円の保証人となることを、誓います。

家族から見れば、明らかにべつの人物が書いたことは分かりきったことだった。

警察に通報し、一緒にこの契約書を見せた。こんなの結果は分かりきっているが、念には念をだ、と油断して待っていたら、まさかの本人だ、との通知。これはおかしい、と裁判を起こした。これは詐欺だと訴えかけた、が、無駄だった。今から思えば、当時の警官その他はすでに買収されていたのかもしれない。

結局、裁判には負け、借金を全額負担することになってしまった。家にあるもの全てを売り払って、ようやく払いきれる値段。

借金を返し終わり、さあ、嫌なこともあったけれど、これからなんとかやっていこうとした矢先、待っていたのは、

人々の疑いの目線。

これらの一連の騒動は、高城家が誰かに対してやったことで、それがそのままそっくり返ってきた、つまりは、因果応報だ、あいつらと関わったら、次は俺たちがその標的になるかもしれない。

このうそつきめ、この外道め。貴様なんか道端でおっ死んでしまえ。

人々から浴びせらせる罵詈雑言。家庭が壊れるのは、時間の問題だった。

世界の、終わりだった。

 

「私の能力『瞬間移動』が目覚めたのも、そのくらいの時期でした。一刻も早くその状態から逃げ出したい、そんな思いが、この能力を発症させたのでしょうね」

 

高城が自虐的に言う。

 

「ところで、なんでさっきあなたはあんなバカみたいな演技をしてまで、わたしたちを追い返そうとしたのですか?」

「.....それは、まだ私には、この村に残らなければならない理由があるからです」

「理由?」

「はい、それはーーー」

 

高城ぎ話始めようとしたその時、声が聞こえた。

 

「おやおや、これはこれは高城氏。今日も随分いい天気ですねぇ」

「.....矢吹さん」

「おやぁ?そちらのお二人は、お友達ですかな?でしたら、早々に帰ってもらいましょうか。なにせ、今から大事な、大事な話をするんですからねぇ」

「大事な話?いったいなんだ?」

「口を慎め雑種。私は、お前のような低俗で、卑しい人間に発言していいと許した覚えはないぞ?」

「あんだと⁉︎」

散々な言われようだった。このうざったらしいサングラスに、うざったらしい高級そうなスーツを着た、このうざったらしいクソ野郎に、一発拳を入れてやろうかと思ったが、

「落ち着いてください、谷城さん」

 

と、友利遮られて、頭を、ぺしり、と叩かれた。

 

「ほうほうほう。そちらの麗しいお嬢様は随分ご聡明のようだ。よかったら君、今からでも私の妾にならないか?大丈夫、地位は保証してあげよう。私はまだ妻を持っていないから、もしかしたら、君が正妻になれるかもしれないぞ?」

「.....最っ低」

「てんめぇ、友利をそんな目で見るな‼︎友利が汚れるだろ!」

「なんだと、この餓鬼。うるさいにもほどがある。よろしい。では、貴様にはとっておきの拷問フルコースをーー」

「やめてください、矢吹さん‼︎」

 

物騒なことを言っていたクソ野郎(矢吹)を、高城が諌めた。

 

「ここには、私との話し合いにきたのでしょう?それに言いましたよね?私との交渉中は、私の関係者との接触は控えると」

「.....分かりましたよ、高城氏。ここはあなたに免じて、手を引いてあげましょう」

「ありがとうございます。.....二人とも、とりあえずここから去ってください」

「で...でも!」

「いいから!」

 

僕の抗議の声を、高城が遮る。

 

「お願いします。事情は、後でたっぷりと説明しますから」

「.....必ずですよ」

「友利⁉︎」

「行きましょう、谷城さん」

 

友利が僕の手を引っ張って高城から、矢吹から、松方村から離れていく。

 

 

 

第一能力者との邂逅から一転、第一能力者からの離別だった。

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